11月に入ると学祭も間近だ
さて、あっという間にハロウィンやらもあった10月も終わり11月になると学校では学祭の準備、パラディーゾではクリスマスの予約などが入りはじめる。
学校の実習も基礎的な内容は前期で終わらせているので、後期はわりと本格的な調理内容になっている。
「天ぷらをあげる時は……」
今は和食ではやはり大事な天ぷらの揚げ方の調理実習中だ。
そして調理実習で、作ったものは基本は食べるものではないのだが、捨てるなんてもったいなことは俺にはできない。
「せっかくの海老の天ぷらとかを捨てるなんてもったいなことは俺にはできないぜ」
その他他にもいか・きす・かぼちゃ・いんげん・なす・いも・しいたけなどの基本的な天ぷらの具材を用意し振るい入れてだまをなくした薄力小麦粉と片栗粉、卵、冷水をボールであわせて衣の元を作り、魚介類は水を拭き取って、さらにえびは尾を残して全部殻をむいて背ワタを丁寧に取り、まっすぐにして水分をしごき出してあらかじめ小麦粉をまぶし衣をまんべんなくつけ、他の具材も下ごしらえをして180℃の油で温度計を見ながら少しずつ入れていき温度が下がらないように注意しながら揚げる。
最近のコンビニなどでは揚げ物を調理する時には温度や時間を予めセットしておいて、フライヤーの方でそれを自動処理してくれるようになっていたりもするけどな。
「ん、いい感じに揚がったな」
「本当おいしそうね」
「お、桜田さんのお墨付きが出たなら安心だな」
イタリアンマリネやフリッティ、ソッフィチーニのようにイタリア料理にも揚げ物のメニューはあるしな。
揚げ物をうまくできるようになるに越したことはないし、簡単そうに見えるが天ぷらは意外と奥が深い。
「揚げ物って簡単そうだけ意外と難しいよな」
笠羽さんは結構苦労しているらしい。
「そうですね、日本だと天ぷらの専門店も多いですしね」
イタリアだと衣にメレンゲを加える「フリット」も人気だ。
「イカや小エビのフリットなんかは夏のビールやワインのつまみににピッタシな感じだしな。
イタリア料理って言うとチーズって感じだけど」
「そうね、男の人は揚げ物好きよね」
そんな感じで実習が終わったら、昼飯は揚げたての天麩羅がおかず、後はコンビニのおにぎりだ。
「ん、塩だけでも十分うまいな」
俺は塩だけだが笠羽さんはちゃっかりめんつゆを持ってきていた。
「そうですね、揚げたてだとやっぱり美味しいですよね」
「そうね、なかなか美味しいわね」
そして午後は学祭での出し物を決める。
普段から学生の実演実売実習用レストランはあるのだが学祭の日は学校全体が飲食店に生まれ変わる。
調理に専門が決まってる2年生が主体となって、料亭・パティスリー・ベーカリーショップ・カフェ・、レストラン・屋台などが開かれるのだな。
それぞれのクラスによってお店のコンセプトから店舗の内装・外装の設定、出す食事のメニュー作りはもちろん当日の料理・提供販売・接客まですべて学生が行い、この学祭の時は外部の人間の立ち入りも自由なので結構人気だったりする。
一日体験コーナーもあるけどそっちは教師陣のおこなうことだな。
「まず、和洋中の食堂もしくは製菓喫茶店のどれにするかを決めましょう」
「いっそ和洋中のすべての基礎の料理とかでもいいかも?」
「でも刺し身とかは管理も難しいでしょう」
「じゃあ、揚げ物専門で行くのはどうかな」
「ああ、それはいいかもしれないな」
「では、和洋中の揚げ物メニューでいいでしょうか?」
「いいんじゃないかな」
「さんせい」
「では、私達のクラスは和洋中の揚げ物食堂でいきましょう。
細かいメニューについては後日決めましょうか。
どんなメニューがいいか皆さん考えておいてください。
では今日は解散しましょう」