アメジスト
ローランが気を失ってから、僕はしばらくお腹も減らず、眠欲も無くなってしまった為、宿屋の本棚をあさった。
本棚の中には資料が何冊があった。だが、僕が欲しかった種族に関する資料は無かった。
ローランの種族はレプラコーンと本人が言っていたのだが、実際に見たローランの表情、能力はレプラコーンのものでは無かった。
少女の種族は乱暴な親の発言から推測するに、妖精族なのだろう。
それは良いのだが、親であるはずのあの男はフェアリーでは無かった。
いろんな矛盾点が頭を交差し、少し疲れが見え始めた時、後ろから声が聞こえた。
「君……こんな、夜中に何してるの?」
声をかけてきたのは焦げ茶色の短髪で、目の回りに赤い化粧を施している。
「あっ俺の名前はトレミ。雇われ者の弓使い、
<アーチャー>だ」
あまりにもいきなり話しかけられた為、戸惑ってしまった。
「えっ、あっ、僕の名前はルーキ・ゾロア。 少し気になった事があって……」
トレミは何かを察したようで、僕の隣に座わって来た。
「あの少年の事だよね。俺も気になったんだ」
トレミは蝋燭に火を灯しながら言った。
「俺はこの町出身でさ、まぁ色んな種族が暮らしてるけど、一番多いのは人間<ヒューマン>なんだ。とはいえ旅人が年々増加してるからね、いろんな種族を見るけどあんな能力を持った人をみるのは初めてだよ」
「あの……トレミさんは妖精族の少女の事は分かりますか?」
「あの子か……最近妖精族が奴隷になっているらしくてね。元々非力なエルフが働ける仕事とか、魔法を使用する仕事だろうからあまり触れない方が良いかもしれないね」
トレミは腕を組んで言った。
僕は話を聞きながら頭の片隅では別の事を考えていた。
それはトレミが妖精族の少女やローランを追っている悪役だったらどうしようという事。
もう一つはもし、トレミが友好的ならば、僕とローランの関係性について、明かしても良いのか、悩んでいた時、頭上で大きな物音がした。
「二階だ!様子を見に行こう」
トレミは立ち上がり、二階に上がった。
僕はかなりの不安を感じた。なぜなら物音がした部屋が、僕が借りていた部屋だからだ。
部屋を見渡してみると、少女が起き上がり、うつむいてベッドに座っていた。
「あの……君体調は大丈夫?」
僕は少女に声をかけ、背中を撫でた。同年代の異性の体に触れるのは不思議な感覚だった。
だが、そんな事を感じる前に、背中から冷たさが伝わってきた。
「トレミさん、この子、すごく詰めたい。なにかお湯とか沸かしてくれる?」
「おう!分かった」
するとトレミは台所でお湯を沸かす準備を始めた。
「君の名前はなんて言うの?」
「あの……介抱してくれたんですか?ありがとうございます。私の名前はアネラ・クリスタル。よろしくおねがいします」
少女は礼儀正しく深々とおじぎをした。
その容姿は美しく、クリスタルという名前に相応しい輝く紫の瞳。そして艶のあるクリームいろの髪の毛と肌。
そしてなにより注目すべきは背中の黄緑色の翼。
見とれてしまうほどの美しさに、言葉もでない。
「私の種族は妖精<フェアリー>です。本当に介抱してくださり、ありがとうございます。あなたの名前は?」
「えっ、僕の名前はルーキ・ゾロア。数日前に旅を始めたら初心者の旅人さ」
「そうですか……出来ればもう少しだけ休ませて下さいませんか?床でも良いので……」
「うん。どうぞ思う存分休んで。僕が床で寝るよ女の子を床で寝させるような趣味はもってないしさ」
安心したのかアネラは僕の身体に寄り添って来た。
「あなたはなんで知らない人を助けれるの?」
アネラはそう僕に聞いた。
「分からない。ただ、生き物ってそんなもんじゃないかな?」
僕はなんとなく感で答えてみた。
「そう……なら良かった……」
アネラの声は小さく、少し嗚咽を挟んでいる。
「ゾロア。お湯沸いたよ」
トレミが湯タンポにお湯を入れ、タオルで巻き、こちらへ持ってきた。
「あっ、ありがとうございます。貴方のお名前はなんと言うのですか?」
アネラはトレミに聞いた。
「俺はトレミ。気安く読んでよ」
トレミはアネラに湯タンポを渡しながら言った。
「なぁ、ゾロア。アネラも休憩した方が良いし、俺達も寝よう。俺は自分の部屋で寝るから帰るねまた明日」
そう告げると、トレミは自分の部屋へと帰った。
僕もいつの間にか、アネラが隣に寝ているのにも関わらず、眠りについてしまった。
僕の鼻はアネラから匂うバラの香りで満たされ、アネラの静かな吐息が耳に入ってきた。
忌み子の旅第3話をお読みくださりありがとうございます。
さて今回は二人も登場人物が増えましたがので次回から前書きにて、人物紹介を行おうかなと思います。
ローランも次回には復活し、バトルシーンも描けたら描きたいですね(願望)。
テストもいろんな意味で終わったので、バンバン投稿できたらなと思います。
お読み下さりありがとうございました。