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祭り特派員

祭り特派員 5

作者: 風紙文
掲載日:2012/08/19

「えぇぇ!? 今年の特派員がまだ決まってない!?」

周りを気にせず、携帯電話を使っている男性は大声で驚いた。

『あぁ、そうなんだよこれが』

「こ、これがって、どうしてそこまで冷静なんですか!? 祭りは明日なんですよ!?」

『分かってるよ、だから慌てて連絡してみたけどな、なかなか過去の人達は予定が合わなくてな』

「では、どうするおつもりで?」

『まだ去年の人には電話してないんだ。とりあえずその人にお前が電話してみてくれ』

「はぁ、去年の……他には?」

『それは……お前が足で探してくれ』

「えぇぇ!? 丸投げですか!?」

『そういうことだ。では、健闘を祈る』

「あ、ちょっと、もしもーし!」

しかし、通話は切れていた。仕方なく男性は諦める。

「祭りは明日だというのに……まだ一人も決まっていないだなんて……」

はぁ、とため息を付くが、男性はすぐに気持ちを切り替え。

「……いいえ、諦めてはいけません。まだ期待があるのですから」

携帯を操作し、ある人物へと着信。

数秒して、相手は出た。

『はいはーい?』

電話の相手は、どうやら女性のようだ。

「あ、すみません、今お時間よろしいですか?」

電話先の主へ、低姿勢な口調で男性は話す。

『あれ? あなたは去年の?』

「はい、その節はどうもありがとうございました」

『いえいえー、なかなか楽しかったし』

そんなに楽しんでいただけたとは、と感無量な気分だが、男性は少し言いにくいことを告げる。

「それで……ですね、実は今年もどうかな? とこちらは考えてる所存でして」

『んー? つまり、2年連続で?』

「はい、そういうことなのですが……いかがでしょうか?」

『ふむー……ま断る理由はありませんけど、2年連続とか良いんですか?』

「こちらでは別に、無かった事例ではありません。ただ、願わくば別の方が良いのですけどね」

今だって、誰一人として決まってないから故のお願いだ。

出来れば良い返事を。

そう思っていた男性は、

『あ、じゃあー、うちの弟とかどうです? ルールとか教えられますし』

予想を覆された。しかしそれでも、目的は果たせる……のだが、

「それは願ってもいないことですが……よろしいのですか? ご本人の意志は……」

『なら会いに行って直接聞いて下さい。今さっき出掛けたとこなんで』

「えぇ!? し、しかしですね」

『帽子を被って、多分同い年ぽい女の子と一緒に歩いてると思いますんでー』

「はぁ……わ、分かりました。探してみます」

『はーい、ではではー』

着信が切られた。

「……」

予想外の返答で言葉を失う男性。

だが、再び気持ちを素早く入れ変える。

「帽子を被った男の子と、同い年っぽい女の子……早く探さなければ」

携帯をしまうと、男性は歩き出し、探し始めた。




歩き続けた男性は、帽子を被った男の子と同い年っぽい女の子を……二組見つけた。

「おそらく、どちらかがあの人の弟…………の、筈」

自信は全く無かったが、

「あの二組が、特派員をやってくれれば、今年は大丈夫……」

と、思いたかったのだけれど。

「……やはり、数はいても困りません……よね」

男性は、ある場所へ足を向けた。




明日、祭りが開催されるこの場所、そこに男性は訪れていた。

「おぅ、そこの兄ちゃん」

偶然歩いていた屋台にいた男性に声をかけられた。

日に焼けた、黒い肌の男性だ。

「は、はい? 自分、ですか?」

呼ばれたことに驚き、低姿勢な口調で男性は返す。

「他に居ねぇだろ。コレ今出来たんだが、良かったらどうだ? 試作品だから金は取らねぇし」

「は、はぁ、では、いただきます」

おどおどしつつも、男性はりんご飴を受け取る。

「どうだい? 去年と同じに出来たんだが」

「えっと…………去年は知りませんけど、とても美味しいです」

「そうかそうか、なら良かった」

「……」

男性は、りんご飴を黙って見つめる。

「ん? どうかしたか?」

「…………あの、少し、お話しよろしいでしょうか?」

「どうしたよ改まって」

「あの、ですね……」




「た、ただいま戻りましたー……」

「あぁ、お疲れ様」

男性を出迎えたのは、先刻携帯で話していた人物だ。

「本当に疲れましたよ……まさか今日で決めるなんて、特派員探しを頼まれてから初めての経験です」

「ついうっかりしててな。年間行事だってのに、りんごの発注は忘れなくても、特派員探しは忘れてたよ」

八百屋の主人は、悪びれることなくけらけらと笑った。

「そちらの方が重要だと思うんですが……」

「何を言う、りんご飴は屋台の定番だぞ」

「はぁ…………あ、実はですね、そのりんご飴の屋台をしていた男性にも、特派員を頼んでみたんです」

「え? 祭りの関係者だぞ」

「伝えておきました。高校生くらいの男女を見かけたら、祭り特派員かどうか聞いてみてほしい、それで妙に情報に詳しかったり肯定したり等、祭り特派員をしてると思われる人を見つけたら、その人に任せて下さい。と」

「へぇ、考えたな」

「二組ほどに声をかけ、明日祭り特派員は多くて6人ほどになる予定です……これが、急ご拵えで考え行動した結果ですよ」

「本当に大変だったな、お疲れ様」

「はい……祭り特派員、途絶えさせるわけにはいきませんからね。良い結果になることを、望みます……」

「あ、それとな」

「はい?」

「こっちでも少し動いててな、見つかったんだよ。1人だけ」


op その5

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