とある時代の大事件
人類の救い難さを知りたいならば歴史を紐解けばいい。
あらゆる時代。
あらゆる場所。
そして、あらゆる人種が実にくだらない理由で殺し合いをしている。
侮蔑するのも自由だ。
嘲笑うのも自由だ。
しかし、それだけで終えてはならない。
歴史を見て何を思い、何を学び、何をしたいか考える。
それが今を生きる者達の使命であるのだ。
……もし、学びの中で人類という種そのものに失望したのならば。
今から私が言う時代の、とある国の、史書を読んでみるがいい。
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昔、教授から教わった言葉を脳裏に浮かべながら私はその史書に目を通す。
そして、教授が伝えたかったと思わしきものを発見した時に私は思わず笑っていた。
「なんだ、これは一体」
それはとある国の、とある時代に起きた大事件が記されていた。
「大事件、ね」
くすくす笑いながら私はそこに書かれていた内容を再び読みこむ。
『シャス村のブラウン氏のヤギが逃げ出し多くの人々がそれを探すために奔走。一週間ほど時間をかけて探すも見つからず。最終的にヤギは自分で戻ってきた』
記すことがなさ過ぎて、このようなことを記していた時代もある。
「人は歴史に学ぶと言うけれど」
私は呟いていた。
「この時代を再現することこそが今の人々には必要なのかもしれないね」
事件がなさ過ぎて退屈であったであろう時代を夢想しながら私はもう一度笑っていた。