第十話 今回初めての同世代・ジョネスの息子視点
彼の名前は後ほど
書斎で父さまに魔法の初歩について教えて貰っていると、門番の人が来て父さまを連れて行ってしまった。
なんだろう?
随分嬉しそうだったけど…。
また女の人かなあ…。
今すぐにでも見に行きたいけど、父さまに本を読んでいるように言われたから、ちゃんと読んどかなきゃ。
早速ぼくは本棚から読みかけの本(絵本)を取り出す。
早く魔法を覚えたいけど、その前に文字を覚えなくっちゃ。
それで魔法の本いっぱい読んで、凄い魔法いっぱい使えるようになるんだ。
絵本を頑張って時間をかけてやっと1ページ読み終わったところで、玄関ホールの方からメイド達の声の揃った挨拶が聞こえてきた。
父さまが帰って来たのかな。
ぼくは玄関ホールにつづく階段に向かった。
「父さま、どうかしたの? お客さ…ま…?」
そこには天使がいた。
そうでないなら女神。
そうとしか考えられないくらい綺麗な女の子がそこにいた。
シャンデリアのまばゆい光りを受けて輝いていて、本当に神様みたいだ。
こういうのを『神々しい』っていうのかな…。
ぼくは今までこんなに綺麗なものを見たことがない。
ぼくが世間知らずなこともあるけど、それでもぼくは世界中を旅しても、彼女より美しいものを見つける自信はない。
そんなこの子とぼくは釣り合いなんてとれない。
でもこの子の側にずっといたい。
この思いは、今までのどんな感情よりも強い。
これが父さまの言っていた『こい』ってやつなのかな。
それか『あい』?
この二つの違いはよく分からないけど、父さまはあいの方がこいよりも強い想いって言ってたから、あいの方かな?
じゃあぼくは彼女をあいしてるのか。
あいしているものと結婚するらしいから、ぼくは彼女と結婚しなくちゃ。
彼女の鈴の音のような綺麗な声が聞こえる。
ずっと聞いていたいけど、まずは彼女にぼくのこの気持ちを伝えなくちゃ。
後ぼくのこの想いの大きさも。
ぼくは喉の痛みも無視して、出し得る最大の大きさで叫んだ。
「ぼくとけっこんしてください!」
だってぼくはこんなにも君をあいしているんだから!