第20話 洞窟探索
「滝の裏側に行けるんですか?」
何かを思い出したように進んでいくサミュエルに、私は尋ねた。
「『アクア グレイス』の裏側は洞窟になっていた記憶がある。滝の正面からは入れないが、後ろ側の何処かに小さな入り口があるはずだ」
サミュエルがそう言うと、ルーシーもその言葉にうなづいた。
「二人で遊んでいた時に見つけたのよ。怖かったけど、サミュエルが入ってみるって言うから私も一緒に入ったの」
「そういえば、お前、俺の洋服を力一杯引っ張ってたな」
当時を思い出したのか、サミュエルはルーシーを見て意地悪な笑いをする。
「仕方がないでしょ、怖かったんだから」
ルーシーは、少し顔を赤らめながらつぶやいた。
「しかし、よく思い出したな。俺はすっかり忘れていたぞ」
「サミュエルは働きすぎなのよ。たまにはこうやって息抜きも必要よ。わかった?」
「はいはい。じゃあまた付き合ってくれよ」
「!!!!!」
「なんで動揺するんだ? 顔が赤いぞ」
「ど、動揺なんて、してないわよ! 行きましょ、レイカ」
私の腕を引っ張って、ルーシーはサミュエルの前を歩き出した。
私は、そんな二人の様子を微笑ましく思いながら、滝の後ろ側にあるという洞窟の入り口を探すのだった__。
☆
それからしばらく滝の後ろ側の森を調べていると、蔦に覆われている一角を見つけた。
私はその蔦に近づくと、手でそれを少し避けてみる。
すると、蔦の隙間から穴のようなものが見えた。
「サミュエル様! ルーシーさん! 見てください。この奥に穴があるように見えます」
私の声に、近くで洞窟の入り口を探していたサミュエルとルーシーが近づいてきた。
「あったのか?」
「はい、多分ここだと思います」
私が指差す方向を確認したサミュエルは、懐から短剣を取り出した。
そして、短剣で蔦を切りながら奥へ進んでいく。
「かなり蔦で覆われているな。今まで誰も入っていなかったということか」
サミュエルの後ろを歩くルーシーがそれを聞いて嬉しそうに答える。
「良かった! ここは私とサミュエルの秘密の場所ですもの。当時も確かそう言った覚えがあるわ」
「秘密の場所にお邪魔してしまってすみません」
「レイカは特別よ!」
私が申し訳なさそうに謝ると、ルーシーはウインクをしてそう言った。
そんな私とルーシーを尻目に、サミュエルは生い茂る蔦を切り落として進んでいく。
そして、しばらくそれを繰り返し、最後の蔦をサミュエルが切り落とした時、そこには大人一人が通れるほどの小さな洞窟の入り口が現れたのだった。
「ありましたね!」
「ああ。やっと見つけたな」
「行ってみましょう!」
ルーシーの言葉にサミュエルはうなづくと、また先頭に立って洞窟の中に入っていった。
その後にルーシーが続き、最後に私が洞窟に入る。
大人がやっと一人通れるくらいの道を三人で進んでいくと、次第に洞窟の中が明るくなっていき、そこには開けた空間が広がっていた。
「わあ! 広くて明るい! 綺麗……」
私は、その美しさに思わず声を上げてしまった。
四方八方の岩の切れ目からは、太陽の光が洞窟の中を照らし、幻想的な美しさを醸し出している。
そしてその中央には、『アクア グレイス』と同じ、青く美しい水を湛えた池が太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。
「このすぐ先が滝の正面だ」
さらに奥のほうを見ていたサミュエルは、私とルーシーにそう言うと、一人で奥に進んでいってしまう。
「ちょっと待ってよ、サミュエル!」
「待ってください、サミュエル様!」
美しい空間に見惚れていた私とルーシーは、サミュエルの言葉に慌てて後を追いかけたのだった__。
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