第一章 2―2
カインは、このボス戦攻略会議を開いた本人とデュエルをして見事に勝った。
「これで、俺の実力が分かってくれたか?」
「ああ……それより、なんだあの武器は」
「……ヴァルキリーソード。特殊クエストの報酬だよ」
「特殊クエストだと!?」
特殊クエストの報酬は、さまざまだ。
一つ目は、武器。
特殊クエストで手に入れた武器は、強烈だ。
それはさっき、デュエルで判明した。
二つ目は防具。
この防具も武器同様、強烈なはずだ。
最後に、スキル、又はアビリティ。
特殊クエストで手に入れたスキルやアビリティはさぞ、強烈だかなんだか。
以上、この三つが特殊クエストの報酬だ。
「特殊クエストか……それは強いわ……と、いうことは、戦ったのか」
「ああ……」
この特殊クエストは、最後に必ず大型モンスターと戦わなくてはならない。
それがあのナイト・オブ・モンスターだ。
他にもたくさんいるみたいだが、例にあげるならコイツだ。
「戦ったからわかるのか……聞かせてくれ、お前の意見を」
「わかった……簡潔に言うとだな――」
それから、カインはナイト・オブ・モンスターとの戦いのことを話した。
「なるほど……直撃で四割も……」
「そうなんだ……だから、ボス戦は、もっと強いと思う。ダメージも直撃で八割くらい行くんじゃないかと……」
「わかった……まずは防具を整えながらボス部屋を見つけよう……全員、解散!」
広場にいた人たちは解散した。
「それにしても……よくそんなやつを二人で倒せたな」
「お陰で二十個くらい買ったポーションがパーだけどな」
あの戦いでポーションがすべて消費されてしまったので、後で買いに行かなければ……金には困ってないけど。
「それより、君たちには先にボス部屋を探してもらいたい」
「なんで俺たちなんだ?」
「君たちは強いからな。ボス部屋までは、そこそこ強いモンスターが出るだろう」
「だから、アイツを倒した俺たちに……か」
確かに、この島の広さでまだ、三割ほどしか探索されていない。
まだ未知の場所に行くなら強い方がいいってことだ。
「こっちも防具を整えたいんですけど……」
「そうだな、ルナ言う通りこっちも防具が……ん?」
「どうしたの?」
「……たしか、クエストリストに……」
カインはなんかぶつぶつと言い始めた。
「……それ、受けるわ」
「えっ!?どうして?」
「クエストリストに何個か防具があったからな。ボス部屋探しのついでにやるかと思って」
「そういうことね……」
「つー、わけで、ボス部屋は、俺たちが探す。そっちは防具を整え、レベルを上げててくれ」
「わかったが……君たちはレベル上げをしなくていいのか?」
「?あれ知らないの?ルナはレベル7、俺は10。それに探索中に上がるだろ」
会議を開いた本人は驚いていた。
自分のレベルは高いと思っていた。
だが、カインのレベルは、自分の倍あるのだ。
デュエルでヴァルキリーソードを使わなくとも自分には勝てたということを思い知った。
「当分は、ステータスアップのやつ取るかー」
「私も貯まってるから何か取ろーっと」
二人はまず、商店街に向かった。
特殊クエストのせいで、アイテムが消費されたからだ。
「金、どんくらい?」
「んーっと……一万くらいかな」
「一万か……ポーションを二十個くらい買っとけ。あと、防具を買うぞ」
「クエストで手に入れるんじゃ……」
「鎧と籠手だからな。他は買う」
道具屋でルナはポーション二十個、カインは三十個買ったせいでポーションは売り切れになった。
ちなみにポーションの持ち歩き可能限界個数は三十個だ。
次に、防具屋に行き、靴とズボン、そして腰を買った。
防具は全部で六種類ある。
鎧 籠手 腰 ズボン 靴 そして盾だ。
何故か、このゲームは、兜がない。
盾は二人とも装備しないので買わない。
あと、盾を装備しても防御力は上がらない。
ただ、敵の攻撃が防げるだけだ。
防御するなら、剣よりましだ。
「買うもん買ったし……あとは、クエストか」
二人はクエスト館に向かいクエストを二つ受けた。
二つとも、討伐クエストだ。
討伐対象はビービートルとキラーウルフ。
ビービートルのほうはいいのだが、問題はキラーウルフだ。
キラーウルフは攻撃力が高くすばしっこい。
それに、三〜四匹まとまってるため非常にキツイ。
「さて、行くか」
「まずは……北に向かう?」
「んー?」
カインはルナが広げている地図を見た。
「……一番北にあるこれが気になるな」
遺跡迷宮。
集めた情報によると、遺跡迷宮は、遺跡の中が迷宮になってるらしい。
なんとも、その奥には何かがあるとか……
「何があるか気になるし、そこ行くか」
「あっ……その前にクエスト」
「……そうだったな……」
完全に忘れていたようだ。
「まずはクエスト!遺跡は、そん次!」
二人は町を出て、北に向かった。
森は、やはり危険だ。
最も迷いやすい場所は、森だろう。
なので――
「うー……ん……またか」
「えーっ……と……?」
「迷った!」
カインはまた迷った。
二回目である。
「また……なの?」
「うん、また」
「………………」
あきれた顔された。
「とりあえず……どうする?」
「うーん……あっ」
「…………?……あっ」
「「地図!」」
そこには地図の存在を完全に忘れていた二人の姿があった。(俺たちなんだが……)
「これがあったじゃないか!」
「これがあったわ!」
二人は地図を広げた。
マップエラー。
地図が表示されない。
「……とりあえず、行くか……」
森の探索を続けた。
モンスターが出てこないはずはなく、ちょくちょく倒しながら進んでいく。
「この辺は楽だな……となると……さらに奥か……」
探索を続ける。
早くゲームから出るため。
一時間、一分、一秒でも早く出るために。
「腹へったな……飯にでもすっか」
二人は近くの木陰に腰を下ろした。
カインは、アイテム画面からパンを取りだしルナに手渡す。
「ありがと。このパン、ゲームなのに美味しいのよね〜」
ルナは貰ってすぐにかぶりつく。
見た目がハムスターみたいだった。
……ひまわりの種を与えたら食べるかな?と考えるが、後で殺されると思いやめた。
「……蜂……いねえな……」
「なんだっけ?ビービートルだっけ?」
「虫なのか蜂なのかわかんねえやつだよな」
虫ではなく、カブトムシである。
その事をまだ、二人は気づいていないほどバカだった。
「何匹倒せばいいの?」
「十匹だ。十匹倒せばクエストクリア」
「十匹……って……多い?」
「さあな……少なからず、新しいクエストだったからそこそこ強いんじゃないか?あいつらにとっては」
あいつらとは、攻略会議にいた人たちだ。
あのなかで一番レベルが高かったのは、会議を開いた本人、名前は、たしかクラフト……だったはずだ。
何を手工芸するのか知らないが。
そのクラフトが5くらいで、みんなは4とか3だった。
「ま、それにしても、十匹だ。全部倒せばレベル1くらい上がるだろ」
「そうだね。全然いないけど」
「……あっ、なぁルナ、索適スキルは今何レベ?」
「えーと……3かな……」
「ちょっと使ってみてくれないか?」
「……?わかった」
そう言ってルナは、索適スキルを使った。
「……あの大群は……なに?」
「やっぱりいたか……」
「やっぱりって?」
「この辺、蜜の臭いがするんだよ。だから」
「あぁ〜確かにするね」
「んで、お前に頼んだわけ。俺も索適スキル上げないとかなー」
索適スキルは便利である。
遠くが見えるし、そこにモンスターがいれば、何のモンスターかも分かる。
「早速やるぞ。あの数だからな、ソードスキルで何匹か蹴散らすからフォロー頼む」
「了解!」
ルナはパンを食べながら剣を抜いた。
「……まだ食ってたのか」
「……ゴクン。今、食べ終わったとこ!」
「まぁいい……行くぞ」
二人は駆け出し、蜂の駆除に向かった。