2年でも期末考査はきっちりあるのだ
さて、なんだかあっという間に7月になってしまった。
そして前期の期末の時期になった。
「石倉、製菓製パンクラスの実技考査はシャルロット・オ・フィグだってな」
「まあ今の季節だと無花果は旬だしな」
「しかも実技考査は付属のレストランで売れるレベルじゃないと合格でないらしいぜ」
「そりゃそうだろうさ。
俺たち専門学生は即戦力を期待されてるんだしさ」
「まあそうなんだけどな、結構きつくないか」
「芸大の学生よりはよっぽど楽だとは思うけど」
「まあ、それもそうか」
今どき芸大出で食っていこうとすれば飲食業よりずっと大変なのは間違いないだろうしな。
とにかく筆記試験はなんとかパスして実技考査だ。
シャルロット・オ・フィグと言うのは無花果のシャルロット。
日本ではいまいちマイナーな無花果だが、西洋ではメジャーなフルーツでもあって人気も高い。
シャルロットとは、別立てのスポンジ生地を棒状に絞り出して焼いた「ビスキュイ」とババロワを組み合わせた菓子のことだ。
まずはイチジクのジャムを作る。
イチジクを綺麗に洗ってザルでしたあと、ホーロー鍋に切った無花果、水、グラニュー糖、レモン汁を入れて中火で良くかき混ぜ、アクを取りながら20分ほど煮詰める。
それからビスキュイを作る。
ボールに薄力粉はふるっていれ、卵を卵白と卵黄に分けて、まず卵白に砂糖を入れて泡立ててメレンゲを硬めに作り、それに卵黄を少しずつ加えまぜあわせ、さらに薄力粉を加えて泡を潰さないようにゴムべらで混ぜあわせ、1cmの丸い口金をつけたしぼりだし袋で、オーブンシートを敷いた天板に側面の帯状のものと底の渦巻き状にしぼりだしたら、予熱しておいた180度のオーブンで15分焼く。
「うし、ここまでは順調っと」
無花果のババロワを作る。
ゼラチンをふやかし戻し、無花果をフードプロセッサーでピューレにしてそれを鍋に入れて火にかけ鍋のふちがプツプツわいてくるくらいで火を止める。
卵黄と砂糖をボウルに入れてよく混ぜ、ピューレを少しずつ入れてよくかき混ぜ、鍋に戻し混ぜながら、中火で煮て、ゼラチンを加え完全位溶けたら柄付きのザルで漉して、ボウルに入れ氷水にあてて冷ます。
さめて粗熱がとれたら、そこに少量のブランデーを加える。
別のボウルで生クリームを6分立てくらいまで泡立てて、無花果ピューレに加え、混ぜムラがないように全体を混ぜる。
ビスキュイを敷き込んだ円形の方にババロワを流し込んで、刻んだ無花果をその上に飾り付け表面を平らにならして冷蔵庫で固め、最後にミントの葉をのせれば完成。
そこから均等に切り分け、フィルムとホイルで売り物にできるようにして先生を呼ぶ。
「先生、評価をお願いします」
「ん、どれどれ」
先生が見た目や味・食感などを総合して判断する。
「うむ、評価S! 合格だ」
「よっしゃ、やったぜ」
まあ、一年の前期の期末考査は通らなくて退学になったやつも結構いたみたいだけど、二年だとだいたい皆合格はしてるんだけどな。