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5章 怪物モグラ1

あかりの話を聞いた後、菅谷隊長からマスター・ゼノンを呼んで欲しいと頼まれた俺とシアン。

多少の疲れは取れたとは言え、やはりまだ体はだるい…


「あ!兄貴すんません、休んでてもらっていたのに…」


「あ、あのその…ありがとうございました。おかげで助かりました!」

ん?幹太は普段通りの話し方には見えるんだがなんか落ちつかねぇな。


それに、何故真矢は顔を真っ赤にしてるんだ?


「ちょっとちょっと…禅内仁~?」

ミューラがニマニマ顔をしながら、俺の横腹を肘で軽く突いてきた。


「んお?」


「どうしたの?ミューラ」


「真矢と幹太ったらね?あいつが出す黒い霧みたいなものを吸わないようにと、最初は一緒に鼻と口を摘んで息を止めながら後ろに下がってたんだけど…」


「「うわぁー!わぁー⁉︎」」

2人ともかなり狼狽してるがどうしたってんだ?


ミューラ…それとロルも一緒になって、何やらニヤついている事に気付く。


「無事に後ろまで下がったのは良かったんだけど、直後にお互い足を絡ませて倒れちゃって!その拍子に…」


「「その拍子に?」」


「こんな時なのに、あつーいキスをしちゃってたのよ♪」


「正直、良いのを見れたなと思ったぜ。」


「ミューラー⁉︎」

ミューラを鷲掴みする真矢…


「おいコラロルー!」

片手でロルを握りつける幹太。


「「これでおあいこだ(よ)ー‼︎」」


「「⁉︎」」

ロルとミューラが2人の手によって、強引にキスをさせられた‼︎


「「…」」

俺もシアンも、なんと表現すれば良いか分からないが、心にモヤがかかってしまったかのような気持ちになった。


「…とりあえず、お前らが無事って事が分かって良かったよ。じゃあ、さっさと先を急ぐかシアン」


「…ソウネー。2人のおめでたいやりとり見てたら、なんか知らないけどムカついてきたし!」

なんか、シアンの様子もおかしい…


「早く行きましょ?仁!」


「お、おう。」

俺達はひとまず後ろで騒ぎ始める4人はそのまま放置し、彼らに囲まれているであろう[例のじいさん]がいる場所に着いた。


「須上、相田。」


「禅内君!ありがとう、おかげで助かったわ!」


「禅内!あの氷ってまさか…」


「ああ、後で言うよ。今はとにかくそこにいるらしいじいさんに聞いておきたい事がある」


「分かった、まずは鵺雉さんに声をかけよう…鵺雉さん!禅内がきました。」

須上に声をかけられて鵺雉隊長はこちらへと振り向く。ただ、その顔にはまだ怒りが収まり切れていなかった。


「フゥー…すまない禅内君、いささかこの男の事で俺を含めて皆気が立っているままなんだ。できれば気にしないでくれ!」

あれほど大人の余裕を見せていた鵺雉隊長が、今も足の先から頭のてっぺんまで怒りを必死に押さえ込もうと震えている?どんだけ酷い目にあったってんだ。


「よぉ禅内…」


「おっさん⁉︎なんでティーアを両手で抱えてるんだ?」


「ティーア!大丈夫?」


「う、うう!シアン~‼︎怖い、怖いの!目の前が真っ暗な所に私はいてそれで⁉︎」


「落ち着いて?もう何も心配はいらないから。大丈夫、大丈夫…」

シアンがティーアを抱きしめて、頭をしばらく撫で続けた。


「かかかかっ‼︎私の無念、皆さんも少しは感じていただけましたかねぇ?どうにもならない不安と恐怖、しっかり堪能できました?」


「…‼︎」

俺の目の前には、ここにいる彼らから報いを受けていたにも関わらず、ヘラヘラと嘲笑っているジイさんがいた。


全身殴られたのか、至る所にアザがあるというのにピンピンしている!


「アンタがティーアを…皆をここまで不安にさせたの⁉︎なんで!」

シアンはティーアを抱きしめるのをやめると、暴走の一歩手前になりそうな程に感情を爆発させた!


「シアン、ここは俺が聞く。お前は中で[呼んでくれ]!」


「‼︎…分かった、くれぐれも下手に力を使っちゃだめよ?」


「ああ。」

シアンは俺の返事を受け止めてから、一度俺の中に入って落ち着きを取り戻す。


彼女は中で記録用のボタンを出現させてから、マスター・ゼノンを呼んだ。


「…テメェはここにいる皆がここまで怒ってぶちのめしてたってのに、やけにヘラヘラ笑うじゃねぇか。

あの注射器はテメェが仕入れたもので間違いねぇんだな?」


「ヒヒャハハハ!ああそうですよぉ~?[とある国]から生態実験で使われている物だそうでしてね?

ただ、 …強制的に肉体を強くする反面、ちょいと精神が壊れるって副作用がある物を購入したんですよぉ!」

吉野原と呼ばれているそのじいさんは、口を歪ませて気の狂った笑い声を更に上げ続けるので、心底俺も怒りでどうにかなりそうだった。


「この国…日本に復讐する為、お前は下にいる巨大モグラを呼んだって話は仲間から少し聞いた。

まさか、仲間の人間も食わせる真似までもはしていないよな?」


「仲間?私の仲間なんざ、とっくの昔に亡くなりましたよ。皆揃って[戦場から生き残った恥さらしの一族]と罵られながら、当時そんな中傷してきた連中に囲まれて自害させられたんだからなぁ?

そんな奴らの子孫が繁栄する国なんて、なくなって仕舞えばいいと思うでしょう⁉︎」


「俺達みたいに後から生まれてきたモンに、そんな理由で八つ当たりしてくるんじゃねぇよ‼︎

何故当人にしてやらねぇんだ?おかしいだろうが⁉︎てか、相棒であるはずのガイダーがいねぇのはなんでだ‼︎…まさか!」


「ガイダー?そういや、昔に外国から連れて行く際に、適当な奴を餌代わりに放り込んだ気がしますねぇ?…ああ、あれ私のガイダーだったか‼︎いやぁ、歳を取ると忘れやすいもんですねぇ。」


「…悪魔野郎が!」


「悪魔?ほざきますなぁ。必死に守ってきた人間の苦労を心に留めようとせずに、自らの保身だけに力を入れてきた愚か者共が牛耳るようなこの国になんの価値がある!

見た所、お前さんもどちらかと言うと頑張っても見てもらえなかった口じゃ無いんですかい?」

何故か、俺の過去でも見透かされたかのような口ぶりで問いかけてきた!


「…チッ!そうだよ。ふざけた親の意見に逆らえずに従い、俺はばかげた事をしてきたさ‼︎だが俺は今胸を張って言える!俺のガイダーとして来てくれたシアンに目を覚まさせてもらえた事。

そして…ここにいる須上と相田に再会して、自らの過ちを語り謝罪をして分かり合える事ができて本当に良かったとな‼︎

実際問題過去にやらかした過ちの清算なんて、この世界にいる誰もできやしねぇ……だから、共に背負える相手がいると気づけたから前を向けるんだ!」


「綺麗事を抜かすな小童‼︎人間はどう転ぼうが、[欲深き人の間から生まれた者]だ…どんなに良い事を考えていようと、いつか必ず道を踏み外す!

お前さんらは私がそうだと言うじゃろうが、どちらも変わらんじゃろ⁉︎過ち一つ直すのを最後まで渋るのは、人の強欲から出る身勝手そのものじゃ!」


「そんだけ分かってんならちったぁ頭を冷やして考え直せば良いだろ!

嫌でも気持ちを落ちつかせてから、一番訴えたかった相手を絞ってりゃ結末は変わってたかも知れねぇだろがこのクソジジィ‼︎

さっさとモグラをこの国から立ち去らせろ!関係ない連中までも、手前勝手で腐った正義感や義務感なんかで他人を振り回すな!

大人から子供までの命を奪う権利は誰も持ってねぇ!」


「はっはっは!もう遅いんですよぉ。あのモグラ君は今頃[人の味]も覚えた頃でしょうねぇ!私の部下達で…」

これでもかと言わんばかりに目を見開いて、腐った考えで俺を見つめる吉野原。


「テ、テメェーー⁉︎」

握り拳をつくる俺の掌から、赤く生暖かいものが静かに垂れていく…


「…マツガヨイ。禅内仁、後ハ我ガ告ゲヨウ」

何もなかった所から、まるでさっきからずっといたかのように自然と存在しているその者が姿を見せた!


「あれが…マスター・ゼノン‼︎」

ここにいる全員が、驚きのあまり目を見開いたままになっていた。


「お待たせ仁!遅くなったわね……ティーア、店長さんの中で今は静かに眠っててね?」


「ええ、ありがとうシアン…おやすみなさいませ、ご主人様。」


「おお、ちゃんと寝とけ!怖い思いをさせて悪かったなティーア。ゆっくりしてろよ?」

ティーアは犬吹豪太の中へと、静かに入っていく。


「ありがとよシアン。ギリギリ持ち堪えれたが、かなりしんどかったぜ?理性を保つのは!」


「うふふ!本当に良かった。あなたがそうしていてくれて…」

シアンは慈愛を込めた目で俺をしばらく見つめてから、マスター・ゼノンの顔が向いている方へと向き直り、真剣な表情に変わる。


「ま、マスター・ゼノン?何故傍観者様が、今更でしゃばってくるんですかぁ?わたしゃ誰の意見も聞きませんぜ!」


「ナラバ選ベ。コノママ消エタイカ?ソレトモ生キテ自身ノ過チヲ認メ、白状シテ彼ラニ謝罪スルカ。」


「消えるさぁ!過ちなら先に周りがしているでしょう?にも関わらず、それでもぬくぬく育ってる奴らだけ裁かれないってんなら謝る気なんざありませんねぇ!

あっ、そうだ…最後に一つあんたらに言っておきたい事があるんでしたぁ!」


「…なんだよ。」

俺は隣で震え始めてきたシアンを両手で覆い隠し、優しくお腹の前に抱えてから喋った。


「地獄で待ってますねぇ~!キヒャヒャヒャ‼︎」


「…ソナタ二ハ、天国モ地獄モ皆無」


「ヒャ…」

そこにいたかも知れない「彼」は、俺達の記憶と存在共に消え去った。


「…あれ?ねぇ仁、私はなんで仁の掌に覆われてんの?まぁ気持ちいいから良いけど。」


「あ、あれ?なんでだろうな。なんかここにとても嫌な[何か]がいて、そいつを見て話していたような気はするんだが…」


「??」

ここにいる俺達を含め、この世にいる人間とガイダーの記憶から、吉野原という復讐者の存在は消えた。


鵺雉隊長が最初にエレベーター横の壁につけた拳の後だけが、名残惜しそうに残り続けている…


「あれ?真矢、お前の目真っ赤だがどうした?」


「えっ?分かんないなんでだろう…幹太もそうみたいだし。確か、一緒にミューラとロルのからかいに対して、お返しに2人をキスさせた所は分かるんだけど…」


「ふー♪そういや俺達、その前に何かを見て怖がってたよな…ミューラ~」


「アン♪そうね。なんで[何も無い]のに怖いって思ってたんだろあたい達…ロル~」

2人が性欲に目覚めたのか、先ほどからこの調子でくっついたままである。


「アハハ…やりすぎたかな?」


「…みたいだな。」


「お姉ちゃん達どうする~?この2人みたいに一緒になって、そのまま結婚でもしちゃう?」


「「⁉︎」」


「ほらほら佳与ってば、いきなりそんな事言っちゃったらあんな風にまた意識しちゃうじゃない。」


「ラブラブ…」


「アツアツ…」


「羨ましいね、お姉ちゃん。」


「そうねぇ…」

佳与とリオーネの言葉を皮切りに、双子ガイダーと幽霊姉弟は羨望の目を向けた。


この出来事や会話を、目の前に現れているマスター・ゼノンだけが心に留めている事など、誰も気づきはしない…


「って、ポリゴンじいさん何しに来…アギャギャギャ⁉︎」

シアンの雷撃でお仕置きを受ける俺!


「このバカ仁‼︎マスターに対してなんて呼び方をしちゃってんのよ!

申し訳ありませんゼノン様、監督不行届きで…」


「フフ…良イ。今ハソナタラガ直面シテイル、[もぐら]の事ガ先決ナノデハナイカ?」


「マ、マスター・ゼノン様!私達に何かできるのでしょうか?

あなた様がおられるということは、私達では対処できないが為に来られたのですか?」

不思議な顔をしながら犬吹店長の体に入っていたティーアが、静かに顔を出す。


「否。我ハ[件ノもぐら]に関シテハ手ヲ出センガ案ズル事ハナイ。

オ主達ナラバ必ズ止メラレヨウ…タダ、アレヲスグニ殺メテハナラン!アノもぐらノ中ニハ、1人がいだーノ子ガ今モ生キテオルノデ無事二助ケダシテクレ…

我ハ改竄ト裁キハ可能ダガ、救出可能ナ能力ハ持ッテハオランノダ。」


「心配しなくて良いですよ?俺達だけでやってみせますって!」


「もう、仁ったら調子の良い事言って!でもマスター、いくらでも頼ってくれて良いのは仁と同じ気持ちですからね?」


「頼モシクナッタナ、オ前達…」


「そんな!恐れ入りますマスター‼︎」


「…おお、あなた様がマスター・ゼノン様ですか?初めまして、私は光風。このエージェント達をまとめる指揮官をさせていただいております。」

怪我をしているにも関わらず、光風指揮官は菅谷隊長とあかりに支えられる形で、よろけながら俺達の元へと来た。


「ウム。人トがいだーノ子ラヲ繋グ役割ヲ担ッテモラエテ深く感謝スル。ドウカ頼ム、アノ子ヲ救ッテクレ…クレグレモ死ンデハナランゾ?」


「心得ました。須上君、さっそくモグラに捉えられているガイダーの救出に臨つとしよう!知恵を貸してくれるね?」


「もちろんです!エンラ頼むぞ?」


「もちろんだよ直毅!」


「私もやるわよ直毅…シェーラ!」


「はーい‼︎」

彼らが休憩所に入っていき、皆が合流していくのを眺めていた俺達へと、マスター・ゼノンは最後にこう語りかけた。


「しあん、仁ヨ。オ前達ノ絆ハ(まこと)ノ愛…恐レル事ナク互イノ遺志ヲ受ケイレヨ!ソレガ唯一、彼ラヲ守ル為二必要ナ繋ギノ[力]トナル。彼ラト共二アレ!」


「はい!」


「正直言って今の話の意味はよく分かってないけどよ、あいつらを守る為の力になるって事は分かったぜ?マスター・ゼノン様。

俺は既にあいつら…人間とガイダーは同じ仲間としか見てないです。だから大丈夫っすよ!」

ポリゴンじい…いや、マスター・ゼノンは俺たちにしかできない何かがあると伝えてくれている。不思議とそんな気がした!


「あっ、ついでだけど一つ聞いて良いですか?」


「?構ワンゾ。何ヲ聞キタイノダ?」


「本当はシアンに時間がある時に聞こうとしてたんですが、この際だからついでに聞いておきたいと思った事があって…人間とガイダーは好きあっていいのかどうか。」


「はわわわ⁉︎仁ってば、なんで今こんな事聞くのよぉ‼︎」


「?そりゃ俺はシアンに好きと言ったし、お前も俺にそう言ってたからじゃねぇか。」


「うっ!た、確かに言ったわよ?でもだからって、こんなタイミングで聞くなんてまるで…ゴニョゴニョ」

そんなまずい事を俺は聞いたっけか?


「好意ヲ持ツ事マデハ我ハ止メン。タダ、がいだーデアルコノ子ラハ我ガ創造セシ者達ゾ?

「繁殖能力」モナケレバ、体ヲ人間ト同ジニスル事ナドハ出来ン…例外ガナイ訳デモナイガ、ソレヲ聞キタイト願ウノナラマズハモウ暫ク共ニ過ゴセ。

再ビ我ヲ呼ブ時ガ来タナラ、ソノ時ニ伝エヨウ…後悔ノ無イヨウ生キヨ!デハナ」

どこか悲しくも優しい顔をしたまま、マスター・ゼノンはその場から姿を消す。


「んもぅ仁のバカァ…あんな事言って!もしあかりと結ばれる事になったとしても、ちゃんと自分が言った言葉の責任は取りなさいよね?」


「えっ?えっ?なんでそんな、どこかの嫁入りする前の女の子みたいな事を言ってんだよシアン!俺そんな大変な事を聞いたっけか?」


「そうよこのニブチン‼︎ほら、さっさと作戦室に行く前に休憩所にいる皆とも合流するんだから早くしなさいよね⁉︎」


「お、おう…うーん、よく分かんねぇな。」

逃げるように飛んで行ったシアンは後ろから見ても顔が真っ赤なのだと分かるほど、耳が濃い朱色に染まっていた。


モグラからガイダーを救出する為、俺達は今の会話で知った事実を元に、対策会議を再開し作戦決行の準備をしていく。

マスター・ゼノンの手により、かつて[ゼノン自身]が過去に目撃した事のある忌まわしき技を覚えてしまった吉野原は、彼の手によって消去[デリート]された……


もしもあのまま生かしたままだった場合、望まない未来を禅内達は味わっていたのかも知れない。



今回も読んで頂き、誠にありがとうございました!ひきつづき時間や気力がある時は、今回のように連続で投稿したいと考えています。

こんな安定しない作者ではありますけど、どうぞ作品を見て楽しんでいってくださいね!


今度の投稿は、6月1日の午前11時にします。

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