②
「出たよ点P、なんで動くんだよ……」
などと文句を垂れながら、少年は数学の勉強をしていた。
中学三年生の二月、入学試験を目前にしてなお、彼は未だに中学二年生で習った一次関数の問題に苦戦していた。
「そもそも俺は文系なんだし、数学なんてやらなくていいんだよ。理科もまた然り」
そう言いながらもペンを滑らせていくが。
「あぁ、やっぱ無理だわ」
ペンを雑に置き、椅子から立ち上がって体を伸ばしていると、家の電話が鳴った。
電話のところへ行き受話器を取る。
「はい、もしもし?」
『もしもし、川田です。今から学校まで来てください。なるべく早くお願いします』
――担任教師からだった。
* * * * * * * * * * * * * * *
学校に着くと、担任の川田が下駄箱で待っていた。
「こっちです」
職員室へ続く廊下を川田の斜め後ろを歩く。
「俺なにかやらかしたか? まさか、この間の実力テストで前の席の解答見たのがバレたか?」
いかにも中学生らしい思考をする彼だったが、用件は全く別のものだった。
「あなたにお話があると、とある高校の先生がいらしています。粗相のないようにお願いしますね」
「はぁ。高校の先生……。何の用だよ誰だよマジで」
職員室のドアを開けると、左手にまたドアがある。応接室だ。
川田がドアを、コン、コン、コン、と三回ノックし、ドアを開ける。
「失礼します。連れてきました」
一人の女性がソファに座っていた。
年齢は二十歳後半といったところか。
黒のレディーススーツに身を包み、長い黒髪を後ろで一つにまとめている。いかにも、できる女といった感じだ。
「こんにちは。私は、永清学園教員の中野京華といいます」
中野と名乗った女性は、少年の方を見据えると、一度咳払いをし、こう言った。
「永清学園は、あなたを授業料免除の特別特待生として、迎え入れます。ウチにきて、私たちと共に、もう一度最強をめざしましょう」
――少年の復活劇の始まりだった。
本編からは、一人称視点で物語が進行します。
どうぞよろしくお願いします。