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初めまして!合わない場合はそっと閉じてくださいな。
初夏の庭を望むテラス。心地よい風の中で、私のお仕えするお嬢様が読書にいそしんでいる。
私は、お嬢様の為に冷たいお茶を淹れる。苦味が出ないよう、丁寧に。素晴らしい紅茶、初摘みの最上品質。香りたつマスカットフレーバー、失敗するのは勿体無い。濃いめに淹れ、氷の入ったグラスへ注ぐ。鮮やかな赤茶色、我ながらよく出来た。彩りにミントの葉をのせ、シロップを添える。コースターはこの間お嬢様が購入した、色鮮やかな鉱物をスライスしたものだ。水滴は吸ってくれないが、美しい。
ここは、とある国の公爵家。その別邸だ。ちなみに本邸は同じ敷地内にある。敷地は広く、生垣などにより仕切られているので、そう感じることは余りない。数は少ないが料理人もメイドも別邸専任で、使用人の部屋もこちらにあるからだ。御年7歳になるお嬢様、セレスティア様は一年前から本邸を出て、こちらに住んでいる。
彼女は、数年前に亡くなられた祖母、先代公爵夫人からこの別邸の中も外も丸っと譲られた。
お嬢様が移り住まれて一年。とても安けくお過ごしである。
お嬢様は、ため息をつきながら、読んでいた本を閉じた。
読み切ってはいない。お気に召さない様だ。
「どうでしたか?」
我ながら上手に淹れた冷茶をサーブしながら私は問いかける。だが答えは予想できている。
「どうも こうも ないわマギー。これじゃない。」