第15話 馳せる思いと嫉妬心
白い雪が舞い始めた街を、ハリスは一人店の中から見ていた。
「今年も降ってきたか……」
生誕祭が近づき華やぐ街を、人々が楽しそうに歩いていく。
人々の笑顔を見ていると、いつもここで明るく笑っていたレイカを思い出した。
(『生誕祭、ハリスと過ごすのが楽しみ!』)
そう言いながら、レイカは嬉しそうに店の装飾をしていた。
当然自分も、レイカと一緒に生誕祭を過ごせると思っていた。
しかし、レイカは今、サミュエルの元で専属占い師として頑張っている。
生誕祭当日も、仕事で帰っては来れないだろう。
そんな頑張っているレイカを、少しでも応援したい気持ちで、柄にもなくメッセージカードを送ってしまった。
(俺から手紙が届くなんて、きっと驚くだろうな)
慣れないことをした恥ずかしさに苦笑いをする。
しかし、きっとあの笑顔で喜んでくれると思う。
カランカラン
店のドアが開く音と共に、パンを買いに来た親子連れが入ってくる。
「わあ! 美味しそうなパンたくさんあるね!」
ショーケースを覗き込んで、目を輝かせながらパンを見ている子供を、微笑ましそうな表情で父親と母親が見守っている。
「いらっしゃいませ。ゆっくり見て行ってください」
ハリスが挨拶をすると、みんなが嬉しそうにうなづく。
(俺もいつかこんな家庭を築けたら……)
仲良くパンを選んでいる親子を見ながら、ハリスは自分とレイカのそれほど遠くないであろう未来に思いを馳せるのだった__。
☆
買い物を終えたナタリーは、パン屋への帰り道を満足気に歩いていた。
今日の夕飯は、ハリスの好きなものを作ろうと朝から決めていたのだ。
居候として、ハリスの家に再び転がり込んだ形になったが、やはり気心のしれた相手といると安心する。
ハリスも一人でパン屋を営むのも大変だろうし、このまま店を手伝って、あわよくば結婚してもいいとさえ思っている。
「腕によりをかけて夕飯を作らなきゃ」
ウキウキした気分で夕飯作りに気合いを入れた後、ふとある事を思い出した。
買い物に出る前に、ハリスから手紙を出すよう頼まれたのだった。
「いけない。忘れてたわ」
ナタリーは、ハリスから託された手紙を手提げから取り出し、宛名を確認した。
そこには、ナタリーが知らない名前が書いてある。
「えっ、レイカ? もしかして女? ハリス、いつの間に……」
自分は、他の誰よりもハリスのことを知っていると思っている。
いや、思っていた。
この手紙を見るまでは。
「私にも手紙なんてくれたことないのに。なんなのよ、この女。住所が……お城? ただの知り合いかしら」
見たところ、生誕祭用のメッセージカードのようだ。
「ちょっと中身見るくらい、いいわよね」
ナタリーは、可愛らしい星のシールを破らないように丁寧に剥がす。
そして、ゆっくりと封筒の中からカードを取り出した。
生誕祭用の華やかで可愛らしいカード。
少し湧き上がってくる嫉妬心と見てみたい興味心で、ナタリーはゆっくりとカードを開いた。
「!!!」
カードに書かれている言葉に思わず絶句する。
「なっ!なによ、これ……」
先程までのウキウキ気分が一気に冷めていき、ナタリーの顔色が青ざめた。
「許さない……」
ナタリーは、絶望感で思わずカードを破ろうとした。
しかし、ちょうどナタリーの横を他の通行人が歩いていたため、その手を止めた。
(こんなもの! 絶対に送らないから!)
そして、カードを封筒の中に戻すと、素知らぬ顔でそれを道端にあったゴミ箱に捨てたのだった__。
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