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禅内仁

5人のガイダーと3人の女が今まさに道成の反撃を受けようとしていたその時、猛スピードで突っ込んできた二つの光が宙を駆け抜け道成の胴体に直撃した!


その一瞬の出来事が起きたおかげで、道成が繰り出していた張り手攻撃は彼女らに当たることはなく、自らのお腹へと当たってしまう。


「⁉︎」

その場にいた彼女達は、何が起こったのかは分からなかった。


「ふぅ~…ギリギリセーフだったわね直毅!」


「全くだな明音。この状態での突進が通用するのか正直不安ではあったが有効みたいで何よりだ!

このままエージェント部隊とメイド部隊達が到着するまで、できるだけ時間を稼ぐぞ?」


「うん!」


「「あっ⁉︎」」

日笠と相沢がそれぞれのオーラを纏い宙に浮かんでいる、見知った二人の顔を見て驚いた。


「あなた達大丈夫?今のうちにそこのガイダー達を連れて後ろに下がってて!」


「このでかいやつは俺たちでなんとか押さえておくから早く行くんだ!」


「でも、でも‼︎」


「相沢殿‼︎」


「いや!離して⁉︎私の大事な友達・リオを殺したあいつは…私が倒したい!」


「おいおい待ちなよ!オレが持ってる銃の弾丸ですら、奴には対して効かなかったんだぜ?そんな古ぼけた木刀なんかで何ができるんだっての‼︎」


「…!」

花音の言う通り、従来の人間が扱える武器では無力なのかもしれない。

それでもなかなか諦めきれずに項垂れている相沢を見ていた日笠は、彼女の隣でその気持ちを重く受け止め何も言う事ができなかった…


「グ、ウゥ……[力]ヲ、ヨコセ!」

悩んでいるうちに羅刹道成は倒れ込んでいたその体を起こし、須上直毅と相田明音に向かって掴みかかろうとしていた!


「おっと!…明音避けろ‼︎」


「キャア⁉︎……危なかったわ、もう少しで捕まるとこだった」


「君達早く行くんだ‼︎もうすぐ他の部隊が駆けつけてくれる……なにもできないなら下がってろ!」


「彼がきつい言い方するのは代わりに謝るけど、私も同感。早く下がりなさい‼︎」


「…チキショウ」


「「は、はい…」」

彼女達はガイダーである彼らを連れて、名残惜しそうに立ち去っていく……


その姿を二人は複雑な気持ちでしばし見送ってから、正面の相手を見据え喋りながら動き回るのだった。


「やれやれ…咄嗟にとはいえ[覚醒の絆]を発動して、ここまで来られて正解だったな?明音」


「本当にね!部隊長達に先鋒隊として送られてきたのは良いけど、禅内君達が来てくれた方がもっと早くかたがついたかも知れないわ…ね‼︎」

会話しながらも、水で作られた弓矢をつがえて射る相田と炎剣でたたき切ろうとする須上。


二人の連携攻撃が道成に直撃する!


「ギアァァ⁉︎」


「え?ウソ、効いてる⁉︎」


「俺の炎剣も明音の水矢も、ガイダーの属性攻撃だ…奴には属性攻撃が一番有効なのかも知れない!」


「直毅!私達いけるかも‼︎」

須上と相田はこのやりとりを地上にいた別動部隊達にそのまま傍受させ、情報の共有を図る事にした。


ちょうどその時菅谷隊長率いる、女性エージェント部隊達に保護された相沢、日笠、芹那とガイダー達もその通信を横で聞いていた。


「ガイダーの属性攻撃?…ははっ、なるほどな!どうりで銃弾やただの木刀じゃ意味ない訳だぜ!こりゃオレ達の出る幕じゃねぇな」


「「……」」

相沢も日笠も、芹那の言葉通り己の無力さを無言のまま噛み締めていた。

そして同時に思う。ガイダーの力を借りても良いから、あいつを倒したいと…


この時、日笠とダリーの体はお互い半透明なオーラに包まれていた。さらに相沢の体も光だし、彼女の側にいたリオやダリー達と同じ無属性ガイダーの3人……レオン、ラムナ、ゴッシュ。


その中でも一際相沢のオーラと波長があった、ゴッシュという男がいた。


普段見るガイダー達よりも体つきはやや大きく、上下が色違いの服装…紫と黒の二色が白い肌に彩りをつけていた。それはまさに、古来日本の風来坊剣士を思わせる姿である。

彼は密かにリオの事を恋慕っていた、ダリーにとっては恋敵であった…


ただこの時彼女達も、そして上空にいる須上達も気づいてはいなかった。


あるテレビ局の男性ディレクターが残していった撮影カメラが自動撮影・遠隔操作付きの代物であり、今まさにテレビ局の本部が遠隔操作可能状態である事に気づき、放送を再開していたことを……


よって今全国生放送でこの光景が映された為、全ての地域にこの映像が届けられていた。


一方同じ頃、マスター・ゼノンと禅内仁はあろうことか激しい言い争いを繰り返していた。

その理由は、シアンを連れていくなという主張を繰り返すマスター・ゼノンと、禅内仁とシアンが共にあの羅刹道成を止めに行きたいという事だった。



「何故ワカッテクレンノダ‼︎アヤツノ側ニしあんヲ連レテイケバ真ッ先ニソノ娘ガ狙ワレ、殺サレテシマウノダゾ!

我ハ、しあんニソンナ悲シイ結末ヲ迎エテホシクナイノダ‼︎」


「だからこっちだって何度も言ってんじゃねーかゼノン様よ!俺が……俺達が‼︎シアンの事を守るって!」


「私からもお願いですゼノン様‼︎私も仁と永遠に離れ離れになるのはイヤ!どんなに望みは薄くても、彼と一緒に最後まで挑みたいんです‼︎」


「マスター・ゼノンさんよ、俺も娘の真矢がいる身だから愛しい子供を危険な所へ行かせたくない気持ちは痛いほど分かる……だが、人とガイダーの力を合わせればなんでもできると俺は思うぜ?」


「お、お父さん…」


「おっさん…」


「グムム……」

ゼノン様も躊躇ってはいるが、まだ納得したくないように思える。


なので俺はある行動にでた!


「……お願いしますマスター・ゼノン様!俺の大事な相棒を守らせてください。シアンがいたおかげで俺は人間らしく前を向いて生きて来られたんだ!

きっかけは何であれ初めて会った時、シアンが俺を思い切り吹っ飛ばしてくれた…自分の溜め込んでいた気持ちをはぐらかさないで聞いてくれた‼︎

これからも、そんな大事な相棒と一緒にいたいんです!」


「……」

しばしの間沈黙が流れた後、今度はシアンが口を開いた。


「ゼノン様、今だから言うけど最初あなたから仁の監視役を命じた時は正直恨んでました。

過去に好きだった人間を私が殺した罪代わりに、何から何まで最低だった彼を見張る役を押し付けられたから…」


「は、ははは……」


「ム、ムゥ…」

これには流石のゼノン様もタジタジだな?無理もねぇか、俺も今へこんだし。


「でも!ある意味私と仁は同じようなものだったのかもと、一緒に暮らしていく中で少しずつ感じ始めたんです。

あかりと仁が付き合うまでは私がいつか人間になって、絶対イチャイチャしたいとまで考えてしまえるくらい仁の事が好きになってたんです!

あなたがいつからか目指し始めていたと言う、人間とガイダーの共生……それを証明できる一人に私はなれたのでしょうか?」


「……アア、正直想像以上ノ結果デアルト言ワザルヲエナイガ同時ニ怖クモアル。

先程オ前達ニモ話シタガ、過去ニ一度人間トがいだーノ共生ガナリタッテイタ小サナ村ガアッタ話ダ」


「…ああ、確か羅刹道成って奴が暮らしてたらしい村の事だろ?」


「そんでもって、そこでガイダーの一人が村民を狂わせて殺し合いをさせてその村は全滅した……でしたよね、兄貴?」

俺と幹太の二人が、ゼノン様の話の一部を思い返す。


「ああ。それと、その男にだけはゼノン様……あなたの持つ能力[消去(delete)]が効かなかった」


「だから、私達人間の手でなければ止める方法はないとあなたはおっしゃったんですよね?」

俺のそばにいたあかりも、その会話に加わるがとても複雑な顔をしていた。


「あかり」


「シアン、私は…」


「分かってる…分かってるよあかり?私はあなたと仁が幸せになってくれる事を優先した訳だし、永遠の別れになるわけじゃない。もちろん、実際は簡単に吹っ切れるかどうか自信はないんだけどね!

ただ、過ちを犯してた闇ガイダーに関してはきっと好きな相手に気持ちを伝えられなくて、苦しくてたまらなかったんだなって考えちゃうと、少しだけ気の毒に感じてる……

思った事を相手に伝えづらい立場にいると、ガイダーでも人間でも気がおかしくなるものだから」


「シアン…」


「もう、仁までそんな悲しそうな顔して見てんじゃないわよ⁉︎とっととあのデカい奴を止めに行きましょ!……ゼノン様、もしよろしければ一緒に来て下さいませんか?本当は伝えたい事があったのではないでしょうか」


「…ソウダナ、我モ大事ナ事ヲ道成ニ伝エテオカネバナルマイ。[アノ時]ノ事ヲ」

ゼノン様はそう呟くと俺達の進もうとしている方向へと視線をうつし、しばらく眺めてから更に一人ごとを呟き始める。


ちょうど俺は、その時の言葉を聞いてしまった。


「道成……オ前ノ中デオ前ヲ救オウトシテイルきゅーノ事、マダ気付イテイナイノダナ?我ガ必ズ気付カセテクレヨウ。

ソレガ我ガオ前ニシテヤレル、精一杯ノ罪滅ボシダ」

ゼノン様は呟き終わると、すぐ暴れている奴の所に行く為大きいゲートを出現させた。


「デハ、行クゾ」

俺達はゼノン様の後を追う格好で、次々とゲートを潜っていく。これ以上悲しみの連鎖を広げない為に…



ちょうど禅内仁達がマスター・ゼノンに先導されながら次元ゲートを潜り始めていた頃、須上直毅と相田明音は善戦しているかのように初めは見えていた。


だが、現在は劣勢に立たされる羽目になっている。何故ならば……


「がああぁ~⁉︎」


「いやぁ~⁉︎お願い直毅!正気に戻って‼︎」

道成の心臓部分に向け、炎剣で斬りかかろうとしていた須上直毅。だがその前に、かつてエージェントの地下基地で一人の男が闇の霧を吹き出した物と同一の霧が彼に向かって放たれた。


それを浴びた途端、相田明音へめがけて炎剣を振り回しながら突っ込んでくる。


「フハハハ…ソウダ、ソノ調子デ殺シアエ‼︎カツテ私ガ味ワッタ絶望ヲ、オ前達ニモ教エテクレル!」

なんと!道成は闇の霧を利用して、須上直毅の心を犯してしまったのだ。


「ひぃ‼︎」

水で作られた弓と矢を交差させて攻撃を防いだり、大振りになっているすきに逃げ惑う事をひたすら繰り返す相田明音。


その弓矢もついには蒸発してしまい、現在彼女は丸腰になって全力で逃げていた!


「やめて直毅!やめてー⁉︎」


「がぁ~‼︎」


「誰か…助けて~‼︎」

死に物狂いで空をかけて逃げ回る彼女の姿を、ゲートから出てきた禅内達は目の当たりにした。



「相田が須上に追いかけられて助けを求めてる?…何故か嫌な予感がする!」


「行って仁!早く‼︎」


「禅内仁、我モ行クゾ‼︎手遅レニナル前ニ止メルノダ!」


「了解!……シアン」


「私は大丈夫…みんなのそばにいるから!」


「おう…みんなはこのまま身を守りながら来てくれ!」


「行け禅内!さっさと終わらせるぞ」


「仁君、シアンは私達がそばにいて守るから安心して?」


「仁兄ちゃんならどんな相手だって絶対大丈夫!」


「仁さん!私達もすぐ追いつくから‼︎」


「兄貴、早く!」


「…おう!行ってくるぜ」


「道成ガ放ッタ闇ノ霧ハ我ガカキ消ス!アノ娘ヲ襲ッテイル男ヲ抑エテオクノダ‼︎」


「分かりましたよゼノン様…ふっ‼︎」

一気に跳躍した俺はアイスロードを展開し、これまでシアンを連れていた時よりも数段早い速度で須上と相田、二人の場所へと高速移動をしていく。


それに続くかのように、ゼノン様は転移で一気に道成の前にその姿を現した!


「ガァ~‼︎」


「キャアーー⁉︎」


「待て須上‼︎」

俺はギリギリ相田と須上の間に割り込んで、素手で直接あいつが使う炎剣を掴んだ。


「⁉︎」


「禅内…君?」


「よぉ相田!無事みたいだな?須上の目を覚ましてやりたいから、ちと手を貸してくれ。」


「う、うん!ありがとね禅内君…直毅、お願いだから元に戻って?えーい‼︎」

無事助ける事はできたか。相田が水の膜でこいつを包んでるけど苦しそうにしてはいないし…息はできてるんだよな?


まあとりあえず一安心だな。あとはあちらの番か…



「オノレ、ますたー・ぜのん‼︎私ノ故郷ヲ一瞬デ無ニシタ、憎キ奴メガ‼︎貴様ダケハ……」


「ソウダ、我ハオ前モロトモニ[アノ村]デ起キタ惨事ヲ消去シヨウトシタ。

ドレダケオ前達人間ト我ガ子デアル[がいだー]ノ共存ガデキテイタ村人デアロウト、再ビオ前達人間ハ我ノ子達ヲ殺シカネナイト当時ハ考エテイタ。

ダカラ、ソノ贖罪ヲスル為我ハココニイル……ムン!」

マスター・ゼノンは須上直毅の体を覆っていた黒霧と、その源である道成の体に残留していた闇属性のみを無効化した!


「グガアァー‼︎…ぬ、抜けてイク!長年私ガ集めてキタ闇の力がっ⁉︎」

道成から溢れる闇の力を無効化したマスター・ゼノンは、強い光に包まれて怯えていく道成の様子を見ながら静かに近づいていった。


「道成、オ前ガ我ヲ許サヌノナラソレデ構ワン……ダガコレダケハ伝エテオキタイ。

オ前ガ死ンダト思ッテイタ光属性ノ我ガ子、[きゅー]ハオ前ノ中デ今モ生キテオルノダ」


「な…に?キューが生きていた、だと?」

巨大だった道成の体は一回りも二回りも小さくなっていき、人としての原形を取り戻していく。

それは、彼が自身の体を覆っていた黒い霧…つまり闇の力が抜けた姿だった!


「ソウダ。オ前ノ命ヲ繋ゴウト自ラノ全テヲモッテ[力]ヘト変エタ……結果、オ前ノ魂トきゅーノ心ハ離レナイ。タダ、オ前ガアノ娘ニ会エルノハ死ヌ時ノミ」


「そうか、キューに会うにはそうすれば良いのか!ふ、ふふふ……ほーほほほほほ‼︎」


「⁉︎」

なんだ、急に変な笑い声をあげ始めやがったが何を…


「ムゥ⁉︎禅内仁、避ケヨ‼︎」


「どうしたんです?ゼノン様……え?」

俺はマスター・ゼノンの声に反応するも、奴の……羅刹道成から放たれた[見えない刃]によって腹部を切断されてしまう。そのことに俺が気付くまで、少し時間がかかった…


「あ、あ……てめ、え」

俺はアイスロードの上で踏ん張り続けることができなくなり、真っ逆さまへと落ちていく!



「ほーっほほほほ‼︎これで私を殺したくなっただろう?私にはもう許しなんて必要ない!

もう会えないと思っていた彼女には死ななければ会えないと言うのなら、私の生きる価値などこの世界にはとっくにないのだ!」


「道成…コノ、馬鹿者メガ⁉︎」

マスター・ゼノンは激しく怒り、消去が使えない為全属性の力を道成に向け炸裂させていた。


「禅内君‼︎私は絶対あなたを死なせたりなんかしない…だから、ちょっとだけ[この中]にいて!」

まだ地上に降り切ってないなか、相田明音は片手で水に閉じ込めた須上直毅を持ちながら、空いた片手で禅内仁にめがけて柔らかい質の水膜を打ち出す。


彼を優しく包み込むそれは、ゆっくりと静かに降下していった…


「「仁(君)‼︎」」

シアンと富士野あかりにフロット。3人は空から降りてくる禅内仁の元へと急いでかけていき、その後ろからも犬吹家と端水幹太達がそれぞれのガイダー達を連れて走って来る!


「仁、仁‼︎しっかりして!目を開けて⁉︎」


「仁君‼︎い…いやぁ~⁉︎」

彼を包んでいる水膜は血が充満しているからか、真っ赤な色に染まりきっていて辛うじて彼の顔だけが見えている……そんな状態だった。


シアンとあかりはひどく取り乱し、必死に叫ぶだけしかできない。


「何事だ‼︎」


「ふぇっ⁉︎」


「何?何⁉︎」

そんな時、水膜の中で意識不明に陥っている禅内仁の体から3人の霊家族・菅原厳蔵、姫野、ろく助が勢いよく飛び出してきた!


「「きゃあ⁉︎」」

これにはさすがのシアンとあかりもビックリしたようで、思わず大声で叫びながら後ずさりをしてしまう。


「厳蔵達じゃないか!なんで揃って兄貴の中にいたんだよ?」


「幹太か…いや実は、お前達が見ていた[剣道]と言う競技の前から不穏な気配を感じ続けていて、ずっと気が滅入っていたのだ。

なので、仁殿の中でしばらく休ませてもらっていたのだが急に締め出されてな?一体何がおき……仁殿⁉︎」


「嘘、仁さんが‼︎」


「仁兄ちゃんが死にそうだよ⁉︎ねえみんな、何があったの!」


「……あの男の仕業よ」

あかりは目つきを鋭くして、上に浮かんでいる二つの存在に注目する。


今も、マスター・ゼノンから繰り出される全属性の力を弾幕として繰り出されていく攻撃が続いている。


彼は不敵な笑みを崩さぬまま、避けたり防いだりしていた!


「人間、なのか?おぞましい力を放っているようだ……仁殿の容態はかなりまずい事になっている。

俺達が締め出されたのは恐らく、中に入るだけの生命力が削ぎ落とされた為か!」


「あなた、ずいぶん落ち着いてるように見えるけど仁兄さんを助ける方法はあるの?」

姫野は厳蔵の顔を不安そうに前屈みで見つめながら尋ねてきた。


「仁兄ちゃんにはまだ、生きてて欲しいよ!」


「そうだなろく助……助かる方法はあるにはある。だがこれは禁忌の術で、俺達を含めた今日命を落とした全ての魂が一つにまとまって、瀕死の人間に[力]として注がねばならんのだ!」


「つ、つまり私達は二度と、仁兄さんには会えないの?私達あの世に行っちゃうの?」


「……そうだ」

厳蔵の重い言葉を聞いて心が沈んでいたかに見えた姉弟だったが、しばらくして明るい顔に変わっていく。


「…そっか!じゃ、僕たちが今ここにいる意味がちゃんとあったんだね?仁兄ちゃんがそれで助かるなら、僕は平気だよ!」


「私も!仁兄さんにはこれから幸せになれるだけの時間がちゃんとあるんだから。私達はいつまでも、この世に残っていたらいけないし!」


「ありがとう二人とも……ああ、やろう。俺達のできる事でこの人を助けるんだ!一緒に来てくれ、姫野!ろく助‼︎」


「「はい‼︎」」

幽霊家族達は、今日命を落とした全ての死者達が黄泉国神社へと集合していく事を確認した後、霊体である身ですら震えが止まらない感覚を必死にこらえて飛び立っていった。


「あ!行っちゃった…」

佳与は少し名残惜しそうに彼らが飛んで行った方向をしばらく眺めてから、禅内仁に視線を向ける。


「佳与、姫野達にろくにお別れ言えなくて残念な気持ちではあるけど今は…」


「うん、分かってるよリオーネ。今の私達がここでできる事をまずやらなきゃ…だよね?お姉ちゃん!」


「そうね佳与!いつか遠い未来に、きっと私達も会えると思う……だから今は仁さんの事をみんなで守ろう‼︎私に力を貸してミューラ!一緒に守りたいの!」


「言われるまでもないわよ真矢!あたいだって彼がいたからあなたにも会えたし、リオーネとも再会する事ができたんだから。きっちり守ってやろうじゃない‼︎」

真矢とミューラは互いにハイタッチの格好で触れると、海のような藍色の光に包まれ一つになっていく!


「俺も、プレッシャーばかり浴びせまくってくる両親の事が嫌になってグレてる頃、周りのことなんてどうだって良いと考え続けていた!

でもそんな時兄貴に会えて、人の身の上話を真剣に聞いて涙まで流してくれた。そんな心が広い人を守れないまま生き延びたって嬉しくもなんともねぇ‼︎だからロル、俺と一緒に…」


「分かってる。もう何も言うな」

ロルは周りと同じパターンになっていく所を内心苦笑いで連想しながらも、自身だって禅内仁と言う存在に助けられている事を忘れた事などなかった。


だから、ロルはすっと片手を伸ばして端水幹太が伸ばしてきたその手に触れ、共に一つとなった。


「みんな!」

あかりは、自分の目の前で新たな絆の覚醒を果たした二人を見て驚きと喜びに満たされていく。彼らも自身の恋人・禅内仁を慕っていたのだから…


「ここはお願いしますね?あかりさん!」


「俺達はあいつに一泡ふかせてやりたいから行く…兄貴の事を頼みます‼︎」

二人は初めての変身だというのに、一瞬で空を飛ぶコツを覚えてマスター・ゼノンの加勢に入っていった。


「お姉ちゃん、幹太兄ちゃん……」


「佳与、今俺達はここで禅内を守る事を考えるんだ。せっかくいい奴に変わってくれたこいつを、見殺しなんてしたくねえ……」


「ご主人様…」

ティーアは真矢と佳与の父・豪太の悲痛な顔を眺めているうちに、自身が一度も持ったことがなかった例えようがない激情に突き動かされそうになっていく。


これがどんな気持ちのものなのかは本人もよく知ってはいたが、受け止める事をまだ戸惑っていた。


「ねぇ仁、見てよあれ……みんなアンタの為に力を合わせてくれてるのよ?だから早く目を覚ましなさいよ!じゃなきゃ私…絶対許さないんだからね⁉︎

人間を好きになったのはこれで二度目だけれど、アンタはバカなくせに変だと思うくらいお人好しで!周りのみんなも巻き込みながらどんどん明るくしていっちゃってさ‼︎

そんなアンタが生きててくれないと、私だってすっごく悲しいよ……だから!お願いだから目を開けて?仁ー‼︎」


シアンは願う。愛しい存在が命を落とさぬように声をかけながら。


それが、今の彼女ができる精一杯の事であった……

羅刹道成によって放たれた斬撃のようなものが禅内仁に当たり、彼は出血多量により瀕死状態へと陥ってしまった!

水のカプセルに包まれた彼はかろうじて命を取り留めてはいるが、このままだとすぐ目は覚めそうにない。


禅内仁は無事に、復活することはできるのか⁉︎


本日もこうして読んでくださっておられる方々、誠にありがとうございます!残すところあと2話分ではありますが、どうか最後までお付き合いいただけると幸いです。

今度の更新は、7月9日の正午12時ですのでどうぞよろしくお願いします。

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