第18話 スリーカード
アドルフは、私のカードを手に取るとそれを一旦私に返した。
「準備をしますね」
そう言って席から立ち上がったアドルフは、洗面台で念入りに手を洗い始める。
それが終わると、茶色の光沢があるテーブルクロスをテーブルの上にひいた。
「では、カードをお借りします」
「あ、はい、よろしくお願いします」
アドルフの丁寧な準備に、同じ占い師として尊敬するとともに、自分の未熟さを感じながら私はカードを手渡した。
アドルフはカードを受け取ると、テーブルの真ん中にカードを置く。
そして、私のほうを向くとこう尋ねた。
「では、レイカさん。どんなことを占いたいのですかな?」
(占いたいこと……)
そう聞かれて、真っ先に愛しい人の顔が浮かんでくる。
「私は……、私の大切な人と結ばれるでしょうか?」
言いながら、また色々なことを思い出してしまう。
アドルフはそんな私を見て目を細めた。
「そんなに深刻にならないで。大丈夫ですよ。では、占いを始めましょう。集中します」
アドルフは、自分の手をカードの上に置くと、神経を集中させカードをシャッフルする。
そしてカードを再び集めると、次にそれらを何回も切って三つの山に分けた。
アドルフの華麗なカード捌きに思わず見惚れてしまう。
「レイカさん。三つの山から好きなカードを一枚ずつ取ってください」
「はい。えっと、これとこれと、これでお願いします」
私は、三枚カードを選びアドルフに渡した。
アドルフは、私が取ったカードを順番に左からテーブルの上に置いていく。
これは、スリーカードという占術方法である。
「今さらレイカさんに説明する必要もないかと思いますが、左のカードが『質問の背景』、真ん中のカードが『現状と今やるべきこと』、そして右のカードが『解決法』となっています」
「はい」
私は、まだどのカードが選ばれたのか見ておらず、緊張でゴクリと固唾を飲み込んだ。
「それでは、一枚ずつ説明いたしましょうか」
アドルフは、カードを見ながら説明を始めた。
「まず、『質問の背景』ですが、力の正位置のカードが出ました。目標に向かって全力で進んでいける、とても良いカードです」
「あ、はい……」
(良かった……)
最悪の結果を覚悟していただけに、ホッとしてしまう。
アドルフは私を少し見ると、次のカードの説明を始めた。
「では、『現状と今やるべきこと』ですね。星の逆位置。今、とても悲しい気持ちになっているのでしょう。現実に打ちのめされる。とてもお辛いと思います。しかし、先ほどの力のカードは進めと言っている。ここで止まらず、全力で進んでください」
優しく私を見つめ、説明してくれるアドルフに何も言えなくなってしまう。
胸がいっぱいになって、私はうなづくので精一杯だった。
「最後のカードは『解決法』ですね。審判の正位置のカードです。今まで頑張ってきたことが報われる。今はお相手のことで疑心暗鬼になっているかもしれません。しかし、貴方の頑張りはきっと実を結びます。お相手を信じてみてはいかがでしょう」
「はい……。私、もう一度ハリスを信じてみようと思います」
私がアドルフにそう言うと、後ろで占い結果を見ていたルーシーが私をからかうように言った。
「私が、探偵を雇ってハリスのこと調べてあげるわよ?」
「ありがとうございます。でも、自分でちゃんとハリスに聞こうと思います」
「あっそ。今度は泣いて帰ってくるんじゃないわよ」
ルーシーは、私に笑いながらそう言うとアドルフと話し始めた。
私は、そんな二人を感謝の気持ちで見つめたのだった__。
読んでいただきありがとうございました。
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