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第五話 お父様との交流会


火が全て消えてから、僕と父の間にはずっと沈黙が流れている。


この男は何を考えているのだろうか。


何故こんなことをしたのだろうか。


あと少しで森全てが燃え尽きてしまうところだったというのに。


「・・・お父様」


直ぐに消した今回でも結構な数の木々が燃えてしまった。


「何をお考えになっているのですか?」


父が微笑ましそうに笑った。なんか腹が立つ。


「何を、とは?」


分かっているくせに。


「決まっています。さっきのあの魔法をことです」


「少しやりすぎてしまったね」


言って彼は微笑んだ。


こんな時にキラキラされても。


「少しどころじゃないですよ」


「まあなんとかなったからいいじゃない」


ハッハッハッと彼は笑う。


ハッハッハッじゃねえ。


「ねえ、レイン。あれは本当に魔法なのかい?」


しまった!


彼の前で使ってしまったこと、すっかり忘れてた!


やっぱり怖がられるかなあ・・・。


まあいいか。


恐れたくば恐るがいい! 魔王と思いたくば思うがいい! 拷問でも何でもすればいいじゃないか!


「文字どうり、煮るなり焼くなり好きにすればいい」


「は?」


しまった!


口に出してしまったか!


父が不思議そうに僕を見ている。


「今のは忘れてください・・・」


何てこと、できる訳がないよなー。


ああ・・・終わった。


今回の人生、終わった。


「レイン」


彼が呼びかけてきた。


顔をあげると、愛おしそうに僕を見つめている。


え? なんで? 意味わかんない。


「深呼吸」


とりあえず言われた通りにする。


よし、落ち着いた。


それを確認したのか、父は困った顔で言った。


「君はたびたび迂闊な行動や言動ををするよね」


たびたびって・・・。


「例えばどのようなことですか?」


今日の色々な失態以外は何の問題も無かったと思うが。


彼は苦笑いをして、


「教えてもらってないはずの言葉を知っていたりかな」


え?


まさか、急に魔法を教えると言いだしたのは・・・!


「はめたんですか?」


「ごめんね」


言って彼は肩を竦めた。


僕は溜息をつく。


無論、僕の馬鹿さ加減にだ。


実際僕はあの時おかしいと思ったのに・・・!


「どこで私が変だと思ったのですか?」


礼儀作法完璧過ぎたからかな。


「君が人よりも早く会話したり歩いたりできるようになった時かな」


え?


「ですがあれは、不可能というほどの時期ではなかったでしょう?」


「いや、それ自体に疑問を持ったんじゃなくて、その後の天才って言われていた時の反応がね」


ああ、確かにあの時の僕は子供らしからぬ反応をしてしまった。


でも、どういう反応をするのが正解だったのだろう。


「喜べよかったのでしょうか・・・」


「いや、天才という言葉の意味が分からないというような反応が自然だと思うよ」


なるほど。次に転生した場合言われた通りにしよう。


今までこんな些細なことにまで気が付く者はいなかったというのに・・・。


「貴方は何者ですか?」


「え?」


彼は質問の意味が分からないようだ。


別に特別な存在という訳ではないのか? もとスパイとか、僕と同じように転生しているとか。


「普通の中流貴族だけど・・・?」


中流貴族が普通なのかは置いといて。


えっと・・・。


「どのような仕事をなさっているのですか?」


そういえばずっと家にいる。


でも、家の近くに村や町があって税金を集めたりしているわけでもない。


「ああ、魔法使いだよ」


え?


そんな仕事あったか?


魔法使いって、ただの分類とかそんなだろ。


「それはどのようなことをする仕事なのですか?」


尋ねると信じられないものを見るような顔をされた。


なんだ?


「驚いた。 君にも知らないことってあるんだね」


うん、僕も驚いた。僕がそこまで子供と見られていないことが。


まあ、この時代の時の記憶薄いからな。細かいことは忘れた。


「まあ言ってしまえば軍人かな。戦争が始まれば真っ先に戦いに行かされる立場だよ。その代わり何もない時は家でのんびりしながら国から給料が貰える。一年に一回の試験で腕が落ちてたら減給もしくはクビだけどね」


『税金の無駄遣い』


そう思わざるを得ない。


そういえば昔、魔法使いは何もしなくても貴族になれて金が貰える制度があったって聞いたことがある。


制度自体は誰かによって廃止されたらしいが、未来にも名残が残っていて魔法使いには貴族が多かったりする。


にしても結構普通な感じの人なのに僕に気付くとは。


この人の頭がキレるからなのか、前の人たちの頭がアレなのか・・・。


「私からも質問していいかな」


「どうぞ」


ききたいことなど山ほどあるだろう。


「まず、あの魔法は何だい?」


「何と言われましても・・・。少し水の量を増やしただけのただの水魔法ですが」


それ以上言えることはないのだが。


「うん、あの量は凄かった。威力も凄いし。君は凄いねえ。どんな魔力料をしているんだい?」


たんたんとほめる。


あれ? 思っていた以上に怖がられてないのかな?


なんか拍子抜け。


嬉しいような寂しいような・・・。


いや、嬉しいのだが、自分が危惧していたことはなんだったのだろうか。


「どんなといわれましても・・・。質問とはこれのことですか?」


だとしたらどうやって答えればいいのだろう。


「いや、ごめん。ききたいのは魔法陣のことだよ」


「魔法陣?」


僕、何か変な魔法陣描いたか?


「手を使ってなかったよね」


ああ、そうか。


この時代では指を使うんだった。


えっと・・・。何て説明しよう。


授業とか聞いてなかったから何て教えればいいのかわからない。


「魔法陣を描く時、お父様は指に魔力を集中していました。しかし私はそれを空中に集中したんです」


「ごめん、よくわからない」


父が申し訳なさそうに言う。


ごめんなさい、僕の説明がわるいんです。


実践した方が早いかな。


僕はお父様がやってみせたように指に魔力を溜める。


「これを空中に飛ばします」


言って、魔力を指から放す。


ぽわぽわと光の玉が宙を泳ぐ。


父はそれを目で追っている。


「この玉を操って魔方陣を描くんです」


「一つ質問いいかな」


「何でしょう」


何か先生になった気分。


「こんなに小さい魔力の玉だと魔力が足りないんじゃないの?」


「 はい。ですから実際に描く時はもっと大きくします」


「ふーん。やっぱりそれって、できるようになるまで凄い年月が掛かるよね」


あ、自分もできるようになるつもりなのか。


「そうですね・・・。才能などにもよりますが。もう一つやり方があるのですが、もしお父様がなさって見る気があるのでしたら、多分こちらの方がやりやすいと思います」


言って僕は人差し指で前を指差しているようにする。


「こちらはお父様のやり方の応用のようなものです」


指先の魔力を前に伸ばす。


「長い指になるような感覚です」


本当は魔力の玉と自分を糸で繋ぐイメージなのだが、指で慣れているなら長い指みたいにした方が分かりやすいだろう。


「これで魔力だけ動かして描きます」


長い指っぽいものをうねうねと動かす。


玉と繋ぐ糸が太いと気持ち悪いな、何か。


触手みたい。


別に指からでなくても、身体中何処からでも出せる。でも、やはり手から出すのが一番コントロールもスピードもよくなる。


ちなみに僕は指先よりも手のひらからの方がやりやすかったりする。


速さなどは変わらないが、魔力を送りやすく威力があがる。


説明を終えても父は難しい顔をしていた。


「私の説明分かりにくかったでしょうか」


分かりにくいだろうなー。


「いや、そうじゃなくてね。何で指から魔力を放すんだ?」


「人間が身体でできる速さや正確さには限りがあります。ですが、魔力だけならば想像したスピードや魔法陣の形をそのまま現実にすることができます」


ほー、と父が感心したように呟いた。


そうなったら後は想像力の勝負だ。


前はみんなイメージの精度をあげるために瞑想ばっかりしていた。


「そういえば、レインは普段魔法陣の書き方、どちらをつかっているんだい?」


「時と場合に寄りますが、基本後者のほうです。わざわざ魔力計算しなくてすみますし。前者は、自分のいる位置から離れた場所で魔力を発動する場合に使います」


「一度本気で描いてもらっていいかな」


「はい」


僕は手のひらを前に突き出すし魔法陣を描く。


しかしその光景が父には、僕が手をだした瞬間に魔方陣が現れたように見えたんだろう。


父は目を剥いていた。


「これを広めたら・・・これを広めたら、魔法はすごい進化を遂げるんじゃないかな・・・」


「そうですね」


現に未来の魔法はすごい事になっている。日用品にも用いられ、魔法陣を既に埋め込まれていて呪文を唱えるだけで何らかの効果が得られる商品がたくさん出回っていた。涼しい風が吹くとか、遠くにいる人と会話ができるとか。


しかもそれらは魔力を充電さえすれば半永久的に使えるときた。それらがあればわざわざ面倒くさい魔法陣を描かないでもいいし覚えなくてもいい。


便利な世の中になるもんだ。


しかも魔力が少ない人達の為に魔力瓶という魔力が詰まった瓶が格安で売られていたりした。それが原因で魔法使いがボイコットしたりしたが。俺たちは魔力売るために魔法使いやってんじゃねー的な。


閑話休題。


「お父様、広めるとは厳密にはどのようになさるおつもりですか?」


「そうだね。魔法学園の先生にでもなるかな」


あ、やっぱりこの時代にもあるんだ。


ってか一回目の僕がこの時代で行ってた気がする。


何故かあの女の子を追いかけている記憶ばかりだ。


「学園に就職出来る可能性は低いけど・・・国王にこのことを言えばお許しになってくれるだろう」


「学園以外ではいけないのですか?」


「魔法の学習機関はこの国ではあそこ一つだけなんだよ」


ああ、そうだっけか。


ってことはあれか。魔法学園はマティウス王国最古の魔法学校か。


あそこへは一番初め以外にも何度か通ったことがあったりする。


「レインもいつか通うことになるね」


父が笑顔で言ってくる。


ちょっと待て。


一つしかないということは、もしかしたら昔の僕を見ることになるかも・・・。


嫌だ!


女の子をストーキングする昔の自分なんて見たくない!


「お父様。私には魔法を学ぶ必要はありません」


「でも、魔法学園を出ていないと魔法を使えると認めてもらえないんだよ」


それは分かっている。でも・・・。


はあ・・・。


まあ年代が一緒だからって同じ時期に学園に通う可能性なんて低いしな。


「あ、そうそう」


父が何か思い出したように声をあげた。


「最後に君と全く同じ質問をするよ」


何か、嫌な予感がする。


「貴女何者ですか?」


ですよねー。


うん。


はめ外しすぎた。


怖がられなかったからって、普通に接されたからって、ここまででしゃっばったらさすがにねえ。


いや、だって魔法陣のくだりとか、この人凄い真剣だったし。


でもあそこまでいったらどうやって知ったんだとかなるよね。


元から怪しんではいたんだろうけど、悪化させちゃったよ。


ああ、流石に怖がられたかな〜。


どうしよう。


正直に転生しましたっていうか?


いやでも以前それで痛い目見たし・・・。


「まあ、言いたくないなら言わないでいいよ」


父の顔を見る。


お父様はお得意のキラキラスマイルをしていた。


・・・え?


いいの?


「君がどんな存在であっても、私の可愛い可愛い娘であることには変わりないからね」


お父様の笑顔がキラキラ。


ついでに僕の瞳もキラキラ。


いやね。涙腺がね。やばいんです。


今までそんなことを言ってくれた親っていなかったから・・・。


「いつか、君が自分の秘密を打ち明けられる人に出会えることを祈っているよ」


笑顔が眩しいよ・・・父さん。


ああ・・・。今回の僕は幸せ者だ。



この日から、僕の心の中での彼の呼び名が「父」から「父さん」になり、暇な時は父さんの後ろをついて回るお父さんっ子・通称ファザコンになったのだった。


主人公はよく酷い扱いをされてた分、少し優しくされただけで相手を信頼してしまう、騙されやすい人種です。結構素直で純粋な子なんです。

酷い過去な割に余り性格ひん曲がってないという・・・。

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