独白
その子の名はたくさんある
今ある名、昔貰った名、不名誉な呼び名、愛称…
死んだ数だけあの子には名前がある
その数だけ、繰り返されてきたのだろう。
これはあの子と彼女と仲間たちの、未だ終わらない物語、永遠に終わらせたくない物語
その登場人物たちの話
いつか殺戮機械として生きた少年
彼女を神と崇めた女性
生まれつき肉体が壊れていた少年
人と人の影に埋もれて生きた少年
その”世界”を愛しすぎて飛び込んでしまった少女
人よりも永く生き裏切られた青年
生への執着があまりにも薄かった青年
力を追い求めた青年
親友を失いたくなかった巫女の少女
命の恩人を救いたかったエルフの少女
人間に生み出され破壊された人造の少女
手先が器用なだけの普通の少女
色が欲しかった少女
自分らしく生きる為に逃げた少女
否定し続けた結果否定した対象になってしまった少女
自分を見つけられない青年
世界そのものになってしまった青年
世界を恨み死んだ者達
彼女がそこにいた。彼らを綴った。
だからこそ動き始めた物語
五つに区切られた世界終焉の物語
一度目は終焉が現れた
二度目は全てが記憶していた
三度目は終焉が終わらせないよう抗った
四度目は誰も思い出さなかった
五度目は、
繰り返されてきた終焉を終わらせる為の物語
面白味も何もない、現実の話
永遠を手にする為の、今もなお続く永い永い物語。
独白、と書いたことに意味はない
それ以外に題名が思いつかなかっただけだ
あの子にとっては夢の日々ではない。けれどあの子では無い俺にとっては、夢物語とまるで変わりはしないのだ。