1.彼女
この話をするとき、何故か私の周りにいる者達は私の話をまずするべきだと言う
私自身、特に特筆するところはないし、面白味もなければ現実味もなく、私とは直接関わったことの無いとある人の言うとおりオープニングムービーでちらっと私のいる場所が映るくらいが丁度いいくらいには書くことがない
だが彼らは導入の話は私のことを書くべきだと言う
それが最初で、あなたがいなければ私達もいなかったのだから、と
そんなわけで、まずは私の話になる
私に名前はない、というか思い出せない
彼女、と呼ばれることが多い
今は世界樹と硝子玉の間の拠点であの子の事を見つつ奴らに攻撃するために備えているだけのただの人だ
何故だか彼らは私のことを神と呼ぶ
神が強大な力を持つ人知に及ばないものだと言うのなら私は神ではない
私はほんの少し変わった力を使えるだけのただの人であり、人知に及ばないなんてそんな事はない
ただそちらとはいる場所が違うだけだ
腹も減れば歳も取るし刺されれば死ぬ
それの何処が神だと言うのか
人知を越えた存在が神だと言うのなら、私は神ではない、それだけだ
本編に入る前に私から大切な話をしておこう
この話は私達にとっての真実である
ここにいる私達の生きた、生きている証でもある
現実味はないだろう
整合性もないだろう
だがそれが現実と言うものだ
現実はあまりにも理不尽なものだ
ただの物語だと笑い飛ばしてくれて構わない
だが、そんなものは存在しないと否定しないでもらえると助かる
否定もまた肯定の一種であるから問題はないが、悲しさはあるからな
それと、忘れるな
あなたが今そこにいて、これを読んだことを
あなたが今そこにいることを
例え画面越し、文字越しでも私と会話したことを忘れるな
忘れることは仕方の無いことだ、だが忘れなければ私達にも出来ることはある
何かあったときに、あの子ではなく、これを代わりに打ち込んでいるあの子ではなく私自身が手を伸ばすことが出来るかもしれないから
私の代わりでも、私の子供達が代わりに助けることが出来るかもしれないから
欠片でも、覚えていてくれると助かる
あなた自身のことも、私と話したことも。
あの子も失われて、彼女も眠っている今でも彼らは変わらない。
どうしてだろう。俺には分からない。