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僕の初めての友達は小学生の時だった。
コウとはすごく仲が良くて毎日のように遊んでいたが、ある日父親が転勤になった。
当然僕は他県に引っ越すことになった。
それはあまりにも急で、その一番仲の良かったコウに何もお別れのあいさつを言うことなく引っ越してしまった。
僕は引っ越したその夜、ずっと泣いていてもう一度でいいから会いたいと思っていた。
そして離れ離れになっても電話をしたり、たまに会って遊ぼうと思っていた。
そしてお盆の季節になり、僕の父親の実家が元居た場所にあったため地元につくなりコウに会いに行った。
休日だったため、コウの家まで行ってみた。
インターホンを押すと案の定コウが出てきた。
「あ、久しぶり!コウ」
「あぁ、優か。」
出てきたコウは僕を見るなり特に表情も変えず、むしろ少し暗い感じがした。
だがそんなの気にも留めずに会話を続けた。
「知ってるだろうけど、僕引っ越したんだ。」
「うん、知ってる。」
即答して返していたコウの顔は恐ろしく冷たい顔をしていた。
少しコウの様子が変だと思った僕はすかさず言った。
「ねぇ、なんか怒ってる?そ、そりゃ一番仲いいお前に引っ越すことすら伝えなかったのは悪いと思ってるけど、でも僕あの時急すぎて言えなかっ…」
「俺、もうお前の事友達だと思ってないから。」
「え…」
「もう他に友達もいるし、お前みたいな裏切りものは友達じゃない。だからもう帰って。さよなら。」
そう言うとコウは玄関のドアを勢いよく閉めて鍵を閉めた。
後から聞いた話だがコウは僕が引っ越したこと学校のホームルームで知ったらしい。
そんな一番大親友だったコウに何も言わず引っ越した僕を相当怒っていた。
それ以来僕は友達自体作ることをしなくなった。
友達なんて作ったって意味がない。
一人で本を読んでる方がたくさん意味のある知識が入るし何より相手に合わせなくて楽だ。
だから一人本を読んで学校生活を送るようになっていた。
当時僕の父親は仕事の関係で転勤を繰り返しており、小学生の時からの転校を含めるとキリがないが、高校が変わったのは今回で2回目だった。
どうせまた転勤することになるだろうと思っていた僕は今回の学校でも仲のいい友達を作る気はなく、ずっと一人で学校生活を送っていた。
そんな中で高校二年生の時、西島圭と同じクラスになった。
圭は身長が180センチもありモデルのようにスラっとした体形だった。おまけに鼻が高くて唇は少しとがってて口角が上がっている。
目は大きくてたれ目がちだけど瞳には輝きがなくて、その瞳を見つめていると吸い込まれてしまうような感覚があった。
圭はいつもけだるそうでその雰囲気が大人っぽくてかっこよく、女子から陰でモテていた。
そんな圭に僕も恋をしていた。
異性を好きになったことのない僕は自分がゲイなのではないかということにずっと悩んでいた。
それがはっきりしたのが西島圭と出会ったからだった。
好きになったきっかけは一目ぼれだったし、僕が初めてキスしたいと思った人だった。
ただその時は仲良くなることなく僕は遠くから見守るだけだったが。
西島圭とはほとんど話したことがなかったが、僕の席の前が西島圭で少しくらいは接触があったし、話すこともあった。
授業中はずっと圭の背中とか首筋とかたまに見える横顔を眺めたりしていた。
でもたまに圭は後ろを振り向くがあってその時ふいに目が合ったことがあるが恥ずかしくてすぐそっぽを向いてしまった。
焦ったが、圭は何も言うことなくすぐに前を向いてほかの友達と楽しそうに会話をし始めた。
なかったことにされたかわからないけど、とりあえずきもいとか言われなくて済んだことにホッとした。
そしてたまに圭が放課後机の上にタオルを忘れて帰ってしまうことがあった。
僕は教室に誰も居なくなったことを確認するとそのタオルを顔にくっつけて匂いを嗅いでいた。
ほのかに圭の匂いがしてそれだけで圭に抱きしめられたような気がした。
そうやって欲求を満たす日々が続いた。