それぞれの絆
声が聞こえる、シアンの呼ぶ声が。
聞こえてくる方向に手を伸ばしてもがこうとしても両手両足は動かせず、まるで全てが暗闇に閉ざされたような世界に一人取り残されているかのような感覚…
今の自分が声を出せているのか、目を開いているかも分からない。そんな曖昧な世界観の中を佇んでいた。
「みんなはどうなったんだ…シアンは?あかりは?」
手を伸ばしたくても持ち上がる事もできない…が、なにか柔らかくて心地よい[水]に近い感触が全身を覆っている感覚だけは分かる。
羅刹道成から受けた傷が癒えるまで俺はしばしの間、暗闇の中で過ごすしかなかった……
一方、深手を追って意識を失っている禅内仁を守らんと、犬吹真矢と端水幹太は覚醒の絆によって初めての変身を果たす。
現在は、マスター・ゼノンが道成と戦っている空の上へと飛び上がり続けていた。
これまで禅内仁と仲間達が出会って来た者達の中で戦場に向かおうとする者、テレビを見て必死に禅内仁の回復を願う鳥取の仲間達や、かつて佳与をいじめていた双子の兄妹達……
更に、二度と会う事ができないと考えていたとある店主とそのガイダーが、警視総監の男に訴え強引に武器を借り、[彼女]を連れて車椅子のまま走り出す。
ガーディのエージェントとメイド喫茶の店員達も戦場に参加していく中、相棒と再会を果たした日笠と相棒のガイダーを取り戻せなかった相沢と心を通わし始めた無属性ガイダーの男達は、犬吹真矢達と同じ絆の覚醒に目覚め新たな力を手にしたのだ!
今ここに、一人の敵として死を選ぶ事にした愚かな道成を討つ為全員が力を合わせようとしている。
そしてもう一つ。禅内仁を目覚めさせる為、最初に飛び立った幽霊家族は今黄泉国神社へ辿り着いていた。
家族達は次々とここに集まってくる、今日道成に殺された人間達の魂が漆黒に包まれた巨大な球のようになっていく。
彼らはその塊から溢れ出し続ける負の感情に時々支配されそうになるも、厳蔵の結界に守られてるおかげかどうにか理性は保っていた。
「こ、怖いよお姉ちゃん!僕たちが悪霊として過ごしてた時よりももっと怖い⁉︎」
「わ、私だって怖いよ!でも私たちじゃなきゃできないことだから、絶対やらなきゃ‼︎そうよねあなた?」
「ああそうだ!なにがなんでも絶対に俺から離れるな?あの中の中心にいる、過去の戦争で亡くなった英霊を説得する為に‼︎」
「う、うん…」
「はい‼︎」
幽霊家族達は結界の外側から無限に入り込んでくる影……まるで丸焦げにされて黒くなったような、おどろおどろしい形をした手に何度も掴まれそうになりながらも、無事に漆黒球の中心地にいる数百にも及ぶ軍人らしき男達を視界に入れるくらいの所まで近づいた。
「そこの者ら待てぃ!」
軍人の上に立つ人物なのか、濁った草色の軍服を上下に纏い腰に下げている日本刀を片手に置いたまま、目の前で仁王立ちしているパッと見40代くらいの男性が怒鳴り散らして来た。
「失礼、俺達はあなた方と話をしたくてここに来ました。ある人物を助ける為力をお借りしたい!」
「ほう?小童の癖に見上げた志だ!良かろう、なんでも話してみるが良い!」
「はい…(おいおい、手前のことを殿様か何かと勘違いしてんのか?コイツは)」
大名や名のある武将に奉公していた彼にとっては目の前の男からは小物感しか伝わらないと感じつつも、交渉に応じてもらおうと必死に我慢した。
「お姉ちゃん、厳蔵さん怒ってる……」
「しっ!今は静かにしてましょう?(厳蔵さん、また堪忍袋の尾が切れたりしないかしら)」
「あなた方の魂を封じる形で祀られ続けてきたこの神社、[黄泉国神社]をこのように取り壊してしまった人物…羅刹道成の暴挙を止める為、立ち上がった我が恩人である禅内仁という方の蘇生術を施したいのです!
その為には、私たち魂のみとなった者達で彼の力の糧となる事が重要であり、同時に私達は存在する力をなくすとそのままあの世へと旅立てるのです!故にどうか……」
「ふん!あの世だと?なにを馬鹿げた事をぬかすか!見よ、これほど素晴らしい憤怒と憎悪に満ちた国民達を!彼らは自らの意志で復讐をしたいと我らに願い、我らは同胞として迎えたのだ!
我らの力で立ち向かえばあんな小生意気な神主など赤子の手をひねるのと同じ!」
「そうだ!我らは戦って死んだ…肉体はなくとも我らの意志を集結させれば、十分な戦力が勝手に集まるんだ‼︎」
「我らは国の為に散る!この民達も本望だろう!」
「さあ、貴様らも我らと来るが良い!我らが日本帝国は永久に不滅……だっはぁ‼︎」
「ひぎぃ‼︎」
「おふぅ⁉︎」
リーダー格の中年男性と取り巻きの二人に、厳蔵は呪術……[霊魂束縛呪]を以って無理矢理身動きを封じてしまった!
「「あちゃー…」」
「おいこらお前ら…人が黙って聞いてやってりゃゴタゴタと自分勝手な絵空事抜かして満足面しやがって!強制成仏されたいんか?んん?」
「「「パクパクパク…」」」
恐怖と苦痛のあまり、口は動かせても声が出せなくなった3人の軍人リーダー達。
「あんたらはこの建物の外の様子を見てないからまだ分かってねぇみたいだな?じゃあ俺が今からここいる全ての霊達に見せてやる!
式神達よ出でよ、外の景色を我等に見せるのだ!」
厳蔵が両手から出現させた、巨大な白い蛇と緑の蛇がお互いの尻尾を咥えながらゆっくりと回転していく。
そこには、まるでプロジェクターに映されたスクリーンでも見ているかのように鮮明な映像が現れた!
彼らはしばし、映る光景を静かに見入っていた…
「真矢、タイミングを見計らってやつに斬りかかれ!俺はこの[土球]を飛ばして援護する‼︎」
「分かった!お願いね幹太‼︎」
そのたわわに実った双丘を大きく揺らしながら、一気に接近してマスター・ゼノンからの弾幕を避ける動作をしている道成へと真矢はしかけた。
「甘いわ…ふん‼︎」
「…かはっ⁉︎」
だが道成は彼女の剣戟を紙一重でかわすと、真矢の腹に一撃入れて動きを封じた!
「真矢‼︎この野郎〜!」
土球を道成に向けて全力で打ち出す幹太。
「ぐっ‼︎……小癪な小僧めが!」
道成が怯んでいる隙を狙って、高速移動で真矢を救出した!
「大丈夫か真矢!」
「うん…ありがとう幹太」
「二人とも、安心するのはまだ早いんじゃない?」
「攻撃が来るぞ‼︎」
「「‼︎」」
羅刹道成は両手を前に伸ばし、草属性の蔓を出現させた!蔓は小さく蛇行しながら二人へ向かっていく。
「やべぇ……下がるぞ真矢!俺達の属性じゃ相性が悪すぎる‼︎飛べるか?」
「うん!」
二人はジグザグに飛びつつ急いで下に降下していくと、前方で待機していたエージェント部隊[ガーディ]とメイド隊が銃火器を構えたまま待機していた。
「よし、彼らの所まで飛ぶぞ真矢!」
「分かった!」
「あの二人を助けるぞ!総員…掃射‼︎」
「イェッサー‼︎」
その機会を待っていたと言わんばかりに、全てのエージェント達とメイド隊が持つ銃火器で道成から伸びてくる蔓へ向かって攻撃を開始する。
通常の弾丸では歯が立たないが彼らが今手にしている武器は特殊であった…
「…へぇ、こいつは良いぜ![属性弾]なんてものをガーディは作ってやがったとはな?おまけに弾丸が炎属性たぁよ‼︎」
武器を構えて射撃していく芹那花音は、覗き穴越しに見える蔓を正確に撃ち続ける!
周りの者達も同じようにしていると、伸びてきたその蔓は先の方から消滅していった。
「助かったね幹太!」
「ああ!このまま反撃に移るぞ‼︎」
端水幹太と犬吹真矢の二人は空中に舞い上がり、反転して再び道成の元へと飛んでいく。
「日笠氏、私達もいこ!」
「…御意‼︎」
相沢礼奈と日笠理乃……この二人もなんと、初対面である無属性ガイダー二人と絆の覚醒を果たして半透明なバトルスーツを身に着ていた!
今ここに新たな力を身につけた二人は、宙に浮かぶ練習を少ししてから上の二人を追うようにして飛び立っていく。
「……礼奈!日笠さん‼︎二人もその姿になれたんだね!」
「こいつはすげえ戦力が増えたな…いっちょみんなでやってやるか!」
「はい!」
「うむ‼︎」
「この…ガキどもがぁ〜⁉︎」
道成は激しい苛立ちに満たされていき、同時に目の前で起こる出来事に理解が追いけず焦りを覚え始めた。
「(分からぬ、分からぬ分からぬ‼︎何故こんな事が起こる?人とガイダーなど信用しあうものなど無かろうが!)」
激しい空中戦が再び繰り広げられていく中、禅内は少しずつ己のスキル…[裂傷耐性]の効果で傷が塞がり始めていく。
次第に彼の顔から苦しげな表情に変わり始めていく事に気づいたシアンとあかりの二人は、水の膜越しに彼を抱きしめる格好のままそれぞれがキスをした。
「お願い仁…目を開けて?」
「仁君!私はあなたがずっとそばにいてくれればそれだけで良いの!だから…」
「「早く起きて!」」
その時…奇跡は起きた!なんと黄泉国神社方面から飛んできた数多の霊達が、光の束となって禅内の中へと全て入り続けていったのだ!
もちろんその霊達の中にはあの霊家族3人も含まれているのだろう……全てが彼の中に入り切った時、彼に変化が訪れる。
「ゴボボボ!(シアン、あかり!)」
俺はずっと、闇の中で彷徨い続けていた。
その間、過去の辛い事や今の楽しい出来事をまるで走馬灯のように思い出しながら、自身の生き方を考えこんでいた。
だが、二人の声が俺に届いたのでまだ生きてることが分かった!だったら迷うことは無い…
(何度だって起きてやる!どんな奴が相手であっても、二度と屈するもんかってんだ‼︎)
「そうだよ仁兄さん、みんなが貴方のことを待ってる…早く行ってあげて?」
「僕達は君にこの世で存在できる程度の力を分けるしかできないかもだけど、あの世で一緒に見てるから安心してね!」
「禅内仁殿…俺らの魂でそなたの命を留まらせておいた!後は、そなた次第。」
姫野、ろく助、厳蔵!……ありがとな。
「ぶはぁ⁉︎……ゲホゲホ!」
「「仁(君)‼︎」」
「あかり、シアンも……へっ!何泣いてんだよ?」
「うるさいバカ仁!起きるのが遅いわよもう‼︎…うわぁ〜ん‼︎」
「本当だよ!とっても…とっても心配したんだからぁ‼︎」
「悪かったな二人とも、無事で良かっ…でででで‼︎傷が!傷が開くから早く離せぇ⁉︎」
二人は大きな声で泣きながら、俺に強く抱きついて来た!俺は痛みのあまり絶叫した。
「良かった!生きてたね禅内君!」
「相田!ありがとよ?お前が水の膜で包んでくれたお陰で、命拾いしたぜ」
「う、く…禅内」
「直毅!まだ起きたらダメよ!頭痛が収まってないんでしょ?」
「そうだがそうも言ってられないさ。またお前に助けられちまったから、ちゃんと礼は言っときたかったしな?ありがとよ……仁」
「‼︎……当たり前だろ?直毅!」
「仁、このまま立てそう?」
「イテテ!…ああ、立つことはできるが今のままじゃアイスロードで近づくことはできねぇ」
「そう……」
「仁君!シアンと二人で飛べば良いじゃない?今の私達みたいに。正直妬いちゃうケド…」
「そうだよ…二人なら絶対できるよ!」
あかりとフロットに背中を押される形で、立ち上がった俺とシアンはくっついた!
「うおっとと!あー…シアン?あのよ…」
「それ以上言わなくて良いわよバカ!…チュッ」
シアンが俺の唇に、いきなりキスをして来た!
「⁉︎…分かったシアン、一緒に行こう!」
「うん♪」
俺とシアンはお互いの手で触れ合うと、まるで純白の稲光が落ちて来たかのような激しい光がれこの一帯を巻き込んだ!
「す、すごい…」
「綺麗!」
神々しいまでに輝く稲光は天高くまで突き抜け、雲に覆われていた空を晴れ渡らせる。
二人を包む球体の光が縮んでいくと、そこからは紫と白…二つのラインが交差するかのように入り組んだ模様のバトルスーツを纏い、頭には紫の色をしたヘッドギアが装着されていた禅内仁がいた!
「なん…だ?私は一体何を見ているのだ?」
「あれってまさか!」
「仁の兄貴か⁉︎」
「かっ!カッコいい…です」
「なんと…素晴らしきこと‼︎」
空中で戦い続けていた彼らも、禅内仁が放つ光の柱に注目していた。
「…すごいなこりゃ、まるで別人になった気分だぜ!」
「私もなんかそんな気がする…本当に二人で一つの存在になったのね」
「行くぜシアン!この戦いをさっさと終わらせるぞ‼︎」
「オッケー!」
禅内仁とシアンは一つとなり、いよいよ最終戦へと突入していく!
果たして彼らは羅刹道成を倒し、不幸の連鎖を断ち切る事ができるのであろうか…
劇的な復活を遂げた主人公・禅内仁…彼が全ての結末を迎えるための、キーマンになっていった…
いよいよ次回は最終日!もしかしたら今夜中にあげることができると思いますので、引き続きよろしくお願いします!




