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<<18 チーム対抗戦の内容>>

 さて、自己紹介も済んだことだし、早急に『チーム対抗戦』の内容を聞きてお開きにしたいところなのだが、どうやらこの空間の時が止まって、進行不可避の状況を作っているらしい。

 俺が『空龍王』の力を行使しているからではなく、自然と時が止まってしまったという感じだ。

 クラスメートだと思われる女性は、扉付近で腰を抜かしたまま立とうともしておらず、クラス内の男四人衆はビックリした様子で口を開けている。


 --知らない間に『空龍王』の魔法を使ったのか?


 『空間停止』の魔法を使えるのは、恐らくこの場では俺だけだ。

 『空間停止』は、『四大元力』の『空』の中でも上位に君臨する魔法であり、『空』を極めた者しか扱うことができない。

 もし仮に『空間停止』の魔法を使える者がいるとするなら、とっくに上書きされる形で俺の『空間停止』を解除されているはずだからだ。

 

 --だが、『空間停止』の魔法の気配を感じない。


 ということは、つまりこの時間停止は魔法によるものではなく、自然と生まれたものだということ。

 誰からも反応がないというのは、あまりにも寂しいものだ。

 その静寂を切り裂くように、セノアが一番最初に口を開いた。


 「ねえ、さっきの魔法って・・・」

 「『時戻り』のことか?」

 「あの魔法はどう考えても異次元の力だよね?ヘルゼアは一体・・・」

 「だから言っただろう?四大龍王の後継者だと。その中の『空龍王』の力を少々使ったに過ぎない」

 「少々ってレベルじゃ済まされないと思うけど・・・」


 確かに、死人が蘇るということは、目にしたことのない竜人にとっては前代未聞の大事件だと言っても過言ではないだろう。

 『時戻り』の魔法は、空間そのものを数分前に戻すという魔法だ。

 つまり、俺の目の前で死ぬ者が現れたとするなら、数分で蘇生が可能だということ。

 但し、死んだ者に刻まれた心の傷は消えることはない。更に言えば、一日を経過した者は蘇生できないとなっている。

 それら全てをセノアに告げたのだが、イマイチよくわかっていない顔をしていた。


 「まあ、三人を蘇らせたのだから問題はないだろう?」

 「どうなんだろ・・・問題ないのかな?誰も殺していないわけだし・・・」

 「いや、問題あるだろう!こっちはてめぇのせいで心に傷を負っただろうが!どうしてくれんだ!?」

 「全く、俺は最初に忠告していたはずだぞ?「楽に死ねると思うなよ」と。心に死という恐怖を刻んだ程度で許してやろうというのだ。セノアに頭を下げて礼を言うのが道理じゃないのか?それともなんだ?そんなセノアの善意を踏みにじってまで、お前たちは死にたかったのか?」


 俺が少し脅しをかけると、主犯格の男の興奮を抑えるように一度殺された男三人は横に首を振った。

 それに、死の恐怖を実感したのはあくまで主犯格の男を止める三人だ。

 主犯格は男三人たちの気持ちが分かるはずもなく、急に俺の胸ぐらを掴みかかってきた。


 「てめぇはこの世界に存在しちゃいけねえと言っただろうが!お前が死ねよ!死んで俺たちに詫びるのが道理だろうが!」

 「貴様、本当に死にたいのか?冷静になって考えてみろ」

 「あ?何言って・・・」


 主犯格の男がそう言いかけたと同時に、状況は一転した。

 その状況の移り変わりに、セノアと男三人は目を丸くして驚くことしかできなかった。


 「て、てめぇ・・・!一体何を・・・!?」

 「なに、お互いの立場を変えたという単純な話だ。それともなんだ?そんな簡単なことすらもわからない単細胞だというのか?」

 「てめぇ・・・!ぶっ殺す!」


 男は手足をバタバタさせながら暴れているが、身長分が足りなかったせいで自動的に発動した『空縛』が男の手足を更に縛り付ける。

 

 「なあ?知っているか?竜人は『龍魂』を失えば、同時に力を失ってしまうことを。さて、お前はどちらを選ぶ?このまま死ぬか、『龍魂』を失い、力無き者として生きていくか。まあ、貴様程度の竜人じゃ龍王たちのように生きていくことはできないだろうがな」

 「そ、そんな話・・・!誰が信じるものか・・・!」

 「なら貴様は、ここで死んでも問題はないというわけだな?」


 そして、俺が身の程知らずの男を絞め殺そうとすると、他の男三人が地面に額をこすりつけ始めた。

 

 「お願いします、どうか許してやってください。こいつ、知っての通りの単細胞なんで後先考えて行動できないんです。どうか、どうか殺さないでやってください。お願いします」

 「「お願いします」」

 

 とはいったものの、当の本人には反省の色が全く見られない。

 その証拠に、こめかみには血管が浮き出てくるほどに怒り狂っていた。

 この男に情けを掛ける必要がどこにあるのだろうか。

 

 「お前たちの意思はしっかり受け取った。だが、こいつが反省しない限り、俺はこいつを殺さなければならない。降りかかる火の粉は、前もって払わなければならないだろ?」

 「そ、それは・・・」

 「というわけだ、残念だがこいつの命は諦めてくれ」


 男たちの悲痛の叫びを無視して、愚かな男の命を奪おうとしたその時。


 「まあ、許してやってくれや」


 厳つそうな男の声が、扉付近で座り込む女性の背後から聞こえた気がした。

 俺は、男を絞め上げながら声のする方へ意識をやると、そこには主犯格よりも体の小さい男が仁王立ちして立っていた。

 そして女性をかき分け、ゆっくりと部屋へ入ってきたと同時に、三人の男たちの態度が急変した。

 まるで、ボスの御前であるかのように。


 「なあ、坊主。許してやってくれや。こいつも悪気はなかったんだろうからよ?」

 「お前は誰だ?知らない竜人に指図されるのは嫌いなんだが」

 「それは失礼したな」


 和解を求めようとする男は、俺より少しだけ体が大きく、茶髪の髪をしていた。

 それに加えて、両耳には厳ついピアスがつけられており、どうやらヤンチャなガキのようだった。

 まあ結論から言うと、俺はこの男を知らない。

 

 「お前が誰だが知らないが、俺はこの男を殺す。それがこいつの願望だからな?」

 「そうなんか?」


 ヤンチャなガキが男にそう尋ねると、男は首を精一杯横に振った。

 その行動が指す意というのは、死にたくないという意思表示で間違いなかった。

 すると男は、数十センチのところまで顔を近づけ、俺を威嚇しにかかる。

 

 「今解放するなら坊主の命はとらんでやる。だが、解放しないようなら容赦なく殺すぞ?」


 並みの竜人なら腰を抜かしてしまうだろう。

 俺の視界に入る限りでは、三人の男は俯いたまま震えているだけで、セノアは彼から離れるように後ずさりしていた。

 だが、タネを完全に理解している俺には、効くはずがない。

 こいつが使っているのは、『空』魔法の『共鳴』なのだから。


 「なんだ、それが威嚇のつもりなのか? この程度にビビるのは並の竜人だけだぞ?」

 「ハ!いつまでその虚勢を張っていられるか、根性を試そうじゃねーか!」

 「試すことでもない、すぐに決着は着く」


 『空』魔法を極めた『空龍王』に、『共鳴』が使えないはずがない。

 そうと決まれば話は簡単だ。このガキに『共鳴』返しをしてやればいいのだ。

 そして、俺が『共鳴』を使った途端、場の雰囲気が変わった。

 俯いて震えていた男と、セノアは膝から崩れ落ち、粋がっていたガキは俺から素早く顔を引き剥がした。

 『共鳴』の三分の一の力も発揮していないのだが。


 「坊主、お前は俺と同じ『空』の魔法を使う竜人なのか?」

 「低レベルのお前と一緒にすんな。何ならこの手元で暴れている男を実験体にして、俺の実力を披露してもいいんだぞ?」

 「お前の望みはなんだ?どうすればその男は解放される?」


 この男は、ガキの配下なのだろうか?

 ガキの態度と男たちの態度から察するに、男たち四人がガキの配下だとしか考えられなかった。

 配下思いのボスに免じて、俺はガキに一つだけ約束を取り付けた。

 

 「俺とセノアに二度と関わらないと約束しろ。そうすれば男は解放してやる」

 

 もし、この取り決めを呑み込めないというのなら、男はすぐさま殺さなければならない。

 そうでもしない限りは、今後も俺たちと接触しようとするだろうから。

 俺からの条件が提示されると、ガキは目を丸くして告げた。


 「そんなことでいいのか?」

 「そんなことでいいんだ。今後一切関わらないと約束しろ」

 「分かった。こいつらにもきつく言っておく」

 「約束を破ってみろ?次はお前ら全員の首が飛んでいくと思え」


 その言葉と共に、俺は長い時間『空縛』で絞め付けていた男は無事に解放される。

 ボスの御前であるからか、主犯格だと思われていた配下の男はすっかり大人しくなってしまっていた。


 「さて、セノア。『チーム対抗戦』の内容を教えてくれるやつはまだ来ないのか?」

 

 俺は、腰を抜かしているセノアに手を差し伸べながら尋ねた。

 するとセノアは溜息を吐きながら、面と向かって告げる。

 

 「あのね、ヘルゼア?『チーム対抗戦』の内容を聞けずじまいになっているのは、君のせいだよ?」

 「え、俺が?」

 「え、自覚ないの?」


 セノアは再び溜息を吐き、何も理解していない俺の頬を両手で抑えつけながら、ある方向へと強制的に向けた。

 そこには、一人の女性が魂が抜ている状態で座り込んでいるわけで。


 「え、まさか、あの人が内容を教えてくれる人だったの?てっきりこのクラスの奴かと」 

 「んなわけないでしょう!ほら、その龍王とやらの力で何とかしなさいな!」


 完全に気を失っている女性の復活を『時戻り』を使用して試みる。

 そして、彼女が無事に意識を取り戻したのは、魔法を使ってから数秒の事だった。


 「あれ・・・?私は一体何を・・・?」

 「忘れていた方が良いこともありますよ。それより、私たちに今回の『チーム対抗戦』の内容を教えてください」

 「そうでした・・・そうでした、そうでした!」


 威勢を取り戻した彼女は、俺とセノアに復活させてもらった礼を言うことなく、教卓に立つ。

 そして、『チーム対抗戦』の内容が解禁された。


 「今回の『チーム対抗戦』は、四つの学園とこの学園の計五つの学園で執り行われる『サバイバル対抗戦』になります!皆さん、気を引き締めて頑張ってくださいね!」

 

 彼女の口から『チーム対抗戦』の内容が明かされると、なぜか俺の顔から自然と笑みが零れるのだった。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございます!

チーム対抗戦の内容が発表され、そしてヘルゼアが笑みを浮かべた意味とは・・・

続きが気になるようでしたら、ブックマーク・評価の程、よろしくお願いします!

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