野外で一晩を…
現在、夜の23時頃…本来ならまだどこか一部の家の窓から明かりがついているものだが、今や不気味に思えるほど真っ暗な闇夜の中を歩いている。
俺とシアンや双子ガイダー達と共に帰宅したは良いが、深刻な問題が発覚した。
それは、生活に必要な電気はもちろん水道までもが完全に止まっていたため、真っ暗な中で生活しなければならなくなったのだ。
「マジか…」
「ひどい事になったわね…」
どうやら、あの店にいたとき感じた地震の影響だろうな。となると、周りの家々が真っ暗だった理由はおそらく…大規模停電。
「家がこれじゃあ、多分真矢達も同じかもな。」
「そうね…ただ事ではすませられないかも。」
コンコンコン!コンコンコン‼︎
「誰だ?」
「仁さーん‼︎」
「禅内くぅ~ん!」
「仁兄ち"ゃ~ん⁉︎」
俺は手探りで家の扉を開けると、案の定真矢と富士野あかり。そして佳与が泣き声を上げてながら、部屋に転がり込んで来た!
「どわぁ~‼︎」
「「「怖い〜‼︎」」」
「…ムー!ムーー⁉︎」
「ちょっとあんた達!仁が息できなくなってるみたいだから早く離れなさいよ‼︎」
シアンが俺の身に起きてる危険な状態を察してか、慌ててみんなを起き上がらそうと必死になっている。
真っ暗で周りは全く見えなかったが、顔に当たっているものをどけようと手で動かしたとき、ふと心地よく感じた感触があった。
顔の両面から強く押し付けられて息ができずにいたが、その正体は恐らくこの柔らかい感触のものなのか?
プニッ…プニッ!
「「あっ…♪」」
「ん?(ピキッ!)」
「あれ?仁兄ちゃん、この固くて長い物はなぁに?」
「んんん⁉︎(ピキピキッ!)」
あれ?わかんねぇけどなにやらシアンの方から不機嫌な声が……これは不味い事になってたりするのか?
「ふふふ…ネレ、エレ。それにみんな?ちょっとでいいからそれぞれ部屋の端っこによっててね~!ちょうどいい感じの明かりを今から私がつけるから!」
な、何故だ?冷や汗がダラダラ出てきて止まらねぇ‼︎
逃げたいけど、怖すぎて体が固まってしまって動けねぇし…
「みんな~!端に寄ったかな?ニコニコ」
穏やかな話し方だが、何故か怖い雰囲気を出しているシアンに、皆が恐れ従った。
みんな「う、うん……プルプルプル(震)」
(イヤイヤイヤイヤ⁉︎ま、待てシアン!)
まずい!恐怖のあまり言葉が出ねぇ⁉︎
「いっくよ~!…てーい♪」
「アギャーーー‼︎」
ワザとらしい程にかわいらしく掛け声を出して、極太の紫電が出口の直線上にある何もない開けた所へと、俺を巻き込みながらまっすぐ伸びていった!
近所民「おお、あそこに灯りが見えたぞ~!」
シアンの紫色の雷撃は、遠くまで伸びて周りに一時の明かりを与えていた。
「…………」
ヘンジハナイ、マルデシカバネノヨウダ。
こう言われててもおかしくないくらい黒こげになってしまった俺を見て、皆は心のなかで同時にこう呟く…
『シアン(ちゃん)だけは、絶対怒らせないようにしよう…』
「…フン‼︎」
俺はこの先、無事に生きていけるのだろうか?
俺が黒こげ状態から回復するまでの間、約2時間以上はかかった。
普通ならとっくにあの世行きだったわけだが、幸い(?)なことに雷耐性はだいぶついていたおかげで、こうして今も生きている…
だが、それから事態は大きく変わっていった。
なんと!次から次へと秋葉原だけではなく、この暗闇の中手探りで移動しながらも、近所から遠くにいる人達までもが押し寄せて来たからだ。
「え!なによこれ⁉︎」
「まあ、あれほどの大きな雷撃がまっすぐ伸びてたらどうしたって目につくからな…いてて」
俺は体に貯まってしまった雷撃の電力を身体中に少しずつ帯電させ、周りを照らして明かりを保つことに成功した。
それにより、至るところから明かりを求めてここにきた人間達が、次々とこの周辺を覆ってしまう事態へと発展していく。
「あ、あれはその…あんたがエッチなまねをしてたからでしょ⁉︎」
「俺のせいかよ!」
「そうよ‼︎」
「「ドキドキドキ…」」
「?」
真矢と富士野は自分の体に起きた出来事を思い出して悶々としている中、佳与はあの暗闇で二人に何が起きたのかは当然分からなかった。
なので、なぜ二人が顔を赤く染めて胸を押さえているのか理解していない様子である。
ガイダー達「アー…」
彼(女)らも、なんと言ってこの場のフォローしたらいいか分からず、たたずんだままであった。
「…ああくそ、悪かったよシアン。とにかくこの状況を何とかするから少しは手を貸してくれよ!このままじゃ眠れやしねぇ。」
「わ、分かってるわよ~…みんなもちょっと手伝って?周りの人達がそれぞれ明かりをつけられるようにしましょ。」
全員「うん!」
帯電している俺には絶対触れないように注意してもらうよう、彼女達と一緒に周りの人達を説得していく俺とシアン。
そのおかげか他の人達が感電する事なく、各自の持ち物からスマホ等で明かりを灯してから、それぞれが燃やせそうなものを探していく。
俺達は、このまま彼らを連れて再びあの小学校の校庭へと向かった。
「仁兄ちゃん。私とお姉ちゃんで先生達にここでキャンプファイヤーしていいか聞いてくる!
その方が、みんな明かりがあって安心するよね?」
「それが良いかもな。じゃあ二人とも頼んだ!」
「「はーい!」」
二人は手に持ったスマホや、紙で作った器つきのろうそくを持ってかけていった。
「禅内クン!私も何かやれることないかしら。」
「そうだな。一緒に焚き火に使えそうな可燃物を探しに来てくれねぇか?あまり木がないところだから、木材とかあるようには見えないが…」
「そうよね。ここにいる人達にも協力してもらって紙類でもなんでもかき集めてもらいましょ?その方がたぶん手っ取り早いわ!」
「だな!よし、行こうか富士野!」
「あっ!あの、禅内…クン。その前にお願いがあるんだけど良いかな?」
「ん?どうしたんだよ。」
「「……」」
シアンとフロットは、黙って俺達を見守っている。
「私のことを名前で…あかりって呼んでくれない?」
「えっ⁉︎」
「だって!皆は下の名前で言い合ってるのに私だけ仲間はずれにされてる気がして、なんか寂しい…から」
「俺がそう呼んでも不機嫌になったりはしないか?」
「なるわけない!ならないから…呼んで?」
「「呼んであげたら?」」
二人は、気にするなと言わんばかりに顔を向け伝えてきた。
「シアン、フロット!…ちょっと照れ臭いけど良いぜ?じゃあ……[あかり]」
「うん…嬉しい。ありがとう仁君!」
「あかり…って、まてまて来ちゃダメだろうが!」
富士野あかりは、そのまま俺にもたれ掛かろうとしたところをフロットとシアンが寸前の所で止めた。
「ハッ!ご、ごめんなさい私…気が緩みすぎてた。」
「あんた、感電したいの⁉︎」
「もう少しで即死するところだったじゃないか‼︎」
「ご、ごめんなさぁい…」
シアンとフロットに怒られ、へこみながら謝るあかり。
そんなやり取りを、この校庭にいた人達はそれぞれ近くから暖かい目で見守る者…なぜかこっちを睨み付けてくるような、危なそうな男女がいたりと様々な視線が俺達に向けられていた。
「ひゃう~‼︎」
顔から火を出しそうなほどに、顔を赤く染めていくあかり。
「もう、あかりってば…」
「あははは…まあ、長いこと身近に感じる人間がいなかったせいもあるし、これから少しずつ慣れて行くんじゃないかな。」
「「二人はアツアツ?」」
双子ガイダー達が笑顔でからかってくる中、気を取り直して皆に燃やせそうなものがないかを手分けして聞いていった。
バイクから見下ろしていた二人組を除いては、みんな協力してくれている。
そこにちょうど職員達を連れてきた真矢と佳与からオッケーが出たことを聞くと、一斉に準備に取りかかった。
「協力してくれる人がいっぱいで良かったね?仁」
「そうだな。まあ、あそこにいる二人の男女を除いては…だが」
「「なんかあれヤダー!」」
双子達も嫌なものでも見るような目をしていた。
遠目で見たところ、県外ナンバーのバイクで来ているみたいだが、一切こちらに近づいてこようとはしない…地元のみんなもどう接してあげたらいいか分からず、行動に出られずにいた。
「全く、ここまで来て困ってるのなら自分達からも返事すれば良いのにね!」
「ふふふ…」
「な、何よフロット!」
「はは!ごめんごめんあかり。あれほど人と関わることを避けてた君がそんな台詞を言うようになったんだなと思うと、なんか嬉しくて。」
「む、むぅ~!」
やっぱり、こっちがあかりの素だったんだな。
「ねぇ仁兄ちゃんにあかり姉ちゃん!あれ見てー!」
「あれって…」
「わぁ!すごくきれい…」
「へぇ…これはなかなか。」
「満天の星だわ!」
「ああ、俺こんな風に夜の空を眺めたの初めてだ!こんなにきれいだったんだな。」
俺たちにつられ、キャンプファイヤーを炊いていた周りの皆も自然と夜空を見上げていた。
「…」
「…フン」
バイクに乗っていた二人もしばらく空を見上げていたが、すぐに顔を下に向けた。
まるで興味はないと言わんばかりに二人してバイクにまたがり、どこへともなく走り去っていく…
「ねぇ仁さん、あの人達なんだったのかなぁ?」
「見るからに嫌な雰囲気だったわよね。」
「「もう来ないでほしい!」」
「こらこら二人とも、嫌いになるのは当然だがあまりそんなことばかり言ってると、そのうち本当にあいつらと同じになっちまうぞ。」
「ヤダ!」
「言わないもん!」
聞き分けがよくて助かったぜ。だけどあいつらの顔、昔どこかで見たような…
「仁兄ちゃんにみんな!花火があるからみんなでやろうって大人達が言ってるよ。」
「私も楽しみ!」
「楽しそうだな!じゃあみんな参加してみるか……って俺は持てないけど。まだ帯電が全然取れねぇし!」
「あははは!残念ね仁。私が代わりに二人分遊んで来るから安心してね♪」
「チッキショー‼︎」
「ご、ごめんね仁君。」
「仁さん、せっかくだから私たちの遊ぶとこを見ててね。」
「ハハ…分かったよ。早く行ってきな」
俺が少し笑いながら送り出すと、皆がはしゃいで小さな花火大会をし始めた。
一人で校庭の草がある場所まで移動し、ゆっくり腰を下ろして皆を見ているなか、俺はさっきの二人組のことがずっと気になっていた。
昔、確かに会ったことがあると思えたから…
大勢で小さな花火大会が終わった後、皆で草むらに寝転びこのまま夜空を眺めつつ、少し冷える夜空のなか各自が固まって眠りについた。
翌朝目が覚めると、ようやく俺に溜まっていた電気が解消されていた。朝日を浴びて、周りの人達も背伸びをしながら起きてくる。
考えてみたら、真っ暗な闇の中でそれぞれが明かりもつかないで暮らすことがどれ程怖くて不安なものか、俺もこの身で感じるまでは知らぬままだったろう。
「おはよう~仁」
「「オハヨー」」
「おう、おはようシアン。ネレにエレも」
「ん、ん~…もう朝ぁ?まだ眠いよぉ。」
「もう佳与?早く起きないと。こんなところでそんな恥ずかしい格好を周りにこれ以上見られたくないでしょ!」
「ふにゃ?……ひゃぁ~!」
うん、俺は一切見てねぇからセーフだ!
「う、うーん…仁君おはよ。」
「お、おうあかり。おは……よ?」
迂闊にも俺は、あかりがはしたない格好だったのを見てしまった。
「ん?どうしたのよ仁く……」
あかりは目が覚めて初めて自分の格好に気づく…よれよれのシャツの隙間から僅かに見え隠れしている控えめの谷間が、俺の目の前に現れていたことを。
「み、み…見るなばかぁ~‼︎」
あかりによる渾身の右ストレートをもろに食らい、草むらがあった校庭の端から更に遠くへと吹き飛ばされてしまった俺。
「い、良いパンチを打つじゃねぇか…あかり!」
パタン!
「「「バカね~」」」
シアン・リオーネ・ミューラに白い目を向けられながら、俺は昨日に引き続き2度目の気絶をした。
そのあと、近所住民に笑われながらも手当てを受けて介抱してもらった俺はお礼を言って立ち上がり、先に帰った皆の後を追って帰路へとついていく。
女との付き合いは、全くもって難しいぜ…
やっと改稿が間に合ったぁぁ〜…遅くなってすいません!
次回作は5月7日土曜の午後18時に更新いたします!




