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好きってなんですか。

作者: ちょこらて

幸せになりたい。

ただそれだけなのに、恋愛って難しい。

相手を思うだけじゃ続かなくて我慢してもだめで何が正解なんだろう。

神様、そろそろ私に運命の人をつれてきて。

幸せになりたい。


 私の初恋。

 小学校4年生の時、野球部の男の子。足が速くてくっしゃとした笑顔が素敵だった。

初恋は叶わないというけれど、私は違った。運がよかったのかもしれない。

あの頃は純粋に好きという気持ちだけで一緒にいられるだけで幸せで、直接話すのが恥ずかしかったから手紙なんか交換してたな。一緒に帰ったことがすごく幸せっだった。バレンタインのチョコは手作りで渡す時真っ赤になりながら頑張って渡した。ホワイトデーに帰ってきたクマのストラップとキャンディー。大切にしてたな。ただそれだけで幸せっだったあの頃に戻りたい。


 なぜそんなことを今更思い出しているかというと、昨晩の電話が原因だ。22歳、社会人の私(立花 紫苑(しおん))は4人兄弟の長女。1つ下の弟(海斗(かいと))、5つ下の妹(真白(ましろ))、8つ下の弟((あおい))がいる。私は高校卒業後、夢があり超が付くほどの田舎から上京した。母子家庭だったため学校の費用もほとんど自分で払い、毎日働きながら眠たい目をこすり専門学校を卒業した。そして夢を叶え毎日忙しい日々を送っていた。そのため実家に帰れるのは1年に1回あるかないかで、今年は難しそうだと母に伝えていた。それを知ってかどうかは定かではないが海斗から連絡が来たのだった。

「もしもし、今大丈夫?」

普段聞くことのない緊張した声だった。私は不思議に思いながら答えた。

「うん、大丈夫だよ。珍しいね。なんかあった?」

「実はさ、紫苑には申し訳ないけど結婚するんだ。

 付き合ってた彼女が妊娠したみたいで。そろそろ覚悟決めてプロポーズしようと思ってたから

 順番は逆になっちゃったけど...。」

 海斗には学生のころから付き合っている彼女がいて何回か会ったこともあるしご飯を食べに行ったこともある。だからすごく嬉しかったし、心から海斗の幸せを祈った。ちょっとさびしい。

「おめでとう!!これから大切にするんだよ。海斗なら大丈夫だと思うけど笑

 それに私のことは気にしなくていいよ。やりたいことやってるんだもん!

 頼りないかもしれないけど、なんでも相談していいんだからね。私達、双子みたいなもんでしょ!」

「うん、ありがとう。俺は心配だよ。紫苑、お前こそ俺のこと頼っていいんだからな。」

「ありがと。がんばるよ。」

そういって電話を切った。

はぁ。自然とため息がこぼれる。海斗に心配されているのは知っていた。私は、昔から海斗に助けられていたのだ。1つしか変わらないから、ほんとに双子みたいに育った私達。小さいとき一人でトイレに行けなくてついて来てもらったり、忘れ物を届けてくれたり、迷子になった私を走って探し出してくれて大泣きしてる私の手を引いてくれったな。さすがに真白が物心ついたころにはしっかりしたつもりだけどね笑


 海斗が心配する理由、それは私の男運のなさだった。

 高校生の頃、入ってすぐに仲良くなった男の子がいた。毎日メッセージをやり取りしていて、面白い人だなとは思ったけど友達としか思っていなかったのだが、相手は違ったようだった。

 ある日一緒に帰ることになり、告白されたのだが正直に友達としか思えないと断った。だがあきらめずに何回も告白してくる彼に少し情も湧き、付き合うことにしたのだった。今思えば後悔でしかない。

 彼は自分に自信がなく、私がほかの男子と話してると嫉妬しすぐに怒る人だった。最初は許せたものの、俺以外の男と話すな、メッセージをするな、見るな、男女混合だろうと遊びに行くなと要求がエスカレートしていったのだ。自分は女の子と話すし、メッセージや電話だってして遊びにだって行くのに。

 その頃の私が一番傷ついたのは『お前痩せた方いいよ。ほかの人もそう思ってるしかわいくなる努力したら。』だった。ショックを受けた私はダイエットを始めた。最初は周りに痩せてかわいくなったねと高評価だった。しかし彼に『まだデブ』『あの子の方が可愛いわ』『重い』と言われ食べることが怖くなり軽く拒食症になっていった。食べる量を減らし、お菓子もやめ、トレーニングをしていたのだが、食べた後に体重が増えてしますと思うと吐き気がしトイレに駆け込んですべて戻すということを繰り返すようになった。

 学校のお昼休み、友達とお弁当を食べる。お弁当は毎朝自分で作っていた。中学校から仲が良くてなんでも話せる大親友の西野 結菜(ゆな)が怖いくらい真顔で私をみた。その横で高校に入学後に仲良くなった佐藤 萌絵が私のことを心配そうに見つめる。二人は部活もクラスも一緒だったから、自然と一緒にいることが多かった。それに彼のこともすべて話していた。

「紫苑、私に言いたいことない?」

今までに見たこともないくら真剣な表情で結菜が言う。

「特にないけど、なんで?」

「あのさ、あんたうちの前で無理しなくていいんだよ。何年友達やってると思ってんの。」

「萌絵も高校入ってからだけど、ずっと一緒にいてなんでもわかるようになったとおもってるんだけど」

二人の言葉を聞いた途端、涙がこぼれた。

「ほら、まったく。

 言葉では好きだって言ってても心がないのに矛盾してることをするから苦しくなるんだよ。

 それにあんたはそのままで十分かわいいんだからこれ以上無理して痩せなくていいし

 あいつ以上に紫苑を幸せにしてくれる人はたくさんいるんだよ」

涙が止まらなかった。号泣してる私の肩をポンポンしてくれる結菜と優しく微笑みながらティッシュを渡してくれた萌絵に感謝してもしきれないくらい、私の心は軽くなった。

「私、頑張って別れようと思う。」

「うん、今メッセージおくりな。うちら見てるから。」

「大丈夫、萌絵たちがそばにいるよ。」

背中を押されメッセージを送る。

[私と別れてください]

[は?何言ってんの。ちょっとそっち行くわ]

え。彼が私の教室にくる。怖い怖い。どうしよう。

焦っていると教室の扉が開く。

「おい、どういうこと。無理なんだけど。」

すごい剣幕で彼が私にいう。怖くて声が出なかった。すると

「もうやめてくんね。うちの紫苑がこんなに苦しそうなのにわからないの?

 その時点で彼氏失格だし、てめえのせいで紫苑の体調が悪いのわかんねーのかよ!!」

「そうだよ。もう関わらないで!!」

と二人が守ってくれた。それでも彼は収まらない。クラスのみんなが息をのんでみていた。

「俺は認めないからな!!紫苑、覚えとけよ」

「もうやめろよ。みっともないし、紫苑がかわいそうだわ。」

と隣のクラスの悠真(ゆうま)君がいう。

悠真君は彼と付き合う前から仲が良く、いつも優しく味方してくれていたのだ。気軽に相談もでき、心をゆるしていた友達の一人だった。彼と付き合ってからは話すこともメッセージすることもなくなっていたが、ずっと見守ってくれていたのだ。

 ようやく落ち着きを取り戻した彼が何も言わず、周りをみてから自分のクラスに戻っていった。これでやっと終わったのだった。その後彼とは話すこともなく、男友達とも普通に話したりメッセージしたり、遊びに行くという普通のことができるようになった。高校生活それなりに楽しく過ごせていた。


 高校3年生になり、部活も引退して夢ができた。その夢を叶えるために専門学校に行くことにした。母と話したが上京して離れることと、金銭面的に厳しいということでたくさん喧嘩した。アルバイトをして入学金を自分で払うのと、家の手伝いをすることで渋々納得してもらった。

 アルバイトは先輩の紹介でガソリンスタンドのバイトをすることにした。時給がそこそこよく高校生でも雇ってくれるとのことだった。そこで初めて愛されることを知った。

 最初の印象は静かそうな人。挨拶してもそっけなかった。2つ年上で専門学校に通っているみたいだった。車を持っていて私よりはお金に余裕がある人だった。ある程度慣れてきて、社員さんとも仲良くなりその人とも仲良くなったある日のこと。締め作業をしていると、急に怖い話になった。夏だったし、テレビ番組でもそういうのを取り上げる時期ではあったけど、私は怖い話がすっごく苦手だった。外は真っ暗でいつも歩いて帰ってたから怖いなと思いながら聞いていた。社員さんとその人と私と3人で社員さんは

車できていた。私が怖がっていると社員さんが

「あれ、紫苑ちゃんって歩きだっけ?だったらこいつに送ってもらいなよ。」

というからその人のことを見ると

「いいっすよ。紫苑ちゃんが嫌じゃなかったら。」

っていうから流れ的に断れなったし、怖かったから

「お願いします。」

といった。お疲れさまでしたと社員さんに挨拶をし帰ることになった。

その人と私の家は真逆だったし、申し訳なくなって

「ごめんなさい。私が怖がるから。おうち反対方向ですよね?」

「全然大丈夫だよ。暗いし危ないから気にしないで。」

なんかその時、全然かっこよくもないしタイプじゃないのに少しだけドキッとした。

私の家に帰る途中に病院があってその裏を通らなくてはいけなかった。

怖かったけど、たわいもない話をして気をそらしてくれてたからたすかった。だけどその時ガシャンという大きな音が病院からしたのだ。びっくりしすぎて

「きゃぁっ」

とその人に抱きついてしまった。

「うぉ、大丈夫だよ。」

とよしよしって頭をなでられて恥ずかしくてすぐ離れたけど、何もなかったかのようにおうちの前まで送ってくれた。それからだった。

「今度ごはんいかない?」「時間あったらデートしてくれない?」

と誘われるようになった。あの時のこともあって少し気を許していたから行くことにした。

さらに仲良くなってため口で話すようになった。『かわいい』『紫苑だけだよ』と言われることが多くなって、私のこと好きなのかなと考えたりもしたけど、年上だし妹みたいに思ってくれてるんだろうなって軽くしか考えていなかった。ある日、夜景を身に行こうと誘われて告白された。でも前の恋愛にトラウマがあったからその時は断った。そのあとも仲良くしてくれていて友達としてそばにいてくれた。バイト終わりは家まで送ってくれることが習慣になっていた。いつもみたいに送ってもらっていた時だった。

「紫苑、俺のさ告白を断った理由きいてなかったから教えて」

もう自分のことあきらめてくれたと思ってたからびっくりした。

「いや、深い意味はなくてさ普通に今後?に活かすためにもさ知っておきたいなみたいな?笑」

「あーそういうことね。実はさ、、、」

と過去のことを話すと

「ありがとうね。全然知らなくてごめん。

 それをふまえた上で俺だったらそんなことしないけどどうですか?」

「またーふざけないでよ笑」

「ですよね~。はい。家ついた!!またね。」

「うん、またね!」

家に入るまで見送ってくれるその人。はぁ。びっくりした。

自分の部屋に入り座り込む。告白された??ただの友達だよね。うまくごまかせたよね。

付き合ったら終わりがあるしこのまま楽な関係でいたい。そう思ってたから焦ったのに胸が痛かった。

なんで苦しいんだろう。携帯が光る。結菜からメッセージだ。

[紫苑、明日遊びにいかない?]

[お。いいよ!!いこいこ]

[んじゃ、明日12時に駅前集合で]

[りょ]

でもその日はドキドキして眠れなかった。

 次の日の朝、鏡をみて

「うわ、寝不足のせいでクマできてるわ~。メイクで隠せばいっか」

1人でぶつぶついってると真白が

「え。顔やば」

「わかってるわ笑」

顔洗って支度を済ませる。よし、そろそろ家出るか。

「行ってきまーす」

待ち合わせ場所でまっていると結菜がくる。

「よ!!てか、今日顔濃くない?笑笑」

「それなー。話したいことあるから早くいこ」

結菜と二人でバスに乗りカフェに向かう。いつも行くカフェでいつもの飲み物を買い席に着く。

「んで、なんなのよ。」

「えっとさ、私がバイトしてるところのあの人いるじゃん?

 告白断ったんだけど、そのあとも仲良くしてくれていつも家までおくってくれてて、、、」

と長々と話す私の話に相槌をうちながら聞く結菜が笑い始める。

「くっ笑ごめんごめん。ちょ、もう無理。聞いてられない笑笑

 それって好きってことでしょ?答え出てるんだから素直になりなよ。」

「はい笑」

そこで自分の気持ちに気付いた。結菜ありがとう。

 次のバイトの時、好きって気づいたから顔が見れなかった。終わった後その人に誘われた。

「ドライブいかない??」

「...うん」

恥ずかしくて気まずかった。

「紫苑、俺とつきあって?大切にするよ。」

「こちらこそよろしくお願いします。」

順調に続き1年を迎え喧嘩もしたけど楽しかった。お泊りデートも遠出もしてたくさん思い出を作った。高校も無事に卒業し行きたかった専門学校にも受かった。遠距離になるけどこの人となら大丈夫だと思った。SNSで卒業式に花束をもらっている彼女がいる動画をみつけて、その人にみてみて、いいなーっていったら、卒業式の日恥ずかしそうにバラの花1輪持って迎え来てくれてすっごい嬉しかった。母にも紹介して会ったことがあり、ちゃんとしている人だと思った。家族で食事することもあった。そして地元を離れる日お見送りに来てくれて絶対会いに行くからと約束もしてくれた。

 専門学校がスタートして、アルバイトも始まり、慣れない環境でメンタルをやられていた。結菜や萌絵も上京組みだったから、それは救いになったかな。学校が終わりくたくたになって寝かけていた時、電話がきた。

「紫苑、大丈夫か??今度いつ休み?」

大好きな声、すぐその人だってわかった。

「次の土日は休み!!」

「わかった!俺も休みだから会いに行くわ」

やった!!会える!!その土日をご褒美にして頑張った。


 土曜日の午前中、新幹線で行くからと言っていたので駅まで迎えに行き、その人が予約してくれてたホテルに向かった。久しぶりの再会で緊張したけど、大好きなままのその人に会えて幸せだった。

「久しぶり。会いたかったよ。大好き。」

珍しく素直に言葉にしてくれたその人が可愛かった。

「私も大好きだよ。」

二人で食べた朝食も迷いながら行ったランチもコンビニで適当につまみとお酒を買って飲んで一緒に寝たことも全部幸せで2日間があっという間に過ぎていく。帰らなきゃいけないのがこんなにつらいとは知らなかった。新幹線の時間ギリギリまで離れたくなかった。ホームまで見送りにいって、最後は泣かないで帰ろうと思ってたから泣き虫なのによく耐えたと思う。その人が新幹線に乗って扉が閉まったと瞬間に我慢してた涙がこぼれてしまった。携帯が振動する。

[紫苑泣かないで。また会いに来るから。]

[うん、約束だよ。私も落ち着いたら絶対に帰るから。]

[待ってるよ笑]

頑張ろうと思えた。でも長くは続かなかった。

その人も仕事が忙しくなり、私もいっぱいいっぱいで余裕がなかった。

喧嘩することが増えた。連絡も少なくなっていってお互い疑うことが増えた。浮気するはずないのに

その人が女性といることが不安で、その人も私が知らない男の人といるのが不安で、お互い苦しかったね。私が帰省した日、お泊りする約束をしていた。私が上京してから会えたのは3回。これで4回。ほぼ毎日会っていたのにこんだけになって、いろいろ言いたいこと伝えたいことがあったのに言えなくて苦しかったね。久しぶりにあったその人はなんだか疲れていて、大人っぽくなっていた。

「久しぶり。大丈夫??」

私が聞くと優しい笑顔で答える。

「大丈夫だよ。紫苑に会えたから元気でた。」

そういってくれたその人に申し訳なかった。きっと仕事で疲れてたのに無理して予定あわせてくれたんだ。私もアルバイトして学校行ってるからわかった。そして、決断した。そこで初めて知ったんだ。好きだけじゃ一緒にいられないことを。その人が予約してくれたホテルに行き荷物を置いて予約してくれたレストランに行く。やっぱり二人で食べるごはんはすごくおいしくて、二人でいる時間はあっという間に過ぎる。なにもしなくても楽しくて、でも苦しかった。ホテルに戻りお風呂に入って一緒に寝る。きっとその人も何か感じとっていたんだね。

「紫苑、言いたいことがあるなら言ってごらん。大丈夫だから。」

少し悲しそうな声でいう。

「あのね、大好きだよ。でもね、、、」

泣いてしまう私をなでながら

「ゆっくりでいいよ。大丈夫。うけとめるから」

「ごめん。でもね、別れよう。」

「いやだって言っても、紫苑は頑固だから曲げないんだよね。

 いろいろ考えた結果なんだよね。ごめんね。頼りなくて、、、」

「そんなことない!でもごめん。ごめん」

泣きじゃくる私を大丈夫っていいながらなでるその人。

幸せだった。人生で一番幸せだった。ありがとう。

泣き止んだ私をみて

「かわいい顔が台無しだ笑」

なんて笑うからつられて割れっちゃった。ほんとひどい顔。

冷やしたタオルを持ってきてくれて晴れが引いたころ、チェックアウトを少し遅めの朝ごはんを食べて

海に行った。少し寒かったけど、私達にとっては思い出の場所だったから。

「もし、また会うことがあったら今度こそ一緒になろう。」

真面目にいうから、会えますようにって海にお願いしたのは秘密。


 別れてから1年がたった。でもどこか心に穴が開いていて埋まらない何かがあるような気がした。もうすっかり都会に慣れてバイトも学校も両立して学校の友達とも遊びに行くようになった。そこで出会ったのがYさん。かっこよくて一目ぼれだった。初めて一目ぼれした。6つ年上の大人な男性。大人の余裕があってレディーファーストができて、なんでもスマートに見えた。

「紫苑ちゃんだったよね??今度ご飯いこっか笑」

笑顔が素敵だった。もうメロメロだったから、これから後悔することになるなんて思わなかった、

メッセージでやり取りしてご飯行く日付が決まって、二人でごはんに行った。緊張して味なんて覚えてない。すごく楽しかったのと緊張でよくわからなかった。2回目のデートで居酒屋にいった。緊張してたから

酔いが回るのがすごく早かった。

「紫苑?酔った??大丈夫?」

「大丈夫です。まだまだ飲めますよぉ~」

「そろそろこの店でないといけないから、俺んちで飲む?」

「え~?おうち行っていいんですかぁ」

「おう笑おいで笑」

この先はどうやって家に行ったのか覚えていない。気づいたらYさんの家にいてお酒をのんでいた。

「紫苑、終電なくない?泊っていきな」

「え?やば。ごめんなさい。お言葉に甘えて泊まらせていただきまーす笑」

ほんとばかだったなって思う。こっちは好きだったから普通にうれしかったけど、なんとも思われてなかったんだろうな。なんとかシャワー浴びてメイクはそのままだったけどベッドを借りて寝た。朝起きたらいうまでもない。頭痛いし腰痛いし服着てないし。それでもよかった。すきだったから。ここから都合のいい女になったよね。

「ねー、会いたい。泊まりこない?」

それが合図。週に1回会う。名前のない関係。付き合っていないのに会っては一緒にご飯食べたり、映画見たり、一緒に写真撮って手をつないで歩く。大人って付き合おうって言わないで付き合うのかなとか変なことも考えた。そんなはずないのにね。その関係が3か月続いて、もう限界だった。距離を置くようになった。メッセージを1週間以上放置して、さすがによくないとおもったのか電話がきた。

「ごめん。ちゃんと話そう」

「うん。わかった。」

そして2週間ぶりにあったY。相変わらずかっこよかったけど、私も気持ちが冷めてるのがわかった。

「ほんとにごめん。好きだったけど付き合えない。」

「はい。わかってます。私もすきでしたよ。でももう会えません。さよなら。」

これで都合のいい女を卒業できた。一緒にいた時間は少しだったけど、心の穴を少しだけふさいでいた存在がいなくなって少し痛かった。


 それから心の穴をうめるためにマッチングアプリを使っていろんな人と会うことにした。いろんな人と出会っていろんなことをした。一人でいる時間をなくしても、人のぬくもりを求めても穴はふさがらなかった。ただやけどしていることはわかっていたのに、見て見ぬふりをした。

 そんなある日のこと

[久しぶり。俺、そっちに行くことになったんだけど会ってくれませんか。]

大好きだったあの人からメッセージがきた。私に幸せと別れのつらさを教えてくれた人。

でも、こんな私じゃ失望されちゃうんじゃないかと思って返信できなかった。

マッチングアプリやめよう。あの人に会う前にちゃんとしよう。そう思ってマッチングアプリを消して、いろんな人の連絡先を消した。服装も落ち着いたものにして、メイクも薄くした。

学校の友達もびっくりしていた。雰囲気がかわったらしい。これならあの人に会えるかな。

[返信おそくなってごめん。会いたい。]

勇気を出して送った。心臓がどきどきしている。返信ちゃんと来るかな。

[返信ありがとう。いつ空いてる??電話してもいい?]

着信

え。どうしよう。でも出ないで後悔したくない!

「もしもし」

「あ、もしもし?久しぶり紫苑。」

優しいあの時のままの声に泣きそうになる。

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