第七話 急遽決まった家族旅行
「今日は王都出掛けましょう」
僕が朝ご飯をセッセと皿の上から減らしている中、サッサと食べ終わった母が僕を眺めながら言った。
そんなに見られると食べづらいです。
「王都へですか?」
「ええ。お城がとても素敵よ」
母が嬉しそうに笑う。
いや、お城とかの問題ではなく。
まだましな方とはいえ、遠いだろ。
多分丸二日馬車で揺られ続けることになる。
「近くの町ではいけないのですか?」
それでも遠いけど。
馬車で半日かかる。
「近場だと、服屋少ないもの」
ああ、ショッピングしたいだけなのか。
で、僕をそれに付き合わせたいと。
女性の買い物は長いから嫌だなー。
「レインちゃんもそろそろお洒落したい歳でしょう?」
別に。
元々男だし、僕はそういうのに興味のない人種だ。
まあ、女に生まれたからには、自分を可愛い娘にしたいきも無きにしもあらずだが。
僕は可愛い女の子が大好きだからな。
自分はその理想形でありたい。
「それに、最近レインちゃん、パパにベッタリなんですもの。ママ寂しいわ」
よよよ、と、母がハンカチを目元に持って行き泣きまねをする。
だって、父さんは多少僕のことを分かってくれているから一緒にいると楽なんだよ。
「ってことで行きましょう。お泊りで」
まあ、そうなるよな。
日帰りには遠すぎるし。
旅行とか、あまり好きじゃないんだけどな。疲れるし。
少し抵抗してみよう。
「明日、一週間分の食料が届くのでは?」
町が遠いので、週一の周期で業者の人が家に食料を運んで来ているのだ。
明日家にいないと、帰ってきた時に食料が玄関で腐っているという事態になりかねない。
「玄関に『今週分はいいです』って手紙置いておけば大丈夫よ」
そんなことでいいんだろうか。
この人だし、仕方がないのかな。
「そうと決まれば善は急げ。早速お泊りの用意をしましょう」
・・・本当、この人はいつもいきなりだな。
短めです。最近長いのばっかりでしんどかった・・・。
ご指摘ありがとうございます。
膳は急げ→善は急げ