後期の筆記試験と実技考査もなんとかクリアしたぜ
さて、正月が終わればパラディーゾのバイトにもどり、短い春休みはあっという間に終わって学校も再開する。
そして1月には学校の後期の期末試験と技術考査がある。
それをクリアできないと卒業も出来ないし調理師免許ももらえない。
そして前期の技術考査は基礎だったが、後期は現場で即座に厨房に入れる程度にはすべての技術を身に着けている必要がある。
もっとも職場に入っても1年から3年位はやっぱり見習いだったりすることのほうが多いんだけど。
「はあーやっぱりテストはやだなー」
俺がそういうと桜田さんが苦笑いしていう。
「また言ってる。
ちゃんと調理師免許を取るために頑張ってよね」
「ああ、そうだよな」
後期の期末試験は筆記試験、技術考査は前期と違って科目は「日本料理」「西洋料理」「中国料理」「製菓」の何れかを受けられる。
そしてその試験に合格すれば卒業できるが合格できなければいままでの努力や学費は全部パーだ。
運転免許の教習所と同じようなものだな。
専門学校の試験は知識や技術をきちんと習得できており、即戦力になってちゃんとお客さんに提供した料理した品で金を取れるレベルになってなければいけないから大変だ。
なのでその前の実習の時間は技術考査の練習に当てられるのだな。
さらにその後卒業展示のメニューとそのレシピの提出もしないといけない。
「うーむ、技術考査はやっぱん生菓子でいくか」
俺がウンウン唸ってると桜田さんが笑いながらいう。
「あら、西洋料理じゃないの?」
「いやーまだそっちはやらせてもらえてないからね」
「なかなかストーブ前とかメインはねー」
日本料理店での板前は見習いの追い回しから始まり・盛り付けの八寸場・調理を行う焼き場や揚げ場・蒸し場や煮方・板場・板長みたいな順番でポジションがあったりするが、西洋料理や中華料理でも同じようなポジションはある。
フランス料理ではシェフと言うのは正式名称シェフ・ド・キュイジーヌで厨房の責任者の総料理長のことで日本料理でいう板長をいう。
スーシェフは副料理長。
パラディーゾでいうならチーフでシェフ不在の時は代理でシェフを務め、日本料理の板場。
その他はシェフ・ドパルティで部門長だな。
アントルメティエはスープや野菜、前菜などを担当。
ガルドマンジェは生食材の下ごしらえ、冷製料理を担当。
ポワソニエは魚料理を担当。
ソーシエはソース、肉料理を担当し、部門の中でもトップのポジション。
ロティスールはローストやグリエなどを担当。
パティシエはデザートやお菓子を担当する。
パテシエと言うのは料理の部門の中の一番上ってこと。
日本料理の焼き場や揚げ場・蒸し場や煮方なんかに当たる。
コミはそれらの下で補佐して働く料理人。
日本料理だと八寸場がそれに当たるかな。
盛り付けとか皿などの準備をする。
アプランティは見習いや実習生で日本料理の追い回し。
今の俺はパラディーゾだとアプランティとパティシエの間くらいかな。
作ったものをチーフが試食してみてOKが出ればお店に出してもらえるけど、ダメなことも結構ある。
菓子作りは奥が深いんだよなぁ。
「そういう桜田さんはどうするの?」
「私は西洋料理よ」
「ま、そのあたりが妥当だよね」
「まあ、がんばりましょう」
そして試験当日になりまずは筆記試験。
「ん、やっぱりだいたい分かるな」
ペーパーテストとはいえバイトで実践もしてる分そんなに難しくは感じない。
マークシートだから答えもある程度用意されてるしな。
採点をしてもらって無事合格。
「よし、後は実技考査だな」
後期の菓子の実技考査は製作からラッピング、皿への盛り付けなども行い見栄や味などが総合的に評価される。
俺が作ってるのはオレンジのシャルロットのシャルロット・オランジュ。
シャルロットは帽子の意味で帽子のような外見からそう名付けられたそうだ。
まずビスキュイ生地を焼き上げて砕き、デコ型の内側に沿わせ、底生地を敷く。
そこにオレンジを合わせたババロアを入れてその上にオレンジのゼリーを載せて、さらにその上にオレンジをカットして乗せる。
冷蔵庫で冷やして、十分冷えたら均等にカットしてラッピングして皿へと盛り付ける。
「よしできました評価をお願いします」
皿に見た目良く盛り付けて先生へ提出する。
「どれ、ふむふむ、なかなかいいじゃないか」
先生がまず見た目を確認しそのご味・食感などを総合して判断する。
「うむ、評価Sだ」
「よっしゃー」
桜田さんの方も一発合格だったらしい
「けっきょくあっさり合格したわねー」
「そういう桜田さんもあっさり合格してるじゃん」
「そりゃまあ、トラットリアの娘ですもの」
「ま、これで卒業制作展示にとりかかれるな」
「そうね、じゃ一緒パラディーゾに行きましょ」
「ん、了解、今日もバイト頑張るか」
こうして試験をクリアした俺たち二人はバイトのためにパラディーゾに向かうのだった。