カプチーノとパン焼きも任せてもらえるようになったぜ。
さて、学校の休みの日でパラディーゾの朝一からバイトに入るときには開店して、一番最初にやるのはスタッフミーティングとともにパンを焼いてカプチーノを入れることだ。
そしてオーナーから俺はそれを任してもらえるようになったのだ。
「そろそろ、相田くんにもやってもらおうか。
これも大事なことだからね」
「はい、ぜひやらせてください!」
これを任されたら是非やってみたいことがあったんだ。
それは”ラテアート”。
泡立てたミルクの入ったカップにエスプレッソを入れるときにカップを動かして描いたり、エスプレッソを入れてあるカップにミルク・ピッチャーのミルクを使ってエスプレッソに絵を書いたりするもの。
温度計針に黒色のエスプレッソを少しだけ付けて、それを筆として絵を描いたりする場合もあるけどな。
「よし早速トライしてみよう」
泡立てたミルクの入ったカップにエスプレッソでハートマークを描いてみたんだが……。
「ハートに見えないな、こりゃ」
せいぜいなんかのマーブル模様くらいにしか見えないそれを見てくくっと笑ってチーフが言う。
「ラテアートは簡単そうに見えて難しいんだよ。
イタリアの軽喫茶のプロのバーテンダーでもきれいな絵をかけるようになるのはだいたい半年から3年修行が必要だって言う話だからな。
とはいえやってみなきゃ始まらないしコツコツ続けていくのが良いと思うぞ」
「あ、はい、がんばります。
ちなみにチーフはできるんですか?」
「ああ、まあ一応な、ちょっとやってみせようか、エスプレッソの抽出からな」
「はい、お願いします」
エスプレッソを入れる時はまず、豆挽機で、豆を非常に細かく挽く。
それからポーターフィルターというさじみたいなやつにに粉を詰めていく「ドーシング」と粉が均一に入るようにならす「レベリング」を行う。
「詰めるときには、きっちり平らにすることで、エスプレッソが均一に抽出されるから丁寧にな」
「はい」
これを行うことで適量のコーヒーの粉を入れられるようになるわけだ。
次に、均一に入れられた粉を押し固めて「タンピング」する。
なぜ押し固めるかというと、エスプレッソは圧力の高いお湯で抽出をするがそのときに推し固めないと、粉が均一にならないため抽出するときにブレるからだな。
「圧力をかけて詰めるときは、地面に垂直に力入れてきっちりとな、で詰めたら、エスプレッソマシンに取り付るぞ」
それからあとはエスプレッソの抽出をする。
「うむ、きれいに抽出できたな、次はミルクのフォーミングだ」
「はい」
冷たい状態の牛乳をスチームノズルの高温のスチームで温めて泡状にし、ミルクピッチャーに取り分ける。
「ここでミルクピッチャーをくるくる回してミルクを均一に混ぜて艶を出す。
そしてすぐに左手にカップを持って高いところから一気にミルクを注ぐ。
カップの半分まで注いだら一気にピッチャーを近づけて太くミルクを注いで、最後に勢いよく前に出すと」
とチーフがやったらきれいなハートマークが出来上がった。
「す、すげーです」
「まあ、俺もだいぶ苦労したが、エスプレッソそのものの抽出もラテアートも反復練習してコツを掴むしかないと思うぜ」
「はい、がんばります」
ラテアートの技術の難しさを実感したがうまくなれるというのも目で見せてもらったし頑張って俺もきれいなハートがかけるようになるぞ。