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その最弱は力を求める  作者: コトユエロテイ
第1章【とある異世界における生存戦術】
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3.【キセキ】

口の端から血を流すリディアの惨状を見れば、誰でも声をかけただろう。しかし、少女はなにか違和感を抱いた。

己のはるか上。降り注ぐ精霊王の祝福である光を遮りながら、男はその顔に影を落としてリディアに声をかけた。ハスキーボイスと言われるのだろうか、エッジの効いたグレンとは違う美しい声。その力強さと美しさの共存する奇跡とも言える声の主は、確かに明るい表情を滲ませて少女に何かを渡した。


「ポーションっすよ。一応カーミフス産なんで、高級品っすよ。」


喋る気力すらないリディアは残っていた力を振り絞って上体を起こし、男からポーションを受け取った。

純粋なる黒髪に、曇りなき黒瞳。それを不思議そうに眺めたリディアは、受け取ったポーションに巻かれたラベルを破って蓋を開けて喉へと流し込む。

桃色の液体はリディアの喉を潤しながら、焼け焦げた体内を微かに刺激しながら、それらを直していく。男が称したようにそれは高級品だったのだろう。その効力は凄まじく、グレンから与えられたダメージのほぼ全てを綺麗サッパリ消してしまった。

流れ出て固まってしまった血液までもを消し去ることはできないが、男に高級品と称されたそれによってリディアの生命活動が死から大きく遠のいたのは間違いなかった。


「ありがとう。ごめんなさい、助かったわ。名前を聞いても?」


いまだピリピリと痛む口内の傷を気づかぬふりをして、座り込む己の前でしゃがみこんだ男に名前を問うた。

それが誰であったとしても、リディアを助けたことは事実であり、事実だからこそ、誰で在るかが重要視されるわけで。少女は彼に報いようと立ち上がった。それに応ずるように、男も立ち上がる。

そして、己の名を名乗った。


「メガホンっていいます。」

「メガホン?珍しい名前ね……」


男のエッジの効いたボイスに微かに眉を顰め、誰でもなく自分に呟いた。そのまま何を対価としようか思考に沈むリディアから語り手を引き継ぐように、人懐っこい笑みを浮かべてメガホンが口を開く。その笑みは裏表のない、とても純粋な、綺麗なものに見えた。

背丈や立ち上るオーラは、グレンに酷似している。底知れなさだけならグレンを遥かに凌いでいる。しかし、彼とメガホンの間には、そもそもの人間性として差異が見られた。


「古代帝国語なんっすよ。聞き覚えないっすよね。」

「っ、ごめんなさい。口に出したつもりはなかったのだけれど。」

「いいっすよ。慣れっこですから。」


全く不機嫌そうな態度を見せずに、むしろ機嫌を良くしたように、メガホンはリディアの発言への悪感情を湧き上がらせすらしない。対したリディアの表情は、たとえそれが謝罪の時であっても大きな変化はない。申し訳なさそうな声色で分かっては貰えるだろうが、人が人なら難癖をつけられていたとしてもおかしくはなかった。そんなメガホンに少しだけ感謝してリディアがメガホンの黒の双眸を再び射抜いた。


「それで、その。私はあなたに何を返せるかしら?」


そして、なんの装飾もせずに見返りの提示を求めた。相手からしたら非常に言い難い、言おうとしていなければ的外れな、そんな言葉。しかし、例に漏れずメガホンはその人を選ぶ問答に一片の苛立ちも見せずに思考に入る。

「そうっすね……」と無意識であろう言葉を零しながら、鍛え上げられた右手を顎に当てて瞠目する。あまりに大げさな仕草だが、素材がいいのだろうか、活発な少年の絵画のように様になっている。

それに通ずるほどの美貌をもつリディアも、メガホンの言葉を視線を外さずに待つ。待つこと十数秒、メガホンがまぶたを開けて「それじゃあ」と前置きして口を開く。


「ひとつ、教えてもらえないっすか?」


人差し指を立てて眩しい笑顔をリディアに向ける。活発なメガホンと無表情のリディアの対比は、その温度差も相まってさながら朝と夜、太陽と月。しかし、存外相性は悪くないのだろう、うまくバランスをとって『1日』という()()を成り立たせている。

そんな2人の間に、数瞬の沈黙が落ちる。メガホンは楽しそうにリディアに視線を向け、リディアは訝しげにメガホンに視線を向ける。

しかし、無表情がそこでは役に立った。リディアの訝しげな表情という情報は、比較的受け取り難いだろう。その無表情からは。

そして、リディアが沈黙を破って言葉を落とす。


「分かったわ。なんでも聞いてくれて構わないわ。」

「ありがたいっす。それじゃあ……」


多少の疑念はあるものの、リディアの中の天秤は恩の方が重いと判断したようで。その言葉を聞いたメガホンは、ホッとしたように問いを語り出す。男性にしては高い。いや、そもそもの音域が広いのだろう。高低差の激しい音が、心地よくリディアの耳朶に響く。


「ミカミ・アキトって、知ってますか?」



「ミカミ・アキトで、間違いはないな?」


暗い。薄暗い。尻を徐々に蝕み始める冷たいものの正体は、床に敷かれた無機質な石。いや、地面だろう。不快感に身じろぎをしようにも、痛みが邪魔して嗚咽しか出すことができなかった。グレンによって滅多打ちにされ、リディアによって希望の光に照らされ、遮られ。結局はまた、グレンとの2人だけの状況へと舞い戻っていた。

額から鼻、鼻から口の端、流れる血液は首筋から鎖骨を通ってジャージに染み付いて、既に固まり始めていた。気持ち悪い。ただ、その感情が渦巻いていた。渦巻かせていた。その感情に苛まれ、苛立っている間は、恐怖に取り憑かれて震えることもないだろうから。


投げられた問いから、随分と時間が経った。やっとその言葉を理解することができたが、無力な少年。アキトには、頷くことしかできなかった。それが届いたかどうかは、既にアキトには関係なくて、再び恐怖から逃げる時間が始まる。


「ミカミ・アキト、なのだな。」


問いかけ、というよりは、どちらかというと自分への確認だったのだろう。グレンは、それに対する答えを確認すらせず、闇を暗闇程度に和らげてくれている光源、外界からの光へと足を進めた。

光を遮るように立つグレンは数瞬の逡巡で何かに決着をつけ、再びアキトの場所へと舞い戻る。

こつり、こつり、と響く靴音が、アキトの耳に入る度に喉を震わせ、影が大きくなるにつれなんともし難い拒絶の感情が全身を焦がし始める。地面にへたり込んだまま、震え続ける。


状況はいたってシンプル。

グレンに片手間に掴まれたアキトは、そのとてつもない剣撃の被害を一切受けず、ほんの少しの暴風に曝されただけだった。その後の木々をすり抜ける感覚が終わった頃に、やっと自分がグレンに担がれていたと気付き、明るさが無くなった頃に、やっと自分が洞窟に拉致されたことに気付いた。


「ひ……ぃ、く、き、聞かせてくれ…………!」


何度も言葉を作り出そうと喉が画作し、それを脳が必死に抑える。その攻防に喉が勝利したことを皮切りに、微かな嗚咽を徐々に形を持った言葉へと錬成していき、おぼつかない言葉をやっとの事で質問へと昇華させた。

小さじ一杯にすら足りないであろう勇気を振り絞って、絞りでた質問はその過程に見合わないほど小さかったけれど、問題なくグレンには届いたようだった。右手の甲を疼く痛みに視線を落として、「続けろ」と言わんばかりに向けられた視線から目を逸らした。

やっと掴み取ったチャンス。恐怖は無知から始まる。つまり、やっと恐怖から抜け出せるかもしれない、無知からの脱出のチャンス。

ひくつく喉を左手で握りしめながら、裏返りながらも声を繋ぎ、質問という形に形成していく。


「ど、どうして……ぉ、俺に、こんなこと……」

「言ったはずだ。覚醒因子を発生させるため。欠けた月を修復するため。俺の主に、従うため。」

「そんな……ことじゃ……なくて」

「これ以上、何を説明する。」


思っていた以上にすんなりと答えを吐き出すグレン。既に文章として作られていたかのようにスラスラと述べられる理由からは、なにも読み取れなかった。グレンの暴虐の理由も、欠けた月の修復とやらも、彼の主についても、そんな彼の感情さえも。

ともすれば再び拳が飛んできてもおかしくはなかった。しかし、案外言葉による意思疎通を可能にしていたグレンに、場違いながら密かに驚く。だからといって、恐怖と震えが止まるわけではないが。

グレンの答えの不可解さに苛立ちすら覚えつつ、語調を強めて問う、問い詰める。


「覚醒因子も、その月も、主ってやつも、わかんねぇ……もっと、わかりやすく説明してくれよ……」


元が弱々しかった言葉が少し強くなったところで、結局外から見れば脆弱な問いだったのだが、アキトからすればそれはとてつもない成長だった。自信を数ミリ取り戻し、いまだ疼く右手の甲を掻き毟る。


「覚醒因子。……文字通り、その人物が何かに目覚める時に検出される、魔力反応に似た現象だ。」

「何かに……目覚める?」


グレンの背後から差す輝き。その所為でなのか彼の声に感情がこもっていないからなのか、どうにもその答えにいまいち理解を示せない。しかし、そのグレンの口振りでは、アキトを何かに目覚めさせようとしている。と聞こえる。

それを肯定するように、グレンは無言を答えとした。そしてその沈黙も束の間。グレンの声が洞窟に響き渡る。


「貴様の覚醒因子を引き出す。それが、俺が与えられた任務だ。」


少年の視界が、グレンの靴底で覆い尽くされた。



「ごめんなさい。ミカミ・アキトという人には、心当たりがないわ……」


自分に出来る事はなんでもしようと記憶を探るも、ない記憶を探し出すことができるわけもなく。メガホンにとっては残念であろう答えをかけた。無表情ということに変わりはないが、語気からは少しだけ申し訳なさが滲み出している。たとえ、そうであろうと無かろうと、きっとメガホンは気にしないのだろうが。


「まぁ、そっすよね。俺も、友人に頼まれた事なんで、手掛かりが名前しかなくてどうにもならなくなってんすよ。」

「……」


木々の生い茂る樹林の空を見上げて、グレンがしみじみと呟いた。グレンから発せられる声に乗った諦めの吐息。それを、リディアは悲観的に捉えたのか、そよぐ緑の絨毯を見ながら思考する。

そんなリディアの手から、既に中身の失われたポーションのゴミをひったくり、メガホンが己のポケットにしまう。


ポーションの容器は、その持ちやすさと漏液のしにくさから、試験管が主流とされていた。しかし、ガラス容器を使い捨てのものとして運用するとしたら、そこにはとてつもないコストがかかり、それがほんの少しの液体しか入らないときたら、そのまま試験管が浸透していくのは誰の目から見ても無理だった。使用後の試験管を回収するのがセオリーではあったが、それを守るほどのモラルのある人間は、ポーションを必要とする者たちの中ではあまりいなかった。

本格的に問題視されたそれを、統治者たちは重く受け止め、今の容器。メチルカ管を開発した。原材料は無属性魔石でそのコストは、循環率100%の魔力。つまり、とてつもなく低かった。

ガラス容器より遥かに薄く、軽量。透明度の高い容器にその効果を示すラベルを貼り、それらはラベルデザイナーという一種の職業を生み出すまでに至った。

細長かった容器は手に握り込めるほどの長さに変更され、その代わりに横幅が広くなった。そして、粗雑に摂取されていた飲み口も、回す事で開閉が可能な便利なものへと変わり、ポーションの需要と供給のバランスはやっとの事で保たれたのだった。


そんなポーションの容器を受け取ったという事は、メガホンがそれを責任をもって捨てるという事だ。つまり、2人の会話の終わりを示す。

それを職業柄敏感に感じ取ったリディアは、モヤモヤと脳髄にかかった思考の副産物を引き剥がして、現実へと浮上する。首を振って迷いを断ち切り、メガホンをまっすぐな瞳で見つめた。


「私も、人を探しているの。どうかしら、一緒に協力しない?」

「いいんすか?」

「ええ。それに、私の探している人も一緒に探して欲しいっていう条件付きってことも、分かっているでしょう?」

「ありがたいっす。それじゃあ、よろしくお願いします。」


互いの損得の合致。メガホンが、その社交的な仕草で握手を求める。変わらぬ無表情でその手をとって、リディアはひとまずの着地点に安堵する。あのままメガホンに恩を返せないのは、あまりにも後味が悪かった。

しかし、メガホンの言う『ミカミ・アキト』という人物に聞き覚えも見覚えもないのも事実。捜索は難航しそうだった。


「それじゃあ早速、その男の人の特徴を教えてもらえないかしら?」

「そっすね。……えっと。俺みたいな黒髪黒瞳の珍しい人なんすけど……」


自分の髪と瞳を指差して、困ったように告げるメガホン。その黒髪と黒瞳の珍しさに、苦笑いを浮かべるしかないのだろう。そんな珍しい人物を、目の前の少女が知っているとは思えない。そんな自分でも預かり知らない深層意識が、そうさせた。

わからないことに時間を割くのも馬鹿らしい。すぐに行動に移そうと、メガホンが樹林を歩き始め、


「あ、」

「え?」


立てた人差し指を顎に当て、何かを思い出したように漏れ出した声に、メガホンが足を止めた。


「もしかしたら私たちが探している人って、同じかもしれないわ……」


そして、その偶然に眉を顰めたのだった。



「はぁ、はぁ、ぁ、ッ」


額に張り付く前髪が、酷く邪魔なものに感じられた。汗か涙か、血か土か。己の全身をびっしゃりと汚すそれらは、きっと全てだった。

滝のような滂沱の末、川のような流血の末、雨のような発汗の末。アキトの命の灯火は、弱々しく揺れていた。

血液の温かさが肌を舐り、張り付いたそれらが徐々に熱を失って冷たくなっていく。そして、肌に張り付いて不快感を増幅する。だからといって痛みが消える事はないし、それを耐える何かを身につけたわけでもない。

いまだに脳髄を掻き乱されるような頭痛は続いているし、傷口を再び痛めつける血液の脈動も止まっていない。摩擦と衝撃によってボロボロになった体は、これ以上の負荷が掛かれば死ぬんじゃないか、というほどの重みを伴っている。

腹の中を掻き乱される感覚に呻けば、空気が喉を蹂躙し、口の端から流れ出た血が傷口に塩を塗る。

何かをすれば何かが痛む。抜け出せない痛覚の連鎖に独り苦しみながら、それでも。


脳裏には、金の軌跡が染み付いていた。


それは、己が暗闇にいる事で更に存在を主張し、無視できないほどに膨れ上がっていた。

滝のような滂沱の末、川のような流血の末、雨のような発汗の末、少年の心は、まだ折れていなかった。

滝のような暴虐の末、川のような拳撃の末、雨のような戦闘の末、少女が命を賭したように。それに、救われるように。


弱々しい呼吸が喉を通って、喉を切り裂く。弱りきった体には、ただそれすらも致命傷。世界、そう。この異世界の中で、致命傷。


「本当に、貴様はおかしいことが多すぎる。」


グレンの口振りからでは賞賛するような、グレンの声音では軽蔑するような、グレンの声を聞いて尚、アキトは痛みに支配され、それに耐えるために必死に歯をくいしばるアキトの脳のリソースに入り込むそれは、無駄な情報だった。荒い息遣いでそれを無視する。


「比較的覚醒しやすい人種なのにも関わらず、一粒たりとも覚醒因子が放出されない。だからといって、脅威に立ち向かう力があるのかと思えばそれもない。それどころか、自分を助けようとした女1人に暴言すら吐く始末。」


蹲るアキトをゴミを見るような目で見下ろして、グレンがそのわき腹に小さな蹴りをひとつ。断末魔のような叫び声が洞窟に反響し、荒々しかった呼吸が更に浅くなり、規則性を放棄していく。過度なストレスと痛みに支配されながら、脳裏に移る金の軌跡によってギリギリで保たれていた天秤にグレンの蹴りが加わり、左へ右へと大きく揺れる。挫けそうになる。

そうして、グレンは呟いた。


「とんだクズだな、ミカミ・アキト。」


グレンが地面に投げていた鉄骨を腰に差し、洞窟の入り口に視線を向けた。ほんの少しの思考の末、声を絞り出す。


「なんの冗談だ?メガホン。」



まるで小動物の足跡のように、伸ばされていく血液の道筋は、2人の共通の探し人を結ぶ。美しくそよぐ芝生から、場違いな血液の鮮やかな軌跡。それは、鬱蒼と生い茂る巨大樹の隙間に消えていく。先の見えない樹林の先、丁寧に作られた道を外れたそこは、土地勘のない素人が入れば迷う事は間違いない樹海。さすがに何日も遭難するという事はないだろうが、進むにはなかなか勇気の必要な、明るい闇の道だった。


「なるほど……グレンが担いで走ったんなら、そっすね。あり得ます。」

「行くしかなさそうね。この道、いや道でもないけれど。」


そうして、目的は違えど『ミカミ・アキト』を捜索対象とする臨時タッグは、樹林をかき分け捜索を開始した。


血液の軌跡を進み始めて数分。大樹の間隔は決して狭いということは無いが、乱立するそれらの巨大さを考えれば、囲まれていることへの閉塞感と視界の悪さは納得できた。地面や木々にこびりついた血液は、進む毎に鮮やかさを増していき、まだ落ちてから時間が経っていないことを示している。


もともと、この場所には平原が広がっていた。美しい緑に染め上げられる自然の絨毯に、ある日種が落ちた。その種は草原の美しさを食い荒らしながら成長し、息づいていた村すらも呑み込みながら増殖した。そして、人々が気付いた時には既に草原は消え去っており、あるのは乱立された巨大樹と、それに隔離されるようにひっそりと在るひとつの村だけだった。やがて巨大な樹林は入れば出られないおぞましい森として認知され始め、危機感を覚えた都市代表が道を建築。村は救われた。

一癖も二癖もあるその森は、()()を起こすには、確かに最適な地であったのだろう。


紅の軌跡が途切れるのに、大した時間はかからなかった。最終的にたどり着いたのは、酷く歪な場所だった。

巨木に囲まれている、いや乱立するそれらに適応するように、何かに蓋をするように。そこには、巨大な岩塊があった。天を突く巨木と同じくらいの高さ。しかし、その横幅は巨木の倍、いや十数倍はある。それこそ、その岩塊の中に洞窟が作られてしまうほどに。

そして、


「なんの冗談だ?メガホン。」


鉄骨を背に、グレンが居た。その視線に射抜かれるメガホンは、なんだかバツの悪そうな顔をしていた。



奇異な状況に楽しそうに笑うするメガホン。視線をリディアに向けたグレン。そして、先ほど命を刻みあった()へと警戒の視線を向けるリディア。

三者三様、様々な反応。しかし、その3人全てが、己の武器に手を添えていた。

グレンは『鉄骨』へと。メガホンはいつの間にか取り出したリストバンドを右手に。リディアは『プロキオン・クルーガー』へと。


そうして、少年は這いつくばった格好のまま見た。メガホンが、グレンを叩き落とすところを。

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