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忌むべき来客

この会議室での話し合い後に、相田明音の一言でモグラをおびき寄せる餌を調べに出て行くエージェント達。

鵺雉隊長と隊員達に高校の教室程度の広い休憩室へと案内してもらい、俺達は一度ここで一休みさせてもらうことになった。


「ありがとうよ、君達が来てくれたおかげで有意義な話し合いになった!隊員達を代表して改めて感謝する。」

鵺雉隊長の後ろにいた男女の隊員達が、一緒にお辞儀をしてきた。


「いえ、大したことはしていませんよ。相田の疑問が無かったら俺たちも見落としていたんですから…だろ?須上」


「ああ、禅内の言う通りだ。実際あれも生き物なら何を食って生きているのか知っておかなければならない。

ただ、つけ麺屋の店主が昔連れていたと言うガイダーの話だが…その子が食べられたと聞いてしまった以上穏やかな話では済まされないな。

もしかするとエサは…」


ガイダー達「…‼︎」

彼らから、ただならぬ恐怖の感情が伝わってくる…


「直毅!滅多な事を言わないで⁉︎」


「…ごめん」


全員「.....」

考えたくもない出来事なんか起きて欲しくはないと、この場にいる全員が想いを巡らせていると…


「あぅ‼︎」


「うああぁ‼︎」


「姫野?ろく助⁉︎2人ともどうした!」

俺達の上にずっと浮かんで聞き続けていた幽霊の2人が、急に頭を押さえて苦しみだした!


「たくさんの!動物の魂が下から大声で[イタイ!タスケテ‼︎]と叫んできて…頭が割れそう、です!」


「怖いよぉー⁉︎」


「動物達だと⁉︎」


「須上!モグラは肉食で間違いないんだな‼︎」


「間違いない‼︎動物すら食うというのならもしや‼︎…誰か司令官さんと連絡をとってくれ!ここにいる皆にも、最悪のケースを考えておいて欲しい‼︎」

最悪なケース…それはつまり、俺達人間も捕食対象に入ってしまう可能性もあるという事だ!


「よし!すぐに連絡を……って、社内にある全ての回線が通じない‼︎」

鵺雉隊長が休憩所に設置されている電話機を操作したが、全く繋がらなかった。


「…ダメ、私の持ってる特殊な電話機も動かないわ!こんな事ってあるの?」

女性部隊の菅谷隊長も、同じく繋がらなかった…


「ラジオ放送を聞いてみよう!恐らく地上の事が分かる筈だ!!」

目の前に置かれていた、レトロな感じのラジオに俺は目を留める。


「仁君!それは古すぎてバッテリー充電ができないから、ただの観賞用として置いてるのよ?どうやって動かす気なのよ!」


「俺とシアンが出す電気ならいけるはずだ!頼むシアン‼︎」


「オッケー仁!…良いこと?帯電の時よりも繊細な電力調整が必要だから、慎重にね。」


「おう」

俺は深呼吸をしてから神経を研ぎ澄ませ、シアンと一緒に力を静かに流すイメージでラジオに触れていく…


「仁、まだ強いわよ!」


「お、おう。」

更に集中して送り続ける事20分…ついに、ラジオに電気を送り込む事ができた!


「仁サマすごい!」


「この機械が元気になったー!」

双子ガイダーのネレとエレがはしゃいできた。


「すげぇ⁉︎」

隊員達はもちろん、後ろにいる幹太と須上も驚いていた!…内心、俺が一番驚いている。


「よし禅内!今の調子でこの部屋で使われているそこの電話機も直してみろよ!」


「おっさん⁉︎これめっちゃ神経使うから疲れるんですけど‼︎」


「頼む(お願い)禅内君‼︎」

鵺雉隊長と菅谷隊長の2人にまで迫られてしまった。


「仁…」

諦めてと言わんばかりに首を横に振ってくるシアン…


「ああ~もう!分かりましたよ‼︎こうなりゃとことんやってやらぁ!」

俺はシアンと共に、この休憩所にある電化製品を自販機から何まで、全て復旧していく羽目になった!


そして数時間後…司令官と無事に連絡がついた鵺雉隊長と、直ったラジオに男女全ての連中がかじりついて外の様子が報じられていないか、代わりながら確認作業をしている現在である。


「無理…もう何もできねぇ〜」


「お疲れ様…私も疲れたから、中で寝るね?」

言うや否や、すぐに俺の中に入っていくシアン。


「兄貴、そのままそこのマッサージチェアの上でぐっすり休んでて下さい。」


「仁さん!ついでとはいえ、私達のスマホも直して貰っちゃってごめんなさい…」

幹太の言葉に甘え、側にあったマッサージチェアに座らせてもらった俺は初めて扱う。


あかりも側にいて教えてくれたおかげで、至福の時を持つ事ができそうだ。

真矢達のスマホもついでに直したが、あれはなかなか難しかったな…


「はは…まあ、外部と繋がるかはわからねぇが何もないよりはマシだからな。あかり、ラジオの方はどうだ?」


「うん、もうすぐ繋がりそう…あっ!放送が聞けるって‼︎早速お願いして来るわ!

仁君は気にしないでそのまま眠っててね!お疲れ様♪」

あかりはラジオを繋げてくれた男性隊員に来てお礼を言いつつ、音を大きく出してもらうように頼むと快諾してくれたようだ。


「おう。じゃあ悪いけど少し寝かせてもらうわ…」

俺はしばしの間、眠りについた。



「はい…はい、分かりました。そのように彼らにもお伝え致します!……皆、ラジオを聴く前に司令官からの命令が入った。その場でそれぞれ聞いてくれ!」

司令官と電話で会話をしていた鵺雉隊長に声をかけられ、彼らは気を引き締めて耳を傾ける。


「今、この東京で次々と殺処分予定になっていた複数種類のペットが、見たことも無い大きな穴へと運ばれていくのを見たと休暇中に山歩きをしていたペットショップの従業員が見たらしい。

姫野ちゃんにろく助君。君達は確か先ほど、沢山の動物霊達の叫ぶ声が下から聞こえたと言っていたが、この真下なのか?」


「は、はい…今も聞こえてきます。」


「お姉ちゃん、気分悪いよぉ~!」


「…もしかして⁉︎あなた達!ラジオの音を今すぐに大きくして‼︎」

菅谷隊長がすごく焦った様子で、ラジオの側にいた隊員達に命令をする。


「は、はい‼︎」


「了解!」

側にいた男女隊員が迷いながらも共に操作し、音とチャンネルを表示する事ができた!


「…今日未明、[殺処分の為に動物を引き取りに来た]と〇〇会社が動物保護センター従業員の静止を無視して、強奪されるという事件が起きました。

詳しい事はまだ判明できておりません。次のニュースです…」


「〇〇会社って、この本社ビルに事務所を置いている会社名じゃねぇか⁉︎くそっ、ふざけやがって‼︎」


「おい待て、どうしたってんだ徹っ!」

鬼のような形相をしてエレベーターに向かう鵺雉隊長と、彼の後を追う犬吹豪太。


眠りについている禅内を除いた全員が慌てて追いかけて行くと、何度ボタンを押しても一向に動く気配が無い。


「くそっ‼︎あの会社、前からコソコソと動いていて怪しかったから警察と探偵に調査依頼してたってのに!」

鵺雉隊長は酷く苛立ち、エレベーター横の壁に拳一つ分の跡が残る程、強く殴りつけていた。


「落ち着いてよ鵺雉隊長。今この時点で、警察が出動するような真似をあの会社はしてるんでしょう?捕まるのも時間の問題じゃないかしら?」


「確かにそうなのだが、不安でたまらないんだよ‼︎

連中はなぜか捕まらないんじゃないかって感じるほど逃げ方が上手い…

普段勤めが終わって帰る時ビルの外からたまに眺めるんだが、電気はついてるのに人がいる感じが全くしなかった!」


「…それは本当に変な話ね。何はともあれ、今はここからどう動くかを考えましょう。司令官もまだ作戦室にいるんですよね?」


「そのはずだが…」


「…おたくらの言ってる司令官ってのは、このおっさんの事かぁ?」


「誰だ⁉︎」


「し、司令官‼︎あなた何をしたの!」

2人の隊長が階段の上から降りて来る人物を見やると、全身重症を負い血塗れになっている司令官が皆のいる下の階へと突き落とされてしまった‼︎


「ぐっ!うぅ…」


隊員達「司令官⁉︎」


「どうも~お初にお目にかかりますかね?一応わたしゃ〇〇会社の代表取締役をしとります、吉野原(よしのばら)って言うんでどうぞ適当にお見知り置きを♪

あっ!言っときますけど、この大規模停電自体はあのモグラ君のせいなんで、わたしゃひとっつも悪くありませんぜ?ひへへへ‼︎」

下品な笑い方をしながら階段から降りてくるその人物は、かなり歳をとっているはずなのに不自然に筋肉が盛り上がっていた。


紺色の短パンに草履と服の相性に合いそうで合わない感じの格好で、真新しい空色のアロハシャツの下からは、白いワイシャツのはずなのに年期の入った血糊がべったりとついたように見える。


不快しか感じないような模様の服装だった。


「ふざけんなテメェ⁉︎どう考えてもテメェらが仕組んだ事じゃねぇのか!

何故わざわざ俺たちエージェント組織の下に乗り込んで来たかは知らねぇが、ただで帰れると思うなよ‼︎」

隊員達が戦闘態勢に入り、携行している銃火器を構えていく。


「おお~?怖いねぇ怖いねぇ!わたしゃ丸腰でなーんにも持ってないもんなあ?どうしよ?本当に撃たれちゃうと、痛いでは済まないよねぇ?」

何故か吉野原は、わざとらしい挑発をして撃ってこさせようとしていた。


「この人…何か変よね?」


「ああ。まるで何か力を持った感じを隠そうともしてない…」

須上直毅と相田明音が隊員達の後ろで会話していると、階段の上でヘラヘラ笑っていた吉野原が反応した。


「ほぉ~?君達なかなか鋭いねぇ~!そう、この私はねぇ?闇属性の力をついに入手したのよ。

沢山のガイダーと人間、動物達を間接的に殺して…ね?」


全員「⁉︎」

みんなは、信じられない言葉を聞いてしまい驚きを隠せなかった!


「おい、ちょっと待てや?まさかあの地震の原因であるモグラは…⁉︎」


「そうともぉ‼︎私がわざわざ外国からこの日本におびき出した、いわゆるペットさぁ⁉︎」


「テメェ、頭がイカれてやがんのか⁉︎同じ日本に住んでる日本人じゃねぇかこのクソジジィ‼︎」

犬吹豪太も思わずキレて叫んだ!


「やかましい…声だけデカくて気弱そうな若造が‼︎

私ら戦場で戦い続けて命を失った日本兵達の子孫が受けてきた屈辱!無念を、この国に生きている政治家共や、のうのうと平和に暮らしてる民に向けて晴らす!!

その為に今日まで準備してきたんだよぉ⁉︎それに……」


目の前の男が更にベラベラと喋り出す…どうやら彼が、ペットの動物をありったけ部下に盗ませた上で例のモグラに[エサ]として与え、そのままその場にいる人間達をもエサ代わりにしたようだ!


「あの注射器っぽいのって…私達見たことある!」


「ええ、忘れもしないわ佳与‼︎私達に…特に佳与は、それを持ってたあの男共からひどい目に合わされてたんだから!」

佳与とリオーネが見た物…つまり吉野原が全員の前に投げつけてきたそれは、秋葉原神社で佳与を嫌な目に遭わせていた連中が持っていた注射器そのものだった!


「こ!この外道ジジィめが⁉︎私怨(しえん)の為だけに復讐とは無関係な、テメェの会社にいる部下を利用する真似まですんのか⁉︎」

犬吹豪太は完全に怒りを燃やした‼︎


「ウフ、ウフフフ…あなたひょっとして警察に捕まって裁判で処刑されるより、とことん拷問にかけられてから処刑されたい方なのかしら?」

菅谷隊長及び、富士野あかりとフロットを含めた全ての女性隊員と相棒のガイダー逹。


並びに鵺雉隊長と後ろに銃を構えた男性隊員達…そして彼らの後ろで共にいる須上達も怒りを露わにして、吉野原を睨み続けていた。


「かっ‼︎高々ただの人間と、人を殺せた事のないガイダーだけが集まった集団なんざ、わたしゃ怖くもねぇ!

私の出す闇に心を蝕まれてしまえぇ‼︎」

吉野原の手から、肉眼でも見えるほどにどす黒い霧らしき物が放射線状に広がり、部隊の彼らを包み込んだ!


「イ…イヤァァァ⁉︎」


「ウ、ア…ア⁉︎」

どす黒い霧を吸ってしまった、この場にいる2部隊の隊員達は次々と頭を抱えて急に恐怖で怯え始める。


「貴様、俺達の部下に何をしたぁ⁉︎」


「ひへへへ!大した事じゃねぇさぁ‼︎これは人それぞれが過去に取り返しのつかない失敗をしたトラウマを増幅させるためのようなもの……精神攻撃だぁ‼︎」


「こんの鬼畜~‼︎」


「待ちなさい、あかり⁉︎」


「ひへは♪」

あかりとフロットに、彼の闇攻撃が直撃する!


「「うああああ⁉︎」」

あかりはリストカットした腕に強く指を食い込ませ、フロットは暴走していた記憶を幻覚として見せられていく!


「なんなのよこの人の不安定な執念は‼︎ただ戦争を終わらせる為に戦った人達の、報われなかった思いを肩代わりして戦いに生きる必要なんてないのに!」


「お姉ちゃん‼︎この人、ただの化け物じゃんかー!」

姫野とろく助は、姿を消したまま目の前の異常な光景を見て危険と感じ、宙に浮かんで退避する。

下にいる彼らの様子に心を痛めながら、2人は悲しげに眺めていた。


「佳与!」


「リオーネ‼︎」

2人は共に抱き合い、漂ってきた闇を吸い込まないよう息を止めて耐えていた。


「真矢!俺たちも‼︎」


「うん!幹太‼︎」


「ロル!」


「ミューラ‼︎」


「ご主人様下がって⁉︎……アアアッ!」


「ティーアーー‼︎…クソッ‼︎」

豪太を思いっきり突き飛ばしたティーアが身代わりになる形で、黒い空気を吸ってしまう。


「下がれ須上!相田ちゃん…グオアア‼︎」

鵺雉隊長も、闇の霧という毒牙にかかってしまった!


「「鵺雉さん‼︎」」


「ほらあなた達‼︎早く下がりなさい⁉︎絶対吸っちゃだめよ‼︎」

早めにガイダーの2人を体内に避難させていた2人の手を取り、菅谷隊長は大きく後ろに退かせた。


「この!クソったれじじぃがぁ‼︎」


「私!こんなおじいさんだけは何があっても許さない!絶対に‼︎‼︎」


その頃休憩所で、先ほど眠りから覚めた禅内仁とシアン。疲労の為その場から動けないままだが外の激しい騒動によって目だけは覚め、彼らの叫び声に耳を傾けていた。



「なんだってんだ全く…なんかエージェント部隊の皆や、須上達の怒り声に混じって耳障りな声を出してるおっさんらしい奴の高笑いが聞こえて来るぞ?」


「本当ね、正直胸糞悪くてたまらないかも!仁…相手の場所とか掴めそう?」


「待ってくれシアン…確かあいつらと一緒に姫野達が一緒にいる筈だ。ちょいと頭の中で念を送って会話ができるか試してみる。」


「うん!この際ツッコむのも面倒だし、一発やっちゃえ仁。」


「へっへ!おうよ。…(おい姫野、ろく助。もし聞こえたらそのまま頭の中で言葉を返してくれ。)」


「(へっ⁉︎仁兄さん!)」


「(お兄ちゃん?なんで…)」


「(詳しい話は後だ。今どこで、誰がどうなっているか教えてくれ!それと、俺が寝転んでいる場所から見てどの方向からやりとりしてるのかも教えてくれると助かる…)」


「(は、はい!えっと、大怪我を負っている司令官さんが私達のいる階の所へと上から転倒させられました!

相手は階段の少し上を陣取ってる感じです。それと、多分仁兄さんの寝ている場所から見て左斜め後ろの方向です!

距離は…おおよそ10(かん)かと!すいません、メートルと言う言葉はいまいち分からなくて)」

10間…確か、明治の時代に入るまで呼ばれていた距離を示す単語で、1間がおおよそ1.8メートルだったよな?


「(十分だ姫野!ありがとよ。俺が氷攻撃を遠隔で威嚇程度に援護射撃するから、その隙をつくようにどちらかの隊長さんに伝えてくれ!姿は見られていないな?)」


「(はい!行けます‼︎一緒に行くよろく助。)」


「(うん!お姉ちゃん‼︎)」

2人はそれぞれ姿を消したまま、菅谷隊長に禅内が言っていた事を告げる。


「(頷)」

最初は少し驚きかけた菅谷隊長だったが努めて冷静を装い、小さく頷く。


「(仁兄さん…どうぞ‼︎)」


「(おう‼︎)」

俺は姫野の告げた場所を信じて、寝た状態で目を閉じ集中した!


目標の場所に、氷を生やすイメージで力を放つ!


「んん⁉︎なんだっていうんだこの氷ぃ!どいつだ?氷属性のガイダーを使いやがって‼︎

いや待て?この形状の氷はまさか…ルーダ‼︎お前が裏切るってのかぁ⁉︎チッ、私の手が凍って闇が出せん!」

闇が晴れ皆が正気に戻り切るまでに、犬吹豪太はあらん限りの力で拳を固く握りしめているのを見た菅谷隊長は…


「犬吹さんお願い!彼を思いっきりぶっ飛ばして‼︎」


「オルァ‼︎歯ぁ食いしばれやぁ‼︎」


「グハッ!ブルァ⁉︎ガフッ!」

氷で両手両足を封じられているせいで身動きが取れない吉野原は、犬吹豪太による容赦ない連続パンチの的にされた!


「良いですね♪犬吹さんその調子です!そんなやつとことんヤって下さいね!」

菅谷隊長が、今まで見せた事の無い怖い笑顔で犬吹豪太に殴られている吉野原をじっくりと見据えていた…


その後、意識を失うまで殴られ続けてしまう吉野原を見て正気に戻った隊員達。

富士野あかりを除き全員がその場に残り、仕返しとばかり(ほぼ集団リ●チのよう)に皆も参加し始める。

みるみる吉野原の顔から不自然に浮き出ている筋肉に至るまで、人間とガイダー達の手によって痛めつけられていくのであった。


その間に司令官は富士野あかりに肩をかつがれて、禅内が寝転んでいる休憩所へと運ばれてくる。


「ありがとう仁君…あの氷、仁君が出したのよね?」

あかりが司令官をやや柔らかいクッションを下にしたござの敷物へと横たわらせた後で、寝転んでいた俺の元へときた。


ちなみにシアンは、俺のお腹の上に座ったまま、あかりが食い込ませていたと思われる腕の傷跡を真っ青な顔をしたまま無言で見る。


「ああ、まあな。うまくいったようで何より…ん?他の連中はどうしたんだ?」


「…鵺雉隊長と菅谷隊長を含めた全員で、サンドバックにされているあの鬼畜ジジィの様子を見て、大いに盛り上がってるわ。

ざまぁないとしか言えないわね!」


「コラコラ、女があんまりそんな事言うなよ物騒だから…」


「まあ、禅内仁の言うとおりではあるけれどね?あれは僕もかなりイラついたな!」

ウゲッ!マジかよ…


その後俺とシアンは、先ほど起きていた出来事の詳細を細かくあかりから聞かされた。


正直、聞いてるだけで俺もシアンも怒りで気が狂いそうになったが、あかりやフロット…その時いた周りの人達が、今の自分と全く同じ感情になって仕返しを続けるんだなと気づくと、少しだけ気は楽になった。


「仁兄さんすごいです~!」


「お兄ちゃんって、チョー能力者みたい‼︎」

しばらくしてから、幽霊2人が俺達の所へと飛んできた!


「うん…本当、仁君は完全に超能力者よね。」


「…話が盛り上がりかけている所悪いわねあなた達。禅内君、今動けそう?」

菅谷隊長が俺達の所に近づいて来た。


「菅谷隊長!あの畜生ジジィは?まだ生きてるのよね⁉︎」

やべ、あかりの事怖いと感じてきた…


「ええモチロン♪まだまだ簡単には終わらせてないから大丈夫よ!だからその間に、禅内君とシアンちゃん。2人に頼みたい事があるのよ。」


「お、俺達にですか?」


「ええそう、お願い…マスター・ゼノンと連絡をとって欲しいの。あのおじいさんを裁いてもらいたくて!」


「シアン、平気か?」


「…正直平気じゃないけど、行こ?私達が裁くよりはその方が公平でしょうし」

見るからに体が震えていて、本当は大丈夫ではなさそうだ。


とは言え、連絡を自在にできるのはなぜかシアンだけなので、本人も覚悟を決めている。


「…ごめんなさいね。」


「良いんです。でも仁、私の側から離れないでね?」


「わかった。ちゃんといるから安心しろ?それと、あかり?」


「な、何?仁君」


「もう、大丈夫なのか?…それ」

俺の目線の先が、痛々しいほど爪跡が深くついた自身の腕である事に気付くあかり…


「ぁ……うん大丈夫、心配してくれてありがと。」


「ごめんよあかり。僕ももう少しでまた暴走する所だった。」


「いいのよフロット。今回は皆がアレをくらわされて正気を保つのが難しかったんだから!

なんか、あいつがやられる前に[ルーダ]って叫んでたけどひょっとして…」


「ルーダ!こんな所にまで暗躍してたのね。」


「その話は正直気にはなるけれど、今は先にお願いしてもらえないかしら?あのじいさん…吉野原がまた注射器で力を増す前にね。」


「おし…俺の服ポケットに入っときなシアン。もし俺がその野郎に向かって勢いよく突っ込んでも、振り落とされんなよ?」


「んもう、下手に挑発に乗るのはダメだからね!」


「わーってるよ!」

普段通りの会話をしながら、俺とシアンは立ち上がり休憩所を出る。



「シアンにはまだ敵いそうもないなぁ。仁君の心には彼女の存在がとても大きいもの…私もいつか、あんな感じで彼と語り合えたらいいのに。」

力なく笑いながら、彼らの後ろ姿を見ている富士野あかり。


そしてそんな彼女を、無言で優しく見つめていた菅谷隊長。そして…


「フッフッフ…青春しているね富士野あかり君。」


「ふぇ⁉︎司令官起きてたんですか!」


「あらま司令官様ってば、女の子の呟きに口を挟むのはデリカシーがないですよ?」


「おっと!すまんすまん…」


この地下で起きた出来事…吉野原から全内容を問いただしたあとで、最終的にマスター・ゼノンに裁いてもらおうと歩みを進める禅内仁。


その中でシアンは1人、心の奥底から湧き上がるこの不思議な感情が何を意味するのか分からぬまま、禅内仁共々マスター・ゼノンによって裁きを下される時を望むのだった。

闇属性は精神攻撃……やばいですね(T ^ T)


次回の投稿は、本日の午後23時ごろにいたします〜!

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