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男にフラれた……


医者だから愛したわけじゃない。


本当にその男が好きだったのた。


だがその男は(おまえ、重いよ)と一言。


重い!?妙な日本語使いやがって!いきなり重力がかわるかっつうんだよ!





中目白町に住む、不知火オト(しらぬいおと)は会社からの帰り道で荒れていた。


オトの中では自分は百点満点だった。


もう32歳になるが、なぜ男がほっとくのかわからない。


「あー!イライラする!なんか呑んで帰ろうかな」


居酒屋を2件はしごし、気がついたらフラフラになっていた。


そのへんの電柱でおもいきり逆流。


「気持ち悪い……水」


オトは電柱の近くに夜12時にも関わらず開いている店を見つけた。


中へ入ると薄暗い店内に白髪の紫の服を着たおばさんが立っていた。


「いらっしゃい。ビザレ堂へようこそ」


ビザレ?……それよりも……


「一杯水を頂けませんか?」


はいはいとその店主はそこにあった瓶を渡してきた。


「何これ?」


「酔いが一気に覚める薬じゃ。サービスするぞ」


オトは礼を言い、その薬を一気に飲んだ。


「ぐは……喉が焼ける」


「……すぐなおるよ」


硫酸を飲んだような……飲んだこと無いけど。


だが、店主の言った通り、ものの数秒後には気持ち悪さの欠片も感じなくなった。


「すげー!何この薬?」


「イランの呪詛祖薬(ジュソソヤク)。人間の危険予知本能を高めるもの。」


よくわからなかった……


オトはお礼に何か買っていくことにした。


「お主、男にフラれたの……」


店主の台詞はまるで銃殺されたかのようにオトの胸へと突き刺さった。


「顔に出てますかね……不幸が。」


「いんや。お主のオーラを見ている。まだ未練があるのか?」


オトは店主へ向かい首を下げた。


すると店主は店の奥から誇りまみれの本を持ってきた。何か、古代文字のようなものが書いてあり、表紙のところにポケットがある。


「…我々の中ではエタナラノートと読んでいる。これを使えばどんな男でもおまえさんの思い通りにできるぞ……」


オトはその本を手にした。


茶色の表示を開くと古びた紙が一枚あるだけ。


そこへ己の願望を書くだけ。


「……好きな男の髪の毛をポケットにいれなさい。そうすればあんたはこの男を好きなだけ操れる……」







酔っぱらい女は出ていった。


店主のユミコはクスクスと笑った……


「いいカモが入ってきたもんだ……あのノートは生きてるんだよ。操るものも操られるものも………みなあのノートに食われちまうのさ……へへへへへ」












水雷神ジン(みかづちじん)、29歳は牛舎村で牛の飼育をしながら働いている。


だがそれはジンのやりたいことではなかった。


ジンは推理小説家を目指していた。


何度か本を応募するものの、(トリックの作り方がヘタすぎ!このネタ×××のパクり!)と酷評されていた。


そんな文句ばかり言われてか、ジンは自信がもてなくなった。


そうして……今はメンタルクリニックに通っている。


常磐メンタルクリニックは混みあっていた。


精神的に参っている人が多い証拠だ。


スマホで(精神をタフにする方法)と検索しても、(笑ってすごせ!、ありがとうといえ!)とバカみたいな回答しか書かれていない。


殺したいほどむかつく奴に文句を言われた後、笑うことも、お礼を言うことも不可能である。


スマホに書いたやつはこっちの気持ちもわからないバカなのである。


こんなバカが多すぎるせいで、精神的に病んでしまう人が増えてしまう。



(ミカズチさん、ミカズチジンさん、1番へどうぞ)




「嫌なことがあっても笑って過ごしてください。後は何言われても感謝してあげるように勤めましょう。」


「……はい」


診察がすんだジンはスマホを見たい。


(投稿者   常磐クリニック 院長 常盤ヒサト)


バカタレ……












オトは常盤メンタルクリニックへ来ていた。


右手には時計を握りしめている。


今は診察時間じゃない。


だが目的の男は診察室にいた。


こそこそせず中へはいる。


「オト……おまえなにやってんだ!?」


「ひさしぶりねヒサシ。復縁しにきたんじゃないから安心して。」


オトは時計を投げつけた。時計は床へ落ちた。


それを拾おうとするヒサシ。


そのとき、オトはそそくさと机の上に落ちるものを袋に積めた。


「2年前に買った時計じゃないか」


「バカみたいに高い時計買ってその気にさせといて。そんなもん返すわ。厄払いよ」


「オト……君にやったんだ。僕も要らないよ。」


「んじゃ他の女にやれば。バカな女が引っ掛かるわよ。」


オトは机を叩きその場を後にした。


病院を出て、建物の影へ隠れる。


「……わー☆たくさん入ってる☆」











午後22時


オトはヒサシの髪の毛を一本取り出した。


そして表紙のポケットへいれる。


……とくに何も起こらない。


そうか……予定を書き込まなければいけない。


とりあえず……


(時計をもち復縁をせまってくる)










午後22時


ジンは他の推理小説を読んでいた。


「誰も考え付かないことが起きれば、人は惹き付けられるんだな……」



(稼働)




なんだ……誰だ……見知らぬ女が頭に浮かんでくる……


こんなやつ知らないのに……なぜか、こいつに会いた

 

い……時計が……時計がほしい……時計を渡して……復縁


したい




ジンは押さえきれない気持ちのリミッターが切れ目覚まし時計を持って家を出た。









「また違うの書いちゃおうかなぁ☆」


と一人ごとを話ながら、オトは玄関を見ていた…… 


そのとき!部屋のベルが鳴る。


「え……本当にきた……」


オトはそそくさと玄関を開けた。


あれ!?


「俺と復縁してくれ!!!この時計をもらってくれ!!」


そこにはオトの見知らぬ寝巻きを着た男が目覚まし時計を突きつけて復縁をせまってくる。


「……あの、人違いじゃ……」


「時計をやるから!復縁してくれ!!」


時計……復縁……もしかして……


オトはその男を部屋の中へ引き込んだ。









(不稼働)


ジンが気がつくと見知らぬ女とその女に目覚まし時計を突きつける自分がいた。


「え……ここはどこですか!?」


女はジンに尋ねてきた。


「……あなた……常盤クリニック知ってます?」  


うわっ!なぜ通ってることを知ってるんだ……


クリニックの看護婦さんかな……


「通ってますけど……どちらさまですか?」


女はなるほどと何かに納得をした。


ジンは訳がわからないままだった。


「すいませんでした……このことは忘れてください。」


ジンはどこかもわからない場所で寝巻き姿のまま、目覚まし時計を片手に追い出された。


「……なんなんだよ!理由を説明しろよ!」






さあ……出会ってしまったね……運命の人と……全てはこれから始まるんだ……死を分かち合え……人間どもよ……へへへへへ

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