ローランの唄
今回は土日に投稿したということもあり、長いです。
あれから僕ら眠りに着いてしまったらしく、朝は太陽に無理矢理起こされてしまった。
だが、眠りが覚めただけで、意識はうっとりしていた。
そのふわふわした時間は隣から漂うバラの甘い香りと、少女の吐息で終わりを告げた。
朝起きると隣に美少女が居る状況に対して冷静に対象できる訳が無かった。
僕は驚いてベッドから転げ落ちてしまった。
その衝撃が響いたのか、少女も目を覚ましたらしく、
床に無様な姿で寝転がっている僕に対して手を差し出した。
「ありがとう。アネラ。ぐっすり眠れた?」
僕は赤くなった顔を隠しながら言った。
「うん。だいぶ眠れたよ」
と、大きな欠伸をして言った。
それから顔を洗い、護身用にダガーを持ち、財布を持ってアネラと一緒にトレミをお越しに行ったのだが、もうトレミは起きていたらしく、食堂へ行く事にした。
食堂は昨日の一件があったため、人は少なく、座れる席も少なかった。
食堂を見渡すと、カウンター席に、新聞を読みながらトーストを食べているトレミの姿があった。
僕とアネラはトレミの隣の席に座る事にした。
「おはようトレミ。朝早いね」
「おう。おはよう二人とも先にご飯食べててごめん」
トレミは新聞を降り立たんで言った。
この世界の新聞は国で行った出来事しか記載されていない。
「アネラも朝ごはんはトーストで良い?」
僕は隣に静かに座っているアネラに尋ねた。
「うん。私もトーストで良いよ」
アネラは静かな声で答える。
「おばさん。トースト二枚下さい」
洗い物をしていた店員に注文した。
数分後焼きたてのトーストにマーガリンがしかれ、それとセットに目玉焼きとレタス、ミルクが出された。
十歳の僕達にしたら十分すぎる量だ。
そこでふと気にった。トレミは何歳なんだろうかと。
「トレミ君って何歳なの?」
「俺は十四歳。だけどまだ身体が幼いからね、十歳位にしか見えないでしよ」
トレミは微笑をこぼしていった。
僕達はがつがつと朝ごはんを食べ、食べ終わると売店でローラン用の朝ごはんを買い、各自部屋へ戻った。
それからシャワーを浴びていない事を思いだしてからシャワーを浴び、服を着替えてからリュックに荷物をまとめた。
リュックを背負い、ローランの部屋へ行った。
すると、ローランはもう起きていた様で、着替えの途中だった。
「大丈夫?ローラン」その一言が出る前に、別の一言が出てしまった。
「ローラン。それ……火傷?」
ローランの上半身の肌は少し赤くなっていて、所々が縫ってあった。
「あーあ。見られちゃったか。まぁしょうがないか。俺の本当の事、知りたい?」
ローランの目は真剣で、迷いが無かった。
「うん。聞かせて。ローランの話」
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俺は中央王国カストロから見て東にあるフラクという比較的小さな国に生まれた。
フラクは剣術の国で、男は大抵剣を持ち、生涯を剣と過ごしていた。
俺はフラクの国の王の子供に生まれ、フラクの国の未来を担うはずだった。
フラクには伝統として、十歳になると、生涯を共に過ごす剣、「自像剣」を授かる儀式がある。
儀式は王の次に地位が高い国の占い師「オリヴィエ」
が神からのお告げを聞き、お告げに従い剣を授けるという物だ。
俺は国王の長男なだけあって、幼い頃から剣術を無理矢理叩き込められた。
その度に国王の長男がどうとかで叱られ、体に痛みと共に叩き込められた。
剣なんて使いたくなかった。普通の子供と同じように無邪気に遊びたかった。
好きでもない事が上達する訳がなく、剣術を練習し初めて四年が経った。
それなりの剣術が組めるものの、一般市民の子供よりも劣っていた。
その為、他の子供達からは虐められた。ただ一人を除いて。
九歳になると、一人の少年と仲良くなった。名前はロンス。一緒に本を読んだりして過ごす日々は本音を言える唯一の時間だった。
十歳になり、自像剣を授かる儀式の当日となった。
俺は鎧を身に付けた。
オリヴィエは神のお告げ聴くと俺を上から見つめこう言った。
「汝に主人の言霊を授ける。汝には不滅の剣が相応しいと……」
その意味が俺には分からなかった。だが、見物していた民衆や、王族関係者はざわつき始めた。
遠くからは、「忌み子に聖剣を渡すのは神に無礼だ」
や、「不滅の剣がなんの剣と知っての無礼か!」
などの野次が飛び交った。
その後、俺は国王から不滅の剣「デュランダル」を授かった。
それからと言うものの国民からの非難の声は途絶えず俺は国を出歩く事が出来なくなった。
国王の家来に尋ねても教えてもらえなかった。
ただ一人だけ、俺を支えてくれたのはロンスだった。
ロンスは城への入城許可を特別に貰い、俺の為に毎日会いに来てくれた。
10歳になり一ヶ月、俺はオリヴィエからもう一つお告げを貰った。
それはロンスと共に旅に出ろとのお告げだった。
そのお告げを聞いた時にはなんの事か理解出来なかった。
旅の心得を習い、一式の装備を揃え、国民にもその事が広まると、国民は大きく反発した。
国民の間では俺の事を「忌み子」、「悪魔の子」と呼ばれていた。
俺は剣の国の国王の子供なのに剣が使えなく、その上
身体が弱く、すぐに病にかかってしまう為、国を滅ぼすなどの噂が流れた。
そして何より国の宝であり、象徴である聖剣デュランダルを授かるなどあり得ない事だからだ。
その為「悪魔」や「忌み子」などの異名を貰った。
そんな忌み子を旅に出させるなど国民からしたらあり得ない事だからだ。
俺はこの世の全てから嫌われたのだと察した。
だから旅にできるだけ早く出たかった。
そうして国から嫌われた未来の国王はロンスと共に旅へ出たのだ。
旅に出て早々不遇な事に、長年敵対していた国の使いに襲われ、ロンスと離ればなれになり、森に迷い、森で一夜を過ごそうとしたところ、ウッドゴブリンの群れに襲われ、木の上で休んで居た。
そこからゾロアと出会った。
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という生い立ちなのだそうだ。
ローランの目は憂鬱そうだったが、何処かスッキリしていた。
「ゾロア。こんな俺でも友達と思ってくれるか?」
ローランは泣き出しそうな目で言う。
「ローラン。僕は生い立ちや種族なんかで友達は決めないよ。友達かどうかの判別の条件なんて、
気が合うかどうかが最低であり、最高の条件だと思うんだ」
僕はローランの目を見てしっかりと思いを伝えた。
ローランにはちゃんと伝わったはずだ。
出会って数日でも友達だからローランの事は分かる。
そう簡単に涙を溢すようなやつじゃないって。
だが、ローランの緑の瞳には溢れんばかりの大量の涙が大雨の様に降り注いでいた。
『追記』
この話を持ちまして、『忌み子の旅』の投稿を中止します。
理由はというと、元々違う小説を投稿するつもりだったのですが、手始めに何かしらを投稿しようと思って、サブアイディアとして浮かんでいたこの作品を投稿したのですが、実際アイディアだけ浮かんでいた作品だったので、展開が準備されていませんでした。
次に投稿します作品は最終章までの展開や設定がしっかりとしていますので、調整が終わりしだい、投稿を始めます。
忌み子の旅第4話をお読み下さりありがとうございます。
いや~以外と疲れますね(笑)。
僕は自分のPCを持っていないので、スマホからの投稿なのですが、2時間程かかりました(映画を観賞しながらだったからかな?)
ジ◯リ作品はいつ見ても面白く、伏線の仕掛け方も上手ですよね。
僕自身、この作品は<一繋ぎの大秘宝>が好きで、かなり影響を受けてます。
例えば初めての友達が剣士というところとかも。
あまり言い過ぎるとネタバレだったり、怒られたりするのでここら辺で終わります。
ありがとうございました。