ようやっとケーキをお客さんに出してもらえたぜ
さて、夏休みの8月同じ学校のクラスメイトの笠羽さんというバイト仲間が増えた。
彼女に掃除の仕方などを桜田さんといっしょに教えつつ、俺は相変わらず下ごしらえがメインだが少しずつドルチェをつくらせてもらっている。
「よし今日は洋梨とココナッツで勝負だ!」
まずはアングレーズソースを作る。
牛乳、バニラビーンズ、卵黄、グラニュー糖を用意して、ボウルに卵黄を入れてほぐし、グラニュー糖の半量を加えて白っぽくなるまで混ぜたら、鍋に牛乳と残りのグラニュー糖、さやからしごき出したバニラビーンズとさやを入れて、砂糖が焦げ付かないよう混ぜ溶かし完全に溶けたら、卵黄の入ったボウルに少しずつ加えてよく混ぜ合わせ、再び鍋にもどし、高音になって分離しないように弱火混ぜながら火にかけゆるくとろみが付いたら火からおろして、目の細かいザルでこして不純物を取り除く。
それから牛乳、タピオカ、ココナッツミルク、グラニュー糖、生クリーム、ゼラチンを用意して、まずはタピオカを弱火で15〜20分程度かき混ぜながら茹でてやわっこくし、牛乳を鍋で温めたあとで、その中にココナッツミルク、グラニュー糖、茹でたタピオカ、水でふやかしたゼラチンを水気をしっかり絞って入れ、とろ火でかき混ぜ溶かし溶け合わさったら鍋から移し氷水で冷やすしながら生クリームを食わえて混ぜ合わせ混ざったら方に入れて冷やす。
洋梨を細かく刻み、裏ごしてピューレ状にしたら水でふやかしたゼラチンを水気をしっかり絞って入れボウルに入れ、アングレーズソースを加え湯せんにかけながら混ぜ生クリームをホイッパーで混ぜて全体を均一にして型に入れてやはり冷やす。
最後にアイスディッパーでそれぞれを取ってアイスグラスにのせてスライスした洋梨を飾りつけた。
「できました、洋梨とココナッツのムースです」
フルーツは季節の旬のものを使うというイデミ・スギノに合わせて、洋梨とココナッツを選んでみたがどうだろうか。
「うん、可愛らしいし、スッキリした味でおいし~ね」
桜田さんはホクホク顔で食べてくれた。
「うん、すっとした味で暑い今の季節には悪くないな」
オーナーも褒めてくれた。
「すごいなぁ、プロみたい」
笠羽さんもそう言ってくれてる、残念ながらまだプロには程遠いんだがななぁ。
「うーん、洋梨かぁ」
しかしチーフが微妙な顔をしている、そして食べてみて難しい顔でいった。
「うーん、まだちと生の洋梨を使うには早すぎだったな、洋梨は追熟が必要だから甘みが足りない」
俺も食べてみたが、そう言われてみればそんな気がした。
「うーん、そうですか、駄目でしたか」
俺がそういうとチーフがニット笑っていう。
「でも、ムースの食感は悪くないと思うぜ、イデミ・スギノで食ってきたんだって?」
「はい、あそこのムースの口当たりの良さはさすがだと思いました。
けど接客を犠牲にしてる気がするには残念ですけど。」
「うん、お前さんの努力は認めるぜだが、これじゃまだ客には出せねーな」
「そうですか……」
残念ながら合格はまだもらえなかった。
まあ、皆が美味しいと言ってくれたのが慰めだけど。
「じゃま、俺のドルチェもちょっと食ってみてくれ」
とチーフが差し出したのは抹茶ケーキ、下にはラベンダー色のソースがマーブル模様で敷かれている。
俺がそれを口にしてみるとスッキリとしているけどほんのり甘くて食べたことのない味だった。
「このソースはヨーグルトにブルーベリーっぽいですけどブルーベリーじゃないですよね」
「おう、その色はあんこだ」
「あんこ?」
「おう、意外とうまいだろ」
「はい、さっぱりしていておいしいです」
なるほどこういう組み合わせなんかもあるんだな。
「勉強になりました、ありがとうございます」
「おう、俺も期待してんだ、頑張ってくれな」
「はい!」
そして明くる日のこと、俺はシブーストを作ってみることにした。
フランスの洋菓子でありカスタードクリームとゼラチン、イタリアンメレンゲをあわせたクレームシブーストを使ったドルチェ。
パイ生地をやき、フィリングはりんごではなくて和梨を使う、タルトに焼いたなしのフィリングとクリームチーズと砂糖、卵黄、生クリームを混ぜたアパレイユを流し入れオーブンで焼く。
シブーストクリームを作って先ほど焼いたアパレイユの上に流し込んで冷蔵庫で冷やし完成だ。
「できました梨のシブーストです」
「うん、きれいに出来てるね」
オーナーは褒めてくれたがチーフはどうだろう。
「うん、いいんじゃねえか、父さん残りを客に出してみようぜ」
「お前がそういうならそうしてみようか」
俺が作ったシブーストを客が食ってくれる。
やったぜ、と思ったんんだが客は普通に食べてたんでうまかったのか、それともいまいちだったのか良くわからなかった。
チーフがいいって言ってくれたんだから悪くはなかったと思ったんだけど、まだまだってことか。