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82話、藤原泰衡は愚将なのか?

今回は信円さん視点です。






















拙僧、若輩ものであるが、この度遠江守様に奥州平泉の藤原出羽守泰衡様への使者として遣わされれた。



今はいつ源家の兵が襲ってくるか分からぬので真鍋水軍の船に乗させていただき、船旅となっている。伴の兵50人ほどがついてきてくれているのでなかなかの大所帯だ。


私は、仏道に帰依している。そのため肉食は控えている。


しかし、真鍋水軍の方々のご好意は受けねばならぬ。これはお布施なのだ。



「坊さん、食べないのかい?」


やはり魚も、魚肉であり肉なのだ。それを食べるというのはブッダ様の教えを破るということ。やはり口にはできぬ!


「おぉ!でかい坊さんは食えるんじゃねぇかぁ!」


拙僧の護衛としてついてきた千光房七郎はパクパク食べている。


「七郎、肉食はひかえたほうが...」


「何を今更。我が弟、武蔵坊は破戒僧。ならば兄の拙僧も魚くらい喰らいとうございます。信円様もいかがです?」


よし。そこまで言うなら頂こう。


「う、うまい!」


「そうだろ?そうだろ?魚は釣りたてが1番うめんだ!」


真鍋殿は目尻を下げられている。





――――――――平泉――――――――




平泉の伽羅御所まで足を運ぶと、体が大きな武人らしきお方が歩いておられたので声をかけた。




「突然の訪問申し訳なく存じます。伴遠江守様の使者、信円でございます。藤原出羽陸出羽守泰衡様にお目通り願いたい。」


「主に確認致しますので少々お待ちくだされ。」


半刻ほど、御所の一室でお待ちしていると、泰衡様の家人らしき方が迎えにこられた。


「信円様、押領使様が待っておられます。」


「七郎はそこで待っていてくれ。」


「しかし……」


「出羽守のご命兄様、藤原新寿太郎様が護衛の坊様もお通ししてくだされとの事でございます。」


「分かりました。七郎着いてまいれ。」



広間に通されると、聡明そうな若者が座っていた。


そして、若者の前にはその一族郎党と思われる男たちが座っている。一族郎党の上座にさっきの武人も座られている。


「藤原出羽守泰衡でござる。」


「拙僧、伴遠江守以盛様の使者でまいりました信円と申します。突然の訪問失礼いたします。」


「そんなことございませぬ。噂に聞いている遠江のようには栄えてございませぬがこの平泉でごゆるりと過ごしなされ。」


「平泉の街を拝見いたしましたが、我が故郷京、主の納める遠江にも勝るとも劣りませぬ。」


「お世辞ありがたく頂戴致します。しかしこの平泉も先祖そして、民たちが築き上げてきたもの。私はこの故郷と平泉の民達を守ることができるならば本望です。」


「出羽守様、このままでは平泉と民たちは滅んでしまいますぞ。」


「使者殿何をおっしゃる!!不届き千万!!!平泉は我らが守り通す!」


先程の武人殿が、腰を上げて叫ばれた。


「兄上、国衡兄上、控えよ。信円殿、続けられよ。」


「はは、平泉現当主、秀衡様が擁立なさる、九郎義経殿は、三郎頼朝殿の弟。仮に我ら平家が源家にうち滅ぼされたと致しましょう。三郎殿は、九郎殿を討ち滅ぼそうするでしょう。」


「そんなわけがなかろうが!」


「では、新寿太郎殿、古くは壬申の乱、今日(こんに)では、保元の乱。さらには遠い西方の大秦国では、華羅華羅(からから)帝とその弟君の偈陀(げた)帝が骨肉の争いをしたと聞きます。間違いなくこの平泉は、戦乱に巻き込まれるでしょう。ならば、我が主に着いた方が良いのではございませぬか?」


「し、しかし、我ら奥州藤原は、源家に借りがこざる。この御恩は返さねばならぬ!」


「新寿太郎殿、それはあなたの義父であり、出羽守様の老大人藤原元民部少輔基成様、そしておふたりの実父であらせられる藤原陸奥守様が罪人源下野守の子、九郎殿を養育されたことで済ませておるでしょう?」


「し、しかし...」


「国衡兄上、もう良い。信円殿、そちら方は、我らに、どのようなことを望まれるのか?」


「我らは三郎殿率いる板東武者と武田太郎信義殿率いる甲斐源氏共を征討致します。それが官軍伴征東将軍様率いる伴軍の仕事。皆様には、頃合を見図り、坂東に攻め入って頂きたい。」


「父を討てと申すか。」


「民、故郷と優先順位を決められぬ当主どちらを優先するかでございます。」


「む!もう我慢ならぬ!こんな僧侶など、わし自ら手討ちにしてくれる!」


大柄な、新寿太郎殿が、私に殴りかかろうとしてくる。


「我兄弟子、信円を傷つけるものは誰であろうと許さぬ!」


「ふ、やはりそなたは武蔵坊弁慶のご兄弟じゃな?忠誠心も武蔵坊めにておるとは。信円様、御無礼仕った。武蔵坊のご兄弟か確かめてみたかった上大変失礼なことをいたしました。」


「新寿太郎殿が思慮深いお方でおろどいております。」


「私が1番おろどろいておるわ。いつもあんなに大人しい国衡兄上が、いきり立っておって。まるで戦場での兄上のようじゃった。」


「国衡殿は、やはり武人でございますか。」


「国衡兄上は、平泉一の武将じゃ。そこらの将など相手になりませぬ。では、いつか遠江守様の諸将と手合わせできるといいですな。」

僕は泰衡は愚将などでは無いと思います。


義経を討ち取ったのも平泉を守るには致し方ない事だったでしょうから。頼朝は徹底的に争いの火種を潰していたので、滅ぼされたのでしょう。



国衡は秀衡の庶長子なのですが、秀衡の妻であり、泰衡の母を娶っております。国衡の母は安倍氏の血をついでいたので、国衡の武勇にも納得がいきます。


追記、本来泰衡は押領使ですが、出羽守とさせて頂いております。

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