恋人のダンス
女は人魚姫だから王子様が来るのを待ってるの
だからここにいて
あなたにも来るはずだから
落ち着いた空気のあるカフェの看板
暗さと明るさが交差する静かな気配の珈琲屋の店内には今現在私と少ないスタッフ
その気配は気高く澄んでいていつまでもこのカフェにいたいと思わせる
このデッキは踊り場なの
ここであなたと王子様は出会うでしょう
その時目が合えば物語は始まるはず
だから踊りを覚えなさい
そう語りかけるかのような静かな落ち着いた大人の雰囲気の店内
星を背にして夜が来るまで店の中が明るくなるまで待ちましょう
踊りがうまく踊れるようになれば来るはず
あなたはその時人魚から人魚姫になりその王子と出会い幸せな恋愛をするでしょう
私も待ってる私の王子様を
あなたも踊りを上手になれたら
その時自由になれるでしょう
振り返ると店の看板と目が合った
奇妙な白昼夢
信じるか信じないかはあなたが心から決める
でも私は応援している
あなたと王子様が出会い幸せになることを
言葉の続きがそう聞こえる気がして慌てて店を発った
心地よい音楽もゆっくりした雰囲気も置いてきて
それでよかった
だって王子様なんているはずがない
信じることはできない
でも真実この世は男女の世界
女性は確かに人魚かもしれない
女性なら踊りを覚えて王子様を待つものなのかもしれない
単純なことかもしれないのに途轍もなく遠大な物語のような気がして
珈琲屋なのに目眩がした
明るさを一身に浴びて昼の街を歩いても
暗闇と光のコントラストは心に印象深く残った
素敵なお店
だけどちょっと不思議な気持ちになった
神秘的で不可解なそれでいて長大な
宇宙と海と時空を彷徨う気持ちになった
目印はやはりアドバイスか
咀嚼が難しく
理解がとても難しいけれど
いつか踊りを覚えたい
まだ出会いたくないので覚えたりしないけど
覚えて上手に踊れるようになった頃に
出会えるのかも王子様と
砂粒のような数の星の中から出会う
二人は約束されたパートナーで恋人同士
そのような「決まり切った運命」の可能性でさえある
ありがとう天使さん
いつか訪れて欲しい幸運を願いつつ一日を終えた