表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/25

宴会で気絶

左門は次第に頭がぼんやりとしてきた。

(あれ?)

左門の視界がぼやけてきた。そして、そのまま意識を失ってしまった。

「おい、大丈夫か?」

左門は誰かの声を聞いたような気がしたが、それが誰のものなのか分からなかった。気が付くと、左門は自分の部屋にいた。どうやら布団の上に寝ているようだ。

「ここは……」

左門は小さくつぶやいた。

「確か、宴会をしていたはずなのに」

「目が覚めたか?」

左門が体を起こすと、部屋の隅にいた人物が声を掛けてきた。左門はそちらを見た。

「あなたは?」

左門は戸惑いの表情を浮かべた。

「俺は、佐助だ」

「佐助さんですか」

左門はその名前をつぶやくように繰り返した。

「覚えました。よろしくお願いしますね」

「おう、こちらこそな」

佐助は満足げに微笑んだ。左門は改めて相手の姿を眺めた。背丈はかなり高いようだ。百八十センチ近くあるだろうと思われた。体格もよく引き締まっているようであった。年齢は二十代後半くらいだろうか、精力的な感じの男性だった。服装は着物姿である。しかし、どこか違和感があった。着慣れていないせいか、妙にちぐはぐに見えるのだ。まるで借り物でもしているかのように思えた。髪形も同じだ。肩まで伸びた髪を後ろで一つにまとめているだけだ。そのため、全体的に野暮ったく見えたのであろう。

「えっと……」

左門は戸惑っている様子だ。

「某を助けてくれたんですね?」

「ああ、そうだ」

佐助と名乗った男はうなずいた。

「急に倒れるもんで驚いたぜ」

「そうですか。ありがとうございます」

左門は礼を言った。だが、すぐに不思議そうな顔になった。

「ところで、どうして僕はここで眠っていたんでしょうか? それに、なぜ僕の部屋にいるんですか?」

「いやぁ、それはな」

佐助は頭を掻いている。

「実は、あんたが倒れちまった後、ここへ運び込むことにしたんだ」

「なるほど」

左門は納得したように何度もうなずいていた。

「それで、どうしてあなたの部屋に?」

「ああ、それはな」

佐助は少し困り顔をした。

「その前に聞きたいことがあるんだけどさ。お前さん、名前は何ていうんだ?」

「名前?」

左門は首を傾げた。

「林田ですけど」

「違うってば」

佐助は苦笑した。

「下の名前だよ」

「ああ、そういうことですか」

左門は得心すると、自分の名前を告げた。

「左門といいます」

「そうか」

佐助はうなずいた。

「じゃあ、左門。ちょっとこっちに来てくれないか?」

「いいですよ」

左門は立ち上がって相手の側に移動した。

「何か用ですか?」

「うん」

佐助は真剣な眼差しを向けてきた。

「単刀直入に聞くぞ」

「はい」

「お前、あの宴会に参加してないよな?」

「えっ!?」

左門は驚いて目を丸くしていた。

「どういう意味ですか?」

「つまりさ」

佐助はため息をついた。

「俺には分かるんだよ。なんとなくだけどな」

「……よく分かりませんが」

左門は困惑気味に答えた。

「もしかすると、酔っぱらって幻覚を見ていたんじゃありませんか?」

「まあ、そうかもしれねえな」

佐助はあっさりとうなずいた。

「ただ、お前がここにいる以上、俺が見たことは事実だと思うわけだ」

「そうですね」

左門は同意してみせた。

「確かに某は宴会に参加していませんでしたから」

「やっぱりか!」

佐助は嬉しそうに大声を上げた。

「いや、良かった!これで安心できるってもんだぜ」

「えっと……もしかして、あなたは某が嘘をつくと思ってたんですか?」

左門が尋ねると、佐助は照れくさそうに笑い出した。

「悪いな。俺にも色々と事情があってさ。つい疑っちゃったんだよ」

「はぁ」

左門は曖昧な返事をした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ