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<<17 害悪と為された最下級龍王>>

 「ハハハ!楽に死ねると思うなだ~?どうやらてめぇの口からは黒歴史しか生産されないようだな~?」

 「さっさとこんなガキ殺しちまおうぜ?」

 「俺も早く殺すべきだと思うぞ?」

 「そうだな、少しでも黒歴史を減らしてやらねーと、せっかく生まれ変わっても死にたくなるだけだもんな~?」


 男四人衆がケラケラと小馬鹿にする中、『空龍王』の力を使用した俺は、地に落ちていた刃物三本を自由自在に操作し、それらを彼らに向かって投げつけた。

 彼らは紙一重のところでその攻撃を回避し、代表格である男が四人分の鋭い眼光を俺に浴びせてきたが、不思議なことにちっとも怖くなかった。

 それは恐らく、男は俺よりも遥かに劣っていると無意識にランク付けしていたからだろう。

 だから俺は、鋭い眼光に屈することなく、更なる挑発をした。

 自制心が失われた人の攻撃は単純であると、誰かの記憶に残っていたからだ。


 「いやいや、お前たちの武器を返しただけなんだが?悪いな、まさかギリギリのところで避けると思わなくて。お前たちが口だけの雑魚だったことをすっかり忘れていたよ」

 「あ?てめぇ舐めてんじゃねーぞ!」


 主犯格と思わしき男が地に落ちた刃物を手で拾い上げ、それら三本を俺の方に向かって投げつけた。

 再び『空龍王』の力を使って攻撃を防いでもよかったのだが、他の龍王たちの力も見てみたい気持ちが強かったせいもあり、俺は『空龍王』の力を使わなかった。

 そして、俺が他の龍王の力を行使したと同時に、攻撃を仕掛けてきた男が間抜けな声を出した。


 「へ?」

 

 彼の後ろには、仲間だった男の一人が『炎』に包まれながら悶えている。

 他の男たちも揃いも揃って口を開いていた。

 どうやら、俺の『炎龍王』の攻撃が見えていなかったらしい。

 俺に向けられた刃物は『獄炎』によって、跡形もなく消し去られた。


 「これでも手加減した方なんだがな?まさかだと思うが、この程度で終わるわけないよな?」

 「あ、当たり前だろうが!お前ら、仇を取りに行くぞ!」

 「「お、おう!」」


 一致団結する男たちの頭の中には、「敗北」の二文字は存在しないのだろうか?

 あまりにも無謀だと思われる男たちの行動。

 主犯格の男は、隠し持っていたナイフを取り出し、残りの二人は空気と融合するかのようにその姿を消した。


 --なるほど、『透明』魔法か。


 「透明」魔法は、名の通りの魔法だ。対象物を透明化させる魔法。

 姿を消され、戦いにくいことは間違いなかった。

 まあ、それは俺以外の竜人の話に過ぎないがな。

 

 「グハ・・・!」

 「「え・・・?」」


 短い断末魔と共に、主犯格と一人の男が声を揃えて驚いた。

 またしても、気が付かないうちに一人やられいたのだ。

 男の脇腹に、中心から約十五センチの大きな穴が開いており、その穴からは大量の血が流れ出ている。


 「気配を消すならもう少しうまくやれ、丸見えだぞ?」

 「て、てめぇ!こいつらに一体何しやがった!」

 「何って、『炎』と『水』の攻撃をしただけなんだが?そうか見えなかったか。だったらその眼にしっかり焼き付けておけ」


 すると俺は、焼け苦しむ男には再び『炎』を注ぎ、『水』の水圧によって瀕死状態に陥った男には、更なる『水』を送り出す。

 主犯格の男と一人の男を挟みこむように『炎』と『水』が一方通行する中、その隙を狙おうとした主犯格の男がナイフを構え、俺の懐に飛び込んできた。

 どうやら、これが真の狙いだったらしい。

 だが、男の狙いは、塵のように簡単に吹き飛んだのだった。


 「ガハ・・・!」

 「どうした?この程度で俺が殺られると思ったのか?残念だが、お前のせいで二人は完全に死んだぞ?可哀そうにな」


 男が完全に懐に入ってくる前に、瀕死だった男二人にとどめを刺したのだ。

 そして、男に体を傷つけられる前に『空龍王』の力の一端である『空縛』を使い、攻撃を無事に防いだのだが、攻撃のスピードといい、あまりにも全てが遅すぎる。

 九歳の俺でも、もう少し俊敏に動くことができるだろうに。


 「さて、散々侮辱してくれたからな?お前は最後にしてやろう」

 「ゴ・・・ハ・・・!」

 「なんだ?もう少しはっきり喋ってくれないと聞き取れないぞ?」

 「ゴ・・・ゴメン・・・ガハ・・・!」

 「はぁ~、謝るぐらいなら最初から俺たちに関わんな。初対面の奴を殺そうとするとか、お前は今までどういう教育してきたんだ?」

 

 『空縛』の圧力を更に上げ、男の目と口から体液がこぼれ出る。

 あまりの残虐非道さに黙っていられなくなったのか、透明化したままの男が俺に向かって殴りかかってきた。

 だがやはり、あまりにも遅すぎた。

 それに、透明化したと言えど、気配を完全に消せていない。

 その状態で俺に勝てるとでも思ったのだろうか?

 『空龍王』の力は、空気の振動波に過剰な反応を見せる。

 つまり、俺の目の前では、万能な『透明』魔法も効力を失うというわけだ。


 「最後の力を見せてやろう。『土龍王』の力を!」


 俺が今まで『土龍王』の力を使ってこなかったのは、あまりにも強大な力であったからだ。

 手加減という単語を知らない『土龍王』の力は、殺傷性がかなり高い。

 もし『土龍王』の力を行使することがあるとし、それに加えて敵との実力差があるとするなら、攻撃対象に下されるのは、残虐な「死」だけだった。


 「『地盤突』」


 俺は走り込む男に向けて、大きく足を踏み込んだ。

 そして、それはあまりにも一瞬の出来事だった。

 踏み込んだ足元から、鋭く尖った巨石が現れ、男に目掛けて一直線に放たれた。

 速度にして、秒速百メートルと言ったところだろうか。

 『地盤突』は、男の心臓を捉え、見事に貫いた。

 そして男だけにとどまらず、後ろの壁も大きく貫き、次の瞬間にはこの部屋に張られていた『空間閉鎖』が、物理的に解除されてしまったのだった。

 まあ、すでに動ける奴がいないから関係ないのだが。


 「どうだ?少しは実力差を認知できたか?」

 「グゥ・・・ガハ・・・!」

 「なんだ?無視とは酷いな。俺に対して失礼だと思わないのか?」


 必死に呼吸しようとするその口から、舐めた口を聞けないように、更なる圧力をかける。


 「転入初日に気分が害された。お前はどう償ってくれるんだ?従順な下僕になるか?それともその命を俺に捧げるか?なあ、お前はどっちがいい?」

 「ゲ・・・下僕には・・・ならねぇ・・・」

 「まあ、そうだろうな?俺の下僕になればセノアの下僕も同然だもんな?」


 ある日のセノアは俺に話してくれた。

 仲間に見捨てられたこと、そして役立たずと罵られたこと。

 俺は全てを理解した。

 とはいっても、本当に理解したのは、つい先ほどだ。

 俺の先ほどの問いかけに対し、空気の波長は乱れなかった。

 それが指す意というのは、つまり男が嘘をついていないということ。

 男の性格から察するに、セノアを陥れた元凶を言って間違いないだろう。


 「そうか、俺とセノアの下僕にならないというのなら、死は免れないぞ?」

 「お前たちの・・・下僕に・・・なるもの・・・か」

 「なら、九歳の少年にすら歯が立たない雑魚はここで始末しておかないとな。俺たちの成績上げの邪魔になるだけだから、悪く思うなよ?」


 その言葉と共に『空縛』で男の息の根を止めようとしたところ、一人の女性の悲鳴がクラス中に響き渡った。

 男の首を絞めながらゆっくりと振り返ると、この事件現場を目にし、顔を真っ青にしながら腰を抜かす一人の女性が座り込んでいた。

 その女性の背後から覗き込むセノアは、事の重大性に気が付いた途端、俺の元へと駆け寄ってきた。


 「ちょ、ヘルゼア!まさか殺しちゃったの!?」

 「安心しろ。こいつはまだ生きてるからな」


 そう言いながら、俺は男の『空縛』を解いた。

 男は喘息気味な様子で、ひたすら酸素を求めたいた。

 

 「でも、三人は殺しちゃったんだよね?」

 「殺しにかかってきたから、殺したまでだ。何も問題ないだろう?」

 「問題があるから言ってるんでしょう!?」


 そんな二人の会話に割り込むように、男は話し始めた。


 「狂ってる・・・三人も殺してお前は何も思わないのか・・・?お、お前は『害虫』・・・いや、『害悪』だ・・・この世界に存在しちゃいけない」

 「狂ってる?俺のどこが狂ってるんだ?俺たちを殺そうとした奴らが何を言い出すんだ?俺たちを殺そうとするやつに情けを掛ける必要がどこにある?」

 

 両親を失ったあの日から、俺の精神状態はかなり異常だと言えるだろう。

 その証拠に、襲い掛かる敵を殺しても何も思わない。

 自分自身でも異常だと分かっているのだが、セノアの事を考えるだけで、どうでもいいと思ってしまう。

 セノアを守れさえすればそれでいいと。

 俺はもう誰も失いたくなかったのだ。

 理不尽に殺され、大切な人が還らぬ人になるぐらいなら、自分の手を汚した方がよっぽどマシだった。

 だから俺は男三人を殺した。

 俺が殺さなければ、セノアが危険に晒される確率が上がるのだから。

 

 「で、でも!殺人を犯すと罰が下されるの。だから、私たちは・・・」

 「そうか、パートナーも同時に罰せられるのか。それはすまないことをしたな、少し待っててくれ」

 「え・・・?」


 俺は両腕にスカイブルーの光を纏い、魔法を繰り出した。


 「『時戻り』」


 俺が『時戻り』の魔法を発動させると、クラス全体に不思議な現象が起こり始め、目にしていたセノアと男は驚きを隠せないでいた。


 「嘘・・・」

 「お前は一体・・・?」


 それもそのはず、破壊された壁は修復され、壁に付着した血は消え去り、そして何より死んだはずの三人が蘇ったのだから。

 蘇った男三人も、死後の記憶がなかったせいもあり、状況をイマイチ把握できていなかった。

 そして俺は、男の純粋な疑問に応じた。


 「俺が誰かだと?いいか、よく聞いておけ」


 その場にいる全員が耳を傾ける中、俺は公言した。


 「この俺こそ、忘れられた四大龍王の後継者、ヘルゼア=ボルテギヴンだ!」


 この瞬間に、俺は『龍王』という存在を世に知らしめる一歩を踏み出したのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

今回の話は、ヘルゼアが男四人衆を手玉に取る話でした。

次回は、一週間後に行われるテスト内容の話になります!

今後ともよろしくお願いします!

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