闇の力を欲する者
日本のとある社内…その奥には薄暗い部屋があった。
ろうそくの小さな明かりに照らされて、屏風に書かれている龍虎の絵が陰と陽に分かれているかのように光が仕切られている。
その部屋を進んでいくと、更に地下深くへと続く階段が姿を現した。
奥からは、様々な叫び声が重なり合って聞こえてきて来る…
ガイダー達「出して‼︎僕たちを帰してよ~!」
「やだ、やだよ‼︎もうこんな怖い事しないで⁉︎…きゃあー‼︎」
ガイダーが一人分入る程の容器の中で、全属性の彼らは閉じ込められなんらかの実験に使われて続けていた!
その姿を不気味な顔で笑い続ける神主の男が、一人満足そうにしている。
「ホホホ!良い眺めですねぇ?小人どもの嘆き悲しむ姿を見るのは実に心地良い…安心しなさいあなた達。間もなくあなた方の肉体も意思も私と一つになるのです!
そうすればあなた方の主である憎きマスター・ゼノンを超える情報統合体へと進化して、この世の新たな秩序を司る役割を担えるのです‼︎
進化を無事終えた暁には、この私が公平な裁きを行えるよう導いてあげましょう‼︎」
「嫌だ‼︎出して、出してよぉ~⁉︎」
「ええい黙れぇ‼︎この私に歯向かうなぁ⁉︎」
神主は札のように見える光の束を[何もない所から]出現させ、容器に入れられていた闇のガイダーを攻撃した‼︎
「ぎゃあああ‼︎」
容器に入っていた闇ガイダーはその中で気を失ってしまう…
「ひっ、ひぃー⁉︎」
「安心なさいあなた達。彼はまだ死んではいません…いえ、死なれては困るのですよ!この私の大事なエネルギー媒体として最終調整をしているのですから。
もっともあなた方はその為に必要な[素材]ですけどねぇ?さあ皆さん、仕上げと行きますよ?準備して下さい‼︎」
集団「おう‼︎」
数多の容器に拘束された状態で入れられているガイダー達が、神主の向かいに見える年代物らしき巨大なツボの中へと、一人ずつ放り込まれていく…
「ぎああぁーー‼︎」
彼らが入れられていくたびに、何かで肉を切りつけるような痛々しい音が中から響いてくるのとガイダー達の断末魔と共に、自ら持つ属性の光を壺の外へと放っていくのは同時だった。
「ほーほっほっほ‼︎もうすぐですよ皆さん!間もなくこの腐った日本を手始めに、世界中に存在している小人…ガイダー達を一層できる‼︎かつて私が受けた卑しめを、彼らの嘆きと収束された力を使って思い知らせてやりましょう‼︎」
「おおおーー‼︎」
(おめでたい頭しか持ち合わせていないこの国の総理大臣どもは私には都合のいいただのコマですし、実験のマウス代わりに呼び寄せた愚かな若者には、ここにいるガイダー達の死骸から抽出した[あの薬]を渡して力を得る薬と言ってチラつかせ、差しあげてきました。
薬に関しては副産物に過ぎませんが、これらを利用すればこの国にいる反逆者達を一人残らず私が裁く事ができる‼︎)
「他にも海外に行っていたであろう、どこぞにある会社の社長さんに薬を渡したような気がしたのですが、いまいちよく覚えてませんねぇ?」
彼は集団には聞こえない程度の声で、一人呟いた。
「お頭!俺達はあんたの要求通り今日までこいつらを拉致って来てやったんだ。いい加減報酬をくれねぇと、俺らの祖国…中○人民国に大旗振ってかえれねぇよ!わはははは‼︎」
現代の小人討伐団と呼ばれている彼らの正体は、外国の強盗殺人犯達だった‼︎
「おっとそうでしたね!古の信徒達が次々と脱退して一人もいなくなってしまったこの現代社会で、あなた達の働きには長い間お世話になりました…どうぞこの奥にある地下室へと全員で降りて、好きに取って行って下さい。」
神主は正面にある大壺の右脇に見えている細い道を指差すと、彼らは全員嬉しそうに駆け下りていく。
そしてその直後…カチッ‼︎と、何らかの仕掛けが作動し始めた!
「うおおお⁉︎」
「ぎゃああぁ~~⁉︎」
来た道の通路が完全に塞がれ、階段だった所は滑り台のように平らな滑りやすい斜面となる。
彼らは一人残らず、地の底へと落とされていった…
「ほーほほほほ‼︎約束通りちゃんと対価は払いますよ?黄泉の国でしっかり受け取って下さいねおバカさん達!
さて、そろそろ出来上がった頃でしょうか?早速飲んでみるとしましょう…」
神主はガイダー達が葬られていった大壺の下に行き、水道の蛇口らしき物をひねると中から七色に光液体が出てきてそれを飲んだ。
「ほほほほ‼︎これは…なんと素晴らしい⁉︎」
まるで甘美なものを口に含んだかのような表情を浮かべる神主の体のあちこちが、まるで属性の色を表したかのような部位へと変わっていく!
神主は高笑いをしながら、更におぞましい形相に変貌していった。
「ブルブルブルブル⁉︎」
依代として残された闇属性のガイダー…ベルゼルと不要な者として離れた所に隔離されていた無属性のガイダー達は、その光景を目にして震え続けていた。
「グッ!クゥ‼︎オノレ道成⁉︎我ガ子ラヲヨクモ‼︎…ダガ、ア奴二ハ何故カ長年試ミテキタ我ノ[消去]ガ一切効カヌ!ドウスレバ良イノダ!」
一人、拉致されて実験に使われていくガイダー達が無残な姿にされ続けていくのを阻止すべく、今日まで足掻き続けていた彼らの親…マスター・ゼノンは熱処理が追いつかない程に怒りの感情が暴走していた!
マスター・ゼノンが口に出した人物名、[道成]とは一体何者なのだろうか?
時を同じくして、エージェント達の集う会社の地下へとたどり着いた禅内達。
須上達が迎えに来てくれたハイエースは、彼らを再びガーディの作戦室まで続く地下道へと誘った…
着いた先で出迎えてくれたのは、光風指揮官と幽霊夫婦達だった!
「ようこそ禅内君達。富士野も久しぶりに会うが、その様子だと元気そうで何よりだな?」
「ど、どうも…お久しぶりです光風指揮官」
「仁兄さんこんにちは!」
「仁兄ちゃん久しぶりーー‼︎」
「仁殿、元気そうだな。」
「お邪魔します光風指揮官…しばらく姿を見なかったが、姫野達もまさかここに来ていたとはな。」
「あははは…実は私たち、明音さんの研究に協力する事になっちゃって!」
「ああ、俺達が当時いた時代の事や事象等を毎日言わねばならぬ任務となったのだ。
いくら死んではいても、こうも毎日聞かれ続けては流石に疲弊するぞ…」
「僕も幽霊なのに眠いよ~」
「そ、そうだったのか。それは大変だったな…チラッ」
「うっ‼︎…てへへ」
「明音、姫野ちゃんに教わった可愛く言う真似をしたってダメ…(殴)グヘッ⁉︎」
この二人、しばらく見ないうちに飽きないほど面白いやりとりをする様になったな…
「ははは!二人ともその辺にしておきなさい。今日は彼らが相談できる場所を提供するのだからな……須上君達二人は既に知ったみたいだが、よければ私にも聞かせてくれぬか?禅内君達」
「仁兄さん、私達も聞きますよ?」
姫野の言葉に、旦那の菅原厳蔵とろく助もその場で頷いてみせる。
「ありがとうございます指揮官。姫野達も!」
「「「幽霊と普通に喋ってる⁉︎」」」
息ぴったりな反応と台詞を口に出した相沢、日笠、宇佐路の3人であった。
その後、歩きながら3人に幽霊夫婦達の紹介をしつつ俺達が作戦室に着くも誰もいなかった為、指揮官の許可を得て一番座りやすい下の段に位置する机を利用させてもらった。
「さて、早速だが聞かせてもらえるかな?」
二人は見合って頷くと、俺達が聞いた内容を光風指揮官と幽霊夫婦達にも全て話した。
「そうか…すまない相沢さんに日笠さん。私どもも日夜その集団達の行方を追ってはいるが、未だ手がかりが掴めんのだ」
「小人討伐団…」
「厳蔵さん?」
「貴方、どうかしたの?」
「ん?何か心あたりがあるのか?」
厳蔵の顔が不安を隠しきれない表情のまま、俯いていた。
「あ、ああ。実は俺がまだ祈祷師として仕えていた時の話なのであるが…その呼び名の軍団がいたような気がしたのだ。
もし、この時代でも同様の呼び名であるならば、恐らく国の政に長い年月をかけて存続されているはず」
全員「⁉︎」
「ま、待ってよ貴方‼︎それってつまり…」
「……そうだ。下手をするとこの国そのものと戦う事になるだろう」
「…自分達が暮らす国の政治家達と戦うかも知れんというのか私達は!」
これには光風指揮官も、動揺が収まらない様子であった。
「禅内君。すまないが今日のうちに考えを出せそうにない…こちらから連絡するので、良ければまた後日来てもらえないだろうか?
他のクルー達にもこの件は伝えておかなければならないからな。」
「は、はい」
「あのあの‼︎私達のガイダー達はこの国の重要な場所に収容されているって事ですか⁉︎助ける事はできないんですか‼︎」
「相沢さん、我らとて助けたい…だがまずは下調べをしていかなければ始まらんのだ!」
「では光風指揮官殿‼︎その時まで指を加えて待つしかないと言われるのでござるか⁉︎拙者は否‼︎」
「理乃…」
宇佐路圭は心配そうに日笠を眺めてるが、正直まだ何もしてあげられないだろう。国と渡り合うのなら、俺達一部の人間だけじゃダメだ!
「ならまずは、仲間集めもしていかねぇか?力をつけるのも情報を集めるのも重要だが、程度が知れているだろ?」
「仁君の言う通りかもね!でもどうするの?私達が散らばって仲間集めしてるうちに、この中の誰かがその軍団に捕まったら連携も難しいじゃないかな?」
「あ、あの!マスターに皆様。わたくしからも一つよろしいですか?」
「ん?どうしたのだルウェンよ。名案でもあるのか?」
「名案とまでは行きませんがわたくしの通っているガイダーも働いているメイド喫茶で、もしかすると情報が手に入るかも知れませんの。
いつからか、警察でも取得できない話題を交換する場所に成り代わっております……ただ、都市伝説並の情報が主ですが」
都市伝説かぁ…まあ[火のないところに煙は立たぬ]というし、探す価値はあるかもな。
「どうする仁。試しにルウェンの通ってる所に足を運んでみる?私としてはやっぱり行きたくないし行って欲しくないんだけど…」
どこかプリプリと怒りかけているシアンを見て、あかりは同類を見る目でシアンの事を静かに見つめていた。
「お、俺もまあ男だしそんな店を聞いて気になるのは確かだが行かねぇよ‼︎もし行ったらお前ら、すごい目で俺の事見てくるつもりなんだろうが!」
「ひ、否定はしないわ…」
「右に同じく!」
「ふふ、富士野もなかなか一途であるからな?禅内君は遠慮した方が良いだろう。
その件については若手の男性エージェント達に調査依頼を命じておくので、そちらは好きにすると良い」
富士野あかりは無言で顔を紅潮させていた。
「ありがとうございます指揮官!それだと、俺はしばらくどうしとこうかな?」
「…禅内仁殿!一つ頼みがあるのでござる。」
「ん?どうした日笠。」
「せ、拙者の鍛錬に付き合ってもらえないだろうか?」
「理乃⁉︎」
「日笠さん⁉︎」
「何で俺なんだ?正直剣術とかはさっぱりなんだが…」
「無論承知。だから、其方が身につけているその[属性]と呼んでいる攻撃を拙者に向けて打って頂きたい!」
「ななな⁉︎何考えてるの日笠氏!」
「先ほどの話を聞いて拙者は思ったのだ。最悪の場合、国に守られているとなればガイダー達が持つ異能の力で屈服させられるのではないかと…
恐らく、これまでに捕まった全てのガイダー達はその能力を利用される。そう感じてならない‼︎」
「つまり、属性攻撃をされても対処できるようにしておきたいと…そういう事だな?」
「その通りでござる!」
「…光風指揮官に皆。俺から一つ良いでしょうか?」
「なんだね?須上君」
「この会社にはエージェントの特殊訓練所みたいなのがあるらしいですが、そこは使えないのですか?」
「使う事はできるとも!ただ使用人数に限りがあって大人数では難しい。」
「あ!あそこですか光風指揮官。私とフロットがいつも使わせてもらっていた…」
富士野あかりはどうやら、心当たりがあるようだ。
「そうだね。君は人一倍頑張ろうとして丸一日使っていた事もあったかな?フロットと同じスタイルで共に戦えるようにと…」
「あの時のあかりは切羽詰ってたよねぇ!どうする禅内仁、試しに覗いてみるかい?」
あかりは少し拗ねた顔をしているが、フロットは気にする事なく俺に尋ねてくる。
「そうだな、いっぺん見させてもらうとするか!モグラの事件で世話になった羽田さんにも会っておかないと。」
「よし分かった。それでは、一緒に来ていただこう!」
俺達は光風指揮官の案内に従い、後に続いて移動した。
「へぇ、これはなかなか楽しそうだ!」
「ちょっと仁君楽しいわけないでしょ!生き残る為の力をつけるのに必要なのよ?ここのトレーニングは!」
「お、おう。悪い」
俺達の目の前にあるのは、恐らく水族館などでも使われているかのような分厚い強化ガラス…その中側に様々な地形を模したブースが備え付けられていたのだった。
だけど何故か俺の目には、アトラクションにしか見えないんだがなぁ?
「あー…ごめんねあかり?仁はもう呆れるほどトラブルに首を突っ込んできちゃったせいか、異常事態にならないと危険と判断できないみたい。」
「兄貴らしいな?」
「修羅を生き抜いた御方であらせられるか‼︎ならば尚更、相手をお願いしたく存じます!」
「ちょっと日笠氏⁉︎」
「まったく、変わった奴がいるもんだ!別に良いが少しだけだぞ?俺はそんなにスタミナがあるわけじゃないからな。」
「アンタが一番の変わり者なのよ仁!」
え周りの彼らも無言で頷いていた。
「へへっ!そういうなよシアン。とりあえずちゃちゃっと始めようぜ?」
シアンと他の者達は「やれやれ…」と言いながらもついて行き、富士野あかりから扱い方を各自が教わることとなった。
「ふふ、彼はこの状況下でもブレないな。エージェントの立場で見るとやはり惜しい人材だ…」
「そうですね…正直、俺にとっても純粋に羨ましい存在でしかありませんよ。なんせこれほど多くの仲間に親しまれてるんですから!」
「ふふふ!どうされますか須上様?あなた方もいつでも[絆の覚醒]で変身できるよう練習をしてみては…」
「そうだな…と言っても、まだ研究の途中なので彼らが終わる頃にもう一度戻ってくるさ!ルウェンも、他の人達と調査に出るんだろ?気をつけて。」
「間違っても、また変な衣装を持って帰ったりしないでよね‼︎」
離れていてもはっきり聞こえてくるのだが、相田明音が念を押すように強い口調でルウェンに訴えている!
「や、やですよぉ明音さん!わたくしでもそこまでする余裕はありませんって……多分(小声)」
「んん?今何を小声で言ったのかなぁ?ニコッ」
「イ、イエス・マム⁉︎ではマスター!行って参りますー‼︎」
「あっ、逃げた⁉︎」
「ははは!いやぁ、君達が来てからというもの毎日が面白くなったよ。」
「「指揮官‼︎」」
一方真矢と圭はそれぞれ目で合図をしあい、空いているブースに二人で入っていく。
「私達もせっかくだから、今の実力を確かめ合っとこうよ真矢!」
「そうね圭‼︎本気で行こう♪」
「もちろん!手加減したら承知しないからね?…だぁ~~‼︎」
「はあぁーー‼︎」
二人が持っていた竹刀が激しくぶつかり合っていく!
その隣のブースでは佳与とリオーネに、富士野あかりとフロットが戦い方の指導を行っていた!
「みんなやる気いっぱいね仁!どうする?相手は女の子…それも二人よ。」
目の前に立ち向かっていたのは日笠だけではなく、相沢もだった!なんでも、昔二人で編み出した技を受けて欲しいそうだ。
「俺の防御力はそんなに高くないはずなんだがな?まあ死なねぇ程度に動き回るか!シアンもできたら戦うのを手伝ってくれねぇか?」
「しょうがないわね!少しだけよ?」
「サンキュー…じゃ、行くぜ二人とも!」
「いざ‼︎」
「じじ、尋常に勝負ーー‼︎」
彼らは戦闘訓練を通して、自身だけでは気づけない課題を見つける事ができた。
強大な相手と戦わなければならない事も想定に入れて、国政府を盾にしているその悪事を目論む存在に立ち向かう為に…
なんかどんどん、熱い展開になってきそうな予感がしてきましたねぇ!
今後どうなるのか、目が離せなくなりました!
次回の更新日は、6月26日土曜の正午0時です!




