本当スイーツは奥が深いな
さて、俺の二年目は製菓製パンクラスなのだが、このクラスの男女比率は男10女30と女性比率がとても高い。
他の和食クラスや中華クラスなどはほぼ男だけなのを考えると、パン屋やパティシエと言うのはまだ女性がなることができる可能性が高いのかもしないな。
それはともかく女性が多いと同じ班に男がもう一人いるのはある意味気が楽だ。
「石倉ー、今日の調理実習はペッシェミニョンだってな」
もうひとりの男の名前は石倉陽一、いろんな知識を持ってるし技術もすごい。
ただなんかあちらには一方的にライバル視されてるようなんだよな、俺としてはもっと仲良くしたいんだけど。
そしてペッシェミニョンはフランスの桃のケーキだ。
ただ決まった形のものはなくてスポンジケーキでもロールケーキでもサヴァランでも桃を使えばペッシェミニョンっぽいんだけどな。
イチゴのケーキというのと同じような意味合いだろうか。
「そろそろ桃の早生の旬の時期だからな、最も真夏のほうが糖度は高いが」
「なるほどな」
桃というとタルトやコンポート、ムースと言ったところがすぐに思いうかぶが、今日は桃のジュレとコンポートを使ったロールケーキを作るようだ。
「じゃ始めるか」
まず桃のコンポートを作る。
鍋に白ワイン、砂糖、レモン汁、ピーチ・シロップ、グレナディン・シロップを入れ沸騰させる。
桃を丸ごと入れて中火にかけ沸騰させて灰汁が出てきたら丁寧にそれをとる。
あくが取れたら落し蓋をして10分弱火で煮込めば完成。
ジュレは皮を向いて種を取り除いた桃をジューサーに入れてやればできる。
ロールケーキは卵白でメレンゲンをつくりそこに砂糖とふるった薄力粉を入れてさっくり混ぜ、平型に流しこみ、オーブンで180度で10分焼いて、型から外してケーキクーラーに乗せて冷蔵庫で冷やす。
その間に生クリームと桃のジュレに砂糖をいれ固めに泡立てこれも冷やす。
桃のコンポートを小さめに刻んでこれも冷やす。
冷えた生地に生クリームと刻んだものをのせて手前を高くして巻く。
最後に上の部分に生クリームをデコレーションして完成。
「後はフィルムとホイルか」
一年の時はここまでやらなかったが菓子は切り分けてホイルやフィルムをつかって売り物となるように見栄え良く仕上げるのも授業のうちなのだ。
「よし出来た」
俺がそういうと石倉も出来上がったらしい。
そして石倉はじっと俺のケーキを見て言った。
「なあ、俺のやつとお前のやつ、一つずつ交換しないか」
交換か、それも良いかもな。
「ん、わかった、交換しようぜ」
交換してもらったやつを見たけど、すげー上手い。
「石倉すげーな、まるでプロの作ったような仕上がりだ」
石倉は得意げに言う。
「お前もなかなかいいセンスだぜ」
交換してもらっらやつをまずは食べてみた。
うん、さっぱりしてていいな。
酸味と甘味のバランスが取れてる。
「味もいいな、酸味と甘味が絶妙にバランスがと入れてて」
「ああ、お前のはちょっと甘すぎかもな」
うーむ石倉はシビアだな。
「まあ、甘味を求めてるやつにはちょうどいいのかもしれんが」
どっちなんだよ?
同じものをつくっても差が出るんだからスイーツは奥が深い。
今度のパラディーゾのドルチェは桃で行くとしようか。