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鳥取の娘

未来の禅内仁にゲートの外へと放り出されてしまった、現在の禅内仁…

砂丘から少し離れている、「鳥取砂丘センター」と書かれた建物が見える木々の間から突然飛び出す格好で、そのまま砂まみれになりながら転がってしまった。



「…ぺっ!ぺっ‼︎あのオッサン手荒な真似してくれやがって⁉︎」

俺は身体中についてた砂をとことんはたいて落としまくった後、小高い丘の所まで登っていく事にした。


「うへ!まだ服ん中に砂が入ってるし…まあ、ある程度落としてみたから少しはマシか。これが鳥取砂丘…なんつー広さだ!海がある方向にあんな高い砂の丘があって先が全然見えねぇ。」

見渡す限り砂と大勢の観光客、そして時々生えていたあの木…あれは松も生えてるってのかよ。


俺はここまで、空から眺めて見えていた海も綺麗だとちょっぴり思ってたけれど、これはこれで雄大な自然の一部に自分が溶け込んでいくかのような感覚を覚えた。


「すげぇ人だかりだなぁ?それにあそこにいる動物はなんだ?」

何やら人の身長から、高さ1.5倍くらいの所に二つのでかいコブが背中にある奴が見えるんだが…ありゃ一体?


気になったので、俺は自然とその生き物のいる場所へと足を運んでいった。


「あ、あの。この生き物はなんて言うんすか?」


「ん?県外からの観光者か。こいつはラクダって動物だで!聞いたことないのかいや?」

何やら乗り場みたいな足場の近くにいた、半袖でラフな格好をしていた黒く日焼けしているおじさんが教えてくれた。


ラクダという動物なのか…ってか、なんだこの東京の言葉にヘンテコな表現が混じった言葉は⁉︎これが、方言って奴かよ?


「ラクダ‼︎名前は聞いたことあったけど、実物を見るのは初めてだ。」


「そうかそうか!良かったら乗ってくかい?料金は一人1300円、二人乗りだと2500円だ。でも大人だけの二人乗りはできないけぇ、そこは勘弁してくれ?」


「は、はぁ…てか、代金高ぇ⁉︎」


「はっはっは‼︎そりゃ商売だけえなぁ!コイツらの世話代は稼げないと、可哀想だがいや。」

そりゃそうか…てか、ほんと独特な方言だなオイ⁉︎


「そ、そうっすね。えっとじゃあ一度だけ…あれ、財布がねぇ!そういや、作戦決行時に持って出なかったんだ!せいぜい100円しかポケットに入ってねぇよ‼︎」


「あーそうか…なんかとてもえらい(?)思いをしてここまで来たんだなぁ?

じゃあ、乗せることはできねぇが、せめて記念にラクダと一緒の写真を一枚撮って土産にしたらいいで。」



#えらいとは、鳥取の方言で辛い・しんどいって意味と、文字通り偉い人を指す両方の使い方をします。



「い、良いんですか‼︎一緒に写っても!」


「ああもちろん!これも商売の一つだからな?…ほらほら、こっちにきんさい。」


「は、はい。」

俺は促されるがままにラクダの前に立たされた。


「はいはい落ち着いて。緊張してるとラクダも緊張しちまうよ~…はい、チーズ!」


「うぇ⁉︎」

心の準備ができないままカメラのシャッターを押されて、思わず慌ててしまった俺。案の定、気になる写真の結果は笑われるような姿になっていた…


「わははは‼︎お兄ちゃんなっさけない顔で写ってるでなぁ!取り直しても良いがもう100円いるで?」


「…これしか持ってないのでそれで良いです。」


「ははは!毎度どうも」

うぅ、穴があったら入りたいくらいに恥ずかしい…


「あ、ありがとうございます…」

渋々受け取りながらもお礼を言う俺。


「なぁに、良い旅の思い出と思っとけば良いで‼︎もしまたくる時があったら是非、コイツに乗りに来てくれよ?ついでに彼女がいるなら一緒になっ!…あ、ガイダーはタダで乗れるから安心しろ?」


「ガイダーはタダか…ホッ」


「本当に、どえらい生活を送っとるんだなお兄ちゃんは…ちゃんと稼げるようになってからで構わないけぇ、落ち着いてからきないや。」

あれ?俺ってやっぱ、一文無しのさすらい人と思われてる?まあ確かに財布は手元に無いから、そう見られて当然か。


「あ、どうも…また落ち着いたら仲間を連れて来ますが、良いですか?」


「大歓迎だ‼︎楽しみにしてるで?」

背中をバンバン叩かれてしまったのはびっくりだが、このおじさんも嬉しそうで何よりだ。


「じ、じゃあ俺はこれで…」


「おお!気をつけて帰りんさい。」

俺は片手を上げておじさんの方をしばらく見ながら歩き、この場を後にした。


「帰るにしても腹が減ったなぁ…財布は無いしその日限りのバイトがあったら、少しでも稼いで食いつなげておこうか。」

砂地から更に木が並んでいる所を進むと、二車線の道路と横断歩道が見えた。


「へぇ、すごく観光客が多いな!…って、今気づいたが靴の中に砂がビッシリ入っちまってたか。どっかに腰掛けて中の砂を全部出しちまおう!」

俺は階段横の段差へと避けて、靴の中に入った砂を全て出していく。


その間に俺は、気になる屋台売り場を見つけた。


「かき氷って、なんだ?」

誰ともどこかへ行って遊んだ事はもちろん、外食もまともにしてこなかった俺にはとても興味深い内容だったので、無事に全ての砂を除去した俺は早速見に行ってみる事にした。


「…いたた」


「ちょっとミカ、大丈夫かい?」


「う、うーん…ちょっとこれは一日休ませておかなきゃマズイかも。氷を削りたいけど、これじゃハンドルが握れない!ごめんねレイ」

そこには活発な性格を連想できるほどに明るい栗色のショートヘアがとても合う、吹く風になびいている水色のへそ出しTシャツと、シャツの色をいっそう引き立てる真っ白なスカートをはいた女がいた。


その子は右手の掌を押さえながら屋台のイスに座り込み、氷を片手で作っていた全身白い礼服を着た金髪の王子みたいな格好をした、ガイダーの男の子が心配そうに覗きこんでいる…


「え、えーっと…どうしたんだあんたら?」


「あっ!お客さん?ごめんよ、今この娘…ミカが手にマメを作っちゃって、満足にこのハンドルを握れないみたいなんだ。だからかき氷は作れないんだよ…ごめんね?」


「す、すみませんお客さん…」

後ろを向いていたその子も気づいたのか、謝ってきた。


「回すだけで良いなら俺が手伝おうか?ちょうどお金も財布も無いから、食事代だけでも稼いでおきたかったし。」


「ほ、本当かい⁉︎是非頼むよ!ボクでは氷は出せても回すだけの力が無いから…」


「あ、ありがとうございます‼︎そうしていただけるとシロップかけとお勘定だけなら平気ですから!

働いてくれた分の給料は必ず渡しますので、どうかお願い致します‼︎」

それは丁度いいや!渡りに船とはこの事だな。


俺は彼女…ミカと、氷属性のガイダー・レイからひと通り年期の入った製氷機の扱い方と加減の仕方を教わり、実際に製氷機の上に置いてある大きな氷の塊を削らせてもらったんだが、確かにこれは力がいる!


手にマメができるのもうなずける。よく女子が一人で頑張れたなと思うぜ…


「わぁ‼︎初めてなのに上手ですね!えっと、禅内さんでしたね?」


「おう、ありがとな。確か山上ミカちゃん…だな?」


「はい!よろしくお願いしますね。ミカで良いですよ?」

お互い自己紹介を済ませた所で、早速仕事に取りかかった。


小気味良いリズムで氷の削られていく音が周りに少しずつ響き渡り、それにより人が集まりはじめる。


「いらっしゃいませ~!かき氷はいかがですか〜‼︎」

ミカは明るい声でお客の呼び込みを開始した。


「メロン味一つ~」


「こっちはイチゴで…」


「金時味お願いね~?」

早速三人の女性客がそれぞれの味を注文してきたので、俺は三人分の氷を削ってミカ達に渡していく。


「毎度ありがとうございます!」


「仁君なかなかやるじゃないか!どこかでこの仕事でもしてたのかな?」

レイが上機嫌で聞いてきた。


「いんや、本当に初めてなんだが…その証拠にほら、何故か腕がプルプルしてるぞ?」


「あはは‼︎みたいだね。ミカも最初はそうだったから…あっ!早速次の客が来たよ?それも……団体様で♪」


「…えぇ⁉︎いつの間にこんなたくさん集まって来てんだぁ‼︎」

見るとなんと、観光バスから降りてきた観光客がずらりと並ぶ長蛇の列が…


「久しぶりにいっぱい稼げそうだね?ミカ‼︎」


「ええ!頑張るわよレイ!禅内さん。」


「お、おう…」

俺はいつ食事にありつけるんだろうか?


結局その日は夕方まで一切飯を食えないまま、客足が途切れるまでひたすらかき氷の手伝いをさせられた。


「…やっと終わった!これで食事ができるぞ‼︎」


「ご、ごめんなさい禅内さん。普段の客数はこれよりも少ないんですけど…」


「流石にボクも氷出し過ぎて疲れたよ。ミカ…」

レイも、俺と同じくバテてしまった。


「これだけ稼いだんだから、今日はこの辺で終わりにしましょう?禅内さん、こんな時間まで手伝ってくれて、本当にありがとうございました‼︎

少ないですがどうぞ!こちらが働いて頂いた給料です。」


「…7000円かよ⁉︎良いのか?一日だけの働きでこんなにもらっちまって。」


「良いんですよ!ささやかなお礼も兼ねてるんですから。よかったら、一緒に近くの売店内で軽く食べませんか?おごらせてください‼︎」


「い、良いのか?俺としては願ってもねぇ話だから大歓迎だが…」

本当は、女の子におごられるのって良いのかどうかわかんねぇけど…


「エヘヘ‼︎良かった」


「良かったねぇ?ミカ」

何やらレイが、俺をみてニマニマしてるんだが?


「もうレイってば!さっさと店の片付けを手伝ってよ、痛いんだから!」


「はいはい♪」

仲が良いなこの二人は…


数十分が過ぎ、無事に屋台をしまう事ができた。


「ふぅ…ありがとね仁君。やっぱり男が一人いると違うなぁ?」

意味を含んだ目線を向けつつ、レイが俺を見ていた。


「そ、そうか?まあ、その日分の食事を稼げたから俺も満足だぞ。」

無論ウソじゃない。


「禅内さん早く早く!ここですよ~?」

ミカは嬉しそうに俺を呼んでいたので、レイと一緒に店の前にいたミカの近くに着く直前……三人組のガラが悪そうな男どもが俺達を阻むかのように、ミカをぐるりと囲んで近づいていた!


「へぇ~、鳥取もなかなか可愛いコがいんじゃん。なぁ彼女、俺達と一緒に遊ばねぇ?」

コイツらも俺と同じ県外者か?感じ悪いなぁ…


「いえ結構です‼︎私はあなた達の後ろにいる[カレ]と食事しに来たんですから、邪魔しないで下さい!」


「おー良いねぇ!強気の女は俺たち好きだぞ?俺たちは強情な女も気持ち良くさせてきたから自信はあるし、こんなヒョロヒョロなカレシなんか捨てて、俺達と遊ぼうや?」


「い・や・で・す⁉︎」


「ちょっとお兄さん達。ミカに手を出すのはやめてくれないかな?人間相手に殺す真似はしないけど、あまりしつこいと本当に凍らせちゃうよ?」


「…へぇ、威勢の良いガイダー野郎がいるな。良いぜ?やってみろよ!おいお前、さっさと出てきな?」


「…チッ!」

目つき悪いガイダーが出てきたなおい!余程ひでえ奴なんだろうな、この男。


「ごめんね君、そいつらとまとめて凍ってもらうから‼︎」

レイはピンポイントで男達の立っている場所へと冷気を当てた…だが、何故か何も起きていなかった‼︎


「えっ⁉︎」


「なんだ?何が起きたんだ?」


「レイの冷気が…消された?」

そんな能力のガイダーなんているのか?一体何属性…ん?連中の足元が濡れてる。


「そうか、お前のガイダーの属性は水か‼︎それも氷を張った真水の下くらいまで温度調整できるタイプって所か…」


「へぇ、お前頭良いじゃねぇか!そうさ、俺のガイダーは自在に水温調節ができるんだよ!そんでもって、凍らないように薄い水膜で俺達を包んでるんだ。

だから、氷も意味ねぇんだよ‼︎」


「参ったなこれは…」


「レイ!」

ミカはレイを庇うように腕を伸ばそうとするが、二人がかりで掴まれて身動きを封じられた。


「…フン、毎度毎度クソつまんねぇ事に俺を引っ張り出すんじゃねぇよこのアホンダラ!こんな事しかできねぇから、惚れた女も逃げていくんだろ。」


「⁉︎う、ウルセェ‼︎」


「‼︎」

俺の目の前で、奴のガイダーが殴られている…このクズ野郎が‼︎静かに怒りながら、俺は密かに握り拳をつくっていた。


「お、おいおい⁉︎それ以上殴ってちゃマズイぞテメェ…俺達はもう勘弁だぞ!そいつをまた暴走させたりしたら、今度こそ命がねぇんだから⁉︎」


「そうだぜ!女の体で遊んで憂さ晴らししようって事で、こうしてあちこちの県に来て遊んで過ごしてたんだろうが!それ以上そいつを怒らせんなよ。な?」


「どいつもこいつもウルセェ⁉︎俺が何しようが勝手だ!誰の指図も聞いてたまるかよぉ⁉︎」

うわぁ…いつぞやの俺を思い出す感じのセリフだなぁおい。


ただ、コイツの場合は[何か]を変えることを嫌がってる感じもするんだが……


「おらぁ!早くこんな奴やってしまえよ役立たず⁉︎」


「‼︎…この!」

水属性のガイダーは、蹴り付けてくるロクデナシ主人に対して見るまでも無いほどの怒りをあらわにしている。

この野郎は、本当の意味でただの駄々っ子なだけなのか?んじゃまあ、少しは常識が分かる奴から先に退場してもらうか!


「あんたら、こんな奴の側にいたってなんも楽しく無いんだろ?だったらそろそろ見切りをつけて離れた方が、お互いの為になるんじゃねぇのか?

とりあえずその女の子は開放してやってくれ!万が一暴走したガイダーがその子を殺してしまった場合、そいつも…そいつをかばってるあんたらも同罪として刑事罰を受けるんだろ?

そんなみっともない人生なんて、送りたくないよな?」


「「……」」

二人は俺の言葉の意味を理解してか、ミカを解放した。


「た、助かった…」


「良かった!ミカ‼︎」


「お前ら!俺を裏切るのかよ⁉︎」


「バカかてめぇ…お前の為なんかに一緒にサツの世話になんてなるかってんだ‼︎さっさと諦めて次に行こうぜ?」


「そうだぜ。見ろ!こんな往来でここまで騒いじまったせいで、周りに人が集まって来てんじゃねぇか⁉︎たかだか女一人諦めるくらい、なんとでもなるだろ!」


「ウルセェーー⁉︎」

さっきから騒いでるこのバカは、あろうことか自身のスマホを水属性のガイダーに強くぶつけやがった⁉︎


「…ウガァーー‼︎」


「キャーー⁉︎」


「ミカ‼︎」

恐れていたことが実現してしまった。水属性のガイダーが暴走してしまったのだ!その拍子に、ミカを含めて残りの二人とあのバカもろとも水の中に閉じ込められてしまう。


「ガイダーの暴走だ~‼︎」


「お客さん、早く中に逃げて下さい‼︎」

周りで見ていた観光客達が、その場から遠くへ走って離れる者や建物内に避難する者へと分かれていく。


「ドイツモコイツモウットウシイ⁉︎ミンナ、オボレテシネ~‼︎」


「ーーッ‼︎」


「ミカ‼︎すぐ助かるから⁉︎」


「待てレイ!うかつに近づくな‼︎」

俺の制止も虚しく、レイはミカの元へと更に近づいた。


「至近距離で氷の塊をぶつけてミカを追い出しさえすれば‼︎」


「ソイツトイッショガイイノカ?ナラオマエモ、イッショニイレテヤルヨ…」


「っーー‼︎」


「レイーー⁉︎」


「ハハハハ‼︎ゼンインオボレロォ⁉︎」

すぐにコイツの心を救ってやらねえと!


「なぁお前。本当は泣きたかったんだろ?こんなロクデナシのそばにいるのが嫌すぎてどうしようもない…も、誰にも助けてもらえなかった。違うか?」


「……」


「俺もさ、そこでダダをこねてるお前のバカ主みたいに、ついこの前までいじけてたんだ。

でも、俺のガイダーとして来てくれたアイツが自殺しようとしてた俺を蹴りつけて救い、正面から俺の気持ちを聞いてくれた。

だからかも知れないがよ、今度は俺がお前の苦しかった気持ちを知りたい。暴走状態でも良いから、俺をそいつらとその娘の代わりに閉じ込めて、俺に思う存分ぶつけてくれ!

それで気持ちが晴れるなら、いくらでも俺が相手してやるから!」


「…ばかナノカ?オマエ。ジブンカラシニタイヤツシカ、ンナコトイワネェヨ。」


「ははは!まあ、そう見られて当然だよな…だが俺は、そいつらみたいなバカ野郎共でもその女の子も、ガイダーのお前達に殺して欲しくないし、お前を殺させたくねぇんだよ!

だから俺は今から、お前の攻撃を受けつつお前を大人しくさせる。」


「イクラオンナヲタスケテェカラッテ、ソンナカッコツケテルト…シヌゼ?」

奴は指を鳴らせて店の前にいたミカと残りの二人、そして最低なそこの野郎を水から解放した。


「うっ…ゴホッ、ゴホッ‼︎」


「はぁ、はぁ…ミカ大丈夫かい?」


「う、うん。ありがとねレイ…」


「「……」」

近くにいた二人は息はあるようだが、すぐには立てないようだな。


ただコイツは…


「カハッ‼︎…このクソガイダーが!」

救えねぇ奴だなぁ…しゃーない。


「‼︎」

俺は誰にも気付かれないように意識して、コイツだけを凍らせてやった。


「あ、あなたがしてくれたの?レイ。」


「(この氷、僕よりも攻撃的な感じが⁉︎周りの人のガイダーか…いや違う!一人もそれっぽいガイダーがいない。まさか、人間であるはずの仁君が⁉︎)」


「…ニンゲン、ダヨナ?」


「ん?当然だ‼︎さぁ、どっからでもかかってこい。お前の暴走は、俺が止めてやるぜ!」

俺はいつでも来いとアピールしながら構えていたが、暴走したこいつは一向に攻めてくる様子がない。


それどころか急に、暴走状態から通常に戻っていった…


「…やめだやめ。俺はアンタとヤる気はねぇよ、こっちがやられちまうからな?

でもありがとよ!ちょうどこの野郎の頭を冷まさせる良い機会だから、しばらくはこのままにさせとく。解凍は俺の方がやっておくさ…」


「…あ、あれ?」

終わっちまったのか?


「お、おいアンタ。まさかアンタも氷属性のガイダーか何か連れてきてたのか?それとも…」


「ここの人達の誰かがやったってのか?なら俺達はもうこの女にも周りにも何もしねぇよ…正直、コイツみたいにはなりたくねぇし!」


「…じゃあ二人とも、今すぐミカに謝ってくれ。じゃなきゃ僕は許せない!」


「レイ…」


「…わ、悪かったな。お前ら」


「俺もすまなかった。こんな目にあうくらいならもう女遊びなんて懲り懲りだ。

アンタも、コイツのせいで巻き込まれてしまったみたいで悪かったな?」


「……」


「あ、ああ…」

解決した…のか?でもあの暴走してた奴、何故かずっと俺の事を見てる。


「お、お詫びっつうのもなんだけどよ?二人の食事、俺達がおごるからさ。大目に見てくんねぇかな?」


「う~ん…どうする?禅内さん。」


「…まあ、この際だからお言葉に甘えようぜ?ミカ、レイ。」


「そうだね、仁君…」


「じゃあ早速食いに行くぞ?あのリフトから上に上がったとこにある店の食堂の料理、なかなか旨かったんだ!

俺達先に行ってるから、二人もリフトに乗って来いよ?じゃ…頂上でな!」


「い、行きましょうか禅内さん…(どうしよう、胸がドキドキする!なんで?)」


「お、おう!」


「…ミカ、先に行っててくれないかな?僕は彼と少し、話したい事があるから。」


「え?うん良いけど…早く上がってきてね?食べながら待ってるから。」


「あはは。もちろんだよ!じゃあミカ、後でね?」



「……おい、話ってなんだ。まさかお前も、あの人間がやったって気づいたのか?」


「…やっぱり、君もそう感じたんだね。彼がなんでガイダーの力を使えてるのか正直知らないけれど、彼のおかげで僕達は助かったんだよね?」


「だな。あと、気のせいなら良いんだが…もしあの男の事が気になるんなら、後でお前のパートナーと一緒に今朝アップされた[空を駆ける男]って動画を見て見るんだな。面白い発見が出来るかもだぜ?」


「え?う、うん。ミカと後で見てみるよ…それとこれも何かの縁だと思うし、もし良かったら名前を教えてくれないかな?僕はレイ。」


「はっ!あの人間みたいに物好きな奴だなお前は!良いぜ、教えといてやるよ…俺の名はカインだ。」


「カイン君か、また会ったら話そうね?んじゃ!」

レイはそのままリフトの上を飛んで行き、頂上に向かった。


「[また会ったら話そうね?]か…どうすっかな?まあ、こいつはゆっくり解凍しとくか。

死なないうちに解凍しといてやらねぇと、放置していた俺が悪者扱いにされちゃたまんねぇからな?」

カインは片手で凍った男の氷に触れて溶かし始める。


「…うわぁ~?何この男ダッサーイ‼︎」


「キャハハ‼︎つめたーい!」


(建物内に避難していた女性観光客達が、コイツの間抜けた顔で氷漬け姿を見てから、そのまま手で触れた後爆笑してやがる。良い気味だぜ!

ん?何故か俺に、お金を渡してくるんだが?)



しばらくの間カインは、ダメ主の情けない氷漬けを見せ物扱いと勘違いさせられて、次々とお金を受け取っていったのであった。


人間が一人凍っているのに平気で触って遊ぶ女性達はもしかすると、「この彼」に迷惑なことをされた女性達の一部なのかもと思えばなんとなく納得できそうですね…


次の投稿は、仕事などの都合上今夜の23時にいたします!

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