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秋葉原への帰り道

俺は手の中で穏やかな寝顔をしてるシアンと隣にいるミューラを連れて、今渋谷からの秋葉原に帰る方角を確認して移動していた。


なぜ今さら確認してるかというと、俺は[地上を通ってこなかった]からだ。


「ええ~!空中に氷の道を作って走りながら移動してきた~⁉︎」

ミューラはひどく驚いていたが、それは当然だろう…アスリートでもそんな真似はできないからな。


「ああ。実際やった自分でもバカじゃねぇかと突っ込みたいけど、やっちまってるんだからなんも言えねぇな!」


「じゃあ帰りもそれで行けば良いんじゃない?」


「まあ、もしシアンが起きてくれるなら二人には飛んでもらってついてきてくれると助かるんだが…な?」


「ムニャムニャ……エヘヘヘ」


「おっけー、んじゃ起こすね?…ほい!」


「ちべたー⁉︎」


「おっはよーシアン!」


「み、ミューラ!」


「どんな幸せな夢を見てたかは聞かないけれど、残りはアキバに戻ってからにしてくんない?」

ミューラは一旦俺を一度見てから、そう言い放った。


「ひ、ひゃあぁ~~!」

シアンが急に顔を真っ赤にして、俺の手から離れ俺の中に引っ込んでいった。


「…おーいシアンー?」


「~~~‼︎」

俺のなかで、声にならない声を出しているシアン。


「…今はこのままそっとしとくか」


「そうね。んじゃ早速だけど見せてもらえないかしら?どんなのか気になるし!」


「それは良いけどよミューラ、お前速く飛べるのか?」


「バカにしないで?これでもいろんな野良ガイダー達と戦うなかで逃げ足は鍛えてるつもりよ?かくいうあたいも、その野良ガイダーの一人だけどね!」


「野良ガイダーか…聞きなれない言葉だが、よかったら秋葉原についてから他の連中と一緒に聞かせてくれよ。じゃあ、上に飛ぶぞ!」

 

「オッケー!」

二人はそれぞれの方法で、建物の上へとたどりついた。


「おし、この辺の高さなら十分か。行くぞミューラ!……ミューラ?」


「ぜーっぜーっぜーっ…」


「お前全然大丈夫じゃねぇだろ…それ」


「な、なんなのよあんた!このバケモン⁉︎」


「そう言われてもな、まだ[雷での移動]を覚えたばっかで慣れきってねぇんだよ。しょうがない、この際俺の上着ポケットに入っとくか?」


「えっ、どうして?」


「さっきのはたいして気合い入れてないからよ、こっからはちょいと速く走らねぇといけねぇんだ」


「待って?確かここ渋谷から秋葉原までって、車だと20分位よね……あんた走って何分でついたの?」


「あ?1分だけど」


「はぁ⁉︎一分って、リニアモーターカーや新幹線の速さと同じじゃない!どう考えても不可能でしょ!」


「そんなに言うなら直接俺のポケットに入って実際に味わってみろよ。とりあえずポケットのボタンは閉めといてやるから、ほら早く!」


(あ、ありえない……そんなことが本当に可能なのかしら?でも、それがもし事実なら少し見てみたいかも。)


「分かった…振り落とさないでよ?」


「だったら、服ポケットの内側にしっかりしがみついときな?」


「うん…」

ミューラが俺のポケットに入るのを確認して、服のポケット上にあるボタンを二つ全てはめといたし、これなら少し安心だろう。


俺も気休めだが、空気抵抗に備え伊達眼鏡とマスクをつけて準備完了だ。


「行くぜ!」

声と同時に俺はビルの上からうんと高くジャンプすると、氷でややごつごつした足場を作りながらしばらくゆっくり直進する。


だが本番はここからだ!俺は両足に電気をまとい、氷と足の接触部分に空気との摩擦を減らす感じに調整。

よって、即席のリニアモーターがここに完成した!速度も始めとは桁違いに増していった事により、爆発的な風速がこの体に直撃する!


「いいいいいぃ~~~~‼︎」

激しい遠心力が今、ミューラの体を襲っていた!



(こここ!こんなの、シアンだって絶対耐えられないわよぉ‼︎)

1分という短い時間を、この日とても長く感じたミューラだった。


無事に秋葉原に着いた俺は、近場の少し高い建物へと降り立つ。


「ぷはぁ!ああ、きつかった…やっぱり1分でも息を止めてたらきついなぁ?ミューラ」


「…………」

あれ、返事がねぇぞ?

ポケットのボタンを全て外して、恐る恐る中を覗きこんでみた。


「やっべぇ!気絶してら」

ミューラは口から泡を吹いて、中で気絶していた。


「…とりあえず、アパートに戻ろ」

建物の屋根つたいに俺は移動して、問題なく帰ってきたんだがみんなの反応が……なんというか変だった。


「おお、おう禅内か……も、もう戻ってきたんだな?」


「す、すごいやー仁さん…」


「仁兄ちゃん、スーパーマンみたいだったー!」


「そ、そうか?ありがとな佳与」


「え、えーっとぉ…仁様シアンは?」


「おお、そうだったな!おいシアン秋葉原に着いたぞ早く出てきな?」


「あ~~……ふぎゃ!」

なんでのろのろ出てきて、下に落ちてんだよシアン!


「ちょっとシアンしっかして!禅内様、一体何をされたのです?」


「あらら、シアン目を回してるね……仁様?もしかして戻るときもあの速さで帰ってきたの?」


「あ、ああそうだけど?」


全員「あー…」

あれ?なんだこの反応。


「はぁ……まあ、体の中に入ってたんだろうからこれで済んでたかもだけど、外側にいたら間違いなく気を失ってたのよ?仁様!」


「え⁉︎そうなのか。じゃあこいつには悪いことをしちまったかなぁ…」

ポケットからミューラを取り出す俺。


「?誰かいるの…ってええ~!ミューラ⁉︎」

そこには、未だ泡を吹いて気を失ったままのミューラがいた為、慌てて俺からミューラを抱き後退するリオーネ。


「な、なんてまねしてんのよ~~!」


「禅内様正気ですか⁉︎危うく彼女が死んでしまうところだったのですよ‼︎」


「ご、ごめんなさい…」


「仁兄ちゃん無茶苦茶だね!」


「とにかく、一旦ミューラとシアンは今日私たちが面倒を見ますので禅内様は来ないで下さい‼︎」


「わ、分かった」


「では、これにて失礼!」


「仁様!女は大事にしたげてよ?」


「あはは、仁さん。彼女達はあんな風に言ってるけど、シアンちゃんを連れ帰ってくれたことはとても感謝してるんですよ?」


「ああ。ありがとな?真矢」


「ヒューヒュー♪」


「ってこら、佳与ぉー!」


「あははは!ごめんなさい~♪」

二人も帰宅していくのを俺はそのまま見守ってると、おっさんが声をかけてきた。


「お前はもしかしたら、この先大きく化けるんかもなぁ。きっと苦労だらけの人生になるかも知れねぇが、まあ気張りすぎないで頑張れや!」


「はい?あ、ありがとうございます…」


「ははっ、いずれ分かるだろうさ!じゃあな?明日の仕事は忙しくなるから覚悟しとけよ。」


「は、はい!ありがとうございました」

しばらくすると、おっさんの姿も見えなくなった。


「さて、俺も自室に戻るか!そういや久しぶりに一人の生活に戻るんだよなぁ?」

ステータスを見るようになってまだ一ヶ月もたってねぇけど、まったく退屈しない毎日だった気がする。


よし!久しぶりに自分のステータス見てみるか。



 ステータス表示


禅内 仁(25歳) レベル25


体力(HP)500(↑) スタミナ500(↑)

攻撃力250(↑) 精神力(MP)250(↑)

防御(忍耐)力350(↑) 器用さ550

賢さ(↑)2000 魅力230(↑)


責任感

誠実の姿勢(↑)

状態異常耐性++(↑)

氷属性攻撃・氷耐性New

雷属性攻撃・雷耐性New

ステータス閲覧 

商売話術

ゲームプレイスキル

不屈の意志+(↑)

格闘センス

説得術

誘導話術New

氷雷塊New

氷攻撃New

雷攻撃New

地場機動力New

アイスロードNew


:称号

鋼鉄のメンタル(↑) 強い責任感

強き若者(↑) 立派人間

商人の卵 舎弟持ち

初級格闘者 対話術師

閲覧者 異常耐性所持者

氷属性魔法取得者New

雷と氷を操るものNew



「あれ?なんでこんなにレベルあがってんの?」



・某建物の屋上にて


己のステータスを見て疑問だらけになっている仁をまるで見張るかのように、遠いところから覗き続けている人物がいた。


「へぇ、あれが最近暴走ガイダー事件の収束に一役かってるって報告があった男かぁ…なんかぱっとしない雰囲気だけど本当なの?」

全身が社会人のスーツみたいにぴっしりとした上下スーツの姿をした女性が、双眼鏡で禅内仁を眺めていた。


「ダメだよあかり、人を見かけだけで判断してちゃ!」

男子っぽいガイダーが注意をしてくる。


彼は、黒い天然パーマの坊っちゃんみたいに、白くて長いカッターシャツと深い藍色の長ズボンをはいていた。


「ええ?だってどう見ても目付きが悪くてあんまり冴えない感じの男じゃん!」


「ふふ、本当に冴えない人ならあれだけ多くのガイダー達と交流持つことなんてできはしないと僕は思うよ?もう少し様子を見てみない?」


「ふぅん……プロットがそんな風に言うなんて珍しいこともあるのね。まあ良いわ、もう少しお手並み拝見とさせてもらいましょ?

そして必要な人材だと上が判断したならこの私…[富士野あかり]がたっぷりあの男を後輩として足元においてやるんだから!うふふふふ‼︎」


「はぁ、また始まったよあかりの新人潰し……それはもう悪い癖だからいい加減直した方が良いって。」


「そんなんじゃないわよ!だいたいそうは言うけどプロット?あなたは間近で見るだけじゃなく戦ってみたいとか思わないわけ?」


「それは条約違反で禁止だと言われてるでしょ?僕たち[ガーディ]はガイダーと人間の治安を守るための組織、そんな真似をすれば…」


「この世の管理者・マスターゼノンに制裁を加えられるんでしょ?ちゃんと分かってるっての!」


「ならそんな真似絶対しちゃダメだからね?せめて、ガイダー騒動の手助けくらいはしてあげないと」


「はぁ、つまんないなぁ。まあでも、犯罪者として逃げ続けてる連中と一緒になるよりはまだマシよね……ん?」


「どうしたの?あかり」


「いやぁ、今私…彼に見られてるような気がするんだけど。」


「まさか!結構離れてるはずなのに?」


「気のせいかな?まぁいっか!じゃあ本部に帰りましょ。」


「そうだね……」

あかりと名乗る女性は先に軽々と降りていくがプロットは一人考え事をしながら、まだ禅内仁のいる方角をしばらく眺めていた。


「もし本当に見えているのなら、彼は僕たちよりも[上の次元]にいる人なのかもね。」

そんな意味深な言葉を口に出した後、今度こそプロットは彼女の元へと戻っていった。



・禅内仁の部屋


「…何であんな目立つ所から、俺の方をスーツの人とガイダーっぽいやつは見てたんだ?」

まあいっか!久しぶりにゲームでもしていよう。


彼はこの時、己が規格外の強さになっていたことを全く自覚していなかった。



一方その頃犬吹家にある真矢の部屋にて、なにやら女子会みたいな会話が始まりだす。


「はううぅ…」


「おーいシアーン?まだ顔が赤いよ~」


「り、リオーネ…うん、なんとか大丈夫ありがと!でもこっちの彼女は別の意味で大変よね?」

みんなが向けた視線の先には、未だうなされているミューラの姿があった。


「うーん、もうそれ以上飛ばさないで~…」


「「「重症(です)ね」」」


「えっとリオーネ、この子ミューラちゃんって言うんだっけ?」


「うん、そうよ佳与……彼女はね、昔は恋のライバルであり友達でもあったの。」


「えっと、ライバルってことはやっぱり相手は…」


「ええ、あのバカルーダよ!」


「「ですよねー」」


「女の戦いって怖いんだね?お姉ちゃん…」


「そうね佳与…いずれはあなたもそうなるかも知れないよ?」


「嫌だなぁ……そうなるくらいなら仁兄ちゃんにずっと守っててもらおうかな?」


「「それはダメ!」」


「ぶぅ!ケチ」


「それで、シアンちゃんは素直に仁さんに向かって好きって言えそう?」


「正直言いたい。でもいざとなると素直に言えなくて、今までズルズルってなって…」


「もう、煮えきらないなぁ!じゃあ今度仁さんがお休みの日にでも気分転換にどっか遊びに行こうよ!」


「えっ?遊びに行くだけで良いの?」


「甘いよシアンちゃん?そこで、私とあなたでどっちが先に好きだと告白するか勝負しようよ!ミューラって子との勝負は受けたんでしょ?だったら今度は私の挑戦も受けて!」


「真矢!」

真矢は真剣にまっすぐシアンを見てきた。


「し、勝負したらダメだよ…」


「どうしてなの?シアンちゃん」


「私、また暴走しちゃうかも知れない!あのときは仁がミューラと協力して助けてくれたから良かったけど、もしあいつ以外の人間にあの時みたいな電気が当たったら間違いなく死んじゃうのよ?そんなの嫌‼︎」


「…ありがとシアンちゃん、でも一つ思い違いをしてない?私が言ってるのはデート勝負なの。

能力とか関係なしに、一緒にいる時間をどれだけ満喫して告白できて選ばれるのが勝利条件なのよ?」


「‼︎」


「ねっ?だから大丈夫。仁さんが誰を選んだってお互い恨みっこなしの勝負なんだから!」


「…うん、やる!」


「良かった!ずっと塞ぎ混んでるままになるかと思ったけどこれなら安心ね!シアン」


「ありがとうリオーネ…」


「う、う~ん……あたいは一体」


「「ミューラ!」」


「シアン、それにリオーネ!って事は、あたいはアキバに着いたの?」


「そうよ!仁がなんか無茶したみたいでごめんね?」


「仁?禅内仁……ブルル!コワイコワイコワイ‼︎」


「トラウマになっちゃったね…シアン」

リオーネがシアンに小さく呟いた。


「な、なんかゴメンナサイ」


「…はっ!ううんシアン、あたいの方こそごめんなさい‼︎あたいのせいであんな事になっちゃって。」


「ううん良いよ…むしろ、おかげで少しは吹っ切れたからお礼を言いたいくらい!」


「良かった、そう言ってもらえて」


「あ!でも二度とあいつと戦いたいなんて言わないでよね」


「に、二度と言わないわよ⁉︎あんなバケモンじみた人間となんて死んでも嫌‼︎」


「うひゃあ‼︎」


「あ、あははは」


「仁兄ちゃんがなんか気の毒だなぁ…」


「…正直場の雰囲気を壊すような意見で申し訳ありませんが、わたくしとしてはあまり禅内様と関わりあいになるべきではないと思います。」


「…何で今そんなことを言うの?」

ミューラがなるべく静かな声で尋ねる。


「彼は明らかに異質です。知能もそうですが、能力が高すぎて常人では捉える事ができない存在かも知れないんですよ?そんな人間のそばにいたら不幸に……っ!」

パチーンッ!と、甲高く響く音が部屋中に響いた。


「な、なんだ?上から甲高い音がしたぞ…」

下にいる犬吹店長が音を聞いてややビックリしていた。


「…ティーアって言ったわね?あなたの言うことは確かよ。でもね、異質だからって理由だけで相手の気持ちを無視して勝手に壁をつくると、必ず関係にひびが入っちゃうのは人間もガイダーも同じなの。」


「ミューラ…禅内様の話題で怯えてしまうあなたが何故そんなことをおっしゃるのですか?」


「そうね、今だって怖いわよ……でもあたいは野良ガイダーよ?似たような境遇のガイダーと共に戦ったり、時には戦って相手のガイダーを殺す。

そんな中で長い間生きてきたの!今を生きる為に大切だった事はね?自身の力も周りの力にも、決して目を背けないこと!」


「「⁉︎」」


「私も分かるわミューラ、あなたとはアイツをかけて争った仲だし!」


「リオーネ…」


「わたくしには、よく分かりません…」


「まあね、無理に知ろうとしなくて良いわよ。でも、あまり壁を作ることばかり考えないで……あたいが言いたいのはそれだけよ?」


「分かり、ました」


「じゃあそろそろ、私と佳与は夕飯を食べに降りてくるわね…みんなはここにいる?」


「うん、一緒にいるから気にしないで食べてきてね」


「ありがとリオーネ!じゃあ早く行こっか佳与」


「はーい!」



四人の女ガイダー達による談話は、このあと寝るまで続いていたという。

常人では不可能な移動能力を身につけた禅内仁……彼を取り巻く新たな出会いの先に待ち受けるのは幸福か、それとも苦難か。

ガイダー達と人間達の間に育まれる[絆]の物語が、今始まる!


今日も見てくださり、本当に感謝いたします!次回の投稿は今夜の22時に行いますので、ぜひまた見に来てくださいね。

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