第17話 ブリオッシュ王国一の占い師
ルーシーに連れられ、私は隣町にやって来た。
城下町に比べて、こちらの街のほうが洗練されているように感じる。
私は、まるで初めて都会に来た田舎娘のように辺りをキョロキョロしてしまう。
ルーシーはそんな私を見て、笑いながらこの街について教えてくれる。
「ここはビルが多いでしょう? 都市開発が進んでるのよ。城下町は、昔からの街をそのまま残そうっていう考えだからいつまでも古臭いんだけどね」
ビルの中にあるパン屋を目にして、私はハリスの店を思い出していた。
こんなにおしゃれな建物じゃなくても、自分たちで色々と考え、飾り付けをしてすごく楽しかった。
そんなことを思い出しているとまた涙が出てきそうになる。
「うっ……」
「ちょっと! いつまで泣いてるつもり? ほら、行くわよ」
下を向いて泣きそうになった私の手を掴んで、ルーシーは街を歩き出した。
「まずは、お洋服を見るでしょ、それからホテルのレストランでランチ、それから……」
ルーシーは、歩きながら今日やりたいことをどんどん言っていく。
私は、そんな元気いっぱいのルーシーの後ろをひたすらついて行ったのだった__。
☆
「たくさん買いましたね〜!」
両手に抱えきれないほどの買い物袋を持ちながら、私はルーシーに言った。
「いい荷物持ちがいて良かったわ。次回もよろしくね」
(次回も……)
言葉では言わなくてもルーシーの優しさが伝わり、心が温かくなる。
「はい」
私は、久しぶりに笑顔で返事を返すことが出来た。
そんな私を見て、ルーシーは言った。
「最後に行きたいところがあるんだけど」
「あ、はい」
荷物を執事に渡し、再びルーシーは私を連れてビルが立ち並ぶ通りを歩き出す。
そして、しばらく歩いて行くと小さな喫茶店がそこにあった。
「あの、ルーシーさん、ここは?」
「ここはね、今ブリオッシュで1番当たると言われている占い師のお爺さんがいる喫茶店なの」
「え! ブリオッシュで?」
「そう。サミュエルも、彼を宮廷占い師にしたかったみたい。でも断られたらしいわ」
「そうなんですね」
ブリオッシュで1番の占い師。
自分が目標としている人がここにいる。
「さあ、中に入るわよ」
ルーシーは喫茶店のドアを開けて中に入っていく。
期待と緊張で、そこに棒立ちになっていた私は、慌ててルーシーの背中を追いかけたのだった__。
☆
その占い師のお爺さんは、カウンター席に座りコーヒーを飲んでいた。
ルーシーはその隣の席に座り、お爺さんに話しかけた。
「こんにちは。お久しぶりね、アドルフ」
アドルフはルーシーのほうを見ると、人懐っこそうな笑顔を見せる。
「これはこれは、ルーシー様。今日はお友達も一緒ですかな」
「そうなの。今日はこの子を占って欲しいのよ」
ルーシーは、後ろに立っていた私を前に押し出した。
「えっ? 私ですか?」
突然のルーシーの申し出に驚いてしまったが、うなづいているルーシーの顔をつぶすわけにはいかない。
「あ、あの、初めまして。私、レイカと言います。アドルフさんと同じ占い師の仕事をしています」
「ほう。お嬢さんも占い師を?」
「はい。タロット占いをしています」
私はそう言うと、いつも持ち歩いているタロットカードをアドルフに見せた。
アドルフはカードを手に取ると、驚いたような声をあげた。
「これは素晴らしいカードですな。年代物でしょうに、とても大事に使っているのですね」
「はい、祖父から譲り受けたんです」
「ほほう。おじい様から。どうでしょう、可能であればこのカードを使ってあなたを占わせていただけませんか?」
アドルフは、カードを大事に自分の前のテーブルに置くと私に尋ねた。
考えてみると、今まで自分のカードで自分を占ったことなどなかった。
「ぜひ、お願いします」
興味津々に返事を返した私に、アドルフは微笑みながら再びカードを手に取ったのだった__。
【登場人物紹介】
アドルフ・クノーテン 80歳
ブリオッシュ王国一と言われる占い師
小さな喫茶店で気ままに占い師をしている。
歳のため、そろそろ引退を考えているらしい。




