真夏の海水浴はやっぱり良いものだ
さて旅館で一泊し2日目は江ノ島で海水浴だ。
かきや旅館新館は海にも近いのでのんびり朝風呂に入って、簡易食堂で旅館らしい朝ごはん、ご飯・味噌汁・新鮮な鯵の塩焼き・味付け海苔・納豆・卵焼き・ヤクルトという献立のそれを食べた。
「うん、取り立ててすごく美味しいわけじゃないけど、なんかこうホッとする味だな」
桜田さんもうなずいていう。
「たまにはこういう和食っぽい朝ごはんもいいものね。
ヤクルトが付いてるのは謎だけど」
「ほんとなんでヤクルトなんだろうな」
笠羽さんもうなずいていう。
「謎ですねー」
多分お約束というものなのだろうけどな、乳酸菌飲料は体にいいはずだし。
朝ごはんを食べたらチェックアウト時間までは少しのんびりしつつ、もう部屋で水着を着てしまい、上にパーカーを羽織ってすぐ海に入れるようにしてしまう。
どっちにしろ荷物はコインロッカーに預ける形になるとはおもうけど。
そして旅館をチェックアウトして江ノ島が目の前に見える海水浴場へ到達。
幸い天気が崩れたり海が荒れたりすることもなくむしろ真夏の太陽の強い日差しで地面が熱せられていて暑い。
砂浜にはビーチパラソルが所狭しと並び、海の家ではいろいろうまそうな食べ物が売られたりもしている。
「今日はナンパよけも兼ねてあたしと相田くん、お兄ちゃんと笠羽さんで行動しましょ」
桜田さんがそういうってちょっと首を傾げた俺だったがなるほどと手をうった。
「ナンパよけ?
ああなるほどね。
確かに女の子二人組とかだとナンパとかされそうだもんな」
笠羽さんもなるほどとうなずいてる。
「そ、そうですね」
「というわけでおにーちゃん、笠羽さんのボディーガードよろしくね」
笑顔でいう桜田さんにチーフはやれやれと言った様子。
「ま、大切なバイトの娘さんだ、ちゃんと保護はしないとな」
海の家でビーチパラソルを借りてオーナーと奥さんはビーチチェアをその下においてくつろいでるようだ。
そしてオーナーは俺たちにいう。
「皆、思い思いに楽しんでくるといいよ」
俺はうなずきつつオーナーに声を返した。
「オーナーも奥さんも変わってほしかったら声かけてくださいね」
「うん、そうさせてもらうよ」
ちなみに桜田さんはこの前買ったトロピカルな感じの花がらのセパレート水着だし、笠羽さんはモノトーンなワンピースタイプの水着だな。
「じゃあ、いろいろ海水浴のお約束ってやつをやってみようか」
俺の言葉に首を傾げる桜田さん。
「お約束?」
俺はうなずく。
「うん、スイカ割りとかバナナボートに乗るとか普通に泳ぐとか」
まずそれに賛成したのは笠羽さんだった。
「あ、それいいですね、意外とやらないものですし、そういうの」
チーフも賛成のようだ。
「ああ、そういうのも海水浴らしくっていいんじゃないか」
「じゃあ、みんなでやってみましょうか」
「じゃ、まずはスイカ割りか、海の家でセットでうってるかな?」
そこら編は抜かりなく用意してある海の家が有ったので木の棒と目隠し用の手ぬぐいを借りつつ冷えたスイカを買ってくる。
「じゃ、じゃんけんで勝った人からでやりましょ」
桜田さんがそういうとみんなでうなずき俺は負け続けて一番最後だ。
「なんか俺がやる前に終わりそうな気もするけどまあいいか」
一番目が桜田さん。
「じゃあ目隠しして3回そのばで回ってくれ」
「はいはーい」
桜田さんがゆっくりその場で回るとちょっとふらっとしたが大丈夫かな?
「右右右ー」
「あ、行き過ぎちょっと左だよ」
「あ、また行き過ぎ右ー」
あーなんかどっちなのよーという苛ついた感じが伝わってきてるけど。
「そこですよ」
「いやちょっと左ー」
桜田さんが棒を振り下ろしたけど外れた。
「あーもう、全然わかんないわよー」
次がチーフ。
「よーし行くぞ!」
「そっちじゃないですー」
「いやもうちょっと横ー」
だがやっぱり外れ。
そして笠羽さん。
「んーと3回回って……」
「右右ー」
「お、そのままそのまま」
もしかして笠羽さんの誘導がいまいちだったのか?
けど当人はスルスルとスイカに近付いていってるな。
「そこよー」
「えい!」
パコンと木の棒がスイカにあたって見事に破れた。
割れたスイカを適当に更に割ってみんなで食べる。
「じゃあみんなんで食べましょ」
「お、おう」
俺もやりたかったなー。
まあスイカはうまかったけど。
「じゃあ次はバナナボートにしようか」
「そうしましょ、ちょっと暑くなってきたし」
「そうするか」
「ええ、そうしましょう」
今度はバナナボートに皆で乗る。
バナナボートはその名の通りバナナの色形をした細長い乗り物で、その上にある程度の人数でまたがって乗り、マリンジェットやボートなどで牽引して楽しむものだ。
まずライフジャケットを身に着けてみんなで乗り込む。
4人乗りの小さめのやつなので乗るのは俺たちだけだ。
そして走り出すと意外と体感スピードがかなりある。
「うお、意外と早いんだな」
そしてちょこっとずつ曲がったりなんだりして、激しく揺さぶられるバナナボートにしがみつくのはなかなかスリリングだが急に曲がることでボートから投げ出される俺たち
「おわ?!」
”どっぱーん”
ライフジャケットもあるので別に心配はないが海水が冷たくてしょっぱい。
「よっと!」
バナナボートにしがみついてなんとかその上にもう一度乗る。
「桜田さん大丈夫?」
「あ、うん、大丈夫だけど」
「あ、あがるの大変だしつかまって」
俺が手を差し出すと桜田さんは俺の腕につかまったのでなんとか海から引き上げた。
「意外と力あるのねー」
「そりゃ、料理人は腕力必要だし?」
笠羽さんもチーフが引っ張り上げてバナナボートは再度出発。
なんだかんだであっという間の20分だった。
「バナナボートは思ってたよりずっといいな」
「そうよねー」
そしてお昼は海の家でバーベキュー。
エビやイカ、ホタテ・アワビ・サザエなどの海鮮類にビーフ、ポーク、ハーブチキン、ソーセージなどの肉類、とうもろこし、玉ねぎ、ピーマン、椎茸、ニンニク、ナス、ズッキーニ、エリンギなどの野菜もたっぷりの炭焼きのバーベキュー、アルコール・ノンアルコールの飲み放題付きだ。
「うおー豪勢だなー、早速いただきます」
エビを焼いて早速食べたがうん、新鮮でうまいわ。
肉も野菜もたっぷり食べたよ、まだまだ育ち盛りだしな。
締めは鉄板焼きソバを自分たちで焼いて食べる。
「なんかチープでもこういうとこの焼きそばはうまいよな」
「うん、そうだね」
オーナー夫妻はアルコールで上機嫌っぽいな。
「雰囲気っていうのはあるんだろうな」
チーフは真面目に考えてるようだが休みのときくらいは力抜けばいいのにな。
ともかく俺たちは夏の海を満喫したのだった。