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店主の素性

犬吹真矢が『つけめん屋や○べえ』に今日から働く事となり、彼女の父親と御柱佳与。

そして、一度帰宅してから合流する禅内仁…それに富士野あかり達がそれぞれのガイダー達を連れ、真矢の働く姿を見る為ともう一度あの店へ食べに行きたいという要望もあり、現地で集合することとなった。


一方その頃、一人で端水幹太とロルの様子を見に行く為、シアンは彼が運ばれたであろう近くの病院へと向かっていく。

個人の病室にて眠っていた端水幹太がふと目を覚ますと、目の前には日が暮れ始めて橙色から徐々に薄暗くなっていく白い天井が見えた。



「幹太?幹太‼︎目が覚めたのか!」


「ロ、ロル?お前暴走してたんじゃ…」


「ああそうだよ…だけどあの人達が俺を止めてくれて、それにシアンも俺の目を覚まさせようと顔をはたいてくれたんだ!おかげでこの通りだよ」


「そっか…俺はまた兄貴やシアンって子に助けられた事になるんだな。恩を返すのが増えちまいそうだぜ!」


「そうだな!ははは……ん?」

コンコンッと、窓の外から叩く音が聞こえてくる。


「ここって何階だっけ?ロル」


「確か5階の部屋だぞ?どこの誰が…ってシアン⁉︎」


「やっと私に気づいたのね」

幹太は窓の鍵を外して窓を開けてあげると、シアンが窓縁にちょこんと降り立った。


「ふぅ、疲れたわ~」


「えっとシアン…だったよな?どうしてここに」


「あ、うん……無事にしてるかなって心配もあったんだけどね?それともうひとつ教えとこうかなって思ってる話があるんだけど」


「「なんだ?」」

二人が息ぴったりに尋ねてきてやや面食らったシアンだが、気を取り直して話した。


「あんたがかばって助けた真矢なんだけどね?今日から代わりにあのお店で働くことになったってことを伝えに来たのよ」


「「はぁ⁉︎」」


「おいおいシアン!あの親父さんはな、俺がまだ入る前の事だけどそこらのひ弱そうな女の子が募集に応募したら門前払いするほど頑固な親父店主なんだぞ?あの犬吹みたいな子が受け入れられる訳…」


「フッフッフ~!実はちゃんと受け入れられてて、今朝から仕込みを教わってたらしいわよ?

あの親父さんも言ってたわ…『この世の中に強気な啖呵をきれる娘っ子がいたとはなぁ!』って笑ってたし!」


「そ、そうなのか?でもなんだって俺の代わりに…」


「まあその辺は自分の口で聞いてみれば?じゃあ私も今ごろ着いてるはずの仁達に合流してくるから、あなた達はちゃんと一晩寝ていなさいよ?じゃーね!」


「あっシアン‼︎」


「な、何よロル?」


「いろいろありがとな?幹太が退院して店に戻るときがあったら俺もこいつの手伝いをすることにするよ。仁のアニキと一緒に、またあの店へ食べに来てくれよな」


「ま、まあ?あそこのつけめんは美味しいしまた行こーかなって考えてはいたけど……べ、別に他意は無いからね⁉︎」


「ヘヘヘ分かってるよ!とりあえずよろしくな」


「う、うんじゃあね…」

シアンは不思議と禅内仁の時と同じようなときめきを感じつつ、仁達のいる場所へと急いで飛んでいった。


「おお、白色か……って!なんでそんな顔で見てんだよ幹太⁉︎」


「ハハハ!いやぁロル、お前は女を口説きやすいやつだったんだなぁと思わず感心してたんだよ!それにしっかりとあの子のスカートの中も見てたんだろ?ん?」


「イヤイヤイヤイヤ‼︎みみ、見てねぇよぉ⁉︎」


「はははは!動揺しすぎだっつーの」

そんな賑やかな会話を二人がしてる最中、シアンはふと彼らの方から不快な感覚を覚えつつも、そのまま飛んでいくのであった。



急いで家事をすませてから駆け足で『つけめん屋や○べえ』前の近くに来てみると、集まっていたみんなを発見……ギリギリ合流を果たした。


「悪いみんな!待たせちまって」


「大丈夫だよ仁兄ちゃん!みんなもついさっきついた所だから」


「そうか佳与!それは良かった。じゃああとはシアンだけだな」


「…ぉ~い仁!みんな~!」


「あっ!禅内クン上に…」


「え、上?」

見上げた直後にポスン!っと、シアンらしき何かが俺の視界を塞ぐがこの柔らかい感触はもしや……


全員「……」


「…ってこらバカ仁!なに人の降りる所に顔を向けてんのよ~~‼︎」

紫色の雷が、俺の体にのみ直撃する。


「ギャー‼︎どう考えてもわざとな訳ねーだろうがぁ⁉︎」


「仁兄ちゃん、これがオトナの男女がしてることなんだね……ポッ」


「仁様~いくらなんでも年端もいかない子にそんな刺激的な所を見せるのは感心しないよ?」


「ま、待て!だからちがうって…」


「禅内仁って思ってたよりも危ないくらいケダモノねだったのね?やるじゃない♪」


「……セクハラです」


「おいおいお前たち⁉︎」


「「仁サマエッチだー!」」


「よりにもよってお前はそっちの趣味に目覚めちまったのか…なんか俺は悲しいぜ」


「お、おっさん⁉︎」


「バカ、最低‼︎行こっ?フロット!」


「あはは仁…気を落とさなくて良いよ」


「フ、フロットぉ~!」


「…ふんだ‼︎」


「シアン~~!」

みんなは俺を置いて先に店に入って行く。しばらく入り口の近くで呆けていた俺をシアンがやむを得ず迎えてくれるまでの間、俺は反省を余儀なくされていた。


「…もう仁さん?いくらシアンちゃんが好きなのは分かるけどそれをするのは夫婦になってからって言うじゃないんですか?」


「「ブウッ‼︎」」


「おじさんに仁兄ちゃん汚いよぉ‼︎」


「「真矢!そんなこと言うなぁ⁉︎」」

俺とおっさんの意見が一致し、思わず大声で訴えた。


「ガハハハ‼︎豪太、お前相変わらず声だけはでけぇな!変わってなくて安心したぜ」


「勘弁してくれよ教官!ただでさえ真矢がここで生き生きと働けてる事自体俺はビックリしてるんだからよぉ。 一体うちの娘は何をやっていてそんな認められたんだか…」


「ばぁか言ってんじゃねぇやい!はっきり言ってお前には似てねえくらいすぐに作業を覚えてテキパキ動ける……こんなできた娘がお前の子供だなんて、こっちこそ驚きだってんだ‼︎」


「ぐ、ぐぅの音も出ねぇ…」


「それにしても、私こんなに美味しいもの食べたのは初めてよ。エージェントとしてあちこち飛び回ってたけど、まさか秋葉原にこんな美味しい食べ物があったなんてね!」


「ほんとだねあかり!僕もここの麺が好きになりそうだよ」


「おお!お前さん達そう言ってくれるたぁ嬉しいじゃねぇか…よっしゃ、ここはあかりちゃんって子とフロットのボウズにもう一丁ずつおまけしてやらぁ!真矢、頼むぞい!」


「合点です親父さん‼︎」

オーダーを受けた真矢は初めてとは思えない手さばきで正確に速く調理工程をこなし、あっという間に二丁が出来上がった!


「親父さん二丁上がりました‼︎」


「おうさ!…へいお待ち」


「わぁ、やったねあかり‼︎」


「そ、そうね…まだ私は食べ終わってないんだけど」

富士野の額から少し冷や汗みたいなものが流れ落ちて行く。


「そ、そういえばシアンは幹太の様子を確か見に行ってくれてたんだよな?あいつは大丈夫だったか」


「あっ、うん!あの様子だと近いうちに退院しそうな感じだったわよ?案外あの人も仁並にタフなのかもね」


「がはは!だから言っただろ?ここで働いてる限りはちょっとやそっとの事ではくたばらねぇのさ!」


「き、教官…まさかまだ[あのトレーニング]を新人達に実践させてんですか?」


「あったりめーだ!むしろ[アレ]のおかげでここにいる真矢はもちろん、今まだ入院してやがる端水も強く生きていけるんだよ!」


「あー、そうなんでしょうけどそれじゃ満足に人が残らんでしょ?これでもし真矢がつぶれちまったら俺は…」


「てやんでい!ワシのやり方は間違っとらんわ」


「お、親父さん落ち着いてよ?」


「真矢は黙っときな!」


「⁉︎」

これはちょっと、危ない雰囲気なんだけどどうしたものか…おっさんも釣られて怒り始めてるぞ。


「…教官、このさいだからはっきり言わせていただきますがね?あんたは何もかも強引過ぎるんだよ‼︎

まだ真矢は入ったばかりなのに、あんたが考案した軍用トレーニングなんて荷が重いんじゃないんですかい?

今の時代でそれをやってるのは現役の自衛隊か警察隊とかしかいねぇだろ!

いたずらに体力を減らし、更に疲れさせてばかりで一体何人のやつがここを辞めてったか……あんたは数えたことあんのか!」


「かっ!弱いやつはうちにはいらんのじゃ‼︎そんな弱い連中がやめていく数など気にする価値もないわい!」

はぁ、しょうがねぇ価値観だなこのオヤジさんは。


切り捨てられる者の痛みも辛さも、一切味わった事がない言い方にも聞こえるがなんだ?この変な違和感は…


「あれ…なんか揺れてる?仁にみんなも早くしゃがんで!地震よ‼︎」


全員「‼︎」

突如、この辺では滅多に起きるはずのない大きさの地震が、この店全体に響いた!


「シアン!この地震ってまさか…」


「分かんない!でもなんかヤバイやつかも‼︎」


「おっさんにオヤジさんケンカは後だ!今は避難場所に移動しようぜ」


「おう!分かった禅な……」


「その必要はねぇ‼︎」


「…何だと」


「何があろうがワシはこの店を出て避難するような弱虫なんかじゃねぇ‼︎こっちにゃ自衛隊指導で使っていた武器の携帯くらいはしてんだ!

火事場どろぼうみてぇなやつが来たってこいつでこの店を守……」

オヤジさんはカウンターの裏側に隠していた機関銃を取り出し、こちらに構えてきた!


「ざけんなこのクサレオヤジが!」

俺はとっさに、この店のオヤジを殴り付けていた。


「おっさん真矢!早く外に出るぞ‼︎」


「ま、待ってよ仁さん!あの人をここに置いて逃げれるわけ無いよ‼︎」


「……このオヤジさんは逃げる事を恥だと考え自分の弱さを感じたくないが為に、聞く耳も持たず自分以外の弱いやつがそばにいるのが嫌いなだけの手前勝手な自己中オヤジじゃねぇか。

それにこんな物騒な物持ってる奴のそばにいたら真矢、お前は真っ先に死ぬかも知れねぇんだぞ?若いだけでなんでも通せるのが現実じゃねぇ!」


「でも、でも!私を庇ってくれた端水君の代わりに頑張るって決めたんだもの!倒れる事になっても彼が戻ってくるまでなら頑張るって決めたんだから‼︎」


「真矢、もう良い!お前の意志の強さは俺にもにもはっきりと分かった。だからもうこれ以上は無理すんな……ハッ‼︎危ねぇ真矢!」

おっさんは真矢の後ろから飛んでくる機関銃の弾に気づいて彼女庇うように抱いたまま、地面に倒れこむ。


おっさんの体からは、赤いものが静かに流れ出していた。


「おっさん!」


「お父さん⁉︎」


「嘘!こんな非常時に…ここは日本よ⁉︎民間人として暮らす場合、所持するだけでも銃刀法違反じゃない‼︎」

富士野も信じられないものを見てるかのような表情をして、しゃがみこんでいた。


「こいつがありゃ誰が乗り込んで来ようが法律だろうが怖かねぇ‼︎わかったらワシに従えや!」

威嚇射撃で俺達の頭上を撃ち抜いていたオヤジさんを見ていると気のせいだろうか?

やはり俺にはどういうわけか、この人の目が『何か』に怯えているように見えた。


「黙れやクソが…」

俺はやむを得ず片手を突きだし、オヤジさんが持っている機関銃を凍らせた。


「⁉︎何故ワシの銃が凍るんじゃ!兄ちゃん、これはおめぇの仕業か?」


「うっせぇよ…しばらく大人しくしててくれ。」

これ以上オヤジさんと会話をしても、聞く耳すら持たずに持っている機関銃を俺達に向けて撃ってくる。


そう感じた俺は、カウンターごとオヤジさんを凍らせる事にした。たとえ建物が崩落しても、この氷の頑丈さなら無事のはずだから……


「…仁」


「おっさん、今傷を塞ぐから冷たくても我慢しろよ?」


「わ、悪いな禅内…」


「仁さん私…」


「今はおっさんを運ぼう…な?」

そう真矢に告げてから、俺はおっさんの体に開いた銃弾跡を凍らせて止血した。


「みんなでさっさと外に出よう!さっきの地震がまた来ないうちに早く避難しねぇとな」

俺たちは、それから無言で店を後にした。


後ほど近くで止まっていたパトカーから警察官が二人ほどが目の前に現れて、俺達が全員さっき味わったことや見たこと。

そして、あの店の店主のせいで逃げ遅れかけて俺があのオヤジさんを凍らせてしまったことなども全て話した。


「そうか。君があそこの店主を凍らせたというのは本当の話なんだね?」


「…はい」


「分かった……すみませんが皆さんは早く避難場所へ!私たちも後で向かいますから」


「仁、私も残るわ」


「大丈夫だ、みんなの所に行っててくれ。後で合流するって警察官の人も言っただろ?」


「うん…あまり危ない橋を渡りすぎないでよ?仁」


「当たり前だろ?大丈夫だから早く行ってくれ…」 


「うん…」

シアンは名残惜しそうに見つめながらも、みんなと一緒に移動を開始した。


「時間をとらせてすまん。本来なら民間人である君も逃がしたいのだが、氷付けにされてる人も助ける義務があるのでな?

解凍の仕方は任せるから手を貸してほしいのだ。」


「分かりました…ただし相手は機関銃っぽいものを持ってます。恐らくその人の足元にもまだ武器があるかも……無力化した方がいいですか?」


「ふふ、君はなかなかに賢いな?なぁに!既に応援要請はしてある。こちらの判断に任せて解凍を頼むよ」


「分かりました。では、入ります」

中に戻ってみると、今もカウンターの上に両足を乗せ、銃を構えた状態で固まっているオヤジさんの姿があった。


「…へぇ、こいつは見事に凍ったものだな。ガイダーにやらせたんではなく本当に君がやったのか?」

まだ警察官の人が疑っているのも無理はないか…仕方ない。


「はい。こんな感じです」

片手を突きだして、奥のスペースに少し氷を出して見せた。


「⁉︎まさかこんなことが…」


「本当は身を守るとき以外は、こんな風に攻撃したくないんですけどね」


「す、すまん。だがこうして見せてもらっただけで十分な証拠だ!ありがとう……お?他の仲間達も来たか!おーいこっちだ‼︎」

すぐにこの店の外と中に、警察官が周りを取り囲み銃を構えて準備は完了した。


「よし、解凍してくれ」


「…はい」

俺が強く触れると、オヤジさんを含めて全て凍っていた所が消えていった。


「ガハッ!カハッ…」


「…オヤジさん」


「けっ、警察官程度がワシに手ぇ出せるのか?お前らのトップとワシは師弟関係にあるんだ。あいつだってワシの言葉に耳を必ず貸すだろうよ!」


「…お久しゅうございますね先生」

やや年輩の男性刑事さんらしき人が来たが、知り合いなのか?


「おお、よくきたなおめぇ!早くこいつらを立ち退かしてくれ。ついでにワシを凍らせたこのガキをとっちめてくれや‼︎」


「先生……もうこの辺で終わりにしてくださいますか?店を守る理由、本当はすでに無いのでありましょう?」


「何を言い出すんだ(ごん)!お前までこの店で働いてきた恩を忘れたってのか?」


「いえ、私達が恩を忘れたのではありません。あなたが私たちの気持ちを忘れたのですよ?

本来なら退職後の元自衛隊や軍隊のOB達と、仲良くここで働く事を私たちで決めていたではありませんか。

だがあなたはいつからかそれを拒み、今日まで私達を精神的に追い詰め次々と皆をやめさせるような真似を繰り返して来られた……以前のやり方なら間違いなくここは繁盛してたでしょう‼︎」


「黙れやぁ~~‼︎」


「⁉︎させっかよ!」

またこのオヤジさんは銃をぶっぱなして来やがった!間一髪俺の作った氷の盾でこの人達を全員守る。


「!……ありがとうよ?あとはこの私東京都警視庁総監・阪原権(さかはらごん)に任せい!君のおかげでもう大丈夫だから早く避難をするんだ。」


「えっ?でも…」


「安心せい。あとはこっちで守れる!防御部隊前へ‼︎」

見事な連携で俺の前に盾を持った部隊が、代わりに銃撃を防いでいく!


「すげぇ…」


「すごいか…ふっ!まあいい、さっさと逃げなさい」


「は、はい!」

俺は念のため盾を前に構えながら後退して出入り口を過ぎた後、皆の元へと急いで移動した。

後ろの警察官さん達に見送られて、俺は合流場所へと急いでいく。


あの人達が抱える事の発端は正直気にはなるけれど、今は地震の被害にあう方が怖いから逃げることだけを意識しよう!


俺はそれ以上振り向くことなく、早急にこの場を立ち去った。

現実でもし、麺処のカウンター裏に銃などが常備されていたらこの国は自己防衛が正しいという認識で通ってたのかも知れませんね……


次回の投稿は、少し休息がが欲しいので5月3日15時に致します!お楽しみにー‼︎

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