第10話 占って欲しいの!
次の日から、私はサミュエルと一緒に『煌光の剣』の調査に同行することになった。
同行に先駆けて、サミュエルの執務室で作戦を練る。
「ブリオッシュ王国は広い。まだまだ、剣を調査していない場所がたくさんある。さて、今日はどの辺りを調査するか……」
サミュエルは、ブリオッシュ王国の地図を机に広げながら考え込んだ。
「レイカ、お前はどう思う?」
「私ですか? そうですね……良い方角をタロットで見てみますね」
私は、タロットカードを念入りにシャッフルして、その中から一枚をテーブルに置く。
「悪魔の逆位置のカードですね。北西の方角がいいと思います。悪い流れから良い流れに変化していきそうです」
「ほう。北西か……。だとすると、ここだな」
サミュエルはそう言うと、地図上の場所を指で示した。
「ブリオッシュ国立自然公園だ」
「自然公園?」
「三十年前に、この辺りの自然を保護しようとする目的で公園が作られたんだ。ふむ、ここは俺も全く調査しようとは考えなかったな」
顎に手を添えながら、サミュエルは感心したように私を見た。
「ますますお前のタロットに興味を持った」
「ありがとうございます。参考程度にしていただければ」
「そんなに謙遜するな。場所も決まったことだし、午後から騎士団の第一部隊と共に調査に出る。それまでに昼食を済ませておくといい」
そう言うと、サミュエルは机に向かい、溜まっている書類仕事を片付け始めた。
私は、サミュエルの仕事を邪魔しないように静かに部屋を出る。
「失礼いたします」
小声で挨拶をして部屋を出ると、緊張がほぐれて少しお腹が空いてきた。
「お城の食堂で何か食べよう。美味しいんだよね、あそこ」
昨夜食べた夕食を思い出し、私は食堂に向かった__。
☆
食堂には美味しそうなメニューがたくさんある。
悩みに悩んで、日替わりランチを頼むことにした。
焼きたてのクロワッサンを筆頭に、ハンバーグ、サラダ、スープがワンプレートで楽しめる。
「あー、やっぱりブリオッシュ王国のパン美味しい!」
焼きたてのクロワッサンを頬張りながら、私はふと思い出した。
(ハリスは元気かな……。お店1人で大変じゃないかな)
食べかけのクロワッサンを見つめると、無性にハリスに会いたくなる。
ハリスのことを考えながら食べる手を休めていると、誰かが私のテーブルの席に座った。
「ここいいかしら?」
私が、見つめていたクロワッサンから目線を上に上げると、そこには先程サミュエルに部屋を追い出されたルーシーがいた。
「あ、えっと、ルーシー、さん?」
「そうよ。ルーシー。よろしく」
ルーシーが私に手を差し出したので、私はその手を取り握手をした。
「ふぅ〜ん。占い師なんていうから、どんな胡散臭い女なんだろうと思ったけど、案外普通なのね」
私が頼んだランチプレートを見ながら、ルーシーは笑った。
「あの、ルーシーさんもここでお昼を?」
私は、笑っているルーシーの顔色を窺いつつ、そう尋ねる。
すると、ルーシーは首を横に振りながら急にもじもじとしだした。
そして、カードをシャッフルする真似をしながら私に言った。
「あ、あれよ。その、占い……」
「えっ?」
「だから! 占って欲しいの! 私の未来を!」
顔を赤くしながら、必死の形相で私を見つめるルーシーと私は、お互いをしばらく見つめあっていたのであった__。
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