第壱話【School life of the summer】①
地上で生きるもの全てを焼き殺さんばかりの日射を放つ太陽の下。
背にリュック、右手に水色の液体を凍らせた氷菓を持ち、左手のうちわで扇いでいる男子高校生が一人。半袖シャツの襟元には汗が大きな濡れジミが広がっている。
緋乃式綾人ーーこれが俺の名前だ。
長崎私立北ヶ丘高等学校の二年生で「アヤト」と呼ばれている。
容姿並、成績並、運動並より少し上。
両親が昔から海外出張が多かったというのもあって特技は家事全般。最近は特に料理に力を入れている。高校に入ってからは特技のせいで「オカン」とも呼ばれるようになった。
部活動は一年生の時から文芸部に所属している。
「ちょっと……置いていかないでよ、アヤ兄ぃ~……」
背後から弱々しい声で話しかけてきている女の子の名前は杉田紗枝。呼称サエ。
俺の一歳下の幼馴染で北ヶ丘高等学校の一年生。
容姿上の中。成績下の中。運動上の上。
髪型は肩より少し長いポニーテール。小柄でクリクリとした大きな目が小動物のように愛らしく保護欲をそそられる。
スタイルは割と良いほうだけど残念なことに胸は見事なまな板。
胸を話のネタにする度に『サラシ巻いているの!』とキレは鳩尾に自慢の身体能力を生かして拳を撃ち込んでくる。
胸の件を除いても容姿の良さと明るい性格から割とモテているようで高校生になってから約四ヶ月の間に十数回も告白されるという美少女系アホガールだ。
部活動は俺と同じで文芸部に所属しているけど、文字だけの本を見ても一分保たずにK.Oので部室では漫画やアニメをよく見ている。
文芸部部長曰く、
「漫画やアニメも立派な文芸、文化に含まれるから大丈夫よ」
とのこと。
文芸部部長が大丈夫というのだから大丈夫なのだろう。
「もぉ、歩きたくなぁい〜!」
紗枝はその場にしゃがみ込んで駄々をこね始める。
小柄な体格のせいで高校生という証明である制服を着ていなければ、他人が見たとき幼女と勘違いをしてしまいそうだ。
確かに暑い。今朝見た天気では今年一番の暑さになると言っていたのも頷ける。
俺もアイスとうちわがなかったら俺も心折れていたかもしれない。
「はぁ~……、まったく」
半分ほど残っていた氷菓を大口を開けて食べる。
アイスの棒に焼き入れられているくじの結果は……まあ、ハズレだよな。はじめからハズレが出るとわかっていてもいざ出るとなんとも寂しい。
でも、たしか「〜本集めて応募しよう!」みたいなシステムもあったから一応取っておく。
湿っているアイスの棒をハンカチに挟んでズボンのポケットに入れると、リュックを背から前に移動させて左手首に巻きつけている赤と黒の二色で組まれた平たい紐を解く。
解かれた紐の長さはおおよそ一メートル弱。俺はこの紐を風呂と寝るとき以外、左手首に巻きつけている。
用途は時と場によって様々で重たい物を入れた袋の持ち手に通して肩に掛けれるようにする。怪我をした時その箇所を縛って止血するなど。
今回は片手に紐の端から数周巻いて、背中の後ろを通して空いている片手渡して巻きつけると紗枝の目の前でしゃがみ込む。
「ほら乗れよ。このまんまじゃ学校に遅れるだろ?」
「……うん! ありがとねっ!」
「はいはい、お礼はいいから早く乗ってくれよ」
紗枝はそれでもありがとうと言って、俺の肩を持つと背中と紐の間に足を通してに腰掛ける。
これは高校生にもなって女子の足やお尻を手で支えなくても良いようにと考えて思いついた方法。
だけど、なんといえばいいのか迷うが年頃の女子が纏うようになる甘い香りっていうの? それで少しだけ、本当に少しだけ! 心拍数が跳ね上がる。
胸の柔らかさ? そんなものまな板故に皆無に決まっている。
本心を言わせてもらえば、役得ではあるけどおんぶなんてしたくない。
男女が手を繋いでいるだけで付き合っているだのなんだのと言われるこの世界で、男子高校生が女子高校生を背負っているともなれば付き合っていると思われるのはほぼ確実だ。
ここは慎重に行かねば……。
「ねぇねぇ、アヤ兄が書いてる小説のタイトルってなんだっけ?」
「……なんだよ? 藪から棒に」
「クラスにアヤ兄と同じように小説を書いてる友達がいるんだけど、昨日私のアヤ兄も小説を書いてネットに投稿してるんだーって言ったら見てみたいからタイトルを教えてほしいって言われたんだけど……」
ナチュラルに『私のアヤ兄』っていったよな……。面倒臭いからスルーするけど。
「……タイトルを忘れたから教えて欲しいってことか?」
「そうそう! そうなんだよ〜」
「前に教えたことなかったか? いや、あるよな。それも割と最近に」
「いや~、私って三歩歩いたら大体忘れるからさ!」
三歩歩いたら忘れるって鳥頭過ぎだろ。
美少女系アホガールに次ぐ新たな肩書きは鳥頭系アホガール、とかになるのか?
俺自身に面識がない人物に教えてほしいと言われている以上、教えないわけにも行かないだろう。
むしろ俺にはその人物が、その人物には俺という読者が増え、小説を書いている者同士の意見交換も出来るようになる。これ以上ないほどウィンウィンな関係だ。
「《鮮血の執行者》って言っても漢字がわからないか。……えっと、新鮮の鮮に血液の血、エグゼクターは正義執行の執行で何者の者にルビでふってある」
「そうそう《鮮血の執行者》! 本当に血って単語を入れている辺り、元中二病らしいよね~!」
「忘れたって言うから教えてあげたのにディスられるなんて、この世界は無慈悲だ……」
「この世の中無慈悲なことの方が多いと思うけどなー」
おんぶしてなかったら紗枝の頬を掴んで左右に伸ばしながら「そんなことを言っているのはこの口かぁ〜!?」というくだりをしてみたかったんだけど、残念無念また来年。
紗枝が言うように中二病感が漂うこのタイトルではなく、『ハイス◯ールD×D』とか『生徒◯の一存』みたいなセンスのあるタイトルがあったんじゃないか? と今でも考えることがあるけど、既にこの名前で数万人に浸透してしまった以上今更変えるのは何だかな〜? ということでそのままにしている。
身近で小説を書いている人は文芸部部長くらいだと思っていたんだけど他にいたなんてな。
その紗枝の友達が書いてる作品のジャンルはなんだろう。
俺のはローファンタジーだけど、女の子らしいと言えば……ラブコメとかハイファンタジー辺りが多いのかなって気もするけど既存の童話のアレンジとかもあるかな?
考えを巡らせていると学校を目視で確認出来る距離まで近づいていた。
脇道に存在するには珍しいコンビニの駐車場に入ると、ゆっくりとしゃがんでから紗枝を降ろす。
「言ってたとおり、俺が背負っていくのはここまでな?」
「えぇ〜、なんでぇ〜?」
そうして再び駄々をこね始める。
だって、学校のほぼ目の前まで来ているんだ。ここまで来たんだったら最後、生徒玄関を潜り下駄箱まで行って欲しいのもわかる。うん、大いにわかるけど……っ!
この脇道を抜けてしまえば大通り。
登校途中の生徒が大勢いる状況で男子高校生が女子高校生を背負っている場面を見られることは俺の精神に超絶ダメージプラスクリティカルでワンパンされる可能性あり。ちなみに超絶ダメージだけでも俺の精神力は削り切ってしまうのでクリティカルが出るとオーバーキルとなる。
なので、そうならないためにここはどんな手を使ってでも紗枝には自分の足で登校して貰わなければいけない。
「じゃ、じゃあアイス一本買ってあげるからそれで──」
「わかった」
超チョロかった。略して『ちょちょ』ってところか。
本当にこういう時、紗枝がアホの娘でよかったと思う。紗枝のおばさんとおじさんには申し訳ないけど本当に思う。
二人揃って自動ドアを潜る。
夏の冷房のありがたみを噛み締めながら俺はペッドボトルの飲み物コーナーに、紗枝は店内を進みアイスコーナーに向かう。
飲み物コーナーで何を買おうか眺めていると一つのカップアイスを見つけてきた紗枝が俺の元に駆け寄ってくる。
それは見られる見違うことはない高級アイスハーゲ◯ダッツ。一般的な高校生の経済力しか有さない俺を財布の紐で絞め殺すつもりか?
「頼むからもっとお手頃なもので頼む」
「わかった……」
ショボンとした様子で再びアイスコーナーに戻っていく。
今度は安価なカップアイスを持っていきたい紗枝。
「アヤ兄はアイス食べないの?」
「俺はさっきソーダアイス食べてたからな、今また何かアイス食べたらお腹冷やしそうだからな。だから俺は……こっちだ」
商品保冷用棚の扉を開けてジャスミン茶を取り出す。
ジャスミン茶の花の香りが好きで頻繁に飲んでいる。まあ、他にもダイエットやリラックス、集中力アップ等、他にも様々な効果があるってのも魅力的だから選んでいる。
紗枝のカップアイスを受け取るとレジに向かう。
「一◯◯円の商品が一点、一四◯円の商品が一点。二点合計で二四◯円になりまーす」
「えっと、二四◯円で」
「……ちょうどですねー。ありがとうございましたー。あ、次の方どうぞー」
なんというか、喋り方に覇気のないアルバイトだった。
あと一年と半年後には俺も高校卒業だし、ああいう夢も希望もない感じにはなりたくないな。
コンビニを出ると、小さめのレジ袋からジャスミン茶だけを取り出しレジ袋ごとアイスを紗枝に渡す。
「ありがとね、アヤ兄!」
「一応貸しだからな?」
「え!? タダじゃないの!?」
「だって俺、奢るなんて一言も言ってないだろ? ほらほら、早く記憶を遡って」
そこの「あれ、そうだったっけ?」という人も前の方を見直してみよう! 俺は奢るなんて一言も言っていないぞ。
……。
ハッ!? 俺、一体何を口走っていたんだ? どこかの誰かに話しかけていたような気がするけど。
「ああああ!? 本当だ! 計ったねアヤ兄!」
「計ったも何も引っかかったのはサエの方だろ? これも一種の社会勉強だと思ってくれ。それじゃあ、行くぞ」
「むぅ〜……、わかった!」
そう言って駆け出すサエ。
その直前、なんかを企んだ笑みを浮かべていたのに気づいていた俺は身構える。
「学校まで競争ねぇ! 私が勝ったら貸しは無し! 加えてハーゲ◯ダッツを買ってもらうねぇ!」
駆け出してから言うとかズッルい!
慌ててジャスミン茶を鞄に突っ込むと全力で追いかけ始める。
「俺が勝ったら!?」
「私のこと好きにしてもいいよぉ! 例えばアヤ兄の本棚の裏に隠されているエロ同人誌みたいなぁ!?」
「するわけないだろ! って、えぇ!? あれバレてるのかよ!」
バレないように本棚も改造してたのに!?
予想外のカミングアウトに絶叫する。
出遅れて走り出したが運動不足の俺が実際に全力で走れたのは最初の数十秒だけだった……。
*
「おはよぉ~……」
人のこと……正確には紗枝のことが言えなくなるくらい弱々しい声で挨拶をしながら教室に入る。
勝負は紗枝の圧勝に終わり、借りもなしになった挙句放課後にハーゲン◯ッツを買うことになった。
アイス一個はそんなに高くなくても塵も積もれば山となるとはよく言ったもの。しかも今回は安価なアイスではなく一個何百円とするハーゲン◯ッツ。財布に与えるダメージは考えているよりも深刻だ。
どこかで節約しなといけないな。……今月発売のラノベの最新巻は来月にまわそう。楽しみにしていたんだけど仕方ないか。
「はぁ……とりあえず、休むか……」
フラフラとなおぼつかない足取りで、自分の席に着くと飴色の板に突っ伏す。
ゼェ……ゼェ……と、乱れたほんのりとソーダの香りがする呼吸が机の天板に当たって顔に跳ね返ってくる。
俺よりも早く着いていたクラスメート達はいくつかのグループに分かれて楽しそうに話している。
ちょうどいい、今のうちに休ませてもらおう。
「アヤト氏、おはよう! でござる!」
「……お、おはよう……。布教師」
背後から聞き慣れたござる口調の声に、俺は疲労たっぷりの陰気な声で返す。
そこに立っているのは猫背かつ、目を不衛生に伸ばされた髪で覆い隠している男子生徒。
彼の名前は前村陽光。呼称布教師。
北ヶ丘高校一のオタクで、ありとあらゆるアニメ、マンガ、アイドルをマスターしている彼がそれらに興味がない人たちに次々と布教し|堕《》としていく姿から布教師と呼ばれている。というか、呼び始めたのは俺だったりする。
成績は割と出来て運動もなぜか抜群。
性格はいたって温厚。ただ、オタクやアニメをバカにしようものなら自身が持つ情報網を駆使し、相手の弱みを握ると徹底的に社会的に潰し、それでも潰れることなくバカにしてきた者は布教師自らの手で叩き潰す。
なんでも昔は空手をやっていたらしく全国大会に出場したこともあるらしい。強いわけだ。
「相変わらず、早朝からお疲れの様子でござるな。最新話の執筆による寝不足でござるか?」
「まぁ、それもあるけど色んな物を犠牲にして登校してきた代償とだけ言っておくよ」
「あぁ~……相変わらずの災難であったでござるな……」
「やめろよ、なんか無性に泣きたくなるから」
俺は上げていた顔を再度机に擦りつけると、布教師はやれやれと首を横に振る。
「それはアヤト氏自身がどうにかするしかないでござる。それは置いておいて……」
布教師はまるでロボットが物を掴んで端に置くよう動きをする。
俺の悩みを『それは』で置いておかれた……解せぬ。
「で、公開された最新話を読めば済む話であるのは承知しているのでござるが……今回の展開はどのように? 小生が過去に見てきたアニメ、マンガ、ラノベの展開を参考に考えたとき、高い割合で主人公はの強力な形態へと進化や強化すると言うのがセオリーでござるが?」
「布教師の言うとおりだ。今回で血刃龍はさらに強くなる強化する」
布教師はやはり! と叫ぶとブツブツと独り言を言い始める。
こうなってしまうとしばらくは自分の世界に入り込んで出てこなくなる癖があるから放っておく。
俺が小説を書き始めることになったわけ。それは三年前まで遡る。
『ーーフハハハハハハッ! 我が名はブラッドブレイドマスター! 世界に終焉を来訪させし最強の邪龍"血刃龍"を宿した者だ!』
中学二年生の時、俺は中二病を発症した。
割と重度なタイプで、腕には血刃龍の封印のために刻みこんだ紋章と言って黒色のマーカーペンで幾何学模様を書き込み、それを覆い隠すように包帯を巻く。
片目には赤く爬虫類のように上下に割れたカラコンを入れて眼帯を装着。季節問わず長袖のシャツを着用し、学ランを肩から羽織う。
これが当時のフル装備。
一時期は皮膚科の塗り薬、眼科の目薬が手放せなかった。
極め付けが十数冊からなる"黒歴史ノート"。現在はネクロノミコンと呼んでいる。
内容は中二病時代、頭の中に広がっていたブラッドブレイドマスターの設定と能力。様々な情報を北欧神話の原典に使われたとされる古ノルド語で書いてある。
中二病発症から一年と数ヶ月後、完治させた俺はその期間の記憶と収集作成物をこの世に残していけない黒歴史として廃棄を始めたが黒歴史ノートだけは古ノルド語で書いてあるため自分を含め、特殊な人以外には解読不可能と判断し手元に置いておくことにした。
まあ、思い出ってやつだ。
そして、高校入学を目前に控えた俺は唐突に考えたんだ。あの黒歴史ノートを何かに使えないかな? ……ってね。
今思えば高校入学を目前に控えた時期でも完全に中二病は治っていなかったんだと思うよ。
そこで選んだ手段が小説だった。
中学二年生の時、思い描いた理想の世界を小説を通して作り出す。
漫画や神話系以外の本を読むという習慣がなかった俺はすぐさま本屋へと足を向けた。
丁度中学卒業と高校入学のお祝い十数万円を貰っていたのでそれを使い、俺好みのライトノベル、小説を大量も大量に買い込んで数日徹夜をして読み漁った。数日連続の徹夜は脳だけではなく消化器官にもダメージを与えるようで十数回は嘔吐と鼻血を繰り返した。
そうして、手探りで黒歴史ノートに書かれている設定を小説へと還元して数万文字を書き上げたわけなんだけど、それをパソコンのフォルダ内で腐らせるのは勿体無いと感じた俺は、試しにネットの小説投稿サイトに五千文字ずつに分けて投稿してみた。
投稿して二週間が経ち高校生になり布教師と出会った頃、閲覧数を見ることが出来る事を知った俺はその数字に目を疑った。
閲覧数、数千。さらにお気に入り登録は数十件。感想も十数件。
出してしまったものを今更消すわけにもいかずそれから一年以上も投稿をしているというわけだ。
「それで今日は直前のコンビニまでアヤ兄におんぶしてもらって登校したんだ!」
「いや~、今日の暑さはいつにも増して酷であったから良かったでござるなぁ」
気づいたら紗枝が布教師と楽しそうに話していた。
「なんでサエがここにいるんだ? あと、それ喋ったら意味ないだろお前……はっ!」
「へ? ッふんぎゃあぁぁあぁぁあッ!?」
俺は紗枝の頭部を脇で抱えると一気に締め上げていく。
完璧に決まったサイド・ヘッドロック、日本語名頭蓋骨固めの痛みに紗枝が絶叫を上げる。
マジで俺がなんのために学校から離れたコンビニで降ろしたと思ってるんだ! お前がここで話しちゃったら全部水の泡じゃないか!
締めていた俺の腕をトントンと叩いてギブアップを知らせてきてから三十秒後に解放する。
「で、話を戻そう。一体何だ? サエが今まで教室どころかこのフロアにすら現れたことないだろ」
涙目で頭を押さえている紗枝は手をポンと打つ。
「例の子にタイトルを教えたら、なんか読者だったみたいで今度は実際に会いたいって言いだしたからそれを伝えにきた! てことで、今日のお昼休み弁当持参で屋上に来てねぇ!」
「お、おい! 待て……って行っちゃったよ」
言うことを言い切った紗枝はあっという間に教室から去っていった。これまたすごい速さで。
本当にそれだけ伝えるためにここに来たのか。スマホ持ってるんだからメールやSNSって方法はあったのに。てか、紗枝の教室からここまで確実に三歩以上必要なのになんで覚えてるんだ……?
さっき俺が走り去る紗枝を大声で静止したせいで、周囲の視線が一斉に、突き刺さっている。
その視線に気づいていない振りをして椅子に深く腰かけ直す。
「……さて、布教師」
「ど、どうしたでござるか?」
「俺は今から仮眠をするから、先生が入ってきたら起こしてくれないか?」
「りょ、了解でござる」
これで目覚まし時計いや、目覚まし人間、セット完了っと。
カバンの中からアイマスクと枕用のノートを数冊取り出すと、アイマスクを着用して机に突っ伏す。
その数分後、担任教師が来たことで仮眠はとることが出来なかった。




