高柳又四郎は剣術に打ち込みたい
飛騨郡代・高柳左京亮定用の息子の高柳又四郎は剣術に打ち込んでいた。飛騨は幕府の直轄地であり、飛騨郡代が治めていた。
「戸田流林田派も今は絶えてしまったようだね」
「残念ですね……でも、お弟子さんの子孫がいるかもしれませんよね」
「ああ、いるかもしれないな」
「私もいつかお会いしたいです」
「会えるさ。きっと会える」
「はい!」
又四郎は元気よく返事をした。
「それで、今日は何をするんだい?」
「今日は『型』の練習をしましょうか」
「型はいいけど、あんたの師匠から貰った木剣はないのか?あれなら重さもあるし、振りやすいだろう?」
「はい!ありますよ。持ってきますね」
又四郎は自分の部屋に戻り、木箱を持ってくる。
「この中に木剣が入っているんです」
又四郎は蓋を開ける。中には三本の木剣が入っていた。一本だけ取り出す。
「これが私の使っている木剣です」
「普通の木剣に見えるが……。まあ、振ってみればわかるか」
忠左衛門は木剣を手に取る。
「ふむ。軽いな」
「そうなんですよ。だから、あまり練習にならないというか……」
「確かにこれは実戦向きではないな」
「えっ!?じゃあ、なんのために使うんですか?」
「もちろん真剣の代わりだよ。重い武器だと疲れるだろう?」
「なるほど!そういうことですか!!」
又四郎は納得してうなずく。
「では、始めようか」
「よろしくお願いします」
二人は庭に出て向かい合う。まずは基本動作からだ。
「構えてみてくれ」
「はい」
又四郎は木剣を構える。
「うん。悪くないぞ。次は素振りをしてみてくれ」
「わかりました」
又四郎は木剣を振る。最初はゆっくり振る。そして徐々に速くしていく。
「よし。それくらいにしておこう」
「ありがとうございます」
私は息を整える。
「どうだった?」
「やっぱり少し違和感がありました」
「そうか。やはり木剣に慣れていないせいかな?」
「多分そうでしょうね」
「慣れるまでは無理しない方がいいかもな」
「そうですね」
又四郎は苦笑いする。
「次は型をやってみるか?」
「はい。やりたいと思います」
又四郎は忠左衛門に教えてもらった通りに動く。
「なかなか筋が良いじゃないか」
「本当ですか?」
「ああ、飲み込みが早いよ」
「嬉しいです」
又四郎は笑顔になる。
「しかし、動きが硬いな。もっと柔らかく動けるようにならないと駄目だ」
「はい。頑張ります」
その後も稽古を続ける。日が落ちてきた頃、「そろそろ終わりにするかい?」と忠左衛門が言った。
「そうですね。もう暗くなってきましたし……」
「そうだな。続きは明日やるといい」
「はい!」
又四郎は元気良く返事をする。
「そうか。それは良かったよ」
忠左衛門は微笑んでいる。




