表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/76

夏休みも終わり後期に入ったが就職戦線は熾烈らしい

 さて楽しい慰安旅行も終わると、バイト漬けの夏休みもあっという間に終わって後期授業が始まった。


 飲食のバイトはまかないもあるし給料も出るし、貧乏な俺にはありがたいよ。


 今日は登校して桜田さんといっしょに実習だ。


「いやー、あっという間に夏休みも終わっちまったなぁ。

 旅行は楽しかったけど」


「そうね~バイトしてるとあっという間よねー。

 本当に慰安旅行は楽しかったわよね」


「家族で旅行なんてずいぶん久しぶりみたいだったしほんと良かったな」


「うん、パパもママも楽しそうで何よりだったわ」


 バイトしていたせいで桜田さん達とは毎日のようにあっていたが、学校が始まるとそれはそれで服が変わったりしてちょびっと新鮮だったりもする。


 そして後期になると就職活動も激しくなってくる。


 6月くらいから就職活動自体は始まっていて、7月8月には企業説明会や休みを利用した事前インターシップ制度などもあるが、後期に入った9月10月が本格的な就職試験開始やそれに伴う就職内定のメイン時期なんだな。


 調理師専門学校を卒業すると、筆記試験を受けることなく、各自治体に申請するのみで調理師免許を取得することが可能なので、そういう点では有利だが学歴としてはそれまでに卒業した学歴と変わらない。


 中卒で調理学校を出ればやっぱ中卒扱いだし、大卒なら大卒扱いだ。


「おうわ、ずいぶんと人が多いな」


「それは今がちょうど就職の試験開始の職場が多いからでしょうね」


 進路相談室などではパソコンに入力されてる、募集先の情報を見て先生に相談をする人間でごった返してるが、まあ勤め先によって採用試験が行われる時期や内定の出る時期は異なるのですでに内定のでてるやつも居るんだろうけどな。


 調理専門学校をでていると調理師免許を取得する旨を記載できることで、ある程度調理に関する技術・技能があることはもちろん、衛生観念もあることもアピールできるメリットも有り基本的に土日が休みでないために、常に人手不足なところが多い飲食業・外食産業が就職先であるため就職率は8割を超えることが一般的、残りは自営だったり就職浪人だったりはするが、就職できても理想と現実の差でやめていく人間も少なくはないらしいけどな。


「ホテルなんかはやっぱ人気で倍率厳しいみたいだけどな」


 俺がそういうと桜田さんがうなずく。


「まあ、ホテルはお給料もいいし、安定してるし、福利厚生もシッカリしてるところが多いものね」


「有名レストランとかもそうなんだろうな」


「まあうちは今のところ新しくコックを雇うつもりはないけどね」


「俺がバイトに入ってるから?」


「そうね、それに笠羽さんもいるし?」


「笠羽さんとチーフが結婚すれば跡継ぎも万全ってわけだ」


「それはまだどうなるかわからないけどね」


「およ、そうなの?」


「そうなのよねー」


 なんとなく慰安旅行のときとかの雰囲気だといい感じだと思ってたんだけど、そんな単純な話でもないのか。


 俺もおばちゃんみたいな小さなケーキの店を開くという元の夢を選ぶか、パラディーゾで頑張ってまずは正コックに昇格していずれはセカンドチーフとしてやっていくか悩んで入るけど。


 自営はやっぱり大変だし、パラディーゾはオーナーもチーフもみんなすごいけどいい人ばかりだしな。


 だからその他の場所に浮気するつもりはないけど笠羽さんはどうするのかな?


 昔に比べれば女性コックやパテシエも増えてきてるとは言え基本的にコック板前は男性社会で女性には厳しい。


 病院や給食、介護施設などではそこまででもないみたいだけどそういった場所の給料は安いしな。


 そして昼間の学校が終わったらパラディゾーでバイト。


 そしてチーフに指示される。


「おーい、相田。ゴミを捨ててきてくれ」


「はーい、わかりました」


 けっこう出る生ゴミの入った袋をもって裏のゴミ捨て場にいったら、オーナーと笠羽さんが真剣な話をしていた。


「うん、話しって何かな?」


「オーナー、私横浜テクノタワーホテルのレストラン厨房の面接を受けてもいいでしょうか?」


「そっか、頑張って受けてきなさい」


「……はい、ありがとうございます」


「でも、戻りたくなったら……ああ、いや縁起でもないね。

 気にしないで頑張ってきなさい」


「はいおせわになりました、今月末までは精一杯がんばります」


 そして凍りついていた俺を見つけて笠羽さんが言った。


「あ、聞いてたんですね。

 他の人には内緒にしてください。

 ホテルはきっと厳しいけど受けてきます」


「うん、頑張って」


「はい、相田くんも頑張ってください」


 笠羽さんはホテルの厨房を希望するのは慰安旅行のホテルの食事なんかの影響もあるのか、元々そっちが希望だったのか。


 そしてマスターがやってきた。


「彼女もいい子なんだけどね。

 ホテルレストランとトラットリアでは世界も違うし目指すところも違うんだろう。

 彼女がそちらを目指したいと言うなら無理には引き止められないね。

 ただ、ホテルの厨房は女性だと厳しいと思うから、戻ってきたいと言ってくれたらいつでも戻れるようにしてあげよう。」


「はい!」


 ホテルのコックが本当に目指すところなら頑張ってほしい。


 けど景気がイマイチ持ち直していないのもあってきっと厳しいだろう。


 だからいつでも戻れるようにはしてあげたいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ