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6章 温泉内でのスカウト

空港での一件以降、俺はひとまず鳥取のお土産として買ったいくつかのお菓子を皆と一緒に食べるため、団体用のバスに乗る。


その上で、兼ねてより計画していた大江戸温泉物語へと場所移動する事になった。


「ピトー…」


「ピトー…」

案の定、俺はシアンとあかりの二人に挟まれるといった[両手に花]と思える光景なのだが……当人の俺としては、すっごく落ちつかねぇ‼︎


「あっ、そういえば禅内。お前動画に映ってたよな?」

須上は自らのスマホを俺に向けて見せてきた。


[空を駆ける男]というタイトルで、ずっと再生数が上がり続けている…


「マジか…須上達も見てたのかよ。こん時はあの旅客機についてるエンジンっぽいのが燃えてて俺の上を飛んで過ぎてたんだがよ、そしたら目の前でそのエンジンが爆発したんだ!」


車内の全員「ウソッ⁉︎」


「嘘じゃないっすよ!とっさにエンジンの爆発でかけちまった右翼の一部を俺が氷で補強したんで、落下せずに済んでホッとしたんです。

そしたら逆に俺の方が急にふらついて、真っ逆さまに落ちたんすから!」


「仁、それってもしかして……MP切れる寸前だったでしょ‼︎」


「…多分そうかも知れねぇな。アイスロードを長時間使ってたせいだろうか?」


「仁兄ちゃん無茶しすぎ‼︎」


「佳与の言う通りよ仁様‼︎ただでさえあのモグラ討伐の時の疲れだって、そのまま残ってたんだよ?」


「わ、悪い。かと言って何もしないままにはいかなかったわけだし…」


「禅内君の勇敢な行動は正しく称賛に値する!だがね、私情のもつれとはいえそのまま帰宅するだけならそれは当人の問題故に、私も特に何も言わない。

ただ、いくら成り行きだからと言って西にある鳥取まで遠ざかり、そこで命を散らしかねない真似をするのは正直いただけないな?」


「……すみませんでした」

光風指揮官の指摘に、俺は謝る他何もできなかった。


「で、でも仁君。なんで空から落ちたのにこうして生きていられたの?」


「それが実は……あれ?なんでだっけ。なんか夢でも見てたような記憶しかない」


「分からないの?」

シアンも不思議そうに聞いてくる。


「すまねぇ、なんかみすぼらしい格好の男に助けられた感じの夢なんだがな?

確か夢の中でその人から聞いたのは[別次元]って言葉と、後はゲートっぽい水の膜に包まれた感触があったような…」

何故だろ?そんだけ思い出せる夢のはずなのに、記憶が曖昧になっていってる気がする。


全ガイダー達「⁉︎」


「仁…それって⁉︎」


「ん?なんか知ってるのか?」


「…禅内様?シアン様?差し出がましいようですが、説明させて頂いてもよろしいでしょうか?」


「ルウェン…」


「あなた様は恐らく、高次元の世界から恩恵を受けた方なのかもしれません。でなければそのゲート……本来マスター・ゼノン様が常に利用されている力には、干渉すらできませんから。」


「そういやフロットも時々俺の事をそう言ってたよな?どんなものなんだよそれは。」


「元素の地…そこはこの物質が存在するこの世の全てを形作る、始まりの世界です。あなたはそこにいたのではありませんか?」


「ああ、確かにいたな。その前に当時の俺はおっさんの指示通り、壊れたブラウン管テレビを棄てるために運んでから一休みしてたんだ」


「そうですか。では恐らく見たことのないデザインのスマホらしき物に、あなたは触れたのではありませんか?」


「触れたぞ。なんだか画面の真ん中が赤くて小さな光を放ってたから拾って触ろうとしたんだ。

そしたら、ルウェンの言うその元素の地っていう何も無い真っ暗な所に俺はいた。」


「……(まだ私がゼノン様の所にいた時、確かに誰かに向けて[情報の可視化]を告げたことはあったけど、あれは仁だったんだ。)」

シアン、何か一人でつぶやいているようだが気のせいだろうか?


「やはりそうでしたか。ではそこで何らかの力を受けたのではありませんか?そうでなければ、あなた様の力の根源は説明致しかねます…」


「力かぁ…そう言って良いのかどうか分かんねえけどよ?シアンも俺に初めて会った時の様子はもちろん覚えてるよな?」


「忘れる訳ないじゃない。あんなにいかつい目をして暴言しかはかなくて謝りもしなくて、その上はっずかしい変な決めポーズをとってステータスを開こうとしてたのを指摘しただけでへこむ姿なんて、一生忘れられないわよ!あはは‼︎」


「うわぁ~⁉︎ステータスポーズの事まで言うなぁ‼︎」

顔から火が出そうなくらい、恥ずかしさで慌てふためく俺の姿を見た左右の二人と全員から、雪崩みたいな音量の笑い声が車内に強く響き渡った‼︎


全員「ははははははは‼︎」

穴があったら、即座に入りてぇ~⁉︎


「ウフフフフ‼︎わたくしもその場面を見れたらと思うと、大変愉快ですわ!…コホン。では、改めて話の続きをお聞かせ願いますね?」


「うぅ…今シアンが言ってくれた通りの酷い態度のまま、マスター・ゼノンに食ってかかっちまったんだよ。そのせいでシアンと同じ雷にうたれちまった!」


「怖いもの知らずなのだな?君は…」

光風指揮官から、哀れ目とも呆れ目とも受け取れる眼差しを向けられた俺。


「逆に俺は感心するよ禅内。日本という縦社会でそれをする者は、一人残らず疎外されるもんだしな。」


「私達も、本当は学校時代にそこまで突っかかるくらい意見を言うのもありだったかもね。」


「お前ら…」


「でも、な…」


「そう、ね…直毅」

二人は苦笑いして顔を見合わせた後、俺の方を向いて一言…


「「やりすぎ」」

…ですよねー


「そっか。だからレベル1のステータスしか無かった仁のスキルに、[状態異常耐性+]なんてスキルが備わっていたのね?

確かにそれが無かったらとっくに跡形もなく残ってないし!」


「シアン、あなたもたいがい酷いと思う…」


「そう?もしあかりだったらどうしてたのよ。仁が私の言ってたままのひどい奴だったら…」


「そうねぇ、私のできない仕事を一日中やらせて抵抗できない人間になるまで調教してたか、やめてと懇願するまで殴り続けてた…かも?」


「お前が一番酷いわ⁉︎」


全員「確かに…」


「…てへ♪ごめんなさい。」


「「可愛く(わないで)うな。」」

俺とシアンのツッコミが炸裂した。


こんなやりとりがしばらく続いてから、目標地である温泉施設へと俺達は到着した。


「「着いた~!」」

ネレとエレがはしゃぎながら出入り口のドアから外に出ると、そこの外見はまるで別の時代の建物を少し改良したかのような、不思議な雰囲気を醸し出している所だった。


全員「おおー…」


「なかなか(おもむ)きのある所ですね光風指揮官。こちらには来られた事はおありなのですか?」

鵺雉隊長は隣で見上げている光風指揮官に、問いかけてくる。


「いや、来た事は無かったが時折この場所の広告があった事くらいは少し知っている程度だな。

ただ、この規模の温泉施設を間近でみるのは初めてだ!なかなか壮観な眺めではないか」


「わぁ、この作りの建物を見たの懐かしいね?ろく助。」


「うん!お姉ちゃん。確かこの建物みたいな作りが多かった時代って、僕たちが他の悪霊達と一緒にいたもんね!それで僕たちを殺した奴らの子孫達に恨みぶつけて、八つ当たりしてたっけ!」


「そうそう!それでさすらいのお坊さんに懲らしめられてからは、反省して今日まで大人しくなれたんだよね?」


「さ、流石幽霊…僕たちガイダーとは別の意味で凄いね。」

フロットは最近やっと、富士野あかりから教わっていた幽霊に関しての知識を元に順応し始めていた。


「やっぱり私、この二人がなんで昔殺される事になったのか正直追求したい。」


「…明音、目がすごい事になってるぞ?」

探究心に心躍らせていた相田は、須上の忠告で正気に戻った。


「東京都内にこの日まで暮らしてはいたけどよ、こんな場所もあったんだな」


「禅内……お前は本当に、外へ出た事が無かったんだな?」


「え⁉︎なんで須上の方が泣いてんだよ‼︎…俺はどちらにしても誰かと仲良く話せた事が無かったわけだから、変わらなかったっつの!」


「じゃあ禅内君!大人の今から、ゆっくり楽しんだら良いんじゃない。

ちょうどすくい上げて手に入れるおもちゃみたいなのもあるし、一度に手に入れる数が多い人がそれなりに良い物がもらえるみたいね。試しにやってみたら?」


「私やるー!」

佳与ははしゃぎながら、すぐ側のボールすくいに向かった。


「面白そうね。私もやってみようかな?どうあかり、今回はあのボールの数で勝負をするってのは!」


「良いの?シアン。私はこれでも屋台であの手の遊びはしてたから正直得意なんだけれど…」


「望むところじゃない‼︎」


「「じゃあ早速…」」


「いや待てや」

俺はシアンを片手で掴み、あかりの手首を掴んだ。


「ギャッ‼︎」


「えっ?じ、仁君…」

シアンは驚いて変な声を出し、あかりはもじもじしていたが、どこか嬉しそうな顔をしている気がする。


「二人とも、あれで本気の競争なんかしてたら間違いなく俺も周りの連中も遊びづらくなるだろ?」


「「うぅ…」」


「まずは一度、皆で疲れをとりに行こうぜ?二人とも。」


「「はぁい…」」


「禅内がまるで引率者になってるんだが、俺の目はおかしくなったのか?」


「いえご主人様。残念ながら私も、同じようにしか見えません…」


「ってそこ!おっさん達しれっとひどい事言うなぁ⁉︎」


「以前のお前の言動に比べりゃまだマシだっての!」


「そうですね、マシです。」


「う!反論できねぇ…」


「さあ諸君!そろそろ男女に分かれてそれぞれ会話を楽しみながら、入浴をしつつ日頃の疲れを十分に癒して欲しい。

そして改めて言おう…エンセイモグラ討伐おめでとう!」


全員「はい‼︎」

周りにいた客達は、「何の騒ぎだ?」と言いたげな目線を俺達に向けていた…



・男湯にて


脱衣所から全裸になって浴場へと進む俺たち男連中は、大浴場に入る者と露天風呂に入る者とに分かれる事となった。

俺は露天風呂が気になっていたのでそこを選ぶ。


「禅内君は露天風呂に行きたいのかい?実は私もなのだよ。良ければ一緒しても良いかな?」


「はい。もちろん良いですよ!」


「それはよかった!それと須上君。君も良ければどうかな?」


「え‼︎よろしいんですか?一度とはいえ、私は迷惑をかけたものに過ぎないんですけど。」


「何を言う!君と富士野、そして君の恋人である相田明音さん…三人の活躍も大きかったのだぞ?せめてねぎらう事くらいはさせてくれ。」


「は、はい。恐れいります!」


「やったね直毅!」


「ああ、エンラ!」


「指揮官、私達もご一緒して良ろしいですか?」

見るとそこには鵺雉隊長とネレにろく助、そしてフロットが共に来ていた。


「もちろん大歓迎だとも!」


「ネレとろく助、フロットも一緒か。珍しい組み合わせだがいつの間に仲良くなったんだ?」


「僕たちも本当はさっきまで犬吹豪太さんや端水幹太達と一緒にいたんだよ。でも、ね…」


「あのやりとりを見てたら入りづらかったよー。」


「だよね~?」


遡る事数分前…



「…おお!そうか幹太君。真矢の性欲を満たしてから、更に畳み掛けるかのように満足させたってのか‼︎大したタフさだぜ全く!」


「はは…気を抜いたら俺の方が危なかったんですけどね?」


「そうかそうか。これでようやくあの子の大声での自慰行為が減るんだな…良かった良かった!」

心底安心した顔の端水幹太と、それを見ていた隣で湯に浸かっているロルは、ケラケラと笑っていたのである。



「はっはっは‼︎あいつは本当に、真矢ちゃんの為と言うか自分自身の身を守る為に、彼にはいて欲しいようだな!

今頃は野郎同士で仲良く、サウナ風呂やら五右衛門風呂やらと巡り歩いて話に花を咲かせてんだろうさ。」


「「僕たちどう見ても…」」


「お邪魔だからね。」

なるほど、納得だ!


「そう言うことか。じゃあ一緒に入ろうぜ?」

こうして俺達男衆は、浴場の扉から外へ出て待望の露天風呂へとその身をつける事ができた。


「あ~~。」

こりゃ本当に、気持ち良いわぁ。


「良いですね露天風呂!家の風呂なんかより、何倍も気持ちいい…」


「ははは!そうだね禅内君。そう言ってもらえるだけで、私もこの企画を選んだ甲斐があったと言うものだ!

もちろん、鵺雉隊長もそうだがエージェント部隊達の日頃の疲れを癒すちょうど良い機会だと思う。」


「光風指揮官、あなたのお心遣い…とても感謝致します!」


「うむ!それでものは相談なのだが禅内君。 以前言っていた我が社…電子光学株式会社への勧誘の件、考えてくれたかな?」


「禅内⁉︎確かそこは、お前が辞めた所の筈。いつそんな話があったんだよ!」


「えっとまぁ、フロットの暴走事件を解決した後に少し…な?」

そう言えばそうだったな。うーん…ここは素直な気持ちだけを言っておくか!


俺は少し躊躇うように間を置いてから光風指揮官もとい、社長に返事をした。


「光風社長。とても嬉しいお誘いをしていただいて、大変嬉しいのですが…私、禅内は貴方のご期待に応える事はできません。」


一同「‼︎⁉︎」


「はっ⁉︎ウソだろ禅内‼︎だってお前が一番入りたがっていた会社だっただろうが!」


「もちろん興味深い話だし少しは未練もあるさ須上。だけどおっさん…犬吹店長の所で働いて、客の相手をしてて思ったんだ。

[もっとここで、こんな平凡な時間を過ごして周りの人と交流したい]ってな?

俺はどうも集団で連帯行動するのは苦手みたいだ!」


「ふふっ!まさか私の方が断られる時が来るとはな…だが、これはこれでとてもいい判断をした断り方だ。

分かった良いだろう!ただもし君が困った事や相談したい事ができたら、いつでも連絡をして来てくれ。」


「ありがとうございます。それと、以前はちゃんとお聞きしてなかったんですが、電子光学の研究では主にどんな研究が行われているんですか?」


「そうだな。例えばプラズマの発生条件の研究はもちろん、生物から流れる微弱な電気(主に静電気)を用いて他種類の生物達が見せる反応を確かめる事等も、最近はしているよ。

後はガイダーとその相方が持つ互いの能力を向上させる試験も、同時に行なっている。」


「生物…」

須上は思わず反応してしまったのを俺は見た。なのでせっかくだから、こいつを代わりに推しておこう!


これが今俺なりにできる精一杯の、罪滅ぼしだ…


「生物を使っての研究は正直よく分かりませんからどの道難しいですね……代わりというのも失礼とは思いますが、こちらの須上を入れていただけませんか?」


「な!禅内⁉︎」


「直毅、すごいチャンスだよ‼︎」

まさか自分が!と、言いたそうな顔をして俺を見てくる須上だが、むしろ一番合う仕事じゃないかと思う。


「うむ。確かに実際彼の知識に大きく助けられたのは事実であるな?そして、探究心に溢れている相田明音さんが研究チームに入って貰えば、もしかしたら「彼女」の抜けた穴を埋める為に異動させた女性スタッフの代わりに…」


「指揮官?どうかされましたか?」


「し、社長?」

鵺雉隊長と俺は急に何かを考えてしまったかのように独り言を言い始めている、光風指揮官を少し見ている。


「む?…おお、すまないな君達!少し思うところがあっただけだ。君の恋人:相田明音も必要な人材と見たがどうだろうか須上君!二人とも我が社に来ないかね?」


「もったいなきお誘いありがとうございます!是非よろしくお願い致します‼︎」


「うむ、決まりだな。」


「良かったじゃねぇか須上!お前なら間違いなくやっていけるだろ。」


「ありがとう禅内!本当にありがとう‼︎あとで明音にもこの事を伝えておかねぇとな!」


「おう、思う存分頑張れや。俺はいつでも自由のきく今の生活で目の前に起きたガイダーの暴走は可能な限り止めて過ごす。その方が俺は気楽だからな?」


「そうか!ならば丁度良い物を後日、君に渡す事にしよう。君ならきっと喜んでくれる筈だ!」


「なるほど光風指揮官、[アレ]を禅内君に渡すのですね?」


「ああ。[アレ]だよ、鵺雉隊長」

[アレ]とは一体なんなのだろうか?もしかして、無線みたいなものか?


俺は一人そんな事を考えながら、まったりと温泉の湯に浸かり眠りそうな顔をしていた…



・女湯の露天風呂にて


「「「…ええー⁉︎退職するぅ~⁉︎」」」

富士野あかりと仲良く会話している三人娘、真央・瑠奈・美羽が、富士野あかりとシアンの隣で同時に驚きの声を上げた。


「うんそう…復帰して早々、光風指揮官には勝手な事を言っちゃったけどね?」

小さく舌を出して可愛く笑っていたあかりの事を、シアンは嬉しさ半分厄介さ半分な態度で彼女をじっと見ていた。


「ほ、本当に辞めちゃうのあかり!あれだけ楽しそうに仕事を頑張り始めていたのに‼︎」


「やっぱそれって彼をおとす為?…キャー‼︎」


「うぅ~……せっかくあかりの事、いっぱい構えると思ってたのになぁ~?」


「あはは!ごめんね?そう…もう決めちゃったから!」


「えっとあかり?まさかとは思うけど、私達と一緒の部屋に引っ越すつもりじゃ無いわよね?」

シアンは、不安な気持ちを隠せずあかりに聞いてくる。


「大丈夫だってシアン、そこまで押しかけ女房みたいな真似はしないわよ。[うんと近い所]に住むだけだから!…まぁしてみたい気持ちはあるんだけれどね♪」


「私、ひょっとしてかなり厄介なライバルと今後付き合って行くのかな?」

シアンは少し乾いた笑顔のまま、上の空を眺めつつ湯船に足をつけていた。


「あはは!なんか、あっちはすっかり仁さんの話で盛り上がってますね?明音さんとシェーラちゃん?」


「ふふ!本当ね真矢ちゃん。」


「真矢はもうやる事やっちゃってるから行かないで正解だったわね?あはは‼︎」


「ちょっ⁉︎ミューラぁ~!」


「やる事をやる…」


「明音、そんな気を落とさなくて大丈夫だよ?今夜にでも直毅さんに抱いてもらおうよ。」

こちらは明音とシェーラ、そして真矢とミューラがお互い彼氏持ちならではの会話を続けている。


そして、それぞれの両隣にはルウェン・エレ・佳与・リオーネ・ティーア・姫野…そして、フィックがともにまとまる格好で、その瑞々しくて柔らかな素肌を湯船の中に浸けてくつろいでいた。


「これでやっと、毎晩聞こえてるお姉ちゃんのエッチな喘ぎ声を聞かなくて済むよー…」


「あはは!毎日佳与もムズムズしながら聞いて起きてたもんね?」


「リオーネもそうじゃん!」


「わ、わたくしも真矢様の喘ぎ声を聞いてみたかったですわ!…ハァハァ。」


「「…あなたはそれで良いの?」」

ティーアとフィックは、気の毒な顔をしてルウェンを見つめながら静かに呟く。そして姫野とエレは…


「私も、生きてる時に男性と触れあいたかったなぁ…」


「姫野姉ぇ、まさか仁サマを狙ってたのって…」


「わ、私だって生前に男の人と付き合うことはしてたのよ?でも、祝言を上げる前に戦で敗れ野盗となった野武士達に、私と夫となる人とろく助を含めた村人全員が殺されたの。

死後に霊となって、真上で犯されていた自分の姿を見て…うぅ!」


「うぇ⁉︎おけが浮かび上がってくよお姉ちゃん‼︎」

感情が強く高まったからか、周りに置いていた風呂桶等の物が急に宙をぐるぐると大きく回転する。


ポルターガイストが起こったのだ!


「わー‼︎わー⁉︎大丈夫だよ姫野姉ぇ!もうそんな連中来ないから落ち着いてぇ⁉︎」


「キャッ!なになに‼︎」


「ポルターガイストなの?これ…」

他の女性客達も突然の出来事にびくついてしまう。


「大丈夫!大丈夫よ?姫野…もう怖くないから落ち着いて?」


「うっうぅ…!」

真矢が隣で声をかけ続けていたおかげで、この現象は少しずつ収まり始めた。


「ちょっと‼︎どうしたのよみんな!真矢に佳与、二人とも怪我とかしてない?」


「どうしたの⁉︎」

シアンとあかりが何事かと近寄ってきた。続いて、真央・瑠奈・美羽達も慌てて真矢達の所にやって来る!


「う、うぅ~…」

ポルターガイストは収まったのだが、まだ姫野は泣いていた。


「えっとね…」


「シアンちゃん…」

真矢と佳与達は、先ほどの会話で何故姫野とろく助が死んで幽霊になったのか、その事情を伝える。


「そう、だったんだ…」


「辛かったね?姫野ちゃん…」


「シアンちゃーん!あかりさぁーん⁉︎うえぇん‼︎」

姫野は思いっきり泣き叫び、姫野の事が見える彼女達は、お互いに彼女の周りを一糸纏わぬ姿をそのまま寄せ合う格好で慰め合っていた。


「………」

この温泉地の少し上から、一人の男霊が見下ろしている。物悲しい表情を浮かべながら彼女…姫野を無念そうに見つめ続けていた。



この出来事が後日に巻き起きる更なる苦難の前触れとなる事を、まだ誰も知らない…

女性陣が心の傷を癒し合う……そんな光景が、この現実でも起こり得るのかは、まともな人付き合いをできてなかった自分には分かりません。


ですが、本当にあったら良いですね?


次の投稿は今日の午後23時に行います!

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