5.目覚めた力 その1
「シャル、この中に入るのよね?思ってたよりも不気味なんだけど・・・」
炭鉱は現在使われていないようで静かでひっそりとしていた。
入口から中をのぞき込もうとしても中は真っ暗で何も見えない。
「ルイズ、灯りを頼めるか?」
「うん」
クラインにそう言われて、俺は背負っていたバックをおろし、持ってきたランタンを取り出すとそれに灯りをつけた。その灯りを入口の方に差し向けると灯りに照らされて中の通路が映し出された。
「じゃあ入るわよ!」
「えぇ・・・ここ変な虫とか出ないわよね・・・?」
「大丈夫よ!もし、いっぱい出てきてもどうにかなるわよ。ほら!」
思っていたより豪快な性格のようであるシャルが先頭に立ち、ひぇぇっと女の子らしいリアクションをしているフレイルの腕を引っ張って、俺達がそれに続いた。
通路を歩きながら周りの壁を見ると、等間隔で役目を果たしていない電球がロープで縛られ吊るされている。以前はここも使われていたのだろうか。
ランタンの灯りだけを頼りに、そのまま通路を真っ直ぐ進んでいくと、狭い空間がある場所に着いた。
「ここよここ!ほらその辺りに・・・あれ!?鉱石が無いわ!この前はあったのに・・・」
どうやらここが、シャルの見つけたポイントのようだった。
しかし、辺りには何も見当たらない。
誰かが先に採ってしまったのか、シャルが場所を間違っているのかは分からない。
「せっかくここまで入って来たのに・・・私のせいでごめんなさい・・・」
シャルが責任を感じたのか申し訳なさそうな顔をしたので、
「せっかく来たんだから、もう少し奥に行ってみようよ!」
シャルの前で格好をつけたくて、俺はそう言った。
クラインとフレイルも2人で相談したが、ここまで危険がなかったので、もう少しだけ奥まで行って調べてみようかということになった。多分2人もシャルの立場を考えたのだろう。
さらに、そこから奥に進んでいくと今度はさっきより大きな空洞らしき場所に辿り着いた。
中は真っ暗で、声を出してみると少し響くかなという位だ。
通路から中を照らしてみる。
すると何かが光を反射した。
おっ!っと思い、その空洞に踏み込み、反射したあたりに向けてランタンを差し向ける。
地面に綺麗な透き通った赤色の物体がいくつも確認できた。
フレイルとシャルも後に続いて空洞の中に入ってきた。
「わー、シャル見て!!たくさんの綺麗な鉱石だわ!」
「ほんとね!でも鉱石があって本当によかったわ・・・ルイズ君、さっきは奥まで行こうって提案してくれてありがとうね!」
シャルが手を握ってお礼を言ってくれた。
俺のポイント上がったかな?
そして、シャルが鉱石に近づいて確認していたのだが、
「えっ!待って!これまさか・・・!」
と言いながら突然、近くの落ちていた石で鉱石の一部を削って断面を確かめ始めた。
「これ・・・魔鉱石よ!魔鉱石だわ!!」
この鉱石は一般の鉱石と違い魔力を帯びて出来上がったものらしい。ここまでの練度のものとなると十年以上、魔力を帯びて形成されたものかもしれないと、シャルが興奮しながら説明してくれた。
そんな珍しいものなのかと思ったが、男2人はあまり興味は湧かずに俺とクラインは必要な分だけ確保した。シャルは両親に見せたいからと向こうでフレイルとまだ採取を続けている。
「これで記念日のプレゼントが用意できそうだね!」
2人を待っている間にクラインに話しかけた時、
クラインが、しっ!と自分の人差し指を俺の口の前に持ってきた。
「何か、何か聞こえないか?」
急にクラインが、灯りが届いていない奥の方を見ながらそう言った。
「僕は何も聞こえないけど?風の通り抜けで音でも鳴っているのかな?」
「いや、でもここ風が吹いて、ないよな・・・?」
クラインがそう言った時、確かに俺にも何かのうめき声のようなものが聞こえてきた。
「ぐるうぅぅ・・・・!」
奥の暗がりから聞こえる。
なんだ?一体?
何かを感じたのかクラインが叫ぶ。
「フレイル、シャル!何かいる!早くこっちに来い!」
クラインはその場で剣を鞘から抜き構えた。
その瞬間いきなりその何かがクラインに飛びかかってきた!
ガキン!!
剣と堅い何かがぶつかったような音が空洞内に響いた。
その何かは、また距離を取ったようだった。
フレイルとシャルも慌ててこっちに来た。
俺は何かがいる暗がりに向かって、持っていたランタンを向けた。
「きゃあ!何よあれ!?」
何かの姿を確認するなりフレイルの悲鳴と驚きの混じった声が発せられた。