幼馴染み
ねぇねぇ、ちぃちゃん、わたし、ちぃちゃんのこと大好きだよ。
そう言って満面な笑顔を浮かべる少女。私も彼女が大好きだ。
私もだよ。私も、~~ちゃんが大好き。
私は、大好きな彼女に向かって、笑いかけた。
次の瞬間、私は、気付く。
彼女を好きだと言ったけど・・・
私は、彼女のことを知らない。
目の前の彼女の名前を、『私』は無意識に口に出していた。でも、私の耳には届いていない。
『私』は、彼女の顔を知っている。だけど私は目の前の彼女を見たことがない。
不思議な感覚。
彼女のことを好きだと『私』は感じている。
でも、彼女のことは、顔も名前も分からないのだ。
なんで? どうして? あなたは誰なの?
私は心の中でパニックになっていた。
どうかしたの? ちぃちゃん?
!!、!、!?、・・・? ・・・ううん、なんでもないよ。~~ちゃん。
彼女に話しかけられた瞬間、顔も名前も分からず、パニックになっていたのが嘘のように、私は、『彼女』を当たり前のように受け入れていた。
? 変なちぃちゃん。
私は、唐突に今日の目的を、思い出す。
じゃあ、~~ちゃん、行こっか。
え? どこに行くの? ちぃちゃん。
もー、忘れちゃったの? ~~ちゃん。今日は、タイムカプセルを開ける約束だったじゃない?
私は、自分で言葉を発しながら納得する。
タイムカプセル。そうだ、私は、彼女のタイムカプセルを開けるためにここにいる。
私は、言葉を発しながら、確信していく。
タイムカプセル。~~ちゃんに開けて貰うために私は今ここにいるのだ。
ここ? だったよね? ちいちゃん。
・・・うん、ここ? なんだね? ~~ちゃん。
私たちが来たのは、大きな木の下。
見覚えのない風景、でもここだと分かる。不思議な感覚。
うん、ここだね。
~~ちゃんは、頷く。
~~ちゃん、タイムカプセルに何が入っているか知ってる?
ううん。ちいちゃん、知らない。でもね、とってもとっっっても大切なものがここに入っているの。
同時に開けるのが、スッゴク怖い。開けたくないって思う。
うん。そうだね。
私は、その大きな木を見つめながら、そう呟く。
じゃあ、開けよう、~~ちゃん。
私は、いつの間にか持っていた木箱のタイムカプセルの蓋に手を掛ける。
・・・ちぃちゃん、待って、止めて。
どうしたの? ~ぅちゃん。
急に、~~ちゃんは、私の手を止める。
やっぱり、止めよ? ね? また今度にしようよ?
? 変なこと言うね? ~ぅちゃん、ダメだよ。夢からさめよう。
やだ、私、ちぃちゃんと別れたくない!! ちぃちゃんを、忘れたくない!!
忘れないよ。でもね、囚われてちゃあ、だめ。
待って、ちぃちゃん!!
ううん、待たない。『ゆうちゃん』。一緒に開けよう。
『私』は、『ゆうちゃん』の手をとり、彼女の手で、木の蓋を開けさせた。
『ゆうちゃん』の記憶と言う名のタイムカプセル。
それを、彼女自身で開けさせたのだ。
ありがとう、『ゆうちゃん』。
私のことを覚えていてくれて。
大好きだって行ってくれて嬉しかった。
だからね、私のことを忘れて、、、ううん、時々思い出してくれると嬉しいかも・・・。
幸せになって。私の分まで
最後に、
じゃあね、『ゆうちゃん』。バイバイ。
私の分まで人生を楽しんで。
「待って!! ちいちゃん!!」
自分の声で目が覚めた。
夢? ううん、違うリアルすぎる。
私は、全て思い出した。小学校の友達。私の大好きな親友。
小学校の時に私は引っ越しをした。
『ちぃちゃん』とは、中学までずっとメールで連絡を取っていたけど、高校に入ってから一年、忙しくて連絡を取っておらず、疎遠になっていた。
高校生活も落ち着いて、「久しぶりに会おう」と思い立って、ちぃちゃんに連絡をした。
だけどちぃちゃんは、私が連絡をする数日前に、既に病気で亡くなっていた。
『もう少し早く連絡をしていたら』彼女と会うことが出来たし、何か出来ることもあったかもしれないのに、そう思うと後悔が押し寄せ、私は、自分の部屋に引きこもってしまったのだ。
後悔する日々。あの夢は、何かの暗示だろうか?
もし、私の願望が彼女の魂を引き寄せ、あの夢を見たとしたら、彼女は私の顔も名前も覚えていなかっただろうな。
そう思うと、彼女には迷惑だっただろうけど、クスッと笑ってしまう。
小学生以来会っていなかった。私たちは、小学生の時とは顔も声も違うのだ。
あの夢の中の私は、ちぃちゃんの名前は鮮明だったけど、顔は朧気だった気がする。
ちぃちゃんが、私のことを分からなくて当然だろう。
でも、最後には、私の名前を言ってくれた。私のことを思い出してくれたのだ。
そして、『人生を楽しんで』と言ってくれたのだ。
前を向かないと彼女に申し訳ない。
私は、ベッドを降りる。
彼女のために、いや彼女と一緒に楽しむために私は、学校へ行く準備を始めるのだった。
ちぃちゃん側の後日談も実を言うと構想はあります。
気が向いたら、完全版として書きたいです。
何かしら感想、評価頂けると、嬉しいです。
よろしくお願いします。