表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eternal World  作者: writer
3/3

彼女の章

そう呼ばれることが増えた

なんとも不愉快になる響きだ


最初に私をそう呼んだあれはそれを聞く度に嬉しそうにしている


皆私がまるでココロが無いように扱うけれど、私にもある

表に出ないだけだ


一応感情だってある

"好奇心"もあるし"不快感"や"知的探求心"だって存在する

それに、寿命もある


これの何処が人じゃないというのだろうか


少し変わった力を使えるだけ

ちょっと違う時間軸に生きているだけ

ちょっと変な場所でも呼吸が出来るだけ


それだけの話だ

ちょっと違うだけの、私は普通のヒトだ

高校最後の夏、私は今日も授業を見ていた

わざわざ集まってやる意味もないような事を繰り返して教えるのは無駄じゃないのだろうか?

他者と仲良くする必要などあるのだろうか?


目の前の教師は今日も無意味な言葉を紡いでいる

それがずっと続くとは思っていなかったが、まさかこういう話になるとは思わなかった





「あと1週間で世界は滅びます」





学校から帰ってきた私を迎えたのは天に祈りを捧げる両親と気でも狂ったのか大爆笑しながら転げ回り泣いている姉弟の姿だった


「…何事?」

「あと1週間で確実に世界は滅ぶと確認されたそうです、お嬢様。」


私の疑問に答えたのはこの家に長く仕えている執事の爺さんだった


「へえ、理由は?」

「巨大な隕石が確認されたこと、活火山休火山含む全ての火山が活性化していること、多くの動物達が変死していること、それと抗い難い疫病が流行っていることが理由に挙げられています

隕石衝突が1週間後の為1週間で滅ぶという話になったようです」

「そか、ありがと」


執事に軽く礼を言ったあと家族は無視して自室に戻る

正直な話信憑性は無かったが"嫌な予感"だけはしていたので恐らくこれは事実であり1週間でこの世界は滅ぶのだろう


だとしてもあれらの騒ぎようは一体なんだというのか

ただの変人ではないか

そう思い自室のテレビを付けたが、大半が似たような感じになっているようだったので消した。






滅ぶと言われても学校はやるのだろうか?と気になって学校に来てみたものの、普段煩いくらいの校舎には誰もおらず用務員の爺さんが一人掃除をしているくらいである


「おはよう」

「うん…?おや、おはようお嬢さん」

「誰もいないのに律儀だな」

「誰もいないとしても、これが仕事だし…私はどちらにしろもうすぐ死ぬから気にしないのさ」

「ああ、ずいぶんな歳だもんな」

「お嬢さんも落ち着いているねぇ」


用務員は珍しいものを見るかのように私の顔を見ている


「死んだとして何も思わんからな

死のうと生きようと何も変わらない」

「そうかい…ずいぶんと達観しているんだねぇ…

そうだ、誰もいないからさぼっても怒られないだろうし…この間旅行に行ったときに茶菓子を買ったんだけど食べ切れなくてね、分けてあげよう」

「いいのか?」

「構わないよ…死ぬまえに嬢ちゃんみたいな別嬪さんとお茶ができるなんて私は幸せ者だよ」


そう言って宿直室に向かう用務員の後について歩く


「あんたは…生きられるなら生きたいと思うか?」

「なんだい突然…そうだねぇ、確かに大往生かと言われれば微妙なとこだし、生きていられるのならば生きていたいよ」

「そうか、そういうものなのか」


ご馳走になった菓子は西の国のものらしいが名前は忘れた

なかなかに美味しい菓子だった









あれから一週間が過ぎた

結果を言えば挙げられた理由で世界が滅ぶことはなかった


が、まさかこうなるとは流石に予想していなかった











「世界が崩壊している」







まさか世界そのものがパラパラと崩れて無に帰すとは思いもしなかった


隕石が落ちず噴火もせず疫病は特効薬が完成した直後にこれである


最早人類及びそれ以外の様々なものが泣き叫ぶのが聞こえ正直煩い


じわじわと世界が崩落しているらしく居住範囲がそのうち無くなりそうだという話をされたが正直興味ない


家族…だったか?は新興宗教にドハマりして家からいなくなったが相変わらず執事の爺さんは仕事をしていたので暇を出した

何処へとでも行けばいい、こんな時まで仕事しても無駄だろう

暇を出した瞬間泣いて喜ばれた

「お達者で」と言われてもどうしろと。











多くの人間やその他は世界が滅ぶのを良しとはしないらしい

一部は滅びこそ奇跡などと言っていたらしいが本当の滅びを目の前にして結局生きたがっているらしい





私には物心ついたときから1つ、不思議なことができる力がある

それは文章で綴ったことが私の体や精神などに直接的に作用しない場合に限って事実になるというもの

満腹になる、ではなんら効果を発揮しないが目の前にパンが現れる、ならば本当に目の前にパンが現れる、と言ったようなものだ

間接的であるなら私に作用するものでも使えるらしい






世界が滅ばなくなる、と書いたが何も作用しなかった

これは私に直接的に干渉するせいだろう

なら簡単な話である












「この世界の私以外の全ての存在が滅ばない安全な場所に転移する」
















________一瞬、私には何が起きたのかわからなかった

人類の足元まで迫っていた"消滅"が突然消えたかと思えば青く広がる空に美しい草原、遠くに見える森。

まさか、ここは死後の世界?

思わず頬をつねる

痛い………痛い?

痛みがあるのであれば現実であろう

つまり…これは……


「神の…奇跡だ」


思わず呟いた声が思ったよりも周囲に届き……生を実感した他の多くの人間の歓声が響き渡った





だが、人間達は知らない

その「神」達もまた、"全ての存在"に含まれていたことを

神達やその他超次元的な存在達も救われたことに歓喜していたことなど、知る由もない。























「おー、なかなか綺麗だなぁ」


パラパラと崩れていった世界で残っているのは私の立つこの場所のみ


他の存在がいなくなった途端に"これ"はやたら早足になりあと1分もないうちに私の足場はなくなってしまいそうだ


ほら、予想通り













黒ともなんとも言い難いような空間に浮いていた

酸素あるのかよ、というのは一時間くらい前の私のぼやきである



世界が崩壊したあとその場に取り残されたが死ぬ気配もしないしさっき喉乾いて茶が出ると書いたら出たから死んでもいない

他に大量のノートとペンと大きめの鞄だけは作ったが他は特に何も作ってないし作る予定もなさそうだ


というかここ何もないのか?







ぼーっと辺りを見回していると遠くに光の点が見えた

このよくわからない空間にも星があるのだろうか




星かと思ったら巨大な光の玉だった

中に小さな光がある辺り多分あれが星、もしくは世界なのだろう





ふらふらと漂っていたが中に入る気も起きなかったし近くに家を作ってそこに引きこもることにした

他にやることも無いし死ぬまでぼーっとしてればそのうち死ぬだろ





ぼーっとベランダから光の玉、というか近くに来てわかったがこれ硝子玉だな、を眺めてたら一つの星から何かが発射された


凄い勢いで飛んでいきそのままガラス球を突き抜けたそれは少し離れた場所で急停止した


発射されてきたのは人だった

私くらいの年齢の少年が打ち出されて生きてるってどういうことなのかって思わなくも無かったけど特に興味なかったから寝た

















次に目が覚めた時に少年が飛んできた方を見たらでっかい樹が生えてた

こっちはこっちでガラスで覆われてたし普通はガラスで覆われてるものなのかもなと思ったからこの家も覆った



それで思ったことがある

このガラス玉は誰が作った物なんだろうかと


もしかしたら同類がいるかもしれないと思ったからとりあえずガラスを突き破ってまず少年が発射された方向…じゃなくて球体の中心部に向かってみた



中心に向かう程時の流れが緩やからしくだんだんと色んなものが散乱し始めた場所を抜けた先に地面があった


地面はやたらぼろぼろで何があったか知らないが凄く崩れまくっていた

その中心に巨大な箱…多分機械みたいなものか?とそれによりそって死んでる黒い髪の何かがいた

多分人間なんだろうけどよくわからん

それが抱えていたのは確か銃っていうものだった筈


少し期待していたけどまあこんなもんかと思った

残念だ














戻る途中で少年が発射されてたところを覗くと家から見えた樹とその内部の様子がモニターに映ってた

普通に入ったのに誰も話しかけてこなかったから見えてないんだろうなこれ


なんか偉そうなやつが演説を始めた



「我々は今シミュレーションの中に様々な世界を構築し人類が戦争を回避するための術を模索している!

何年かかるかわからないが必ず完成させようではないか!」




















家に帰って来た

正直なんか知らないけどあれらには腹が立った

とはいえ私には関係ないことだ



でもなんか腹立ったから嫌がらせくらいはするか。










私はでかい樹のふもと、世界樹っていうらしいけどそこにある町に来てみた

私みたいな見た目はよくいるらしい

話しかけてくるやつがいないのは面倒がなくて助かる



ふらふらしたけど面白そうなのもいないし帰るか


そう思った矢先に路地に入る手前の場所にうずくまってる少女を見つけた


目の前に立つとそいつが顔を上げた

なんか白目と黒目が逆な気がするがそれ以外はただの子供に見えるやつだ

親はいないのか?


なんとなく問い掛けた

「生きたい?」

そいつは頷いた

「そうか、名前は?」

「……luft」

……?

「ろふ…言えない、ルフトでいい?」

また頷いた

なんか言いづらい名前の子供だな

そいつを抱えてみたら滅茶苦茶軽かったからそのまま抱えて帰ろうとしたけど考えたらこいつは飛べないし飛んでったら死にそうな気がする



周りを見れば本屋があったからそこで使えそうな本を探す


…まほう?


転移やら治癒やら色々書いてあるから適当にこの世界の金を書いて出して店員に渡して外に出た


本を読むならせめてもう少し読めそうな場所でと思ったら近くに公園があったからそこで読む

そいつを下ろして適当に金を出して何か好きなもの買ってこいと渡して本を読む


目的のページをざっと読んで顔を上げたらそいつがなんか変な顔をして立ってた


「買いに行かなかったのか?」

そいつは不安げな顔で

「私を捨てるの?」

とか意味わからないことをほざいた

「何故」

「前に捨てられたときも、お金だけ渡されたから」

全く意味が解らない

「捨てるために拾わない」


何か言いたげだったそいつを抱えて私は家へと転移した

これ以上の話はめんどくさかった

うん、まほうってのは使いやすいな


そいつを下ろすとぽかんとした顔で周りを見ている

「ここ、どこ?」

「私の家」

そいつは驚いてるのか困惑してるのかよくわからない目で私を見ている

「あなたはかみですか」

かみ。

かみってなんだかわからないが無駄に腹が立つ響きをしている気がする


「かみ、が何か知らないけど腹立つ響きだからやめて」

「なら、名前はなんですか」

名前?

名前って私のか?


…はて?

「覚えてない」


目の前のこいつはさっきからやたらに考えるようなそぶりを見せる

さては見た目どうりなら年相応じゃないなこいつ

「何て呼べばいいですか」

「かみじゃなければ好きに」

「…おかあさんと呼んでもいいですか」


おかあさん

何か聞いたことがあるような気がするが何処で聞いたのか思い出せない

なんだったかな…


「おかあさんが何か知らないけどいいよ」


目の前のこいつはまた悩んでいる

めんどくさくなってきた

寝ていいかな


顔を上げたそいつは無駄にきりっとした顔で私を見た


「お母様、私を、強くしていただけませんか」


強く?

強いってのは武力?専門外だ

知識?専門外だ

それかあそこにあった魔法?…専門外だ


ああ、めんどくさいし書けばいいのか


「書けばいい?」

目の前のやつはあからさまに困惑したような表情でえ?と呟いた

聞こえてなかったのだろうか

「書けばいい?」

「…どういうことですか?」


ああ、聞こえてはいたのか

どういうことってそのままの意味なんだが…ああ、それがわからないのか


「私が書けば強くなる、だから書けばいい?」


そいつは酷く困惑した顔をしていたがそろそろ部屋に戻ろうかと考えた私の方を向くと真面目な顔で

「お願いします」

とだけ言った


「わかった」


そう返して家の中に入り玄関に置いてあったノートに『ルフトが万能になる』とだけ書いた

後は勝手にするだろ


と、思ったら外で人の倒れる音がした



なんか手足が伸びたり服がはちきれたりして気持ち悪いことになってるなと思いつつ適当な部屋に放り込んだ

そのうち起きるだろ





ああ、そうか

あいつを私の嫌がらせに使えばいいんだ







あれの目が覚める前に私の魂を半分に分けてもう一人私を作った

何故かこれは書いたらすぐに叶った

私に作用するものなんだけどな?


見た目はだいぶ違う

私は黒くて長い真っ直ぐの髪ならそいつは茶髪交じりの黒髪で短髪だ

まあ生まれる場所によってまた見た目変わるだろ






あれが目を覚ましてすぐに私の部屋に駆け込んでなんかよくわからない姿勢でお礼を言い始めたけどそれよりも私は今すぐに嫌がらせを始めたかったので無理矢理立たせ半身のいる外にルフトを引きずっていった

なんか変な顔してたけどなんだったんだまあいいか



これが起きるのを待ってる間に私は思った

かみとかおかあさんとか知らないものが多くあると

ならこいつで嫌がらせしつつ知ればいいじゃないかと




ルフトに半身を見せる

「これは魂を分けた人形。いろいろなものを共有できる。」

そう説明した後ルフトが変な顔をしていた気がするけどまあいいだろ

「これを護衛してほしい」

「…なぜですか?」

「私はこれをあの世界樹の世界に放り込む、色々知りたいことがあるから」

「わかりました。何度でも輪廻転生の輪に組み込んで見せましょう」


そうだ、良いこと思い付いた

半身に鍵を組み込む

これはあいつらが使っているしすてむとやらを妨害する目的もあるしこの方が恐らく普通は見ないものを多く見られるだろう

そのうちこれ自体が意志持ったりしすてむ自体になったりしそうだな

それはそれで面白そうだ

私は半身を世界樹へと送り出したというか投げた


「お母様、今あれに何をしたのですか?」

「一矢報いるための布石(となんか色々組み込んだ嫌がらせ用の言の葉)」


それを聞いたルフトは私に向かって頭を下げた後世界樹へと半身を追っていった


楽しいことになりそうだ

少なくとも今までよりはもっと


ああそうだ

もっとルフトみたいなやつを増やそう

書けば書くだけ増えるけどそれだけ書くのは面倒だ

なら名前と生まれる世界だけ決めよう

ルフトには「奴らに一矢報いるための布石をさらに強固にするために」とでも言っとけばあとは勝手に増やしてくれるはずだ

そうと決まったら早速やろう


世界樹が壊れるまではこれで遊ぶか

彼女は既にほとんどを眠りに費やしている。あの子が何かしたのだろうか。いやあの子は最後まで笑っていただけだった。それとも、ただ、飽きてしまったのだろうか。この数年で随分変わってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ