98話、松殿守備戦
途中で一人称から三人称に変わりますがご了承下さい!!!
「伝令兵!名は?」
「上総太守様郎党、新羅三郎義光が後裔、柏木甲賀入道義兼と申しまする。」
「ほう、そなた僧兵か?」
「園城寺で出家をいたしました。」
「婿殿、甲賀入道とその兄山木冠者は太守様随一の郎党じゃ。この兄弟はあの三井寺に押し入り僧兵の名代となった剛の者。婿殿の郎党と仕合をしても、五分であろうな。」
「上総介様、お世辞が過ぎますぞ!」
とか言いつつにやにやしてんじゃねぇか。てか、勝手に着いてくんなよ、お義父さん。
「甲賀入道こそ謙遜がすぎるぞ!」
「こんなうかうかして場合じゃないんじゃった。娘とお腹の中の孫が、危険にさらされておる。急がねば。」
宮様も危険ですけどね。
「その通りです!!父上!!!!早く行かねば我が甥も姉も木曽の山猿ともに殺されてしまいます!!!!!」
うわ!実信大きい声出すな。
実信も父がこうだから、こうなったのかも。前世?では俺より生きてそうだけど?
――――――――松殿―――――――
以盛達が松殿に向かっている一方、松殿では元親王、平上総太守最勝が優美な甲冑を身にまとい、一の郭の御殿の前に威風堂々と天照大御神と書かれた旗と、皇族の紋章描かれた旗が無数たなびく本陣を置いている。
「上総太守様!何とか三の郭、持っております。」
「わかった。余は、二の郭の民を安堵させ、三の郭の兵を鼓舞して参る。義経、高綱、着いてまいれ。」
「し、しかし、上総太守様の御身に、もしものことがあれば!」
「そうでございまする!この佐々木四郎高綱と山本冠者殿にお任せくだされ。」
「ならぬ!宮である余が行くから、民は落ち着き、兵は士気が上がるのじゃ。」
2人は1度聞いたらこの男が考えを曲げないことを分かっている。
「「承知!」」
上総太守は御殿に向かい、
「玉殿!安心なされよ!そなたの夫が参るまで、余がこの松殿を守り通そうぞ!!!」
そう言い残して本陣を後にした。
上総太守は二の郭の門の楼閣に立ち、
「兵達よ、民達よ!よく聞けぃぃ!!!!余は、後白河院第三皇子、平上総太守最勝なり!!!!!皆の者、今は耐えい!!!時期に援軍が届く故今だけでも耐えい!!!!我が精鋭達よ!民を守れぇい!!!!!」
最勝がそう、兵と民を鼓舞すると歓声が沸き起こった。
すると、1人の武者が女武者を伴って、
「上総太守様とお見受けする!拙者、木曽冠者義仲と申しまする!!この松殿を開けてくだされば、全ての民と兵の命を助けまする、そして宮様を神輿とし、平家を追討いたす!」
沈黙が流れたあと、
「何を申すか!!!逆賊が!!!!余は、帝の兄であると同時に臣下じゃ!!!!!!!なぜ逆賊に手を貸せようか!!!!????者共、何としてもこの山猿共に、我らの家をくれてやるな!!!!!!」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」」」」」
「伝令!!東門より、援軍が!!!遠江守様が率いられる総勢1000!」
「よし!!でかした松王丸!!!!早く援軍をいれぇい!」
数分もしないうちに、二の郭の門が開き、一気に遠江勢い、千が最勝直下兵の援軍に躍り出た。
「上総太守様、おまたせいたしました。」
「うむ。松王丸、約束通り松殿は守ったぞ。」
「さすが宮様でございます。」
「最初にそなたの子を抱かせよ。」
「し、しかし...」
「余はそなたの子の命の恩人じゃぞ?」
「わ、分かりました。」
「はっはっはっ!冗談じゃ!!しかし油断してはならぬぞ!!!!」
楼閣の上から、最勝が叫ぶ。
急な援軍の急襲により、木曽兵は士気が落ちている。
そこに、二の郭から火の玉が上がる。
「ほう、火薬で火を打ち上げておるのだな。」
「その通りでございます。我が軍師、実信の発案でございます。」
「ほう、信連の倅か。流石じゃな。また美味い酒を作らせてくれ。して実信はどこじゃ?」
「我が娘を付き添っております。何とか出産にいい方法があるとかないとか。」
「実信は本の虫出会ったからな。有益な方法もしっておるのじゃろう。しかし、火をあげるということはなにかの合図じゃろう?」
「そろそろ、奴らが来る頃でございます。」
「赤坂兵部少丞直下兵団、赤熊!この兵部少丞に続けぇー!!!!!!!」
「「「「「「おおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」
黒革縅の甲冑を身にまとった集団が坂を駆け上がる。
歩兵の前の20数騎の先頭の男は熊の毛皮を被っている。
その集団は士気がさがっている、木曽兵の後方を強弓のごとく、突き破っていく。それに呼応するように、1200の軍勢は攻勢を仕掛ける。
「巴!逃げるぞ!!!」
「分かりましたわ!駒王丸様!!!!」
「兼光、お前も逃げるぞ!」
「ふっ、誰かが残らねばなりませぬ。巴、殿をお守りせよ。」
「兄上...」
「な、何を言っておるのだ!!!!兼光!!!!!」
「巴!!!行けぇぇぇぇ!!!!!」
「承知しました、兼光兄様!!」
「か〜ね〜み~つ~!!!!!!!!!」
義仲と巴は、数騎で、命からがら松殿を降りていった。
「駒王丸様、お仕えできて幸せでござった。」
しかし、兼光が安堵したのもつかの間、義仲は、200数騎の兵に囲まれる。
「源木曽冠者義仲様であらせられるな?」
「いかにも。もう良い。わしの首を取って手柄にせい。」
「それはなりませぬぞ、駒王丸様。」
「ん?そなたは...?ん!斎藤か!!!!!」
「斎藤でございまする。生きながらえるのです。斎藤と一緒に遠江守様の元に参りなされ。」
「ならん!いくら斎藤の頼みであっても遠江守の元へは行けぬ!!!ならばこの義仲自害いたす!!!!!」
「黙りなさい!!!!!そなたの父君を討ち取ったのは誰か?憎きは誰か?義朝であり、頼朝であろう!!!!!ならばその軍才、遠江守様の為に使えい!!!!」
義仲は、甲冑を脱ぎ、刀を抜いた。
「わしは、斎藤に2度も命を救われたのか。しかし、ならん。やはり生き恥は晒せぬ。すまんな、斎藤。礼に閻魔にそなたの良きことを伝えておこう。」
「駒王丸様なりませぬ!」
義仲が首を掻っ切ろうととする刹那、白い手がその刀を掴んだ。
「巴は、貴方様を好いております。巴を1人にしないでくだされ。」
「巴.........。」
巴は、潤んだ瞳で義仲に訴えかける。
「わかった。斎藤、遠江守様の元へ連れて行ってくれ。」
「承知。」
「ひとつ頼みがある。わしの兵たちの命は取らないでくれ。」
「承知致しました、者共!!!!聞けぇぇぇぇ!!!!!!木曽冠者義仲は、この斎藤尾張介が捕らえた。戦は終わりじゃ!!!!!!木曽兵は皆投降せよ!!!!!」
「斎藤殿、すまぬ。」
「なんてことございませぬよ。」
斎藤実盛は、笑顔で駒王丸に答えた。
疲れました。
お腹減りました。




